Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

7/26(水)女神たちの協奏/服部百音のメンデルスゾーン/高木綾子&景山梨乃のモーツァルト/萩原麻未のチャイコフスキー/協奏曲の競演

2017年07月26日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
女神たちの協奏 with 東京交響楽団

2017年7月26日(水)14:00〜 神奈川県立音楽堂 指定 1階 1列 21番 5,850円(東響会員割引)
ヴァイオリン:服部百音*
フルート:高木綾子 **
ハープ:景山梨乃**
ピアノ:萩原麻未***
指 揮:大井剛史
管弦楽:東京交響楽団
【曲目】
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64*
モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299**
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ長調 作品23***

 神奈川芸術協会と東京交響楽団の主催により、実力・人気ともに今を時めく女性演奏家による協奏曲だけの単発の企画コンサート。久し振りの神奈川県立音楽堂である。ソリストと曲目は以下の通りである。
 プログラムの前半は、ヴァイオリンの服部百音さんによるメンデルゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」。続いて、フルートの高木綾子さんとハープの景山梨乃さんによるモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」。後半は萩原麻未さんによるチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」と、誰もが知っている名協奏曲ばかりのコンサートだ。指揮は大井剛史さん、管弦楽はもちろん東京交響楽団である。

 神奈川芸術協会と東京交響楽団の共催なら、本来はミューザ川崎シンフォニーホールあたりで開催すべきところなのだろうが、この時期、ミューザ川崎では恒例の「サマーフェスタミューザKAWASAKI」が連日開催されているので、割り込めなかったのかもしれない。今回の会場は「神奈川県立音楽堂」である。日本最古の公立の音楽専用ホール(1954年開館)で、音響に優れた「木のホール」として古くから知られているが、現在に至っては設計の古さを感じざるを得ない。現在の水準では、音響決して響きが良いとはいえないホールになってしまっている。しかもも1000席規模のサイズは、オーケストラの演奏には小さく(ステージも狭い)、室内楽やリサイタルの演奏にはやや大きすぎる。帯に短し襷に長し、といったところだ。
 今回のコンサートでは、協奏曲のみを3曲演奏ということで、オーケストラの編成もコンパクトになるため、ギリギリといった感が強かった。オーケストラがステージの際までいっぱいに並び、いつものように最前列の指揮者の真後ろの席を取ったら、奏者がかなり近い。ヴァイオリンとフルートとハープは良いが、ピアノはまともに聴ける位置関係ではないので早々に諦めることにした。

 平日の午後に設定されたコンサートではあったが、けっこうよく入っていて、ほぼ満席いう盛況ぶりであった。私も協奏曲好きなので、こういう企画コンサートは大変ありがたく拝聴することにしている。8月には恒例の、読売日本交響楽団による「3大協奏曲」があるが、曲目も本日と2曲は同じ。まあ、肩肘張った難解なコンサートではなく、お祭り気分で気楽に楽しめるから、この手のコンサートは夏休みシーズンにもピッタリである。

 1曲目はメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」。服部百音さんは、このところ教則に売り出し中という印象で、今年は音楽界で急に露出が増えている。私は、昨年2016年11月の紀尾井ホールでのリサイタルを聴いたのが初めてだったが、つい先日(7月18日)には同じ紀尾井ホールで「新日鉄住金音楽賞 受賞記念コンサート」を聴いているし、この後も9月3日には「スーパーソロイスツ」で東京フィルハーモニー交響楽団と共演する予定、11月16日には再び紀尾井ホールでリサイタル、12月28日・29日には東京交響楽団の「第九と四季」に出演が決まっている。もちろん東京以外でもコンサートの予定がある。
 これまでリサイタルを聴いた限りでは、17歳にして超絶技巧を前面に押し出して、ヴィルトゥオーソぶりを発揮しているが、いずれも席が離れていたため、微妙なニュアンスやナマの音色はまだ分からない。その意味では、今日が私にとっては初お目見えに近いのである。
 さて曲が始まればすぐに百音さんのヴァイオリンのナマの音が耳に飛び込んでくる。芯のはっきりとした、引き締まった音。ピーンと張り詰めたような緊張感があり、どちらかといえばソリッドな感じで、聴く者の心に鋭く斬り込んで来るタイプかもしれない。少なくとも癒し系ではない。高い緊張の中で痺れるような感動をもたらしてくれるタイプだ。
 第1楽章。楽曲の解釈はスタンダードで、現代の標準からみれば全体的にはやや遅めのテンポで、旋律をくっきりと明瞭に歌わせて行く。聴きようによっては老練ささえ感じられるほどの存在感もあり、若手に特有のエネルギーに満ちたフレッシュな演奏というのとも、ちょっと違う感じがする。妙に大人っぽいところがあるのだ。カデンツァのテクニカルな部分もピーンと張り詰めた空気感が漂い、会場の誰しもが固唾を呑んで聴き入る感じ。どちらにしても、人を惹き付ける魅力がいっぱいの演奏だと思う。
 第2楽章は緩徐楽章。感傷的な主題を今度はやや速めのテンポで、情感たっぷりに歌わせる。普通、この年代(まだ高校生)の天才達は、先生達に教わった通りにもっと器楽的な演奏をするのが一般的。しかし、百音さんは、人が呼吸しながら歌うような自然なフレーズ感が出来上がっていて、よく歌う。音楽的な豊かさが感じられる演奏だ。
 第3楽章のロンドは、やや速めのテンポで、今度はヴィルトゥオーソぶりをグイグイと押し出して来る。百音さんは基本的にテクニシャンで、この世代だけではなくあらゆる世代の中で見ても、器楽的な演奏技術はかなり高い。もちろん国際水準でもトップクラスといっても構わないくらいだ。主題の際立たせ方、経過句の流れ、メリハリのある音の立て方、リズム感など、いずれも素晴らしい。何より演奏に「華」があるのが良い。もちろん、まだまだ荒削りなところもあるし、主張が強い分だけオーケストラと合わなくなったり、問題がないわけではない。しかし、今の段階で彼女の演奏を批判するのはナンセンスだ。彼女の音楽的なキャリアは始まったばかり。今後のすべてが伸び白なのだ。溢れるばかりの才能と、それを磨くための努力の結晶が今日のとてもエキサイティングな演奏につながったわけだが、次回はまた違った何かを見せてくれるに違いない。

 2曲目はモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」。珍しい独奏楽器の組み合わせではあるが、名曲としてよく知られる曲でもあり、主にレコード・CDなどの録音で若い頃から親しんできた。ところが、コンサートでナマの演奏を聴くのは、意外に機会が少ないと思われる。現実的には、フルートもハープもあまり音量の出る楽器ではないので、大ホールなどでの演奏には適さないのかもしれない。実際に、フルート協奏曲もハープ協奏曲も少ない。この曲が作られた古典派時代では、管弦楽の規模が小さく、独奏楽器との音量のバランスが取れている。この時代のモーツァルトの協奏曲は、オーボエ2、ホルン2と弦楽のみで、打楽器もない。
 というわけで、今日の演奏は、小規模なホールでの演奏に適していたのだと思う。というのは、私は最前列で聴いていたので、フルートもハープもかなりリアルにナマの音を体験することができたが、後方の席でどのように聞こえていたのかは、うまく想像できないのである。
 高木さんのフルートは、第1楽章の出だしこそオーケストラに埋もれてしまって聞こえなかったのだが、すぐに豊かに鳴り出し、柔らか音色を維持しつつ、常に明瞭で鮮やかな演奏となっていた。対して景山さんのハープは、少々力みがあったのか、初めのうちは音にバラツキがあるように感じられた。ハープは10本の指を使って弦を弾くわけだが、力加減を均等にするのはちょっと難しそうだ。楽器の性格上、分散和音を弾くことが多いので、どうしてもそう感じてしまうのかもしれない。ハープを目の前で聴く機会はそう滅多にあるわけではないが、近くで聴くと低弦の振動がやたらに強く伝わって来るのである。
 二人のソリストによるフルートとハープは、結果的にはなかなか素敵な演奏になった。優雅さと華やかさが程良くミックスしてして、天上の音楽といった趣きである。第3楽章最後のカデンツァなどはもう最高。旋律楽器のフルートと和音楽器のハープが技巧的に絡み合い、至高の響きを聴かせてくれた。うまくかみ合いさえすれば、実力者のお二人だけに、もうホールの響きなどは関係なく、豊潤な音楽がホールに満ちていた。
 だがそれに対して、オーケストラがいささか精彩を欠いた印象であった。東京交響楽団は、もともと弦楽のアンサンブルはとても緻密で美しい(ただし音量は小さい)し、管楽器の上手さには定評がある。しかし今日の演奏は、終始各パートがバラバラな感じがして、どうもまとまらない。だから、モーツァルトらしい典雅な響きが全然聞こえてこない。ホールの響きがデッドであることも原因の1つかとは思ったが、先のメンデルスゾーンでは感じられなんったので、やはりこの曲の演奏に問題があったのではないかと思う。

 プログラムの後半は、チャイコフスキーの「ピアノ協奏 曲 第1番」。これはもう、萩原さんの独壇場で、ロシア的というよりは、彼女の特徴でもあるフランス風の色彩感豊かな、鮮やかなピアノが素晴らしかった・・・・と言いたい。多分、それで間違いないと思うのだが・・・・。
 実を言うと、萩原さんにはまったく問題はなく、私の席位置が失敗であったという話なのだ。まあ、いつもの通りの最前列ではあるが、今日の協奏曲3曲に対して、ヴァイオリンを優先したことは確かだった。ホールに来てみてこれはイカンと思ったのは、ステージが狭いためにオーケストラがステージの際ギリギリまで展開していて、しかも最前列の座席がステージに近い。従って後半のピアノ協奏曲では、ピアノが目の前に巨大な船のように浮かんで視界を遮っている状態。ピアノの塗装していない底が丸見えで、オーケストラの内、第2ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、管楽器も打楽器もほとんど見えない。覚悟はしていたが、これでははっきり言って音楽にならないのであった。ピアノの重低音と弦の振動の雑味のある轟音が上から振ってきて、耳をふさぎたいくらい煩いだけ。オーケストラの音がほとんど聞こえない・・・・。最前列でピアノ協奏曲をいつも聴いているが、今日ほど音響バランスがひどかったことはなかった。ホールの大きさと響きも影響しているようだ。・・・・というわけなので、演奏に関するコメントは差し控えたい。演奏終了後、盛んにBravo!が飛び交っていたので、きっと素晴らしい演奏だったのだろう。

 最後が変な形になってしまったが、協奏曲だけの企画コンサートは大歓迎。華やかだし、アクロバティックな妙技を楽しめる。純粋に芸術的というよりは、エンターテインメントの要素が強い。お堅いイメージのクラシック音楽の、ミーハー(失礼)な楽しみ方のひとつだと思う。

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