Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

2/3(金)東京フィル/千葉市定期/小山実稚恵のグリーグP協奏曲とコバケン節「新世界から」

2017年02月03日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 第49回 千葉市定期演奏会員

2017年2月3日(金)18:30〜 京葉銀行文化プラザ 音楽ホール 一般 1階 A列 10番 4,500円
指 揮:小林研一郎
ピアノ:小山実稚恵
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:依田真宣
【曲目】
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16*
《アンコール》
 スクリャービン:左手のための2つの小品 作品9より 第2曲「夜想曲」変ニ長調*
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
《アンコール》
 ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番 ト短調
【曲目】

 東京フィルハーモニー交響楽団と千葉市の提携事業による「千葉市定期演奏会」。東京フィルの定期会員や東フィルフレンズになって久しく、しかも千葉市に住んでいながらこのシリーズについてはなかなか情報が入って来ない。従って過去に2〜3回しか聴いたことがないのは何とも不思議なところである。今回は東京フィルの会員として発売日にチケットを取ったので、逆にお好みの最前列、コンサートマスターの前の席を確保することができた。
 このシリーズは年間に3〜4回(詳しいことは知らない)のコンサートがあるようで、単体のプログラムが組まれることもあるようだが、今回は翌日に文京シビックホールで開催される「響きの森」シリーズと同プログラムということで、内容的にも充実して期待が持てた。「響きの森」シリーズの方が別のコンサートと重なり行けなくなってしまったので、かえって良い席を取れた「千葉市定期演奏会」を聴くことにした次第である。
 指揮は小林研一郎さん、ゲスト・ソリストは小山実稚恵さんで、グリーグのピアノ協奏曲とドヴォルザークの「新世界から」というちょっと遅めのニューイヤーコンサートといった趣きのコンサートとなった。

 前半はグリーグの「ピアノ協奏曲」。小山さんのピアノはある程度の力感を含み、ロマンティシズムとしっかりした造形が適度にバランスされた完成度の高い演奏。大人の気品が漂うというか、ベテランの域に届きつつあるというか、見事なものである。鍵盤側とはいえ最前列で聴いているので、ピアノの底から聞こえて来る雑味のある音が気になることは確かだが、本来の音色は美しく、しなやかに歌っている。
 一方、コバケンさんの指揮だが、テンポが遅めで、ねっとりと旋律を歌わせるコバケン節。グリーグの持つ北欧的な透明感や大自然の凛とした空気感というような感じは・・・・残念ながら乏しく、むしろ北欧の人々のドロドロとした情念を描いたような、人間味というか、泥臭さを感じさせる演奏であった。グリーグなんだから、ねっとり濃厚というのはあまりいただけないように思うが、どうだろうか。
 また、常にテンポが遅めだったためか、小山さんのピアノが乗りきれずにカラ回りしてしまうところが何度もあった。最近の一般的な傾向としても、もう少し速いテンポでサラリと流す方がピアノがリズムに乗りやすく、和声や旋律が美しく響くような気がする。あまり劇的な効果を狙うような曲ではなく、美しい自然の冷たい空気感を感じたいと思う。

 小山さんがソロ・アンコールで弾いてくれたスクリャービンの「左手のためのノクターン」の方がよほど自由度が高く、ロマンティックな表現がとても美しく、抒情的な情感に満ちていて、うっとりと聴き惚れてしまった。

 後半はドヴォルサークの交響曲「新世界から」。コチラの方は文句なしのコバケン節。毎度お馴染みの、といってしまえばそれまでだが、この「如何にも」といった感じが、これはこれで的を射た感じがしてなかなか良いのである。
 基本的には遅めのテンポ設定なのだが、要所要所でグンとテンポを上げたりしてメリハリを欠かさない。ダイナミックレンジを広く取り、わざとらしいくらいにドラマティックに音楽を創っていく。活発な主題は強めのアクセントを入れたり、タメを入れて間合いを巧く使う。穏やかな主題はあくまで優しく歌わせる。「炎のコバケン」の異名の通りに、熱い語り口が音楽にいっぱい溢れているのである。興が乗ってくると飛び出す「い゛〜」といううなり声もハッキリと聞こえて来た。
 コバケンさんの指揮に応える東京フィルの演奏も、いつもながらの素晴らしさ。弦楽の美しいアンサンブル、木管群の濃厚な色彩感(第2楽章のコールアングレによる「家路」のテーマも秀逸)、豊かな音量と艶やかな金管群など、音質的に優れているし、揺れるテンポやダイナミズムを描き出すしなやかな対応力など、全体的に「濃い」感じが東京フィルの持ち味。コバケンさんが振る時は、その濃厚さが一層強く出て、こういったスラブ系の土臭さを見事に表現してくれる。人によっては好みの別れる所ではあろうが、コバケンさんの音楽はいつ聴いても面白く、飽きさせないのである。

 アンコールはブラームスの「ハンガリー舞曲 第1番」。こちらもコバケンさんのお馴染みのアンコール・ピースの内の1曲。ねっとりと、濃厚に、泥臭く、人間味に溢れている。

 コバケンさんのコンサートはいつも大入り満員。719席を持つ京葉銀行文化プラザ・音楽ホールもほぼ満席だった。このホールは地元以外の人には馴染みがないと思うが、中規模のシューボックス型で、木調の内装。2階のバルコニー席がぐるりと巻いていて、紀尾井ホール(800席)を一回り小さくしたような感じである。音響は・・・音は素直に聞こえるが残響は長くはない。タイトでスッキリした音である。
 このように中規模ホールで、フルスケールのオーケストラのコンサートはちょっとキツイところがある。東京フィルが本気で鳴らせたら、音が行き場を失ってホールに満ちてしまい・・・ウルサイくらい。その辺りも、クラシック音楽のコンサートとしては、今ひとつ中途半端な印象も残してしまうのである。まあ、今日は演奏が良かったので、まあ良しとしよう。

← 読み終わりましたら、クリックお願いします。


★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★

当ブログの人気ページをご紹介します。
↓コチラのバナーをクリックしてください。↓








コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2/1(水)都民芸術フェス/N響/... | トップ | 2/4(土)読響土曜マチネー/チ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

クラシックコンサート」カテゴリの最新記事