現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

スーザン・エロイーズ・ヒントン「アウトサイダーズ」

2017-06-22 16:14:16 | 作品論
 1967年に出版された、いわゆるYA(ヤングアダルト)小説の先駆けと言われる作品です。
 作者が当時17歳の女子高校生だったこともあり、世界的なベストセラーになりました。
 グリースで長髪を固めたグリーサーと呼ばれる貧困層の不良少年グループと、ソッシュ(ソーシャルからきています)と呼ばれる富裕層の不良グループとの抗争が描かれます。
 一週間の間に、三人の少年たちが死にます。
 まず、ソッシュのグループが主人公をリンチしている間に、一緒にいたグリーサー仲間(主人公の言葉を借りればマブダチ)が、ソッシュの一人を護身用に持っていたナイフで刺し殺してしまいます。
 その少年は、逃亡先の教会が火事にあった時に子どもたちを救い出してヒーローになりますが、その時負った怪我がもとで死にます。
 最初の殺人の時に、主人公や死んだ少年をかばって逃がしてくれたグリーサー仲間の中でも一番のワルは、少年の死に自暴自棄になって事件を起こし、警官に撃たれて死にます。
 一連の事件によってすっかり無気力になった主人公は、兄弟の愛情や国語教師の励ましによって、ラストで宿題としてこの事件のことを書き始めます(書き出しの文章が一緒なので、この作品自体が主人公自身によって書かれたものであることが暗示されます)。
 このような作品の構成や文体には、明らかにサリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(その記事を参照してください)の影響が感じられますが、作者が若いだけに描写やプロットに未熟な点が多く感じられます。
 逆に、そのことが作品の題名とは裏腹に、事件のインサイダーのよって書かれたものだということを感じさせて、同世代の読者たちに共感を持たれたのでしょう。
 不良グループ同士の抗争は、レナード・バーンスタインの音楽で有名な「ウェストサイドストーリー」(プエルトリカンの不良グループと白人の不良グループの対立)を初めとして、国内外の多くの文学や映画やコミックスで描かれています(他の記事にも書きましたが、B級娯楽映画の傑作「ウォリアーズ」もその一つです)が、その多くは貧困層の不良グループ同士の抗争です。
 この作品では、貧困層の不良グループと富裕層の不良グループの対立を描くことによって、抗争が社会のひずみによるものだということをより明らかにすることに成功しています。
 作者は、グリーサーにもソッシュにも、いい奴も悪い奴もいること、そして一見ワルに見える奴らもそれぞれに問題を抱えているしいい点だってあることを、繰り返し描いています。


アウトサイダーズ
クリエーター情報なし
あすなろ書房


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