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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

6/11(日)ブリュッセル・フィル日本公演/フレッシュな煌めきのモナ=飛鳥・オット「皇帝」/ピュア・サウンドの「英雄」

2017年06月11日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演 2017
Brussels Philharmonic Orchestra / Japan Tour 2017


2017年6月11日(日)14:00〜 東京芸術劇場コンサートホール S席 1階 A列 17番 12,000円
指揮:ステファヌ・ドゥネーヴ
ピアノ:モナ=飛鳥・オット*
管弦楽:ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団
【曲目】
コネソン:フランメンシュリフト(炎の言葉)Flammenschrift
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」*
《アンコール》
 リスト:『ヴェネツィアとナポリ』より「カンツォーネ」*
ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
《アンコール》
 シューベルト:『ロザムンデ』より第3番

 ベルギーの名門オーケストラ、ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団が初来日し全国ツアーを行っている。9月9日の東京・武蔵野市を皮切りに、10日/名古屋市、11日/東京・池袋、12日/札幌市、14日/金沢市、15日/姫路市、16日/東広島市、17日/香川県観音寺市、18日福岡市と、ほとんど休みのないハードスケジュールのコンサート・ツアーが組まれている。本日は3日目に当たり、東京芸術劇場コンサートホールでのコンサートである。
 ツアーに持ってきた曲目は、全日に共通するのが現代の作曲家、コネソンの「炎の言葉」をオープニングに演奏する。その他は、プロコフィエフの「シンデレラ組曲 第1番」、ドビュッシーの交響詩「海」、ラヴェルの「ボレロ」と「ピアノ協奏曲 ト長調」、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲 第5番『皇帝』」と「交響曲 第3番『英雄』」。これらの組み合わせを変えて、A〜Dの4種類のプログラムを用意した。本日はBプログラムで、「炎の言葉」、「皇帝」、「英雄」の3曲という、なかなか聴き応えのあるプログラムになっている。
 ツアーを率いてくるのは、2015年9月から音楽監督を務めているステファヌ・ドゥネーヴさん。1971年生まれのフランス人指揮者であり、ヨーロッパやアメリカの名門オーケストラに次々と客演し、フィラデルフィア管弦楽団の首席客演指揮者を務めるなど、「ヨーロッパで最注目の指揮者」との評価を得ている期待の人だ。
 ツアーに同行するソリストはピアノのモナ=飛鳥・オットさん。アリス=紗良・オットさんの妹さんである。ドイツ人の父と日本人の母のもとにドイツのミュンヘンに生まれ、姉妹揃って天才美人ピアニストとして、専門家筋の評価も高く、活躍している。モナさんの演奏は過去に1度だけ聴いたことがある。2014年11月の「ザ・ライジング・スターズ《スーパーコンチェルト》」、今日と同じ芸劇で、1列目のひとつ隣の16番の席で、グリーグの「ピアノ協奏曲 イ短調」を聴いた。ちょっとクセのある面白い演奏だったと記憶している。2年半ぶりとなるモナさんの来日は、何故かドキドキ・ハラハラさせるものがある。

 オーケストラの配置は、第1ヴァイオリンの対向にチェロを置くもので、主声部の高音と低音が左右に分かれ、内声部が間に収まるため、最前列の指揮者の真後ろで聴いていると、ステレオ効果がよく出ていて、弦楽のアンサンブルに自然な厚みが感じられた。
 演奏に先立ち、指揮者のドゥネーヴさんがマイクを取って挨拶をするという珍しいスタート。第2ヴァイオリン首席は萩原麻利さんという日本人で、彼女を通訳に立てての挨拶であるが・・・・。萩原さんの「Good afternoon, ladies and gentlemen」に対してドゥネーヴさんが「皆さん、こんにちは」と「通訳」して会場の笑いを取った。話は、先日ベルギーのブリュッセルで開催された「エリザベート王妃国際音楽コンクール(今年はチェロ部門)」では第2位を獲得した岡本侑也さんと共演したことや、これから演奏するコネソンの曲にはベートーヴェンへのオマージュが描かれていることなどに及んだ。初来日と言うことでの親善ムードもあり、団員の皆さんの表情も明るい。なかなか良い雰囲気でコンサートが始まった。

 1曲目はコネソンの「フランメンシュリフト(炎の言葉)Flammenschrift」という曲。ギョーム・コネソン(1970〜 )はフランスの現代の作曲家。標題の「Flammenschrift」はドイツ語だが、これはゲーテの詩の中にある言葉とのことだ。初来日で最初に聴く曲が現代曲では、オーケストラの持つ個性や色合いは判断しようがないから後の曲に譲るとして・・・・。
 この曲はベートーヴェンへのオマージュとして、「運命」の動機であるダ・ダ・ダ・ダーンを模したダ・ダ・ダ・ダン・ダンというリズムで始まる。オーケストラの編成を「運命」と同じにしているらしく、非常にリズミカルな現代曲には違いないが打楽器がティンパニだけなのでシンプルな印象だ。現代曲といっても前衛的なものではなく、調性も自然で分かりやすく、なかなかカッコイイ曲だと思う。ドゥネーヴさんの指揮、ブリュッセル・フィルの演奏で録音されCDも出ているので、興味のある方は聴いてみると良い。
 
 2曲目はベートーヴェンの「ピアノ協奏曲 第5番『皇帝』」。毎年何回かは聴くことになる名曲中の名曲。従って聴く方も曲の隅々までおぼえてしまっている。さあ、モナさんはどのような「皇帝」を聴かせてくれるのだろうか。聴く席の位置が最前列のピアノの真下なので、音質や音量バランスには期待できないが、ナマナマしいリアルな音と演奏を体験できるし、演奏中の表情も目の前だからよく見えるので、存在感を肌で感じるにはこの席が一番なのだ。
 さて、モナさんの演奏はちょっと変わっている。個性的なのか、自由度が高いのか・・・・。冒頭のカデンツァ部分からミスタッチはあるし音が抜けたり(?)して、あらら? という感じ。オーケストラによる主題提示部はなかなか品格のあるの演奏で素晴らしい。ところが、ピアノが入って来ると、多少ドタバタした印象になっていく。モナさんはやはりミスが多いがそんなことは気にしない様子で、気持ちよさそうにノリノリで弾いている。表情も実に楽しそう。ドゥネーヴさんはオーケストを何とかコントロールして、合わせていこうとするが、モナさんが奔放にテンポ揺らし、旋律を歌わせて行くので、時々ズレたりする。一見するとじゃじゃ馬に対して上品なオーケストラが追いかけていくような雰囲気が続く。モナさんの演奏を注意深く聴いてみると、指があまりスムーズに回っていないような感じで、早いパッセージなどには音にムラがあったりも。重音や和音のバランスも普段聴き慣れているものとは違って聞こえて来る。これではまるで下手みたいじゃないか・・・・とも思えるのだが、不思議なもので、聴いていて不快感は全然ない。楽聖ベートーヴェンの「皇帝」に対して、陽気で楽しく、明るい音色で自由奔放に音楽を楽しんでいる、そんな様子が伝わって来て、聴いている方も何だか楽しくなってくるのだ。それがモナさんの持って生まれた天性の音楽性なのか、解釈と練習から生み出されたものなのかは分からないが、何とも不思議な魅力を持った人である。比べてしまうと姉のアリスさんの方が遥かに完成度が高いと感じるが、モナさんには「未完の大器」の魅力があるようである。
 余談だが、モナさんは裸足ではなかった。しかし靴ではなく、つま先とかかとの部分だけのハイヒール用の靴下みたいなものを履いていたようである。色は黒だった。

 モナさんのソロ・アンコールは、リストの『ヴェネツィアとナポリ』より「カンツォーネ」。この曲は、モナさんの新譜CDにも収録されている。こちらの方は超絶技巧曲だと思うが、流れるような低音部の分散和音や主題の浮き上がらせ方が鮮やかで、ダイナミックレンジも広く、メリハリの効いた演奏であった。やはり、モナさんは下手ではなかった!!

 後半は、ベートーヴェンの「交響曲 第3番『英雄』」。実を言うと、この演奏が始まってはじめて気が付いたのだが、弦楽がノン・ ヴィブラートで演奏していたのである。そのため、弦楽がスッキリとクリヤーなサウンドになり、しかもアンサンブルが緻密でシッカリしているため、非常にピュアな印象を創り出していた。また木管の自然な風合いやホルンの柔らかい響きなども、とくに突出しているわけではないが、自然体で質感は高い。そしてそれらから来る上品なイメージは独特のものだ。
 ドイツの無骨さ・渋さとフランスの明るさ・カラフルさの中間的な雰囲気もある。ちょうど地理的にもドイツとフランスに挟まれたベルギーのオーケストラならではの国際性だろうか。
 そのような中で、ドゥネーヴさんの音楽創りもちょっと変わっている。「英雄」は4つの楽章を通じて、全体的にテンポがかなり速い。第1楽章などはせわしなく感じるくらいの快調なテンポで飛ばしていく。弦楽はノン・ヴィブラートのピュア・サウンドだからとても美しく響くが、木管も金管も速いテンポに十分に歌わせることができずにもたつく場面もあった。第2楽章の葬送行進曲も速めのテンポだったが、緩徐楽章ならアンサンブルが乱れることもなく、ここでオーケストラがひとつにまとまった。第3楽章以降もテンポは速めだったが、もう乱れることはなく、古典的な佇まいと上品な演奏で、「英雄」に対する新鮮な解釈を披露したことになる。ドイツ風でもフランス風でもなく、もちろんウィーン風でもなく、やはりお国柄というのは現れるようで、意外にもベルギーはヨーロッパの中心・・・・その意味ではインターナショナルな、素敵な演奏であった。

 アンコールはシューベルトの『ロザムンデ』より第3番。弦楽のアンサンブルが非常に美しい。見るとヴァイオリンとヴィオラはノン・ヴィブラート、チェロとコントラバスは弱めにヴィブラートをかけていた。そのような微妙な手法で、美しいサウンドを生み出しているのである。

 終演後は、モナさんとドゥネーヴさんのサイン会があった。モナさんは新譜のCDをリリースしたばかり。ただし海外盤で国内盤はなく、会場で先行発売をしていた。タイトルは「SCHUBERT, LISZT」。私も早速購入して、サインをいただいた。ドゥネーブさんにはプログラムの表紙にサインをいただいた。気さくなお人柄で、一人一人に丁寧に対応してくれていた。



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【お勧めCDのご紹介】 
モナ=飛鳥・オットさんの新譜です。シューベルトの「4つの幻想曲」やリストの「巡礼の年 第2年」への追加「ヴェネツィアとナポリ」S162のほか、シューベルト作曲・リスト編曲の小品が4曲収録されています。ドイツのOEHMS CLASSICSから。
Schubert,Franz/Liszt,Franz - Mona Asuka: Schubert/Liszt (1 CD)
Schubert,Franz/Liszt,Franz
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ステファヌ・ドゥネーヴさんの指揮、ブリュッセル・フィルの演奏で、『死者の書〜コネソン:作品集』です。本日演奏された「フランメンシュリフト(炎の言葉)Flammenschrift」も収録されているギョーム・コネソンの作品集です。
『死者の書~コネソン:作品集』 ステファヌ・ドゥネーヴ&ブリュッセル・フィル、マチュー・デュフォー
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