【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

現代の探検家《小林快次》 =38=

2016-10-15 18:24:57 | 冒険記譜・挑戦者達

○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 

◇◆ 第8回  デイノケイルス化石の発掘 =8/9= ◇◆

 私たちが発見した恐竜の種類と数。 そして盗掘現場から得られたデータを掛け合わせると面白いことがわかってきた。 モンゴル南部に広がる白亜紀末の地層。 デイノケイルスもこの地層から発見されている訳だが、骨化石から再現できる当時の環境には、ガリミムスがたくさん棲んでいたということがわかった。 ガリミムスは、ダチョウにそっくりなオルニトミモサウルス類。雑食または植物食である。

 本来、予想される恐竜時代の生態系構成としては、多くがハドロサウルス科や角竜類といった植物食恐竜。 同じ時代のカナダやアメリカの恐竜化石産地から見つかる化石のほとんどが、これらハドロサウルス科や角竜類である。 そして、オルニトミモサウルス類の化石がごくまれに発見される。

 しかし、モンゴルの白亜紀末の地層からは、サウロロフスとバルズボルディアというハドロサウルス科の恐竜が知られているが、発見される化石はそれほど多くない。 また、トリケラトプスと言った大型の角竜は、モンゴルでは発見されていない。

 当時頂点を支配していたティラノサウルスの仲間タルボサウルスは、何を食べていたのか。肉がたくさんついて動きの鈍いハドロサウルス科や角竜は少なくので、ガリガリで逃げ足の速いオルニトミモサウルス類を襲っていたのか。 謎だ。 そして、巨大恐竜デイノケイルスの存在。 これも謎だ。

 この謎のヒントがモンゴルから6,000キロ離れたアラスカにあった。

 米国アラスカ州デナリ国立公園。 私は、この土地に2007年から毎年調査に入っている。 偶然なのか、ここにもデイノケイルスが棲んでいた時と同じ時代の地層がある。 そして、私たちはここで無数の恐竜の足跡化石を見つけている。

 アラスカで調査をしている理由はいくつかあるが、その一つに「アジアの恐竜はいつどこからやってきたのか。 またいつどこへ行ったのか。」というテーマに興味を持っている。 そのため、アラスカから、アジアの恐竜を探していた。

 結論から言うと、未だアジアの恐竜を北米(アラスカ)からまだ発見できていない。 しかし、このデナリ国立公園の調査によって面白いことがわかってきた。 私たちの調査によって、ハドロサウルス科、角竜、テリジノサウルス科の足跡が多数発見された。面白いのはその発見のされ方である。

 ハドロサウルス科とテリジノサウルス科の足跡は、一緒に見つかることが多い。 角竜の足跡が集中しているところからは、ハドロサウルス科やテリジノサウルス科の足跡は、ほとんど発見されない。 これが意味することは何か。

 簡単に言うと、棲み分けをしているということである。 植物食のハドロサウルス科と角竜は、生活様式がほぼ等しいため、生活空間を分けることで競争を回避していたのだ。

 その一方で、植物食のテリジノサウルス科は、ハドロサウルス科と共存できたということから、同じ植物食でも違う植物を食べていたため、競争すること無く仲良く暮らしていたと考えられる。 この考えをひらめいたとき、次々と疑問が浮かんできた。

  「北米の生態系における植物食恐竜はハドロサウルス類と角竜で占められ、ティラノサウルスのお腹を満たしていた。じゃあ、アジア(モンゴル)の植物食恐竜ってどんな恐竜だったのか。 オルニトミモサウルス類とハドロサウルス科なのか。なぜ角竜がいなかったのか。いなかったことで生態系にどのような影響を及ぼしたのか。」  次々と頭に浮かんでくる疑問を考えているうちに、モンゴルでの謎に光が射したように感じた。

 「北米の巨大植物食恐竜(megaherbivores)は、ハドロサウルス科と角竜類。 モンゴルの巨大植物食恐竜は、ハドロサウルス科と数少ない竜脚類。 角竜類がいないモンゴルでは、その空いた生活圏を誰が支配していたのか。 竜脚類で十分だったのだろうか。」

  この時にリンクしたのが、巨大な体をもつデイノケイルスとテリジノサウルスである。

  デイノケイルスやテリジノサウルスは、奇妙な体をしていることによく注目されるが、その体の大きさも異常である。体の巨大化と奇妙な体の進化は、関係しているのではないか。 そして、巨大化した理由は、角竜が存在していないからではないかと考えたときに、私は鳥肌が立った。


  角竜のいない生態系だったからこそ、植物食だったデイノケイルスやテリジノサウルスの祖先が角竜に置き換わってその生活圏を支配した。 生活圏を支配したデイノケイルスやテリジノサウルスの祖先は、まるで北米の角竜が巨大化するように、巨大化していった。 そして、その巨大化に伴って、デイノケイルスは巨大な腕を、そしてテリジノサウルスは巨大な爪を手に入れていったのではないかというふうに私は考えた。

 そう考えると、北米の白亜紀末の地層から、巨大なデイノケイルスやテリジノサウルスが発見されないのもうなずける。

 さらに、私の「デイノケイルスはオルニトミモサウルス類」という説が正しければ、角竜のいない生態系で、植物食だったオルニトミモサウルス類が巨大化したのがデイノケイルスということになる。 白亜紀末のモンゴルは、ガリガリではあるもののたくさん棲んでいた小型のオルニトミモサウルス類と、巨大化したデイノケイルスが、タルボサウルスのお腹を満たしていたのかもしれない。

  そして、2009年夏、ついに待望の日がやってくる。 この年、私はアラスカでの調査のため、数日遅れてモンゴルの調査に参加した。 キャンプに合流した私は、韓国の恐竜研究者イ・ユンナムに近況を聞いた。 「これまでは盗掘現場ばっかり。でもそのうちの一つが、かなりやられてるけど壊されていない骨もたくさんあって良いかもしれない。タルボサウルスじゃなくてテリジノサウルスだって、フィルが言ってる。」

  それから数日間は、盗掘現場で作業を行った。 壊された骨の収集。 そして、まだ地中に残された骨を掘り出した。意外にもかなりの骨が揃っていることがわかった。 予想以上だった。 するとイ・ユンナムが大声で私を呼ぶ声が聞こえた。

  「ヨシ!ちょっとこっちに来て!」 見せられた肩と腕の骨をみてすぐにわかった。 デイノケイルスだと。 テリジノサウルスだと思って掘っていた骨格はデイノケイルスだった。 イ・ユンナムも興奮していた。 フィルも興奮していた。 参加したみんなも喜びに満たされていた。 みんなが何十年も追い続けてきたデイノケイルスの骨格が目の前にあることを。 

  そしてその全貌が私たちの手によって明らかにされることを。

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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