Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

5/26(金)読響/名曲シリーズ/ドゥ・メストレによるハープでの「アランフェス協奏曲」と尾高忠明の王道を行くブラームス1番

2017年05月26日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第602回 名曲シリーズ

2017年5月26日(金)19:00〜 東京芸術劇場コンサートホール S席 1階 C列 17番 4,868円(会員割引)
指 揮:尾高忠明
ハープ:グザヴィエ・ドゥ・メストレ*
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:小森谷 巧
【曲目】
芥川也寸志:弦楽のための三楽章「トリプティーク」
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(ハープ版)*
《アンコール》
 ファリャ:歌劇『はかなき人生』より「スペイン舞曲」*
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

 読売日本交響楽団の「第602回 名曲シリーズ」を聴く。サントリーホールが改修工事中のため、東京芸術劇場コンサートホールに会場を移しての名曲シリーズである。今回のマエストロは、読響では「名誉客演指揮者」のポストとなっている尾高忠明さん。本日の聴き所は、何と言っても「ハープの貴公子」と呼ばれるグザヴィエ・ドゥ・メストレさんによる「アランフェス協奏曲」だろう。誰でも知っているギター協奏曲の名曲をハープで弾くという。想像ができるようなできないような・・・・。滅多にないチャンスなので聴き逃すという選択肢はない。

 1曲目は、芥川也寸志の「弦楽のための三楽章『トリプティーク』」。この曲は芥川(1925〜1989)の若き日の作品(1953年)で、代表作のひとつと言って良い名曲だ。この曲を一言で表現するなら「カッコイイ曲」だと思う。戦後からの復興が始まった時期で、日本が再生していく息吹というか、生命力に満ちている。西洋音楽の手法の中に日本的な要素も含まれ、清々しいくらいにロマン的で躍動的だ。
 演奏の方は、読響の弦楽の特徴がよく表れていた。キレ味の鋭い立ち上がりとダイナミックレンジの広さ。アンサンブルは緻密であると同時に力強く、リズム感は常に躍動的だ。第1楽章と第3楽章の躍動感は特筆ものだったし、第2楽章の抑制的で抒情的な表現も実に美しく情感たっぷり。尾高さんの外連味のない解釈も素晴らしい。

 続いてロドリーゴの「アランフェス協奏曲」のハープ版。ロドリーゴ(1901〜1999)はまさに20世紀を端から端まで生きた人で、スペインの巨匠作曲家。多くの作品の中で、世界的にも最も知られているのがこのギター協奏曲である「アランフェス協奏曲」であろう。ところがロドリーゴ自身はギターが弾けなかったので、当時のスペインでのギターの第一人者、レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ(1896〜1981)の助言を受けて作曲された。ハープ版の方は、知らなかったのだが、ロドリーゴ自身が編曲したもので、ギター版の本編は1940年の初演だが、ハープ版は1974年に初演された。
 ギターはオーケストラの他の楽器に比べると極端に音量が小さいため、この曲を演奏する際は、オーケストラの弦楽をかなり小編成にし、大きなホールではギターの音をマイクで拾ってアンプ・スピーカーを使って少々拡声するのが一般的である。ところが今日はハープ。単音の音量はギターに比べれば遥かに大きい。よって独奏ハープはマイクなしのナマの音であった。またオーケストラの弦楽の編成も(数えたわけではないが)12型くらいで、見た感じでは2感編成の普通のオーケストラという規模だ。
 演奏の方はどうだったかというと、まず、中編成のオーケストラに対してハープの独奏というのは思いの外バランスが取れている。もっとも3列目のセンターで聴いていたので、ハープの直接音がハッキリと聴き取れる位置だったことは確か。3階の後方席まで聞こえたかどうかは、正直言って見当がつかない。もともとハープという楽器は音の出方が微妙だから・・・・。
 ドゥ・メストレさんの演奏は、主旋律を弾く際はかなり強く弾いて音量を確保するが、装飾的なフレーズなどばグッと音量を下げ、表現に深みを持たせようとしているのが分かる。ハープの中だけでダイナミックレンジを広く取っているのだが、かえってそれが弱音部を聞こえにくくしているような気がした。リズム感も今ひとつな感じがしたが、もともとギターに比べればハープの明らかにリズムを取りにくいと思われる。一方で、カデンツァなどの独奏部分はさすがのもので、ピーンと張り詰めた緊張感と超絶的な技巧が煌めいていた。
 実際に聴いてみれば、ドゥ・メストレさんのハープの演奏はやはり素晴らしく、Bravo!を贈りたいところだが、「アランフェス協奏曲」をハープで演奏することがこの曲に合っているかどうかは別の問題。今日は珍しい組み合わせでの演奏を聴くことができたのは面白い体験ではあったが、私としてはハープの演奏によりスペイン風味が失われてしまったような気がして、何とも複雑に心境である。 

 ドゥ・メストレさんのソロ・アンコールは、ファリャの『はかなき人生』というオペラの中の曲で「スペイン舞曲」。クライスラー編曲のヴァイオリン版が有名だが、ピアノやギター用に編曲されたものもよく演奏される。ハープ用の編曲はギター版に近いイメージだろうか。こちらの方もドゥ・メストレさんの超絶技巧ハープを堪能することができた。

 後半はブラームスの「交響曲 第1番」。こちらの方は尾高さんがさらに外連味のない解釈で、スタンダードで王道を行くような演奏となった。読響がもともと持っているドイツ音楽への傾倒や伝統があり、そこに尾高さんが格調高いスタンダードな解釈を持ち込む。その結果、あまりこれといった特徴はないのだが、この曲はこのように演奏すべし、といった誰もが(というよりは、より多くの人が)納得できるような演奏になったと思う。もちろんこれは褒めているのである。誰もが知っている名曲中の名曲に対して、新鮮味を求めて「新しい」解釈を持ち込むようなアプローチは必要なことではあるが、やれば良いというものでもない。尾高さんのように、正面から堂々と、ブラームスっぽくロマン的で、ドイツっぽく重厚に、そして日本っぽく繊細な演奏に取り組み、それを成し遂げてしまうところが見事だと思う。
 第1楽章は冒頭序奏のティンパニの刻むリズムから実に堂々たる佇まいで、重厚な弦のアンサンブルを響かせ間合いたっぷりでドラマティックに押し進める。ソナタ形式の主部に入るとやや遅めのテンポで自信に満ちた音楽が展開する。クラリネットやホルンの質感も高く、音楽実体の品格が高く感じられる。
 第2楽章は緩徐楽章。感傷的かつ抒情性豊かに主題が歌われていく。弦楽のアンサンブルもは美しく、オーボエが印象的な旋律を浮き上がらせる。抑え気味に中で内面の情感が徐々に高まって行くといった雰囲気など、尾高さんの音楽作りも素晴らしい。
 第3楽章は間奏曲風の可憐な音楽。ブラームス本来の抒情性が、とくにフルート、オーボエ、そしてクラリネットなどの質感の高い演奏が良い。
 第4楽章。迫力ある序奏の出だしと弦楽のピツィカートの合奏のピタリと合って見事なこと。ホルンによる主題への橋渡しは、アルペンホルンの雰囲気と言うよりは、純音楽として楽器の最大限の良い音でシッカリと濃厚に描き出している。弦楽による「歓喜の」主題が始まると、そこはスッキリとした濁りのない印象で、清々しい音楽世界が拡がって行く。テンポとしてはやや遅めだろうか。それでも主題の旋律がしなやかに歌われているために重苦しさはない。一見すると大した特徴もなく、極めて常識的で普通の演奏に聞こえるが、それこそが尾高さんの狙いだというか、持ち味なのでる。良く聴けば、1フレーズ毎に丁寧に細やかなニュアンスを込めて描かれていて、それでいた音楽全体がひとつの大きな造形になっているのが分かる。再現部からコーダにかけての堂々たる佇まいから劇的な盛り上がりによるフィニッシュに至るまで高揚感と緊張感は痺れるような快感を覚えるものだ。
 繰り返しになるが、今日のブラームスの演奏は、格調の高いスタンダード。テンポ、旋律の歌わせ方、リズム感、ダイナミックレンジ、音量、各パートの質感、ドラマティックな仕上がり・・・・。いずれにおいても高度なバランス感覚で、欠点の見つからない演奏になっていた。読響がもともと持っているダイナミズムが適度に活かされ、質感が高く、力感も漲る。これぞ正統派と言えるような素晴らしい演奏であった。

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