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沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

【feb_18】松井冬子個展

2012-02-19 | ART
横浜美術館で行われている「松井冬子展」を観に行く。

世界中の子と友達になれる」というタイトルは、
彼女の東京藝大2002卒業制作の作品名。

子供の頃にふと「世界中の子どもたちと友達になれる!」と
確信した彼女は、大人になった時にそれが妄想であることを知る。

しかし、そのあり得ないことを確信した妄想に
狂気にも近い疑念を感じ、この絵を制作したのだという。

個展のポスターにもなったその絵を、じっくりと観た。

棚から溢れるように垂れ下がる薄紫の藤。
その藤をかき分けるようにして周りの様子を伺っている少女。
期待に胸が膨らんで、笑顔がこぼれている。
きっと藤に隠れている世界中の子どもたちの気配を想像しているのだろう。
背後には空っぽの揺りかご。しっかりとした籐編みの造りだ。

よく見るといろいろな発見がある。

笑顔の少女の両足先からは血が流れている。指先も赤くなっている。
溢れるように垂れ下がる藤にスズメバチが数多く群がっている。
その藤の花もよくよく見ると女性器の面影がある。

成立している世界が、実は大きく歪んでいるのだ。

まるで自分たちが現存する世界をあざ笑うかのような、第三者の目線がある。
そう、松井冬子の作品には常に第三の眼が存在している。

大輪を掲げ支えきれない様子の白菊の花
花弁が不自然に長く絡まるように増殖して地面に垂れ下がっている。
その常軌を逸した菊の、熟れっぷりに「執念」のようなものが見え隠れする。
擬人化した訳ではない。その異様に育った白菊に想いを注ぐ第三の眼。

会場には数多くの人体解剖図を写生した鉛筆画もあった。
精緻なタッチで、内臓に浮かぶ血管のうねりを捉えている。
その執拗なまでの目線。しかし、そこには第三の眼があった。

画家の目だけではない、なにか憑き動かされているような第三の眼。

いや、もしかしたら、自分自身が備えている目線なのかもしれない。

この世はかりそめ、高次元を射影した影の姿。
目に映り浮かび上がる現実と思われるそのものは、次元を超えた世界の投影。
断片の連なりに相関は掴みきれないのだけれど、
ふっと視線を外にずらし、この世を鳥瞰的に眺めてみれば、
その因縁果が一目に見渡せる。

彼女が幽霊を多く手がけているのは、決して偶然ではなく、
その鳥瞰からのぞき見たこの世に、たまたま象形された自身の姿。

…そんな次元を超えて行き来するような空間把握、時空移動にひどく共鳴する。

これはまさに時代の空気をマーブル模様のように写し撮った展覧会だ。
ロールシャッハテストのようなシンメトリーの世界。

この疾患を治癒させるために破壊する」と題された千鳥ヶ淵のサクラの夜景は、
時空移動の窓のような「救い」として大きな衝撃を与えた。

ボクは癒されている、この空間の中で確実に癒されている、そう陶酔した。

横浜美術館 松井 冬子 展
Yokohama Museum of Art
Fuyuko MATSUI Exhibition

- 世界中の子と友達になれる -
- Becoming Friends with All the Children in the World -

2012年3月18日(日)まで
March 18 (Sun), 2012











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