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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

6/28(日)若い芽のαコンサート/千葉/土岐祐奈・八木瑛子・野上真梨子/未来志向のフレッシュな演奏

2015年06月28日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
千葉県民の日記念 第29回若い芽のαコンサート

2015年6月28日(日)14:00~ 千葉県文化会館・大ホール 自由席 1階 3列 23番 無料招待
指 揮: 大井剛史
ヴァイオリン: 土岐祐奈*
フルート: 八木瑛子**
ピアノ: 野上真梨子***
管弦楽: ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉
【曲目】
ロッシーニ: 歌劇『絹のはしご』序曲
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64*
ライネッケ: フルート協奏曲 ニ長調 作品283**
シューマン: ピアノ協奏曲 イ短調 作品54***

 千葉県文化会館(公益財団法人千葉県文化振興財団)の主催により、千葉県に縁のある若手演奏家に支援と演奏の場を提供するために毎年開催されているコンサート。題名の「α」は、αバンク京葉銀行が協賛しているところから来ている。完全に入場無料で開催され、事前に往復ハガキで申し込み、抽選で当選すれば無料で、しかも自由席なので、千葉のクラシック・コンサートにしては異様に人気が高い。12:45に会場に着いたら、すでに数百人が並んでいたくらいである。実際に満席であり、このホール(1787席)がギッチリいっぱいになったのを初めて見た。タダのチカラは恐ろしいものである。

 今回は3名の若手の女性演奏家を招いての協奏曲コンサートであり、ヴァイオリンの土岐祐奈さん(浦安市出身)がメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を、フルートの八木瑛子さん(船橋市出身)がライネッケのフルート協奏曲を、ピアノの野上真梨子さん(市川市出身)がシューマンのピアノ協奏曲を演奏した。管弦楽は千葉県唯一のプロ・オーケストラである「ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉」。指揮は常任指揮者の大井剛史さんである。

 会場は、このコンサートに協力している千葉県立農業大学校の皆さんによる花がステージ前面にズラリと並べられていた。NHK音楽祭のような感じである。ところが高いステージの前面に草花のプランターを並べてしまったために、最前列あたりでは出演者がまったく見えない。仕方がないので3列目まで下がって席を確保したのである。それでも失敗だったのは、音がこの花の壁にブロックされてしまい、かなりモヤモヤしてしまった。やはり企画の主旨は理解出来るが、音楽会なのだから、音楽を最優先して欲しいところだ。

 1曲目はオーケストラの肩慣らし、コンサート序曲として、ロッシーニの歌劇『絹のはしご』から序曲。快調な曲を快調に演奏してコンサートがスタートした。ところがやはりタダのコンサートである。曲が始まっても周囲はガサゴソガサゴソ。ヒソヒソ話している人までいる。やれやれ・・・。

 2曲目はメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」。ソリストは土岐祐奈さんは2013年の第82回日本音楽コンクールで第3位、2014年の第83回開催で第2位を獲得。その後も室内楽のコンサートなどを聴いているので、お馴染みの存在だ。現在、桐朋学園大学音楽学部3年に在学中である。
 演奏の方は、名曲中の名曲であり、おそらく演奏する機会も何度かあったのだろう、実に自然な佇まいを見せ、スタンダードな解釈ではあるが、技量的にも安定しているし、音色も美しい。
 第1楽章の第1主題、哀愁を帯びた音色も素敵だし第2主題の感傷的な雰囲気も良い。経過部の扱い方や、カデンツァの間合いの取り方などにも余裕と自信が感じられた。音色が多彩というイメージではなく、表現の幅が広く多彩といった感じの演奏である。
 第2楽章のロマンティックな主題も憧れをたっぷりと乗せて歌わせて行く。
 第3楽章は、ヴァイオリンの主題の提示に対してオーケストラ側が少々騒がしい。終盤、追い込みをかけていく部分はやや端正な仕上がりで、もう少しテンポを上げて疾走感を出した方が良いかなと感じたが、それはあくまで個人的な好みの問題だ。
 土岐さんのヴァイオリンは、全体に音量がやや小さめに感じられたが、これは会場のホールが響かずに音が拡散してしまっているせいもあるだろう。一方、オーケストラの方はまともに鳴らしていたように感じられた。
 それにしても演奏中に周囲がうるさいこと。ガサゴソとゴホンゴホンが多すぎる。これでは演奏を聞きに来ているのか、邪魔しに来ているのか分からないくらいだ。いくらタダだからといって、マナーが悪すぎる。これでは演奏家が可哀想である。

 休憩を挟んで、後半はまずライネッケの「フルート協奏曲」から。ライネッケ(1824~1910)はドイツ・ロマン派の作曲家で、この曲は晩年1908年の作。多作の作曲家だが、現在では一般にあまり知られていなく演奏される機会もほとんどないようだが、フルート・ソナタ「ウンディーネ」は有名だ。
 ソリストは八木瑛子さん。昨年2014年の第25回日本木管コンクール(フルート部門)で第1位を獲得している。現在は東京芸術大学音楽学部3年に在学中。
 第1楽章。ロマンティックな主題が流れ出す。フルートを客席側に向けての演奏で、音がよく通ってくる。フルートのことはあまり詳しくないので、専門的なことはわからないのだが、八木さんのフルートは、とてもたおやかな印象がする。大らかで伸び伸びとしていて屈託がない。
 第2楽章は短調に転じて、やや哀愁を帯びた主題に、抒情性をたっぷりと含ませた演奏で表現していく。
 第3楽章は協奏曲的な展開で、オーケストラとの駆け引きもリズミカルで、やはり快活な印象である。
 この曲はロマンティックでエレガントな曲だが、3つの楽章が似たような曲想で彩られていて、多様性がないような。その中で八木さんのフルートは、明るく弾むようなリズム感があり、聴いている者が思わず微笑んでしまうような素敵な演奏に感じられた。ただ、フルートという楽器はあまり大きな音が出るわけではないし、強弱の幅も狭い。その辺りがフルート協奏曲の難しいところなのだろう。

 最後はシューマンの「ピアノ協奏曲」。ソリストは野上真梨子さん。私は今回初めて聴かせていただいたが、音楽仲間の間では評判が高く、是非聴くようにと勧められていた。昨年2014年の第20回やちよ音楽コンクール第1位。ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2014第3位。第5回野島稔・よこすかピアノコンクール第1位などのコンクール歴がある。桐朋女子高等学校音楽科を首席で卒業、桐朋学園大学音楽学部も首席で卒業。現在は同大学音楽学部研究科2年に在籍している。
 第1楽章は、オーケストラに続いてピアノが第1主題を弾き始めるといきなりちょっとテンポ感を変えて存在を主張する。ピアノがソロに近い状態になると自由度の高い演奏に変わり、旋律をふわりと歌わせる。オーケストラとからむ部分ではキッチリとアンサンブルをまとめ上げる。ロマン性の強いこの曲では発揮度の高い手法だと思う。
 第2楽章は可憐な間奏曲。粒立ちのキレイなピアノが抒情性を浮き上がらせる。
 第3楽章は力強く弾むようにピアノが主題を打ち出すと、その後は煌びやかな技巧が冴え、変化する曲想に鮮やかな色彩の変化を見せ、表現の幅も広い。オーケストラと対話していくような部分もリズム感良く、全体に軽快な感じでキレが良い。
 残念だったのは、このホールのピアノの状態が良くないこと。聴く度に感じるが、音が曇っていて、よく鳴らない。その辺りからくる不完全燃焼感は、毎度のことであるが、せっかく素敵な演奏をしているのに、このピアノと響かないホールと周囲の雑音では・・・・。

 終演後は、ロビーで出演者の3名と歓談の一時。楽屋で写真の撮影をしていたとかで、ロビーに出てくるのに時間画かかったために、多くの人は帰ってしまった後だった。それぞれの関係者との歓談が一段落したところで記念写真を撮らせていただいた。やはり、華のある女性ソリスト3名の揃い踏みは、とても素敵だ。ドレスの色彩バランスもお見事。


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