Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

3/19(日)森 麻季デビュー20周年記念リサイタル/弦楽五重奏や合唱を交えた華やかな日曜の午後

2017年03月19日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
デビュー20周年記念公演
森 麻季ソプラノ・リサイタル
夢と希望に満ち溢れた歌声〜森 麻季 春を歌う


2017年3月19日(日)14:00〜 横浜みなとみらいホール S席 1階 C1列 19番 5,400円(会員割引)
ソプラノ:森 麻季
ピアノ:山岸茂人
第1ヴァイオリン:長原幸太
第2ヴァイオリン:鍵富弦太郎
ヴィオラ:横溝耕一
チェロ:富岡廉太郎
コントラバス:瀬泰幸
合唱:青山学院横浜英和中学高等学校 コーラス部(合唱指導:辛島由希子/特別出演)
【曲目】
ドニゼッティ:歌劇『シャモニーのリンダ』より「私の心の光」
山田耕筰:からたちの花(ピアノ・ソロ)
中田喜直:さくら横ちょう
別宮貞雄:さくら横ちょう
岡野貞一:朧月夜
中田喜直:はなやぐ朝
グラナドス:組曲『ゴイェスカス』より「嘆き またはマハと夜鳴きうぐいす」(ピアノ・ソロ)
グノー:歌劇『ミレイユ』より「おぉ、軽やかなつばめよ」
《青山学院横浜英和中学高等学校コーラス部とともに》
千住明:エターナル・ライト
菅野よう子:花は咲く~NHK「明日へ」東日本大震災復興支援ソング
黒人霊歌:アメイジング・グレイス(コーラス部のみ)
《弦楽五重奏+ピアノとともに》
グノー:歌劇『ファウスト』より「宝石の歌」
J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番より「G線上のアリア」(弦楽五重奏)
ヘンデル:歌劇『リナルド』より「涙の流れるままに」 
マスカーニ:アヴェ・マリア  
ドビュッシー:「小組曲」より「小舟にて」(弦楽五重奏)
グノー:歌劇『ロミオとジュリエット』より「私は夢に生きたい」
《アンコール》
 山田耕筰:からたちの花
 いずみたく:見上げてごらん夜の星を

 お馴染みのソプラノ、森 麻季さんのデビュー20周年を記念して横浜みなとみらいホールで開催されたソプラノ・リサイタル。第一線に躍り出てもう20年もの間、トップクラスのアーティストとしての地位を保ち続けているのは立派というか、素晴らしいことだ。とくに声楽家は身体が楽器のようなものだから、器楽奏者よりは年齢に影響される。しかしながら麻季さんは相変わらず透明感溢れる美声と素直な高音域、そしてコロラトゥーラの華麗な技巧を安定的に保っている。もちろん美貌もまったく変わらないが、髪の毛が銀色(?)なのがちょっと違和感があるが・・・・。

 本日のコンサートでは、前半はいつも通りに山岸茂人さんのピアノ伴奏で歌い、後半はまず青山学院横浜英和中学高等学校のコーラス部の皆さんによる女声合唱を交えての3曲、その後はピアノと弦楽五重奏の伴奏で各曲を歌うという趣向である。
 麻季さんが歌った曲はいつもり持ち歌ばかりで新鮮味こそなかったが、合唱や弦楽五重奏が加わることで、いつもとは違って雰囲気がよりゴージャスになった。とはいえ、いささか盛り込みすぎのような印象で・・・・20周年という主旨が曖昧になってしまったような気もする。それでも麻季さんの歌唱はいつも通り、軽やかで心地よい、天上の歌声。最前列の真正面の席で、心ゆくまで堪能させていただいた次第である。

 麻季さんの20周年記念は、もうひとつ大きなコンサートが秋に予定されている。9月9日(土)の18辞より、東京オペラシティコンサートホールで、岩村 力指揮/東京フィルハーモニー交響楽団をバックにオペラ・アリアを中心としたプログラム構成だ。今日の会場でもチケットの先行販売を行っていて行列ができていた。私ももちろんチケット確保済みである。

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3/17(木)文京シビック夜クラシック/横坂源&北村朋幹が描き出す気品ある幻想的な世界

2017年03月17日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
文京シビックホール 夜クラシックVol.12
横坂 源(チェロ)/北村朋幹(ピアノ)


2017年3月17日(金)19:30〜 文京シビックホール・大ホール S席 1階 2列 25番 2,250円(セット券)
チェロ:横坂 源*
ピアノ:北村朋幹**
【曲目】
ドビュッシー:『ベルガマスク組曲』より「月の光」**
ヤナーチェク:おとぎ話* **
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 より「プレリュード」*
シューマン:「こどもの情景」より「トロイメライ」**
シューマン:幻想小曲集 作品73* **
ブラームス:チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 作品38* **
《アンコール》
 フォーレ:シシリエンヌ* **

 文京シビックホールの主催による「夜コンサート」シリーズの第12回は、チェロの横坂 源さんとピアノの北村朋幹さんによるデュオ・リサイタル。

 プログラムは上記の通り、それぞれのソロの曲をまじえてのもの。最初の「月の光」はピアノのソロだったが、これはこの「夜クラシック」シリーズのテーマ曲になっていて、照明を落として真っ暗になったステージで、この曲で始まるのである。今回のプログラムは、名曲を集めたものであるとはいえ、「夜」というテーマに沿った幻想的・夢想的な曲でまとめている。

 横坂さんのチェロは、極めて端正で気品がある。正確な音程、柔らかく暖色系の音色で、伸びやかに旋律を歌わせる。ひとつひとつの音に込められた繊細なニュアンスが、楽曲の表現に美しく聴く者を包み込むような優しさを与えている。強烈に自己アピールをするような独善的なところは少なく、スタンダードの美を追求した、王道を行くような演奏である。何より素敵なのは、聴いている者に安心と安らぎを与えてくれることだ。とくに無伴奏の「プレリュード」は柔らかく穏やかで気品があり、演奏者の人柄が表れているように感じた。「幻想小曲集」は暖色系の明るい音色で、抒情性豊かに歌わせている。ブラームスの「チェロ・ソナタ」は内省的なロマンティシズムを切なげに描き出すが、演奏は基本的に温かくて人間味が溢れている。

 北村さんのピアノは煌びやかでとても美しい音色を持っている。今日のプログラムがとくに幻想的・夢想的な曲を集めているせいもあるが、すべての曲で、常に抑制的ではあったがその分だけ繊細さと優美さを湛えていて、旋律が実に美しく歌われる。「月の光」や「トロイメライ」は印象主義的な光りと影を映し出すような雰囲気。「幻想小曲集」は伴奏ピアノとはいえ美しい分散和音が夢幻的に煌めくよう。ブラームスの「チェロ・ソナタ」は音質は美しいがやや光彩を抑えめにして、曲相に合わせて言いたいことを内に秘めるようなニュアンスが込められていた。

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3/15(水)紀尾井・明日への扉/桑原志織/ダイナミックで繊細、スケール感と色彩感豊かに描く「展覧会の絵」

2017年03月15日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
紀尾井/明日への扉15/桑原志織(ピアノ)
Kioi Up & Coming Artist 15/Shiori Kuwabara, Piano


2017年3月15日(水)19:00~ 紀尾井ホール 1階 1列 11番 2,000(セット券)
ビアノ:桑原志織
【曲目】
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第19番 ハ短調 D958
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3楽章
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
《アンコール》
 ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」作品39より第1曲 ハ短調

 紀尾井ホール主催の「明日への扉」シリーズのVol.15は、ピアニストの桑原志織さん。彼女は、2014年の「第83回 日本音楽コンクール」ビアノ部門で第2位と増沢賞(聴衆賞/私も投票した)、2016年の「第62回 マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽コンクール」でも第2位と最年少ファイナリスト賞を受賞している期待の若手だ。現在は東京藝術大学の3年に在学中。江副記念財団第44回奨学生にも選ばれていて、昨年末(2016年12月24日)の「リクルートスカラシップコンサート」にも出演していた。その模様は今年の1月9日にBSジャパンで放送されたのでご覧になった方もいるかと思う

 今回の「明日への扉」に出演するに当たっては、上記のように思い切ったプログラムで、紀尾井ホールでのリサイタル・デビューに対していきなり大曲で勝負に出たという感じだ。

 シューベルトの「ピアノ・ソナタ 第19番」は30分近い4つの楽章を持つ大曲で交響曲のピアノ版といった感じのスケール感と造形の曲。桑原さんのピアノは非常にダイナミック・レンジが広く、音量も豊かで、雄大なスケール感を発揮している。そして細やかなニュアンスを込めてロマン的な表現力にも生命感が溢れている。緩徐楽章の歌わせ方などにもシンフォニックなイメージを感じた。終楽章は躍動感と推進力があり、いかにも若手の演奏らしい瑞々しさに溢れていて、素晴らしかった。

 ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカからの3楽章」は一転して鮮やかな色彩感で物語性を打ち出してくる。キラキラと細かな光りが煌めくような、沢山の色の光が飛び交うような色彩感である。また高度な技巧の求められる曲でもあるが、桑原さんは技巧性にはまったくとらわれずにひとつひとつの音やフレーズ、主題が物語性を持ってシッカリかつ繊細に描かれているのがお見事。

 後半はムソルグスキーの「展覧会の絵」。言わずと知れた名曲で、私も大好きな曲のひとつ。後年のラヴェル編曲の管弦楽版を知っている私たちは、ピアノ曲としての原曲にも様々な色彩や造形が練り込まれていることを感覚的に知っているので、演奏するピアニストにとってもより深読みした解釈や表現が求められることになる。桑原さんの演奏を聴いていて、そのことを改めて感じた次第。例えば曲間をつなぐ「プロムナード」が出てくる度にピアノの音色が変わる。楽譜を正確に弾いているだけではあり得ないこの色彩感の変化は解釈というよりは感性のなせる技だろう。当然、各曲の表現に至っては、幅広い表現手法を駆使して、それぞれの「絵」を描いている。実際に聴いていて、各曲のタイトル通りの映像が目に浮かんでくるというわけではなく、もう少し抽象的な感覚も含まれていて、ページをめくるたびに異なる色調の絵が目に飛び込んでくるような感覚にとらわれた。いずれにしても表現の幅は広く、彼女がこの曲を自信を持って選んだのが納得できるような気がした。Brava!!な演奏であること間違いなし。
 もう一つ感じたのは、桑原さんはこの紀尾井ホールの豊かな(ある意味では豊か過ぎる)響きを味方に付けていたことだ。実は本日の「明日への扉」は2016/2017シーズンの4回のコンサートの最終回なのだが、桑原さんは昨年9/21のトランペットの守岡未央さん、12/6のヴァイオリンの小川恭子さんなどのコンサートを聴きに来ているのを見かけた。前述の「リクルートスカラシップコンサート」も紀尾井ホールで行われたこともあり、ホールの響きをステージ側からも客席側からも確認できているのだろう。ひとつひとつの音が、生命力を持って明瞭に鳴り、かつ豊かに響いていた。

 アンコールはラフマニノフの練習曲集「音の絵」作品39より「第1曲 ハ短調」。まさに音の奔流のような曲だが、テクニックも素晴らしい。

 終演後、桑原さんはロビーに出て来られて関係者の方々と歓談されていた。私はまったく接点はなく関係者でも何でもないのだが、図々しくもご挨拶に名乗り出て、記念写真を撮らせていただいた。


 桑原さんのピアノは、とにかく器が大きく感じられる。他の人にはない独特のスケール感がある。大らかでダイナミックな部分と繊細でロマンティックな部分が程良くミックスされ、そこに多彩な色彩を持つ音色が加わる。だから表現力には幅広さと奥行きの深さが生まれる。ご自身の世界観がある程度出来上がりつつある感じなのである。私は「第83回 日本音楽コンクール」の時以来注目していたが、今日のリサイタルを聴いて改めて感じたのは、今後も目の離せないアーティストの一人だということである。

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3/13(月)東京フィル/オペラシティ定期/松田華音の壮麗ラフマニノフP協2番とバッティストーニの歌謡的「悲愴」

2017年03月13日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 第108回 東京オペラシティ定期シリーズ

2017年3月13日(月)19:00〜 東京オペラシティコンサートホール A席 1階 3列 17番 5,355円(会員割引)
指 揮:アンドレア・バッティストーニ
ピアノ:松田華音*
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:三浦章宏
【曲目】
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18*
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」

 東京フィルハーモニー交響楽団の「第108回 東京オペラシティ定期シリーズ」を聴く。2016/2017シーズンも今回で最後となる。今月のマエストロは、東京フィル首席指揮者のアンドレア・バッティストーニさん。昨日3/12にオーチャードホールで本日と同プログラムを振っている。
 ゲスト・ソリストは、ただ今売り出し中の松田華音さん。若干20歳にして、東京フィルの定期シリーズのソリストに抜擢されることになった。

 プログラムの前半は、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」。華音さんは小柄でとても可愛らしく、見た目はどこかのお嬢様かお姫様のようだが、ピアニズムはけっこう骨太で力強い。幼少の頃からのロシア育ちということで、毎日聴いて育った音楽が小さな身体から溢れ出している。もちろん技巧的にもかなり高度なレベルのものを持っている。押し出しが強いだけでなく、弱音時や、主題がオーケストラ側にあるときの伴奏ピアノなどの細やかなニュアンスに彩られたフレージングなどにも、非凡なものを感じる。
 抒情的で感傷的なラフマニノフならではのロマンティックな世界の描き方は、1本芯が通っているような剛直さを内に隠しつつ、旋律を艶めかしく歌わせる。こうした雰囲気はロシアのピアニズムを継承しているといえる。同時に主題を弾くときの自由度というか、微妙なテンポの揺らぎや右手と左手のズレなどが表現力に深みを出し、旋律を豊かに歌わせている。
 また、とくに今日はピアノの真下で聴いていたので、音質やオーケストラのバランスについてはコメントを控えるが、オーケストラの影に隠れて普段あまりよくは聞こえないような部分でも、彼女のピアノは力感とニュアンスによるしっかりとした造形を持っていることは分かる。
 とにかく、華音さんについては、見た目の雰囲気に騙されては(?)いけない。若干20歳。でもアイドル系のピアニストなんかじゃない、ロシアのピアニズムを正統に継承する本格派なのである。

 後半はチャイコフスキーの交響曲「悲愴」。コチラの方はもうバッティストーニさんが本領発揮の爆演である。イタリア人の指揮者が振るチャイコフスキーってどうなのだろうと思われがち。確かに、ロシアの荒涼たる大地といった空気感のようなものは・・・・あまり感じられない。音楽全体がもっと人間的で、熱い血がたぎっているような情感が前面に出ている演奏である。
 どこからそんな感じが生まれてくるのかと思えば、それはやはりオペラだろう。バッティストーニさんの指揮では、ひとつひとつの主題やフレーズが、人間が呼吸しているような歌わせ方をする。押しては引き、引いては押す感じ。旋律が息遣いを感じるように歌う。だから人間味に彩られてくるのだ。純音楽の最終総合型である交響曲という分野において、器楽的な緻密さや造形を求めず、人間の情念・情感を熱いタッチで描き出す。その描き方は濃厚で、感情をオモテに出す国の音楽になっていた。
 同時にいえることは東京フィルの演奏の実に素晴らしいこと。オペラをやらせたら日本で一番のオーケストラならではの演奏だ。イタリア・オペラの歌手の歌唱に合わせた対応力のように、バッティストーニさんの歌謡的な旋律やフレーズの描き方に見事に対応している。もともと持っている濃厚な音色の管楽器群と透明なアンサンブルの弦楽のバランスの良さがあるが、バッティストーニさんの「濃い」指揮にも「濃い」演奏で応えている。
 というわけで、バッティストーニさんの「悲愴」はあまりロシアっぽくはないが、情熱的で濃い色彩感に彩られていて(イタリアっぽい?)、これはこれで素晴らしい。かなりBravo!な演奏だと思った。

 やはりバッティストーニさんはオペラの人。彼が振るとロシアの音楽もイタリア・オペラのように歌い出す。ピアニスト出身のロシア人、ミハイル・プレトニョフさん(特別客演指揮者)の器楽的でクールな指揮とはまったく性格が異なるが、どちらも東京フィルから素晴らしい演奏を引き出すことに変わりはない。次シーズン(2017/2018シーズン)は5月からはじまるが、サントリー定期、東京オペラシティ定期、そしてオーチャード定期の3つのシリーズはバッティストーニさんとプレトニョフさん、それに名誉音楽監督のチョン・ミョンフンさんの3人でほとんど大部分の公演を行う。この3人の時の東京フィルはいつもスゴイ。来期も目が離せなくなりそうだ。

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3/12(日)Just Composed 2017/能・謡と弦楽四重奏による現代音楽の最新2作の世界初演と再演編曲版1曲

2017年03月12日 23時30分00秒 | クラシックコンサート
横浜芸術アクション事業
Just Composed 2017 in Yokohama ~現代作曲家シリーズ~
能・謡 × 弦楽四重奏


2017年3月12日(日)17:00〜 横浜みなとみらいホール・小ホール
能:青木涼子(能)*
ヴァイオリン:成田達輝
ヴァイオリン:百留敬雄
ヴィオラ:安達真理
チェロ:上村文乃
【曲目】
ジェルヴァゾーニ:「夜の響き、山の中より」(謡と弦楽四重奏のための/2016)*
ベートーヴェン:大フーガ 変ロ長調 作品133
斉木由美: Deux sillages II(独奏ヴァイオリンと弦楽三重奏のための、新作・世界初演)
馬場法子:ハゴロモ・スイート(Just Composed 2017 委嘱作品・世界初演)*

 横浜みなとみらいホールの「Just Composed in Yokohama 現代音楽シリーズ」は、毎年開催され今回で18回を数える。新作の委嘱作品の初演と、過去の作品を再演することを主旨としている、現代音楽のシリーズである。音楽学者の白石美雪さんと横浜みなとみらいホール館長の池辺晋一郎さん、そして毎回異なる1名の選定委員でテーマ・内容を決めて、現代の旬の作曲家に委嘱され、選曲される。カテゴリとしての「現代音楽」ではなく、まさに最新の、最前線の「現代音楽」が披露されることになる。

 私は普段はけっこう名曲ものを聴くことが多く、また演奏家で選ぶコンサートも多い。現代音楽も嫌いではないが、年に数回は現代音楽だけのコンサートにも足を運ぶ、という程度のスタンスでしかない。ただ、実際問題として、普通のクラシック音楽のコンサートに行けば、大抵は同好の知人に出会うか、知った顔を見かけるものだが、現代音楽のコンサートではほとんど知り合いに会わないというのが実態だ。オーケストラの定期シリーズなどでプログラムに現代曲が含まれていれば皆、神妙な顔をして聴き拍手しているが、そういった人たちでも現代音楽だけのコンサートにお金を払ってまでなかなか足を運ばないというのが現実なのである。

 芸術としての現代の音楽はかなり難しい状況に置かれている。現代の作曲家が、例えばロマン派のような音楽を作っても(それがとても素敵な曲であっても)、学者や評論家が積極的な評価をすることはほとんどなく、芸術は常に進化を続けなければないないと考えられているようだ。歴史を遡ることには価値が見出されないようである。
 そのような考え方に対して私はコメントできる立場ではないが、音楽は聴く人がいてナンボのものだと思っているので、いずれにしても、演奏家や音楽学者、評論家などの専門家の間だけで高い評価を得たとしても、私たち一般聴衆に届かなければ、それこそ価値が見出されないのではないかと思ったりもしている。まあ、実際のところはあまり難しく考えずに、理屈で解ろうとせずに、ただ聴いて何かを感じ取れれば、というレベルで良いと思うのだが・・・・。

 今回の「Just Composed in Yokohama 現代音楽シリーズ」のテーマは「能・謡 × 弦楽四重奏」ということで、選考委員に加わったのは、東京藝術大学で能楽を専攻した青木涼子さん。日本の能楽と西洋音楽(現代音楽)とのコラボレーション(というとちょっと軽いか)、あるいは融合の可能性を追求する試みを行っている。能・謡のアーティストとして、能オペラなどにも出演して評価されている人だ。本日も能・謡のソリストとして出演している。
 一方で弦楽四重奏として出演するのは、ヴァイオリンが成田達輝さんと百留敬雄さん、ヴィオラが安達真理さん、チェロが上村文乃さんの4名。成田さんは過去に何度か聴いたことがあるが、2009年の第78回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第2位、2010年のロン=ティボー国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第2位、2012年のエリザベート王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第2位などの受賞歴がある若手の俊英である。百留さんは聴いたことがないが、現代音楽を得意とするヴァイオリニストで数多くの新作初演に参加していて、特殊奏法などにも通じていて評価の高い人だ。安達さんと上村さんは知り合いでもあり、演奏を聴く機会も多い。取っつきにくい現代音楽のコンサートであっても、知っている人が演奏してくれれば、それだけでも聴きに行く理由付けにもなるというものだ。


後列左から青木涼子さん(能)、成田達輝さん(Vn)。
前列左から百留敬雄さん(Vn)、上村文乃さん(Vc)、安達真理さん(Va)。

 1曲目はステファノ・ジェルヴァゾーニ(1962年〜)さんの「夜の響き、山の中より」。昨年2016年9月に開催された武生国際音楽祭で初演された、謡と弦楽四重奏のための曲の再演である。平安時代末期の歌人、西行の歌を下敷きに、能・謡と弦楽四重奏で表現される自然美の世界。青木さんの謡はつぶやくように始まり、やがて本来の能の謡に、さらに独自の歌唱法へと変化していく。背景に流れる弦楽四重奏は、フラジオレットやピツィカートなどの特殊奏法を駆使した前衛的なものだが、自然界に流れる調和のない音の脈絡のようで、不協和音も極めて描写的で美しい。

 続いてはベートーヴェンの「大フーガ」。本日、唯一の現代音楽ではないプログラムだ。とはいえ、弦楽四重奏曲第13番の終楽章として初演された当時、評価が賛否に分かれて、結局は終楽章は書き直されてしまう。独立して切り離されたのがこの「大フーガ」であり、当時としてはかなり斬新なアイディアが盛り込まれていて聴衆の理解を大きく凌駕していた。その意味では今の「現代音楽」と同じような立場の曲であったのかも。弦楽四重奏の古典としい本日のプログラムに組み込まれた意義も、その辺りにあるのだろう。現代音楽の中にポツンと置かれた古典派の音楽であっても、その曲の持つ前衛的な香りは、今日のコンサートの中でも違和感を感じなかった。演奏が素晴らしかったのは言うまでもない。

 後半の1曲目は、斉木由美さんの「Deux sillages II」という曲で、独奏ヴァイオリンと弦楽三重奏のための曲となっている。これは、1999年の「第1回 Just Composed in Yokohama」の再の委嘱作品として初演された「Deux sillages」を再演のために弦楽四重奏のために再編したもの。タイトルは「2つの航跡」という意味で、東洋的な音楽と西洋的な音楽が同時に進行していくというもの。独奏ヴァイオリンが前者を弦楽三重奏が後者を受け持つという構造になっている。独奏ヴァイオリンは成田さんが受け持つが、足下に置かれた鈴を蹴るという演奏も加わっていた。
 演奏が始まるといきなり独特の音楽空間が広がる。弦楽三重奏の方が不思議な和声による不協和音の短いフレーズを執拗に繰り返し、それに対向する独奏ヴァイオリンも単音を繰り返していくうちに複雑な旋律を描き出すようになる。無段階のグリッサンドなどの特殊奏法が効果的。全体に漂っているのは焦燥感・・・・だろうか。

 最後は馬場法子さん:「ハゴロモ・スイート」という曲で、今回の「Just Composed 2017」の委嘱作品の世界初演。世阿弥による能楽「羽衣」に着想を得て、その中から4つのシーンを切り出し、能・謡を弦楽四重奏に乗せる10分間ほどの能オペラである。
 能が能楽堂というなにもない空間に物語りや人間の情念の世界を創り出すように、ここでの弦楽四重奏の演奏は描写的な空気感を漂わせているかと思えば、極めて観念的な、人間心理の内面を描くような雰囲気を描き出す。特殊奏法を多彩に駆使して、たった4名、たった4台の楽器とは思えないほどの多彩な音が繰り出されてくる。聴く者の想像力をかき立てるような音楽である。そこに謡が抑揚の少ない極限的な歌唱表現で歌う。

 終演後はサイン会があった。といっても作曲家のお二方ではなく、演奏家の5名。とくにCD購入者に限るということでもなかったので、私も参加してプログラムのトビラに皆さんからサインをいただいた。結局はファン交流会のような感じで、和気あいあいとした楽しい時間であった。


 現代音楽はその論理性ゆえに、音楽理論の最先端を行くものであり、その理論が解りにくいために聴き手との間に乖離を生み出しているという側面がある。理解できなければ聴いてもその良さが解らないということになる。私も理論の方はまったくダメなので、最近は解ろうとする試みはあまりしないようにしている。むしろアタマを空っぽにして、音楽を感じ取るようにして、とりあえず受け入れてみる。そうすることで、どこかに感性が刺激を受けるところがあば、それを楽しむのである。美しい響きであったり、濁った不協和音であったり、不規則なリズムであったり・・・・。「音」を媒介として、自然の中の一部分や人間の情念などが感じ取れたりすれば、それはまた新しい発見でもあり、平凡な暮らしに小さな火を灯してくれるのである。

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3/12(日)NDRエルプフィル/アリス=紗良・オットの絶品ベートーヴェンP協3番とウルバンスキの「ツァラ」

2017年03月12日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東芝グランドコンサート2017
NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団


2017年3月12日(日)14:00〜 ミューザ川崎シンフォニーホール S席 1階 1C 1列 19番 17,000円
指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
ピアノ:アリス=紗良・オット*
管弦楽:NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)
【曲目】
ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番 ハ長調 作品72b
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37*
《アンコール》
 グリーグ:組曲『ペールギュント』より「山の魔王の宮殿にて」*
R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30
《アンコール》
 ワーグナー:歌劇『ローエングリン』より 第3幕への前奏曲

 3月7日に引き続き、NDRエルプフィルハーモニー交響楽団のコンサートを聴く。本日からツアーの後半に入り、プログラムが一転してオール・ドイツ・プログラムとなった。今回のツアーを率いて来た首席客演指揮者のクシシュトフ・ウルバンスキさんにとっては、新たに獲得してきたレパートリーということだろう。オーケストラは北ドイツ・ハンブルクで70年の歴史を持つ、中堅どころであり、ドイツ・プログラムには定評がある。ハンブルク北ドイツ放送交響楽団の名は、過去のこのオーケストラを率いて来たハンス・シュミット=イッセルシュテット、ギュンター・ヴァント、クリストフ・エッシェンバッハ、クリストフ・フォン・ドホナーニらの指揮者たちはいずれも名だたる巨匠揃い。ドイツ音楽の伝統は遺伝子レベルでこのオーケストラに埋め込まれているはずだ。そこへ若いポーランド生まれのウルバンスキさんが当時要することによって、どんな化学変化が起こるのやら、期待と不安が入り乱れる・・・。

 もう一つの眼目は、お馴染みのアリス=紗良・オットさんが弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番だ。この曲は2015年にNHK交響楽団と共演しているが、アリスさんにとっては新しいレパートリーの1つで、わずか3年前に初めて演奏したのだという。今や世界中の一流オーケストラから引っ張りだこのアリスさん。ドイツを中心としたヨーロッパだけで亡く、アメリカやロシア、そしてアジアへと、まさにグローバルな活躍をしている。そんな超多忙なアリスさんだが、毎年来日してくれるのはファンにとっても嬉しい限り。今回も最前列の「足元」の席を確保できた。

 さて1曲目は「レオノーレ序曲 第3番」。歌劇『フィデリオ』が完成する途中の改定を繰り返していた際、まだ『レオノーレ』と題されていた頃の改訂版の序曲である。この序曲の人気は高く、コンサートでもしばしばプログラムに載るが、『フィデリオ』自体がオペラ界での評価がそれほど高くないために、クラシック音楽ファンの間でも『フィデリオ』を実舞台で鑑賞したり全曲を繰り返し聴いたりしている人はあまり多くないものと思われる。私は個人的に『フィデリオ』が昔から大好きで、戦前のワルターやトスカニーニから録音を聴いたりしているので、このオペラと序曲に関してはいささかこだわりがあるのだが・・・・。それは置いておいて・・・・。
 本日のエルプフィルの演奏は3月7日の時よりははるかに筋が1本通ったようになっていた。ウルバンスキさんの指揮では、序奏はゆったりとしたテンポでタメを十分に採った重厚なもの。そしてソナタ形式の主部に入り主題が出てくると、全体にレガートを効かせてしなやかに旋律を歌わせる感じになる。キレ味鋭くリズムを刻むのではなく、しなやかに流れるような演奏だ。これはウルバンスキさんの特徴だろう。途中、大臣の到着を知らせる伝令のトランペット・ソロがバンダで入るが、1回目はどこか遠くでほとんど聞こえなかった。2回目はホールの上の方の階の客席からだったようで、見たわけできないので定かではないが、こちらはよく聞こえた。再現部もレガートを効かせた演奏。急にテンポが上がるコーダに入るとオーケストラが少しバタつくクセが出てしまったが、一旦流れに乗ると最後は推進力で突っ走った。個人的には、オペラの序曲はもっとワクワク感を煽るような、リズム感がキレキレの方が好きなのだが・・・・。

 2曲目は「ピアノ協奏曲 第3番」。ベートーヴェンの5つのピアノ協奏曲の中では唯一の短調の曲。しかも運命の調(苦悩を通じて歓喜に至る)、ハ短調である。この曲が作られた時期(1800〜1803年)は「ハイリゲンシュタットの遺書」が書かれた時期とも重なる。重苦しいハ短調の曲想はピアノによって激しく翻弄されるように展開し、迷走的な憧れの第2楽章を経て、終楽章ではハ短調が最後にはハ長調に転じて、一応の解決を見る。しかし「歓喜」にまでは至っていないように思える。非常に悩ましい曲である。
 裸足の天使、アリスさんの登場。足元の席なので、目の前にアリスさんの足が見える。最初から余談になるが、アリスさんはピアニストに向いていて手が大きいが、足も大きいことを発見した(失礼!)。足指を曲げてペダルを包み込むように踏む。これにより高速で繊細なペダール・ワークが可能になる・・・らしい。
 さて演奏の方はというと、この曲は第1楽章は古典的な協奏風ソナタ形式で、まずオーケストラだけで主題が提示されるわけだが、ここでもやはりウルバンスキさんの音楽が現れていて、どこかふわりとしていて柔らかい。ダイナミックレンジはそれなりに広く採っているので強弱に関してはメリハリがあるが、ヨコの流れはレガートとしなやかさ。ベートーヴェンが選んだハ短調に対しては意外にもエレガントな演奏になっている。オーケストラについては最後まで基本的には変わらない。
 アリスさんのピアノが入って来ると、また別の意味でエレガントな音楽が追加される。彼女のこの曲へのアプローチは、主題を初めとする旋律やフレーズに豊かなニュアンスを与え、スケール感も大きく歌わせて行く。音質もあえて煌びやかさを控えているが、透明感のある美しい音色と、レガートやスタッカートなどの使い分けが鮮やかで、豊かな表情と色彩感を作り出している。例によってピアノの真下で聴いているため、ビアノの底から出てくる雑味のある音が気になるところだが、アリスさんの場合はそれでも美しい音とフレージングが伝わって来る感じがする。むしろすぐ近くで聴いているからこそ、彼女のディテールまで繊細にコントロールされたキメ細かな音楽作りを肌で感じることができるのだと思う。ホールの響きに惑わされることがないからだ。カデンツァでは、それに自由度が加算される。
 第2楽章は緩徐楽章。ホ長調に転じ、憧れをいっぱい乗せた主題が描かれて行く。抒情的で極めて人間的な情感に溢れている。中間部は混沌としていて、再び迷いの中に彷徨い込んでしまう。このような穏やかで美しい音楽は、ウルバンスキさんとエルプフィルが描き出すのにピッタリかもしれない。またアリス=紗良・オットさんの透明感のあるピアノも曇りのない情感を描き出し、作曲者の感情を素直に表現できていたように思う。
 第3楽章はロンド。ハ短調に戻り、軽快さを伴いつつ悲哀の込められたロンド主題が回る。アリスさんのピアノには推進力があって前へ前へと進んで行きたがるが、オーケストラ側はリズムの立ち上がりがキリッとしないため、低音楽器や打楽器がちょっと遅れて聞こえて来るイメージだった。それでもアリスさんは上機嫌でノリの良い弾きっぷり。時折鼻歌が聞こえて来るのも最前列ならではの楽しみである。ダイナミックに弾むカデンツァを経てコーダはハ長調に転じていて、明るく終わるので鮮やかさが増す印象だ。

 アリスさんのソロ・アンコールは、グリーグの組曲『ペールギュント』より「山の魔王の宮殿にて」。だんだん速く、段々強くなっていき、最後は超絶技巧の嵐となる。今日は古典派のベートーヴェンに対してロマン派の超絶技巧を対比させた選曲も面白いし、何より強烈なインパクトのある演奏で、会場の聴衆を圧倒した。

 やはり改めて思うのだが、アリス=紗良・オットというピアニストは、タダモンじゃない。ただの美人ピアニストでもなければ、ただのヴィルトゥオーゾというわけでもない。彼女の最大の魅力は、国際的なスケール感といかにも日本人的な繊細で緻密な表現力。伸び伸びとした自由な感性、瑞々しい情感。そして豊かに歌う音楽性だ。今日のところはウルバンスキさんやエルプフィルよりも遥かに強い存在感を発揮していたと思う。持っているオーラがオーケストラを圧倒するくらいに強かった。

 プログラムの後半は、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」。
 まず冒頭の誰でも知っている「序奏」は、出だしこそトランペットが平板な印象があったがすぐに持ち直して金管と打楽器とオルガンが織り成す壮麗な世界は、重厚にして豊潤な響きだ。だかやはり細部は合っていない。流れで音楽を作っていく。
 「背後の世界を説く人々について」は途中から現れる弦楽のコラールが柔らかく、そして分厚いアンサンブルを美しく聴かせ、この辺はいかにもシュトラウスといった感じが出ている。
 「おおいなる憧れについて」ではオルガンとオーケストラが対話するように、そしてやがて全合奏へと盛り上がって行くが、細かく刻まれる低弦がモゴモゴとして聴きづらいのは、アンサンブルのバラつきによるものか、あるいはホールの音響によるものか(もっとも最前列では音響も何もあったものではないが)。
 「歓喜と情熱について」はほぼオーケストラがフル稼働する。新しい動機が展開していくが、混沌の中から美しい旋律が浮かび上がって来るあたりのロマンティックな響きは、やはりドイツのオーケストラという感じだ。
 「墓の歌」では弦楽の各パートのトップが弦楽四重奏のようにオーケストラから分離してきて、こういう時こそは最前列で聴いていて良かったと思うところ。
 「学問について」は現代音楽わ先取りしたような12音による不許和音が不気味で重々しい。終盤には管楽器の各パートが入り乱れるが、ここはあまり色彩的な感じではなく、全体が渋い調子で同じ色調に整っている。こういうところはオーケストラの巧いところだと思う。
 「快癒しつつある者」はこれまで出て来た様々な動機が入り乱れて展開する。ソナタ形式で言えば展開部の後半の盛り上がるところ。
 「舞踏の歌」は全体の再現部に当たり、動機が再現されるが、ここでいうところの舞踏はワルツで現れる。独奏ヴァイオリンが甘く官能的な旋律を奏で、濃厚でロマン的なアンサンブルの展開は、後の『ばらの騎士』のワルツを彷彿とさせる。管楽器の書くパートにもソロが入るが、中でもホルンはふわりとした柔らかさがあって巧かった。最後のクライマックスに向けて盛り上がって行く様は、極めてシンフォニックな響きであるが、純音楽たる交響曲とは違う、標題音楽ならではの劇的なものがある(オペラに近いイメージ)。 
 「夜にさすらう者の歌」は沈静化していくコーダに相当する。独奏ヴァイオリンが甘く美しい。最後の方で、木管群の弱音と低弦のピツィカートの繰り返してデクレシェンドしていくところは難しいところだ。
 全体の印象としては、やはり、柔らかくしなやかで、エレガントという感じ。迸るようなエネルギーは感じられない代わりに流麗である。それが良いのかどうかは解らないが、何となくではあるが、音楽全体がドイツ語の語法で語られていないような印象であった。かといって何語だったのかと問われても困るのだが・・・・。

 アンコールはワーグナーの『ローエングリン』より「第3幕への前奏曲」。派手な曲で盛りあげ感動的な印象を残すには最適な選曲だ。

 今回のエルプフィルのツアーは、ちょっと期待していたものとは違っていた。ドイツのオーケストラだからドイツっぽい演奏と音を期待していたのは、こちらの勝手な思い入れなのかもしれない。新しい世代の指揮者たちは、新しい音楽を創り出していく。アリスさんの自由で瑞々しい感性やウルバンスキさんの柔らかくてしなやかな音楽を聴いていると、コチラの方が過去の亡霊に縛られてしまっているような気がしてきた。頑なにならずに心を開いて、新しい音楽を受け入れることも必要かもしれない。

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3/8(水)都民芸術フェス/東京交響楽団/上森祥平の「ドヴォコン」と山下一史の「展覧会の絵」

2017年03月08日 23時30分00秒 | クラシックコンサート
2017 都民芸術フェスティバル 参加公演
オーケストラ・シリーズ No.48 東京交響楽団


2017年3月8日(水)19:00〜 東京芸術劇場コンサートホール B席 1階 A列 18番 2,800円
指 揮:山下一史
チェロ:上森祥平*
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
【曲目】
メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」作品26
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104*
《アンコール》
 ブリテン:無伴奏チェロ組曲 第1番 作品72より「無窮動」*
ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲「展覧会の絵」
《アンコール》
 ラヴェル:組曲『クープランの墓』より「リゴドーン」

 「2017 都民芸術フェスティバル」のオーケストラシリーズもいよいよ終盤となり、本日は東京交響楽団のコンサートである。指揮は山下一史さん。情熱的かつドラマティックな音楽作りを展開する人だ。

 1曲目はメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」。小舟が波間に揺れるイメージが描かれ、やがてゴツゴツとした岩場が見えてくるような演奏になる。東響の音は美しいが繊細過ぎるところが難であるが、山下さんの手によりダイナミックレンジを広げて劇的な描き方となった。金管と打楽器が強めにしてメリハリを出すが、弦楽がやや弱めなのが残念。

 2曲目はドヴォルザークの「チェロ協奏曲」。ソリストは上森祥平さん。この人のチェロを聴くのは初めてだと思う。まずオーケストラから始まるが、なかなかダイナミックに引き締まっていて、リズム感も良い感じにオーケストラがドライブされていく。第2主題のホルンも牧歌的な穏やかさを描き出す。上森さんのチェロが入って来る。音はキリッと立ち上がるがゆるりとしたテンポでレガートを効かせる。主部に入るとテンポを速めてキリキリと音を刻んでいく感じだ。第2主題はこれでもかとばかりに大きな節回しで歌わせる。最前列の指揮者の真後ろという位置で聴いている割りには、チェロの音量が地位サロに感じた。3階の後方席まで届いていただろうか。
 第2楽章は東響の木管群の巧さが際立っていた。それを山下さんが抒情性たっぷりに歌わせて行く。そこにチェロが絡みつくように入って来る。その色調はちょっと暗めで渋い質感を醸し出す。この翳りのある音色が長調に転じてもなかなか良い雰囲気を作り出していた。土臭い感傷(ホームシックのような・・・)の表現には合う音色だ。
 第3楽章に入ると、ちょっと暗めの音色は良いが、全体的に少々まったりとしていてインパクトが弱い感じ。どうしても線が細い感じになってしまい、オーケストラ側がメリハリを強く打ち出そうとするところとの間に、ギャップを感じた。だからフィナーレを力強く締めくくろうとしても肝心のチェロが少し大人しいように感じられてしまうのである。

 上森さんのソロ・アンコールは、ブリテンの「無伴奏チェロ組曲 第1番」より「無窮動」。その名の通り細かく刻まれた音形が無窮動敵に上下に駆け巡る。確かな技巧を感じさせる演奏だが、やはり音量が小さいような・・・。

 プログラムの後半はムソルグスキー/ラヴェル編で、組曲「展覧会の絵」。この曲を演奏させると、東響の木管や金管の持つ質感の高い色彩感が光る。山下さんの指揮では、全体的に主題旋律を大きく歌わせるのは良いが、少々まったりとレガートがかかり、いささかキレが甘く感じるような流れを作っている。冒頭のプロムナードのトランペットや、次のホルンもレガートの効いた演奏で、もちろんそれはそういう狙いで演奏しているので私などがとやかく言うべきではないが、個人的な好みでは、この曲はもう少し縦の線を明瞭にキリッとさせる方が良いと思う。
 しかし色彩的な美しさという点では素晴らしい。オーボエを中心に木管の質感が極めて高いため、原色に近い色彩イメージが湧いてくる。実に絵画的な表現になっていると思う。
 一方で弦楽に力感が不足気味なのは東響の特徴かもしれない。ヴァイオリンとヴィオラが線が細く、管楽器に負けてしまう。音色は透明感があってとても美しいだけに残念なところだ。最後の「キエフの大門」も美しいアンサンブルで聴かせてくれるのだが、壮大なイメージがなかなか湧いて来ない。やはり金管と打楽器が鳴っても弦楽の音量が足らないので、全体にエネルギー不足な感が否めないのである。

 アンコールはフランスものの流れで、ラヴェルの組曲『クープランの墓』より「リゴドーン」。このようにパワーを必要としない曲に関しては、東響は実に上手い。まさに絵画的な色彩感に溢れている。描かれる景色の空気までがリアリティを持っているような演奏である。

 今日の東響の演奏は、とても色彩的で美しく、素敵なコンサートになっていたのだが、ちょっと「もの足りない感」が残ってしまった。

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3/8(水)東京文化会館モーニング/白井菜々子のコントラバスは柔らかくしなやかで躍動的

2017年03月08日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
3/8(水)東京文化会館モーニング/白井菜々子のコントラバスは柔らかくしなやかで躍動的

東京文化会館 モーニングコンサート Vol.103 白井菜々子(コントラバス)

2017年3月8日(水)11:00〜 東京文化会館・小ホール 自由席 A列 33番 500円
コントラバス:白井菜々子 *第13回東京音楽コンクール弦楽部門第3位
ピアノ:山崎早登美
【曲目】
エルガー:愛の挨拶 作品12
シューベルト:アルペッジョーネ・ソナタ イ短調 D.821より 第1楽章
モンティ:チャルダッシュ
ボッテジーニ:コントラバス協奏曲 第2番 ロ短調
ボッテジーニ:グランド・アレグロ 「メンデルスゾーン風協奏曲」
《アンコール》
 ボッテジーニ:エレジー 第1番 ニ長調

 東京文化会館の「モーニングコンサート」シリーズは、小ホール/自由席/500円で平日の午前11時からの60分のコンサート。東京音楽コンクールの入賞者たちによるリサイタルなので、若手の音楽家たちに演奏の機会を提供してきた企画である。
 今回はコントラバスの白井菜々子さんのリサイタルである。白井さんは2015年の「第13回東京音楽コンクール」の弦楽部門で第3位を獲得した。コントラバス奏者が参加できるコンクールも少ないので、弦楽部門がある東京音コンで並み居るヴァイオリンやチェロの精鋭たちを抑えて第3位に入賞したのは快挙といえる素晴らしいことだ。私はその時、第2次予選と本選で彼女の演奏を聴いていて、すっかり魅了されてしまった。その後、彼女のコントラバスを聴ける機会がやっと訪れたのである。今日は午前中にもかかわらず仕事をコントロールして、随分前から楽しみにしていたのであった。そもそもコントラバスのリサイタルというのも珍しくてなかなか聴く機会も少ないはず。クラシック音楽通の人でも聴いたことがないという人がほとんどではないだろうか。私がコントラバスに拘るのは、昔少しだけ弾いていたことがあるからで、他の楽器よりはコントラバスのことを多少知っている(?)からなのである。ま、それはどうでも良いことだが・・・・。
 ちなみに今日は電車が遅れて会場に到着するのが大幅に遅れてしまったため、良い席が取れなかった。そのため、1列目ではあるが右ブロック。ピアノとフロン台の間にちょうど奏者と楽器が見える位置なので、まあまあといったところ。白井さんは4弦のコントラバスを使用しているが、エンドピンを短くして、低い位置に楽器を置き、立って演奏する。その際、左足のつま先をヒョイと上げて、楽器を支える独特のスタイル(ウィーンで教わったのだとか)を採るのだが、右側の席位置からはそれがよく見えた。

 さて60分のリサイタルを開くにあたっても、上記の曲目を見れば分かるように、コントラバスはソロで弾けるような曲が極端に少ないのである。エルガーの「愛の挨拶」は誰でも知っている名曲だが、ピアノ曲またはヴァイオリンとピアノのための曲として知られている。シューベルトの「アルペッジョーネ・ソナタ」はアルペッジョーネという現在はほとんど存在しない楽器のために書かれた曲で、今ではヴィオラやチェロで演奏されることがある(ヴィオラもソロの曲が少ないので・・・・)。モンティの「チャルダッシュ」は元々はマンドリンのために書かれた曲だが現在ではヴァイオリンの超絶技巧曲の定番になっていて、時々チェロでの演奏を聴くことがある。
 ということで、コントラバスのために書かれた曲は、ボッテジーニだけ。この作曲家の名前もコントラバスに関心のない人にはほとんど知られていないと思われる。ジョヴァンニ・ボッテジーニ(1821〜1889)はイタリアの作曲家であり、「コントラバスのパガニーニ」と呼ばれるほどのコントラバスの名手であった。そのため、コントラバスのための単独の曲を数多く残したが、現在のコントラバス奏者にとっては唯一無二の作曲家といえるほどの存在である。ロマン派時代の人だがイタリア出身ということもあって、その曲相は伸びやかで歌謡的な旋律が美しい。コントラバスのことを知り尽くしているので、音程を聴き取りにくい低音域を巧みに使いつつ、チェロの音域と重なる中〜高音域ではチェロよりも太い音色を巧く使った曲作りをしている。

 白井さんは、15歳からコントラバスを始めたという。この楽器を子供の時からやる人はいない。楽器が大きすぎるからだ(小さな分数楽器もあることはあるらしいが・・・)。一般的には、吹奏楽の弦バスとして始める人が多いようである。才能というのは恐ろしいもので、15歳から始めた白井さんは、2008年に桐朋学園大学に進学し、2010年から4年間はウィーン国立音楽大学に留学、2014年に帰国して現在は東京音楽大学大学院修士課程に特別特待奨学生として在籍中とのことだ。私も同じ15歳の時にコントラバスを始めたクチだが、才能のカケラもなく、間もなく引退・・・・。


 さて前置きが大変長くなってしまった。本日の演奏についてレビューしよう。
 1曲目はエルガーの「愛の挨拶」。チェロでの演奏は時々聴くことがあるが、その聴き慣れた曲もコントラバスになると雰囲気が違う。1オクターブ低くお腹にビリリと伝わって来る独特の音は、伴奏ピアノの高音域よりもかなり低く離れていて、ちょっと不思議な音楽空間を創り出す。白井さんの演奏は暖色系の明るい音色で、とても柔らかく滑らか。ゴツゴツしたコントラバスのイメージからはかけ離れた優しい雰囲気が意外であり同時に嬉しかった。

 2曲目はシューベルトの「アルペッジョーネ・ソナタ」の第1楽章。前述のように現在はアルペッジョーネという楽器はほとんど見ることができない。シューベルトの時代の19世紀に誕生したこの楽器は、チェロとギターを掛け合わせたような構造で、弓で弾く擦弦楽器だが6弦で、ギターのように指板にフレットがある。ごく短期間で廃れてしまったため、アルペッジョーネ用の楽曲はごく少ないが、シューベルトのこの曲は親しまれ続けて、現在でもヴィオラやチェロで演奏されることがあり、昨年にはヴィオラの安達真理さんがリサイタルで演奏するのを聴いた
 哀愁を帯びた主題は1度聴いただけで耳に残るほどの親しみやすい旋律。コントラバスで弾く場合はおそらくチェロ用の楽譜を使うのだろうが、コントラバスとしては高音域が多くなり、難しそうだ。白井さんの演奏はどの音域でも極めて正確な音程で、あくまで滑らかに旋律を歌わせる。やはりあまり聴き慣れない低音域での主旋律の動きは、かなり独特の世界を創り出す。低音域で主旋律が大きく歌うというのはなかなか聴く機会がないので新鮮な響きに聞こえる。また速いパッセージでも明瞭な音でとても鮮やかな印象を描き出していた。抒情的な表現も柔らかくふくよかである。男性的な楽器と思われがちなコントラバスだが、こうした女性的で柔らかな演奏はとても新鮮に思えた。

 3曲目はモンティの「チャルダッシュ」。ヴァイオリンではよく聴くことがあるが、たまにチェロでの演奏に出会うこともある。しかしこの曲をヴァイオリンのようなテンポでチェロで弾くとかなり技巧的に難しくなってくる。弦が長くなるために運指の動きが大きくなってしまうためだ。それをさらに弦の長いコントラバスで弾くとなると・・・・。
 ところが白井さんは難なく弾いてしまう。さすがにテンポはヴァイオリンよりは遅めになるし、音域が低いために派手さがなくなってしまうものの、演奏そのものは高速パッセージでも正確で、リズム感も流れも良い。超絶技巧といってしまうのは簡単だが、集中力と体力も含んでのことだ。そう、コントラバスは疲れるのだ。

 つづいていよいよボッテジーニの曲が登場。「コントラバス協奏曲 第2番」である。この曲は、彼女が東京音コンの本選会で、オーケストラと演奏しているのを聴いている。要するにコントラバス界では名曲中の名曲なのである。15分くらいの曲だが3楽章構成でカデンツァもあり、形式的にも本格的な協奏曲になっている。
 第1楽章は第1主題がパガニーニらと通じるイタリアならではの歌謡的な旋律だ。さすがにボッテジーニの曲は、コントラバスの機能性を完全に網羅し、全音域を見事に使って華やかで技巧的、そして旋律が美しい。とても魅力的な曲を作っている。白井さんの演奏は、陽気なリズムに乗り、柔らかくしなやかな表現力、温かみのある音色で、この曲の魅力を引き出していると思う。カデンツァもお見事。
 第2楽章はさらに歌謡的で、大らかに、抒情的な歌う。とても美しい旋律であり、逆のヴァイオリン用に編曲すれば人気が出そうだ。主旋律はチェロと同じような音域のため聴き取りやすく、装飾的なパッセージが低音部から駆け上がる時のズシンとくる重みはコントラバスならでは。幅というか、奥行きを感じさせる音だ。
 第3楽章も主題は歌謡的でリズム感が躍動する。この曲の良いところは、独奏コントラバスとオーケストラ(本日はピアノ)が交互に対話するように展開していくので、聴き取りにくい低音域のコントラバスであっても、くっきりと明瞭に聞こえるように作られているところだ。もちろん白井さんの演奏は素晴らしく、しなやかで躍動的で、コントラバスでこれほど豊かな音楽性を発揮できること自体が文句なしのBrava!!である。

 最後は、ボッテジーニの「グランド・アレグロ」と呼ばれる曲で別名「メンデルスゾーン風協奏曲」。これは有名なメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲をモチーフにして、主題を違う旋律に置き換え、同じような構成の曲に仕上げたというもの。聴いているとナルホドというところが随所に感じられて面白い。曲相が歌謡的なイタリア音楽からドイツ風の器楽的な造形になっているところも楽しい。オーケストラ版で聴くとより分かりやすいはずだ。
 いかにもヴァイオリン協奏曲のような華麗で華やかな技巧を披露するように作られているが、白井さんの演奏技術の高さがよくわかる。ややドイツ風のイメージになっても、伸びやかで暖色系の音色に変わりはなく、リズムにのってよく歌わせる。ゴツゴツしたイメージがなく、明るく軽快で屈託がないところが、とても魅力的な演奏である。

 アンコールは、やはりボッテジーニで「エレジー 第1番」。これがまたとても素敵な曲。エレジー(悲歌)とは思えないほど、ロマンティックな憧れがいっぱいの曲なのである。ボッテジーニはコントラバスのことを知り尽くしているだけでなく、コントラバスが大好きだったということが、そんな思いがいっぱい詰まった曲に聞こえる。そういう意味では、本日の白井さんの演奏の中で、一番ロマンティックで、旋律が豊かに歌っていたような気がする。素敵な演奏であった。

 終演後、若手の演奏家のコンサートでは、たいていロビーに出て来てくださるので、タイミングをみてご挨拶を交わす。コントラバス奏者はリサイタルや協奏曲の機会が本当に少ないので、こうして交流の場を持てるのも次はいつのことになるか分からないだけに、貴重な時間であった。機会があれば、今後ももちろん聴き続けたいアーティストのリストの上位の方にランク・インしたことは間違いない。まだ聴いたことがない人は「えー、コントラバスなんて」などと言わずに、是非聴いて欲しい。必ず新しい発見があるはずである。

 さて「モーニングコンサート」シリーズは、実は今回が最終回。4月からは「上野deクラシック」というシリーズにリニューアルされる予定になっている。変わる点は、モーニングだけでなく、マチネーやソワレで開催されることもあり、チケット価格も500円均一だったものが内容や出演者によって500円〜1500円に設定されること。発表されているプログラムの中にも、いくつか聴きたいものがある。ただ、開催時間帯が変わったとしても、自由席には違いないので、早く行って並ばなければならないところが・・・・ツライ。

 ついでだからコントラバスに関するミニ知識を。
 コントラバスは、単独で演奏される楽器とはほとんど認識されておらず、オーケストラや弦楽合奏の中で弦楽5部の最低音部を受け持っていることは知られている。その形状から、ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→コントラバスという風に段々大きくなり音域が下がっていくので、ヴァイオリンの仲間(ヴァイオリン属という)と思われがちだが、実はコントラバスだけは現在はほとんど使われなくなったヴィオール属と呼ばれるヴィオラ・ダ・ガンバの仲間に起原があり、現代に残る特徴としては、胴がなで肩でヴァイオリン属とはよく見ると形が違うことや、調弦が4度(ヴァイオリン属は5度調弦)であること、弓の持ち方がジャーマン・ボウ(ヴァイオリン属はフレンチ・ボウ)であること、などがある。ヴィオラ・ダ・ガンバは竿の指板にフレットがあったが、コントラバスにはない。これはヴァイオリン属との合奏に応じてチェロに近づいていったからだろうか。現代のコントラバスには4弦の楽器と5弦の楽器があるが、その調弦は、高い方からG-D-A-Eの4度調弦で、5弦の楽器では低い方にC弦が加わるのが一般的である。これにより、チェロの最低音Cよりも1オクターヴ低い音が出せるようになる。記譜はチェロと同じへ音譜表だが、実際には楽譜よりも1オクターブ低い音が出る。コントラバスはその名の通り、本来のバスの音域であるチェロよりも倍低いのである(英語ではダブルベースとも呼ばれている)。

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3/7(火)NDRエルプフィル/やや不満が残る庄司紗矢香のプロコVn協奏曲1番とウルバンスキの「新世界より」

2017年03月07日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東芝グランドコンサート2017
NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団


2017年3月7日(火)19:00〜 Bunkamuraオーチャードホール A席 1階 6列 19番 13,000円
指 揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
ヴァイオリン:庄司紗矢香*
管弦楽:NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)
【曲目】
グリンカ:歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品19*
《アンコール》
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調 BWV1003より 第3楽章「アンダンテ」*
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界より」
《アンコール》
 ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 第1集 作品46より 第8番 ト短調

 毎年恒例の「東芝グランドコンサート」、今年はNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団である(旧ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)。率いてくるのは2015年9月から首席客演指揮者のポストに就いているクシシュトフ・ウルバンスキさん。彼は2013年4月から2016年6月まで東京交響楽団の首席客演指揮者を務めたことで日本でもすっかりお馴染みになっている指揮者だ。ポーランド出身の34歳。東響では東欧やロシアの作曲家を多く採り上げていた。日本のオーケストラにポストを持っていた人が海外のオーケストラのツアーを率いて来ても、何となく新鮮味に欠けるような気がしてしまうのは、その音楽的な傾向を知っているからだ。しかし彼が北ドイツのハンブルクにポストを得たということは、ドイツもののレパートリーが確実に評価されているということなのだろう。
 今回のエルプフィルの日本ツアーでは、本日3/7が初日で東京、3/8仙台、3/11名古屋、3/12川﨑、3/14福岡、3/15大阪というふうに合わせて6公演が予定されている。その内前半の3公演が本日と同じプログラム、後半の3公演は別プログラムで、ベートーヴェンやリヒャルト・シュトラウスなどのドイツものになっている(そちらは川﨑の公演にも行く予定なのでその際に詳しく伝えたい)。

 さてツアー初日の今日、会場はBunkamuraオーチャードホールである。サントリーホールが改修工事で使えないためか、外来オーケストラのみならず日本のオーケストラも会場探しに苦慮したところだ。オーチャードではいつもNHK交響楽団を聴いているが、基本的にはあまり行かないところなので、音響の傾向もあまり掴めていない。今日もいつものように最前列のセンター(ステージ拡張のため6列が最前列となる)。ステージが比較的高いので、音がアタマの上を飛んで行ってしまう感覚なので、ヴァイオリン協奏曲以外はあまり期待していなかった。

 さてエルプフィルは「ハンブルク北ドイツ放送交響楽団」が名称変更したもので、かつてのイメージは無骨で硬いというか渋いというか、そんな感じであったが、今日聴いてみると、これがまた随分とエレガントな音になっていた。ウルバンスキさんのちょっとクネクネしたしなやかさによるものなのか、オーケストラそのものが変わったのか。あるいはツアー初日で時差ボケも手伝っていたのか・・・・。

 1曲目の『ルスランとリュドミラ』序曲は、あまり体調が良くないときに演奏すべき曲ではないと思う。超高速のパッセージで始まる序奏から第1主題へと、オーケストラが目覚めていない。アンサンブルの縦の線が合っていないのでドタバタしているのに、それを気にしないで雰囲気で流している感じの演奏だ。そもそもウルバンスキさんは拍をしっかりと刻むような指揮ではないので、流れを重視するタイプだと思う。まあ、それでも元気いっぱい、躍動的でダイナミックな演奏であった。

 2曲目はプロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲 第1番」。ソリストはツアー前半の3公演を受け持つ庄司紗矢香さん。いつものような緊張感の張りつめたような演奏で曲が始まる。もともとちょっと捕らえどころのないような曲ではあるが、それは急-緩-急という普通の協奏曲の楽章構成ではなく、緩-急-緩という逆の構成になっていることや、ソナタ形式の楽章を持たないことなどが原因だと思われる。基本的には抒情的な曲想だがその中に先鋭的な先進性が含まれていることもある。
 庄司さんのヴァイオリンは、今回はとくに感じたのだが、音量があまり出ていない。オーケストラ側もかなり抑制的に寄り添わせていたが、全体的に繊細でやや力感に乏しく感じたものである。オーチャードホールは奥に細長いので、3階の後方席まで音が届いたかどうか心配になるくらい。この曲のソロ・ヴァイオリンは演奏の仕方によってはかなり多彩な音色で表現されるはずで、第1楽章のちょっと斜めに構えたようなロマンティシズムや第2楽章のおどけた諧謔性など、多様な演奏法が駆使されている。その点でも庄司さんのヴァイオリンは独特の緊張感を孕みつつ、多彩な表現を見事に演奏しているのだが、表現の幅が繊細すぎて、遠くまでは伝わらなかったのではなかろうか。私は最前列で聴いていてそう感じてしまった。
 庄司さんのソロ・アンコールは、バッハの「アンダンテ」。こちらは手慣れた感じの演奏ではあったがさすがに巧いものである。ただ、このオーチャードホールは天上がかなり高く音が大きく広がってしまうために、ヴァイオリンには向いていないホールだとつくづく感じた次第。

 後半はドヴォルサークの交響曲「新世界より」。やはりここでも感じたのは、オーケストラが目覚めていない感じだった。やはり初日だけあって時差の問題がまだ解消していなかったのかも。序奏の段階から、管楽器の縦の線がかなりバラけてしまっている。何もピタリと合わせれば良いということではないが、何だか緊張感が薄れていってしまう。だから全体に緩〜い感じ。つまりキレがないのである。これはウルバンスキさんの持ち味でもあって、音楽の流れを重視するタイプの音楽作りの結果でもあるようだ。とにかく全体がまったりとした音楽なのである。だがそれでは旋律が豊かに歌っていたかというと、必ずしもそうではなかったような気がして・・・・。
 逆の見方をすると、音楽全体がしなやかでとても上品に聞こえる。ドヴォルザークの持つ土臭いところがなく、美しくエレガントなのである。後は好みの問題になるだろう。
 余談になるが、第2楽章の「家路」のテーマのコールアングレのソロの部分で、かなり大きな咳をしている人がいた。ホール全体の人が耳を澄ませて聴き入る部分だけに、あまりにも無神経すぎる。我慢することができなかったのだろうか。
 アンコールの「スラブ舞曲 第8番」もオーケストラがバラけていて混沌とした音楽になっていたように感じた。

 というわけで、本日のエルプフィルは、あくまで個人的な見解だが、あまり見るべきところがなく不満か゛の凝ってしまった。ウルバンスキさんで聴くなら東京交響楽団の方がよほど上手いと思う。5日後の3/12にミューザ川崎でもう一度聴くことになっているので、それまでに時差ボケを解消して(?)素敵な演奏を聴かせてくれることを期待したい。

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3/5(日)CHANEL Pygmalion Days/毛利文香/たった1時間でも「クロイツェル」メインの重量級プログラム

2017年03月05日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
CHANEL Pygmalion Days/毛利文香

2017年3月5日(日)17:00〜 CHANEL NEXUS HALL 自由席 3列左ブロック 無料招待
ヴァイオリン:毛利文香
ピアノ:原嶋 唯
【曲目】
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 9番 イ長調 作品47「クロイツェル」
ラヴェル:ツィガーヌ
《アンコール》
 フォーレ:夢のあとに

 「CHANEL Pygmalion Days」の2017シーズンが始まっている。今年のアーティストは、ヴァイオリンの毛利文香さん、チェロの笹沼 樹さん、ソプラノの嘉目真木子さん、ピアノの務川慧悟さん、小野田有紗さんの5名。毛利さんはこれまでにもけっこう聴く機会があったが、室内楽が多く、協奏曲は一昨年2015年12月の東京交響楽団の「第九と四季」を最前列で聴いているが、リサイタルはどういうわけかタイミングが合わず聴いたことがなかった。チケットを取っていたのに行けなかったこともあるくらいである。本日は「CHANEL Pygmalion Days」の毛利さんの今期第1回であり、私も初めてリサイタルを聴くのでとても楽しみであった。

 この機会に毛利さんについて簡単に紹介しておこう。彼女は、桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマ・コース、および洗足学園音楽大学アンサンブルアカデミーを修了しているが、大学は音大ではなく現在、慶應義塾大学文学部在学中という才媛でもある(ただし休学しているらしい)。2015年9月よりドイツの弦楽器が専門のクロンベルク・アカデミーに留学中。2015年の第54回パガニーニ国際ヴァイオリンコンクールで第2位となったが、エリザベート王妃国際音楽コンクールは第6位でちょっと惜しかった。いずれにしても素晴らしい才能の持ち主であることは間違いない。


毛利文香さん 〜CHANELのメイクはいつも女性を美しく輝かせる〜

 ピアノは原嶋 唯さん。彼女は昨年7月のヴィオラの田原綾子さんとのデュオ・リサイタルで知遇を得た。桐朋学園大学を今年卒業するとのこと。この年代の若手には世界に飛び出していって研鑽を積んだり活躍している逸材がいっぱいいる。彼女たちももちろん日本の音楽界を背負っていく人材なのである。

 さて、本日のプログラムは、ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」とラヴェルの「ツィガーヌ」の2曲。「CHANEL Pygmalion Days」はアーティストが全6回のリサイタルのプログラムを自由に組めるので、本日のプログラムには毛利さんの決意のようなものが感じられる。とくに「クロイツェル」は、ロマン派以降の超絶技巧曲などとはタイプは異なるが、ヴァイオリン・ソナタの傑作中の傑作で、私もこの曲が音楽史上の最高傑作だと信じている。要するにベートーヴェンそのもの。うっかり触ると怪我をするくらいに、抜き身のような鋭さがあり、ベートーヴェンの魂がむき出しになっているような曲なのである。だからこの曲に挑戦するということは、ベートーヴェンに対して真っ向から勝負を挑むというか、まあ戦いではないので勝負ということはないとしても、本気の度合いが計られることは確か。少なくとも、聴いている側も「クロイツェル」がちゃんと弾けるかどうかが、そのアーティストの試金石になると、捉えてしまうのである。
 そしてもう一つの問題点は、これは条件面のことだが、CHANEL NEXUS HALLの音響が味方にならないということ。このホールは音が響かず、残響がないに近い。ピアノならペダルの使い方で工夫ができるが、擦弦楽器のヴァイオリンでは、弓を止めた瞬間に音がピタッと消えてしまうのである。このようなデッドな音響空間においては、演奏家が作る音が丸裸にされて聴き手に直接届く。それがサロン・コンサートの醍醐味だという人もいるが、よほど上手くないと、あるいは集中を欠くと、アラが目立ち聴き手に心地よい音楽を届けられなくなってしまう。

 なぜ敢えてこのような厳しい言い方をしているのかというと、それ以上に毛利さんの演奏にチカラがあったからだ。
 第1楽章は序奏からヴァイオリンのピュアな音が伝わってくる。響かないというのはこういうことか、というくらいに重音の2つの音がくっきり聞こえ、そのバランスの細やかなニュアンスまで手に取るように分かる。ソナタ形式の主部に入ると立ち上がりの鋭いタッチで主題を力強く打ち出してくる。それでもアグレッシブになりすぎないところが良い。第2主題は優しく歌わせるが緊張感を保っている。続く経過句には力感が満ち、推進力がグッと増してくる。提示部をリピートして、楽曲としての造形もしっかりと構築していく。展開部はメリハリを効かせて緊張感を高く保っち、再現部は第1主題、第2主題ともきっちり丁寧に再現する。激しい曲相の経過句を過ぎて、コーダの最後は魂の叫びを叩き付けるようなフィニッシュだった。
 第2楽章は変奏曲形式の緩徐楽章。主題の提示はAndanteにしてはやや速めのテンポだろうか。抒情的な主題をゆったりと歌わせるというタイプの演奏ではなく、淡々とした造形の中によく聴くと細やかなニュアンスを忍ばせ、さりげなく彩りに深みを与えている。第1変奏はピアノがメインに活躍。第2変奏は快調なテンポに乗せてメリハリを効かせ、立ち上がりのキリッとしたボウイングで聴く者に鋭く迫ってくる。短調に転じる第3変奏は悩ましげな音楽の中に強めの主張を込め、聴く者を休ませない。第4変奏はピツィカートと弓の対比を美しい音色で描き出してくる。高音域の旋律がまさにピュアな音で繊細にして優美、それでいて緊張感の高い演奏で、絶妙の情感を描き出していた。
 第3楽章はPresto、ソナタ形式のタランテラ。細かな音形が踊るような第1主題は弓が弾むよう。細かく刻まれる速いパッセージの経過句は、低音部では激しく感情的な表現にもなり、高音域では高い緊張を生み出す。技術的にはダイナミックレンジも広く、音色の変化も多彩で、表情が目まぐるしく変わるように、感情的な表現力も幅か広い。フィニッシュは圧倒的な推進力で弾ききった。この楽章は技巧的な面に意識を取られがちだが、むしろ情感の表現の多彩さが、毛利さんのスケールの大きさを感じさせた。

 短い休憩を挟んで後半はラヴェルの「ツィガーヌ」。こちらはこちらで前半は完全に無伴奏のソロが延々と続く。この響かない環境での無伴奏というのもけっこうキツイものがありそうだが、毛利さんの演奏は幾分緊張感が薄れてきたのか、ソロ部分から楽器が豊かに鳴り出したように感じた。ロマ系の熱い血潮が騒ぐような、強い情熱を訴えかけてくる。伴奏がないだけに自由度が高く、実に伸び伸びとしたスケール感の大きな演奏になった。高度な重音奏法による表現もアグレッシブだ。ピアノが入って来ると自由度は幾分制限されるようになるが、その分だけ音楽的な厚みが増して来て、それはそれで素晴らしい。随所に散りばめられているフラジオレットや左手のピツィカートなどの技巧的な部分も見事にこなしている。ピアノの描き出す不協和音のゴツゴツした音形と、一方ではフランス音楽らしいキラキラと煌めくような色彩感が交互に現れてきて、民俗調の音階を持つヴァイオリンとの間に多彩な音楽が展開している。「ツィガーヌ」は様々な要素がふんだんに盛り込まれたかなり難易度の高い曲だとは思うが、毛利さんも原嶋さんもそれぞれの持ち味を発揮した素敵な演奏であった。

 アンコールはぐっと雰囲気を変えてフォーレの「夢のあとに」。無限の空間を彷徨うような、息の長いロマン的な旋律を、毛利さんのヴァイオリンは非常にゆったりと、情感を込めて歌わせる。ここでの音色はあくまで優しく、絹の上を滑るように滑らかで美しい。「クロイツェル」と「ツィガーヌ」という精神性の強い曲の後だけに、昂ぶった神経をやさしく癒してくれる心憎い選曲であった。


 終演後は、毛利さんとお話しすることができた(原嶋さんとも)。実はきちんとお話しするのは初めてなのだが、何度も顔を合わせているので初めてという感じがしなかった。初めてのCHANELのリサイタルなので緊張したところもあったようだが、この会場の難しさも感じ取ったことだろう。お二人とも今年が大学を卒業する年次に当たり、この後は海外と日本を行ったり来たりしながら、さらなる研鑽と演奏活動の日々となる。今年度中にあと5回のリサイタルが予定されているので、留学の成果も含めて、こういったサロン会場での表現方法なども課題として、さらなる飛躍を期待できそうである。またCHANELで聴く機会があれば良いのだが・・・・。

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