理解することしかできない。
私たちというよりも、
記憶を司る脳は物質であるがゆえに、
容量に限界があるのは
経験として知っているし、
要点といっても、
それが本当に重要だったかというと、
意外とどうでもいいようなことばかり覚えていて、
結局、話の筋など、どこへやら、
ある1つの場面の細部しか
覚えていないことはよくあって、
何が記憶として残り、
何を忘却してしまうのかということは、
私たちのあずかり知らぬことで、
これって1つの賭けみたいなものだけど、
繰り返し思い出すことは、
イメージが薄れてしまい、
擦り切れてしまったとしても、
覚えていることを覚えている過去は、
忘れまいとする抵抗の結晶であり、
どうでもいいこと、
ありふれた情景は過去にならない。
過去として語られているものは、
すべて多かれ少なかれ、
新鮮な驚きをもって、
迎え入れられたもの、
つまり、
例外の蓄積である。
それゆえ、
おのずと筋から離れ、
それぞれは1つの物語世界を
構築しているものではなかろうか。