【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

現代の探検家《田邊優貴子》 =71=

2017-03-04 19:30:57 | 浪漫紀行・漫遊之譜

○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 北極・南極、アァー 素敵な地球のはて =田邊優貴子=  ○

= WEB マガジン ポプラビーチ powered by ポプラ社 より転載 =

◇◆ ラングホブデをあとにして = 3/3 = ◇◆

   やっと砂が飛んでこなくなり、エンジン音だけがけたたましく鳴り響いていた。 立ち上がって、体から砂をはらっていると、機内からしらせ乗組員が数名降りてきた。 みな、驚くほど嬉しそうな表情を浮かべ、はしゃいでいる。 そうなるのもしかたがない。 なぜなら彼らはずっと船の中で仕事をしているので、せっかく南極に来ているのに、大陸上に降り立つ機会がほとんどと言っていいほどないのだから。

  500kgの荷物の積み込みはすぐに終わったが、飛び立つのはまだ10分後ということだった。 記念撮影をする人、地面に手を触れてみる人、歩き回る人、岩の上にすわって景色を眺める人、雪鳥沢小屋の中を覗く人、みな思い思いの南極大陸を心の中に焼きつけていた。
 初めて降り立った南極大陸、しかもそこには信じられないような風景が広がっている。 少しでも長くとどまっていたいという気持ちはとてもよくわかる。

  予定の10分間はすぐに過ぎ、みな名残惜しそうに機内に乗り込んでいく。 ついに、ヘリコプターが離陸した。 窓に顔を押しつけ、外をのぞき込む。 雪鳥沢小屋がみるみる小さくなっていく。どんどん高度が上がり北上を始めると、すぐにラングホブデの全景が見渡せた。 小屋はもはや、小さすぎて認識できない。

  ヤツデ沢、氷河池、平頭氷河、雪鳥沢、雪鳥池、東雪鳥池……、3週間歩き回った場所を猛スピードで通り過ぎてゆく。 ついに長頭山を越え、赤茶けた岩肌が広がるラングホブデから離れてしまった。

  眼下にはもう、白と青だけでできあがった世界がどこまでも広がる風景しかない。 海氷上にところどころできた水たまりが、絵の具を落としたような水色をしている。 今私たちが見ているのは、数万年、いや百万年前と何も変わらない世界なのだろう。
 大きなテーブル氷山の脇に、いくつもの小さな黒い点が見える。私はいつまでも、窓の外に広がるすさまじい景色から目が離せなかった。 人間の手が届かない氷原を、そして、小さな黒い点でしかないウェッデルアザラシがのんびり寝そべる世界を、私はただただ呆然と見下ろしていた。

  10分ほど飛ぶと、果てしなく広がる氷原の中に、オレンジ色の点がポツンと見えてきた。 しらせだ。 どんどん大きくなる。 ヘリコプターはゆっくりと飛行甲板に着陸して、ブレードの回転が止まるまで機内で待った。 次第に音が小さくなり、ブレードが止まった。 機内が静かになり、ドアが開くと、真っ白な海氷の照り返しが眩しかった。 サングラスをつけて、慎重にはしごを3段下りたところで、私たちは久しぶりのしらせに降り立った。

  船に残る仲間たちと再会し、握手を交わした。 なんだか不思議な気分だった。

  野外から久しぶりに戻ってきた私は、いろんなことに驚き、違和感だらけだった。 楽しみにしていた風呂よりも、まずはトイレに驚いた。 トイレというものがあって、ドアには鍵がかかり、用を足したあとは水で流す。 それよりも驚いたのは、水道があって、ひねるとそこから水が出てきて、それで手を洗えるということだった。 久しぶりに手がきれいになった。
  時間になると、温かいご飯も出てくる。野外では自分たちだけでご飯を作る。 だから、何もせず、黙っているだけでご飯が食べられることに、またもや驚いた。

  ついに念願の風呂。 久しぶりに鏡でちゃんと自分の顔を見る。 フェイスマスクと日焼け止めのおかげだろう、意外と日焼けしていない。 温かいシャワーがとても心地よく、すぐに最高の気分になった。 しかし、頭と体を1回洗っただけでは泡立つ気配さえない。 3回目にしてやっと泡立ったのだった。 温かい湯船に浸かると、体の芯からあたたまり、私は幸福感に満ちあふれた。


 入浴後、意気揚々と、着の身着のままだった服、帽子、手袋などを洗濯すると、砂や泥で水が真っ黒になった。 これらのことには、驚いた、というよりも、感動した、という表現のほうがより近いかもしれない。 私たちの日々の生活の中で、これらは何の変哲もない、ごくごく当たり前のことだ。 けれど、この日、私はそんな些細なことが本当に新鮮で心から感動したのだった。

  さて、ついに明日はスカルブスネスだ。

  深夜、甲板に出ると、太陽が低く傾いていた。 白い氷原が、オレンジがかったあたたかい色に染まっていた。 もうすぐ白夜が終わり、太陽が沈む季節が来る。

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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