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2/4(土)読響土曜マチネー/チャイコ・プロ/シモーネ・ラムスマのVn協奏曲とカンブルランの交響曲第5番の快演

2017年02月04日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第194回土曜マチネーシリーズ

2017年2月4日(土)14:00〜 東京芸術劇場コンサートホール S席 1階 A列 16番 4,851円(定期会員)
指揮:シルヴァン・カンブルラン
ヴァイオリン:シモーネ・ラムスマ*
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:長原幸太
【曲目】
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35*
《アンコール》
 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調 作品27-2より 第4楽章「復讐の女神たち」*
チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64

 読売日本交響楽団の「土曜マチネーシリーズ」を聴く。今月のマエストロは常任指揮者のシルヴァン・カンブルランさん。1月25日の「名曲シリーズ」ではデュカス、ドビュッシー、ショーソンを、1月31日の「定期演奏会」ではメシアンを採り上げるなど、お国もののフランス音楽づくしかと思いきや、「土曜マチネー」と「日曜マチネー」はチャイコフスキー・プログラムである。これはなかなかイメージしにくいものがあり、いったいどんな音楽になるのだろう、と期待と不安の入り交じった気分で出かけた。
 チャイコフスキー・プログラムといっても、前半はヴァイオリン協奏曲、後半は交響曲第5番という、至ってシンプルな名曲プログラムである。ヴァイオリン協奏曲のソリストはシモーネ・ラムスマさん。オランダ生まれ、長身の金髪美人である。国際級のヴァイオリニストであることは間違いなく、はたしてどのような演奏を聴かせてくれるのか、楽しみにしていた。
 ところで本日の東京芸術劇場コンサートホールは反響板を出していた。先日の「都民芸術フェスティバル」のNHK交響楽団の時は反響板を上げていたので、日を空けずに聴き比べることになったが、やはり反響板を使った方が、オーケストラの各パートの音が一塊にまとまるような気がする。長い残響音も、反響板がある方が自然な減衰となるようである。

 さてプログラムの前半は「ヴァイオリン協奏曲」。1年間に必ず数回は聴くくらいの、誰でも知っているような名曲。それだけに聴く方としては、評価をするための比較材料が多いので、演奏の良し悪しはけっこう正確に判断できると思う。何しろ、必ずコンクールの課題曲になるから音大生や音高生の演奏も聴く機会があるし、世界のトップ・アーティストも来日公演でよく演奏する。CDなどは無数に発売されているしテレビやFMの放送も多い。最近では動画サイトなどにも無数に素材がある。そのような状態だから、曲の出だしを聴くだけで、「ナルホド、これは・・・」と判断を下してしまいがちだ。悪いクセだとは思うのだが・・・・。
 そいういわけで、本日の演奏は・・・・私としてはラムスマさんに対してダメ出しをしたい。解釈や表現の問題ではない。技術的な問題が大部分を占めているのである。ラムスマさんのヴァイオリンは、何と言えば良いのだろう、音に艶がなく乾いた感じで、何だか練習用の安いヴァイオリンを弾いているような感じ。だから聴いていても殺伐としたイメージで、音楽以前に音が耳障りなので不快感が増してくる。こういうとはあまりない経験だ。また力感はたっぷりあり、弦に弓をぶつけていく感じで、エッジが立った擦過音が強く、音が硬く鋭い。緩やかなパッセージではレガートが効かずに尖ってしまうし、速いパッセージでは指が回っていないようで1音1音が短く流れがぎこちなくなる。曲全体のテンポもやや遅めになっていて、どうも音楽的にキレが悪い印象になってしまったが、これもカンブルランさんではなくラムスマさんの方に問題がありそうだ。今回の客演に対しては、あまり練習して来なかったのではないだろうか。演奏自体がギクシャクして旋律が歌わず、オーケストラとのアンサンブルも咬み合っていない。このようなレベルなら、わざわざ外国からソリストを呼ばなくとも、国内に遥かに優れた演奏をするヴァイオリニストは沢山いると思う。

 ところが、ラムスマさんのソロ・アンコールは意外に素晴らしかった。イザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番」の第4楽章だが、こちらの方は(オーケストラとのアンサンブルを気にしなくてよい分だけ)自由度が高く伸び伸びとしてして、音も艶やかで楽器がよく鳴っていた。鋭い弓捌きから来る硬質の音色と高音部を引っ張る艶っぽい音色が鮮やかな対比を見せたり、技巧的にも素晴らしいものがあった。やはりチャイコフスキーは練習不足だったのではないかと思わざるを得ない。

 一方、後半の「交響曲 第5番」は、久し振りに聴く名演であったといえる。音楽的な解釈は、カンブルランさんの独特なもので、ロシアっぽさは微塵も感じられなかったが、かといってフランス風の色彩感溢れるというわけでもなく、一風変わっていたが、強いて言うならば、読響の特性を知り尽くしたカンブルランさんだけに、オーケストラの機能性を最大限に引き出す音楽創りをしていたということだろう。ロシア的なものをあまり意識せずに、チャイコフスキーが書いたスコアから素直に美しい音楽を引き出して、抒情的な旋律は豊かに歌わせ、雄壮なリズムは躍動的に刻み、情感の詰まった和声を分厚く響かせていた。
 読響が久し振りにエンジン全開の演奏で、カンブルランさんの指揮に応えていた。なによりも素晴らしかったのは、コンサートマスターの長原幸太さんの率いる弦楽の迫力。立ち上がりの鋭いキレ味を見せ、瞬発力のある豊かな音量、分厚いアンサンブル、全員がひとつになったような一体感。このパワフルな弦楽があってこそ、金管が思いっきり鳴らせることができる。だから音が良い。ホルンもトランペットも晴れやかで輝かしく響き、トロンボーンは豪快に低音部を支える。そして木管はとてもカラフルだ。フルート、オーボエ、クラリネットがそれぞれの楽器の質感の高い音色を聴かせ、ファゴットはユーモラスに音を刻む。ティンパニも適度にダイナミックで、時に地響きのように轟くが、時にはやさしく軽快にリズムを叩き出す。とにかくすべてのパートが活き活きとしていた。読響の持っている本来のチカラを遺憾なく発揮した演奏だったと思う。
 ひとつだけ具体的なことを加えておくと、第2楽章のホルンのソロ。地平線まで続く広大なロシアの草原を、遠くの方から風に乗って聞こえて来る角笛のような、とでもいうべきか、静かな弱音で美しい旋律をゆったりと歌わせていた。この味わいは日本にオーケストラではあまり聴くことができない。雰囲気だけでなく高度な技術によるものだ。ロシアの一流オーケストラにも引けを取らない、素晴らしい演奏だったと思う。

 今日の読響は不思議な演奏会となった。前半の協奏曲をお目当てに聴きに行ったのに、ソチラの方はいささかガッカリ・ムードであった。そしてあまりアテにしていなかった後半の交響曲が途方もない快演。目から鱗が落ちる感じて、こんな解釈もあったのか、と感心してしまった。前半だけ聴いて帰ってしまった人がいたが、アラまぁ、もったいないことをしたものだ。まったく、コンサートは何が起こるか分からない。

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