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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

7/13(金)新日本フィル/新・クラシックへの扉/三ツ橋敬子のチャイコフスキーは躍動的で素晴らしいリズム感

2012年07月14日 01時45分35秒 | クラシックコンサート
新日本フィルハーモニー交響楽団/金曜午後2時の名曲コンサート
「新・クラシックへの扉」第23回


2012年7月13日(金)14:00~ すみだトリフォニーホール S席 1階 2列 20番 3,600円(会員価格)
指揮: 三ツ橋敬子
管弦楽: 新日本フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
チャイコフスキー: バレエ音楽『眠りの森の美女』作品66a
チャイコフスキー: 交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
《アンコール》
 チャイコフスキー: 歌劇『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」

 新日本フィルハーモニー交響楽団の金曜午後2時の名曲コンサート・シリーズ「新・クラシックへの扉」。今月は地元(といっても隣の江東区)出身の三ツ橋敬子さんによるオール・チャイコフスキー・プログラムだ。三ツ橋さんは東京芸術大学の出身で、第10回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクール(2008年)で史上最年少、女性指揮者として初となる第1位、アルトゥーロ・トスカニーニ国際指揮者コンクール(2010年)で女性指揮者として初となる第2位を獲得した頃から急速に注目を集め、今や国際的な活動はもちろんのこと、日本の各オーケストラからも引っ張りだこだが、現在まだ32歳。クラシック音楽界の期待の新星である。
 三ツ橋さんを聴くのは、今日が2回目だ。最初は1年前、2101年6月の東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会で、その時はオール・ベートーヴェンで、「皇帝」と「英雄」という変ホ長調のプログラムだった(ピアノは横山幸雄さん)。キレ味の鋭いリズム感が印象的だったのをはっきりと覚えている

 1曲目はバレエ音楽『眠りの森の美女』。バレエもほとんど観ないし、普段あまり聴くことのない曲ではあった。やはり特徴的だと感じたのは、三ツ橋さんのリズム感だ。元がバレエ音楽ということもあるが、すぐにでも踊り出すことが出来そうな、流れるような柔軟なリズム感が実に心地よい。踊りの呼吸のようなものが感じられ、とてもしなやかで柔らかいのに、リズムに芯が通っているから、フニャフニャした感じは全くない。チャイコフスキー特有の美しい旋律も、フレーズの歌わせ方に踊るようなリズム感があり、単調にならないどころか、音楽に瑞々しい生命感を与えていた。良い意味での若さに溢れている。
 一方、新日本フィルの演奏も、今日はなかなか素晴らしかった。最近ちょっと不調(?)が続いていたように思えた新日本フィルであったが、今日は見違えるようだ。第一、オーケストラのメンバーの方たちの表情がとても柔和で、輝いていたように思う。これは三ツ橋マジック(?)だろうか。もちろん、各パートの音色も良く、気持ちの良い音楽が流れている、といった印象であった。

 後半は交響曲第6番「悲愴」。この曲を聴くのは、今年5月の「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭でのベアルン地方ポー管弦楽による演奏以来だが、どういうわけか今年はこの後、「悲愴」を聴く機会が何回かあるようである。
 さて三ツ橋さんによる「悲愴は」、これもまたリズム感が印象的な演奏であった。若い指揮者だからテンポが早めかと思いきや、実際にはやや遅めを通した。ところが曲の流れが淀みなく流麗で、リズム感が良いから、もたつく感じはまったくない。かといって重厚というのでもない。あまりロシア的な雰囲気ではなかったのかもしれないが、むしろ無国籍の純音楽として、三ツ橋さんの瑞々しい感性が溢れた演奏になっていたのだと思う。
 第1楽章は、ファゴットの重々しい序奏から第1主題に至る経過部がリズムに乗りきれない感じがしたが、第2主題の流れるような美しさは、弦楽のアンサンブルの見事さも手伝って、見事なものだった。1本調子にならない旋律の歌わせ方も、冷静さを保ちつつ、女性的なロマンティシズムが瑞々しい。オーケストラの方も、弦楽を中心に緻密なアンサンブルを聴かせてくれた。濁りのない音は、感傷的な旋律にはよく似合う。
 第2楽章の5拍子の「ワルツ」は、まさに踊るよう。三ツ橋さんの指揮する姿を真後ろから見ていると、土台となる足腰がしっかりしていて、上半身が柔軟に踊り、指揮棒をもつ右手が抜群のリズム感で拍子を刻んでいる(決してメトロノーム的な正確さというわけではない)。チャイコフスキーの西欧に対する憧れと屈折した感情が込められた旋律が、新日本フィルの澄んだ弦楽に乗せられていった。
 要するにこの曲は、通常の交響曲の4つの楽章の順序を入れ替えたような構成になっているわけで、第2楽章が舞曲(普通は第3楽章のメヌエットがスケルツォ)、第3楽章がソナタ形式のアレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ(普通は最終楽章)、第4楽章が緩徐楽章になっている(普通は第2楽章)。というわけで一番盛り上がる第3楽章は、久々に新日本フィルのパワーが炸裂した演奏を聴いた。行進曲風のリズムをガンガン刻んでいくブラス・セクションのノリが良く、コンサートマスターの崔 文洙さんの率いる弦楽セクションも全力で対応し、素晴らしい盛り上がりを聴かせてくれた。そのせいもあって(?)、第3楽章が終わったところで盛大なBravo!と拍手が…。気持ちは分からないでもないが、さすがにこれほど盛大にやられると、ちょっと…。三ツ橋さんも鳴り止むまで微動だにせずに堪えていた。
 第4楽章のアダージョは、悲しく切ない曲想を厚みのある弦楽でたっぷりと聴かせてくれた。この厚みのある音は、弦楽だけで音圧を感じるほど。つまりけっこう大きな音が出ていたのだが、三ツ橋さんの指揮は、この緩徐楽章をダイナミックレンジの広さで表現に深みを出していた。ただ悲しげなのではなくて、魂の慟哭ともいえるような、突き上げる感情表現が感じられた。そして消え入るように曲が終わると、今度はフライングもなく拍手が湧き上がってきた。
 アンコールには、やはりチャイコフスキーで、歌劇『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」。この曲でも三ツ橋さんのリズム感と、金管セクションのキレの良さが際立っていた。

 今日の演奏は、三ツ橋さんもその個性を十分に発揮して、瑞々しくもキレの良いリズム感の素晴らしい指揮であったし、新日本フィルも本来のポテンシャルを発揮して、繊細かつ緻密なアンサンブルに加えてパワーのあるところも見せてくれた。けっこう、というかかなり素晴らしい演奏だったと思う。これだけのものを聴かせていただけるのなら、仕事を抜け出して聴きに来る価値も十分というものだ。

 今日は終演後に「ワンコイン・パーティ」があった。時間があったので参加してみることにした。すみだトリフォニーホールの2階のバー・コーナーで先着60名限定とか。お隣の東武ホテル特性のフォンダショコラとコーヒーor紅茶付きで500円だから、参加しない手はない。三ツ橋さんや崔さんも参加されて、楽団のウラ話(?)などが暴露され、とても楽しい一時を過ごすことができた。画像は私服に着替えた三ツ橋さん(ちょっとピンぼけでスミマセン)。

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