シッコ
2007-08-27 | 映画
マイケル・ムーアが今までに異議申し立てをしたアメリカが抱える諸問題、銃社会やブッシュの戦争政策などは、シリアスなテーマだったが不思議と大爆笑もさせられてきた。
しかし今回ばかりは、アメリカの医療制度の実状に、いや惨状にゾっとして、とても笑ってばかりはいられない。タイトル通り、アメリカの医療制度そのものが『シッコ』(=ビョーキ)なのだから。
アメリカは先進諸国の中で、国民皆保険制度が無い稀有な存在である。国民の6人に1人、約5,000万人が無保険というのにも驚いたが、このドキュメンタリーで更に驚かされたのは、残りの2億5,000万人の大半が入っているHMO(健康維持機構)という、民間の多くの保険会社が適用しているシステムのいい加減さである。
先ず例によって、HMOに入っていても、何やかやと理由を付けて保険金の支払いを拒否された気の毒な被害者たちへのインタヴューから始まる。
日本の生保では頻発している問題だが、アメリカの場合は医療費が高額なため、支払いが受けられないということは破産、又は死に繋がる。
支払い拒否の典型的なものが、既往症と適用除外病名に関するケースである。支払い拒否可能な病名が「スターウォーズ」のタイトルを真似て、あの軽快なテーマ曲に乗り画面手前から奥へと流れて行くが、その膨大な病名の数は、SWのエンドロール並だ。
どうしてこんな状況になってしまったのか、という歴史的考察もなされる。その元凶はニクソン政権時代に遡るが、多くの政治家たちが公然と言って憚らないのが、「国による公的な医療保険制度は社会主義につながる」という言い訳である。
その論理からすれば、富裕者にも貧困者にも無料で均等に機会を提供する、義務教育や公立図書館も社会主義的ということになり矛盾する稚拙な理論であることは明白だ。
結局は、製薬業界、そこから政治献金を受ける政治家、医師会、関係ロビイストなどで構成されるシステムの目的は、金儲けであることが暴露されてしまう。
医療費が完全無料のカナダ、イギリス、フランス、キューバの実情も取材され、アメリカと比較するとまるで「天国と地獄」の差があることに愕然とする。
翻って日本の3割負担への後退や、年金問題の現状を考えると、明日は我が身であり暗澹たる気持ちになってくる。
9.11の救助活動で健康を損ねたが、1本125ドルもする有効な治療薬の使用を医療保険で認めてもらえず、治療を諦めていた元消防隊員や、前述の支払いを拒否された人たちを引き連れて、キューバへ向うクライマックスは、マイケル・ムーア一流の風刺と怒りが炸裂する。
彼らはグアンタナモ米海軍基地で、アルカイダ同様に無料の治療が受けられるのか?弱者としてのアメリカの棄民が、キューバで流した涙の意味を、じっくりと考える必要がありそうだ。
しかし今回ばかりは、アメリカの医療制度の実状に、いや惨状にゾっとして、とても笑ってばかりはいられない。タイトル通り、アメリカの医療制度そのものが『シッコ』(=ビョーキ)なのだから。
アメリカは先進諸国の中で、国民皆保険制度が無い稀有な存在である。国民の6人に1人、約5,000万人が無保険というのにも驚いたが、このドキュメンタリーで更に驚かされたのは、残りの2億5,000万人の大半が入っているHMO(健康維持機構)という、民間の多くの保険会社が適用しているシステムのいい加減さである。
先ず例によって、HMOに入っていても、何やかやと理由を付けて保険金の支払いを拒否された気の毒な被害者たちへのインタヴューから始まる。
日本の生保では頻発している問題だが、アメリカの場合は医療費が高額なため、支払いが受けられないということは破産、又は死に繋がる。
支払い拒否の典型的なものが、既往症と適用除外病名に関するケースである。支払い拒否可能な病名が「スターウォーズ」のタイトルを真似て、あの軽快なテーマ曲に乗り画面手前から奥へと流れて行くが、その膨大な病名の数は、SWのエンドロール並だ。
どうしてこんな状況になってしまったのか、という歴史的考察もなされる。その元凶はニクソン政権時代に遡るが、多くの政治家たちが公然と言って憚らないのが、「国による公的な医療保険制度は社会主義につながる」という言い訳である。
その論理からすれば、富裕者にも貧困者にも無料で均等に機会を提供する、義務教育や公立図書館も社会主義的ということになり矛盾する稚拙な理論であることは明白だ。
結局は、製薬業界、そこから政治献金を受ける政治家、医師会、関係ロビイストなどで構成されるシステムの目的は、金儲けであることが暴露されてしまう。
医療費が完全無料のカナダ、イギリス、フランス、キューバの実情も取材され、アメリカと比較するとまるで「天国と地獄」の差があることに愕然とする。
翻って日本の3割負担への後退や、年金問題の現状を考えると、明日は我が身であり暗澹たる気持ちになってくる。
9.11の救助活動で健康を損ねたが、1本125ドルもする有効な治療薬の使用を医療保険で認めてもらえず、治療を諦めていた元消防隊員や、前述の支払いを拒否された人たちを引き連れて、キューバへ向うクライマックスは、マイケル・ムーア一流の風刺と怒りが炸裂する。
彼らはグアンタナモ米海軍基地で、アルカイダ同様に無料の治療が受けられるのか?弱者としてのアメリカの棄民が、キューバで流した涙の意味を、じっくりと考える必要がありそうだ。
毎年、いろいろなテーマで観たいですね。
日本では、この分野でヒットする作品はなかなか無いですね。
製作するには障害が多すぎるからでしょうが。
TB&コメントに感謝!
早速ご覧になったレポありがとうございました。
ね~、憤っちゃいますよね。
それもこれもみんな医療や薬剤インダストリーの陰謀です。
アメリカの格差社会って日本の比じゃないんですよ。
ダンナと二人で老後はカナダに移住しようっていってます(笑)。日本でもいいんだけど物価が高くて(笑)。
こんにちは。
国境近くのアメリカ人がカナダへ治療に行くのは
今はもうダメなんですって?
折角の裏技だったのにね。
CMは結構 馬鹿馬鹿しくやってるみたいだけど
観た人たちが
日本の行き先を不安に思って
政治に興味をもってくれることを思うのみです。
私の感想も読んでいただけたら幸いです。TBさせて頂きます。宜しくお願いします。
日本だって、とても他国の不幸などと、のほほんとはしていられない状況ですよね。
『アホでマヌケなアメリカ人』で彼が提示した、個人と国家の関係が、この映画でもそのまま適用されていました。
次回のテーマは、セクシュアリティーに関すことという噂は本当でしょうか?
TB&コメントに感謝!
毎度私なんぞのblogにTBありがとうございます。
『シッコ』観ました。 さすがマイケル・ムーア、上手いですね。
社会派ドキュメンタリーながら、辛口の皮肉を込めて楽しませ魅せるその演出センスには毎度感服します。
SWのオープニングを模した病名ロールなんて、笑えるんだけど、実は全然笑えないトコロがキツイ・・・
日本に住んでる私たちも、明日は我が身と震え上がる内容ですよね。
では
人間の生命にかかわる一番大切な問題だと単純に考える僕ですが、アメリカも日本も政治家にとっては、さほど重要ではないようですね。
金儲け至上主義の社会では、まさに「地獄の沙汰も金次第」。
イヤな世の中になったもんです。
「誰が議員になっても同じ」という諦め感を持つ国民が多いうちは、権力者が好き勝手をやれますね。資本主義国家でも政財界を牽制する力があれば修正資本主義国家として成熟していけます。それが今回のイギリス、フランス、カナダなのではなかったでしょうか。政財界を牽制する力が弱いとアメリカのようになってしまいます。私はピープルズパワーの一員になりたいです。