【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

現代の探検家《小林快次》 =37=

2016-10-13 14:08:13 | 浪漫紀行・漫遊之譜

○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 ○

◇◆ 第7回  デイノケイルス発見! =7/9= ◇◆

 まず、肩の骨。 残されているのは肩甲骨と烏口骨。 この二つの骨が合わさって、一見巨大なしゃもじのような形をなす。他の獣脚類恐竜では、これらの骨は癒合していないことが多いが、オルニトミモサウルス類の肩甲骨と烏口骨は、癒合して一つの骨のようになっている。 デイノケイルスの肩甲骨と烏口骨も癒合している。 これが一つ目の共有派生形質。

 次に、上腕骨。 上腕骨には、三角胸筋稜(deltopectral crest)という部分がある。 多くの獣脚類恐竜の三角胸筋稜は大きい。 しかし、オルニトミモサウルス類の三角胸筋稜は小さい。 デイノケイルスはどうか? もちろん、デイノケイルスの三角胸筋稜も小さい。 二つ目の共有派生形質である。

 最後の共有派生形質が見られるのが中手骨。 手の甲にあたる骨だ。 オルニトミモサウルス類にもデイノケイルスにも、中手骨が3本ある。 この3本の中手骨は、第一中手骨・第二中手骨・第三中手骨と呼び、進化型のオルニトミモサウルス類の中手骨はどれもほぼ同じ長さである。デイノケイルスも然り。

  こうして見てみると、肩と腕の骨だけと言いながらも、オルニトミモサウルス類の特徴が伺える。 私は、これらの共有派生形質の存在から、デイノケイルスがオルニトミモサウルス類の仲間であると考えていたのだ。

 しかし、デイノケイルスには問題があった。 よく一般には爪と呼ばれる骨で、正確には指先の骨(末節骨)に問題が潜んでいた。 オルニトミモサウルス類の末節骨は、横から見ると緩くカーブしている。 また、末節骨の下の面には屈筋小結節(flexor tubercle)という突起があり、その突起は少し爪の先端部分方向に位置している。

 

   しかし、デイノケイルスの末節骨は強くカーブし、屈筋小結節は関節面のすぐ近くに位置している。 つまり、デイノケイルスの末節骨は、オルニトミモサウルス類の末節骨とは大きく異なり、非常に原始的な形をしている。

 典型的なオルニトミモサウルス類の肩の骨と上腕骨。 その一方で、原始的な末節骨。原始的に見える末節骨は、巨大化に伴って進化した新しい形なのか? 特殊な生活をしていたため、見た目には原始的な末節骨になってしまったのか? 様々な仮説がたてられるが、どれも十分な証拠がない。

 末節骨の謎は残っているにしても、肩の骨と上腕骨、そして中手骨といった骨に見られる特徴が、フィルに「デイノケイルスはオルニトミモサウルス類の仲間だ」と私が宣言した理由である。 しかし、宣言はしても断言できないのは、末節骨の“矛盾"があったからだ。

 やはり、他の骨格の部分、特に頭骨の発見が、デイノケイルスの謎の解明の鍵になる。 私が正しいのか、フィルが正しいのか。 発見されている肩や腕の骨だけではなく、新しい標本が必要なのは明らかだった。

   「また盗掘の跡だ。タルボサウルスだな……。」  山積みになっている粉々の骨をみながらつぶやく。

  モンゴルは、恐竜化石盗掘という深刻な問題を抱えている。 特に2000年からの盗掘は著しく、これまでたくさんの恐竜化石が盗掘されている。その手段は非常に痛々しい。 盗掘者は、恐竜のある物を探し出すため、それ以外の骨を粉々に壊してしまう。 どんなにすばらしく美しい全身骨格でも、粉々にしてしまう。 そのある物とは、恐竜の歯と爪(末節骨)である。

 全身骨格を掘りだし、売買できれば大金が手に入る。 それなのに、なぜ彼らは歯と末節骨を探すのか。
 簡単に密輸ができ、比較的お金になるからである。

 密輸した化石はどこへ売られていくのか。 それらは、世界中に存在する化石を売買する業者へと流れていく。 たまに日本のマーケットにもモンゴルの化石が売りに出される。 売りに出されている化石は、違法ではないのか。
 映画などで“マネーローンダリング(資金洗浄)"という言葉を聞いたことがあるだろう。 犯罪によって得られたお金の出所を隠蔽し、一般市場に出回っても身元がばれないようにする行為を言う。

   盗掘された化石にもいろいろな業者を間にはさみ、本元を特定できないようにして、一見“合法"に見えるようにして化石を売っている業者がある。 実際そのように販売しているモンゴルの恐竜化石を目にしたら、その業者に聞いてみるといい。 追求していくと言葉を濁すのが彼らの常套手段である。 とはいっても、日本にはモンゴル恐竜を売っている業者は皆無であるが……。

 盗掘者も最初は、地表に落ちている恐竜の歯や末節骨を売って小銭を稼いでいたのだろう。 そのうち、地表からは歯や末節骨が消える。 すると彼らは、まだ地中に眠っている全身骨格を狙いだす。 その全身骨格についている歯や末節骨をだ。
 大きな犠牲を伴った歯や末節骨は市場に出回り、コレクターの手へと渡る。 コレクターの個人的な欲求を満たすために……。 こうして世界的な財産そして私たち研究者が追い求めている貴重な恐竜骨格が粉々に壊されている。

 私たちは、その粉々になった恐竜化石からも残された情報を取り出す。 壊される前はどんなにすばらしい標本であったかを感じながらだ。 やりきれない気持ちでいっぱいになる。
「ため息したくなる気持ちはわかるけど、データをとろう。まずは、タルボサウルスであることを確かめよう。 その後は、残された骨の測定だ。」

壊された骨を観察し、タルボサウルスであることを確認する。そして、粉々になった大腿骨をできるだけ組み立て、その大きさを測る。 「60センチか。まだ大人になりきってないようだね。背骨も癒合してないし。」
 デイノケイルスが棲んでいた恐竜時代のモンゴルは、どのような生態系をしていたのか。 盗掘された骨からでも私たちに教えてくれることはたくさんある。    ・・・・・続く

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