犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

セマウル食堂

2017-08-22 23:15:55 | 食べる

「今、東京にいます。お会いできませんか」

 李さんからラインがあったのは韓国出張中。

「そうですか。ぼくは韓国にいるんです。8日には大阪に帰りますが」

「私は12日まで日本にいます」


「11日から埼玉へ帰省します。11日の夜なら会えます」


 ということで、1か月半ぶりに李さんに会いました。

 待ち合わせたのは新大久保。私は韓国から帰ったばかりですが、今回の出張では韓国料理をあまり食べなかったので、韓国料理が食べたかったのです。

 昔よく行っていた「将軍」という焼肉屋は潰れたようなので、あてもなく路地を歩き、職安通りに出ました。

李「ここは行ったことありますか」

犬「セマウル食堂…。いえ、ないです」


李「韓国で少し前に流行った店ですけど、日本にもあるんですね」


 「セマウル」とは、「新しい村」の意味。1970年代に朴槿恵大統領のお父さんの朴正煕がはじめた農村振興政策のセマウル運動が有名。その期間に初めて電気が通った田舎の村も多い。「セマウル号」といえば、KTX(韓国の新幹線)ができる前の、ソウル、プサンを結ぶ「超特急」の名前。今の韓国人にとってはいくぶんレトロな響きがあるんじゃないでしょうか。

 新大久保界隈ではがらがらの店が多いなか、ここはそこそこ繁盛している。

李「ここの社長は、韓国では有名ですよ。よくテレビに出ていてタレントみたいになってます」

犬「そんなに人気があるんですか」


李「今はそうでもないですけど2~3年前はすごかったです。韓国人は飽きやすいから」

 
 頼んだのはこの店の名物メニューのヨルタンプルコギ(熱炭プルコギ)。薄切り冷凍豚肉をタレにからめて炭火で焼きます。韓国でのように、サンチュ、ケンニプ(えごまの葉)、生ニンニクが無料で出てくるのもよい。

 酒はチョウムチョロム、そのほかテンジャンチゲも頼みました。

犬「取引先回りですか」

 李さんは繊維会社の社長(ただし社員はなし)です。

李「ええ、昨日は石川県に行ってきました。親しい取引先がいて」

犬「注文はとれましたか」


李「今回は仕事というより、日本への移住の下調べがメインだったんです」


 李さんは、家族で日本へ移住する計画を立てています。今、高校を卒業した息子さんが日本に来ていて日本語学校に通っています。来年は大学進学を目指している。高校生の娘さんもいずれは日本に留学させようとしているんだそうです。

李「韓国と日本の二重生活は経済的に大変ですから。私の仕事は韓国と日本を行ったり来たりなので、住む場所は日本でも関係ないんです」

犬「うまく行きそうですか」


李「いろいろ調べましたけど、日本のビザをとる方法は二つあって、一つは日本に会社を作るやり方。でもこれはお金も時間もかかる。簡単なのは、日本の会社に就職して就業ビザをとることです」


犬「つてはあるんですか」


李「それで、石川県の取引先に頼みに行ったんです。私を雇ってくれないかって」


犬「石川県に住むんですか」


李「いえ、それじゃ意味がありません。息子の学校は東京ですから。その会社は東京にも事務所があるから、そこで雇ってもらおうと思って。もし、私が働いて会社に貢献すれば給料をもらうし、役に立たないと判断されれば、いったんもらった給料を全額返すって言ったんです」

犬「いつごろ移住するつもりですか」

李「できれば来年の3月までに移住したいです」

犬「うまくいくといいですね」

 熱炭プルコギがなくなって、サムギョプサル(ブタ三枚肉の焼き肉)を追加しました。

犬「息子さんは元気ですか」

李「ええ、この近くでアルバイトしていますよ。屋台でホットクを売ってるんです」


 ホットクとは、薄いホットケーキのようなもので、中に黒砂糖やシナモンをいれたおやつ。

犬「あとで行ってみましょうか」

李「いや、父親が見に行くと、監視するようで嫌がるから」


 焼酎を二本空けたところで、店を変えることにしました。

犬「職安通りの向かい側に韓国バーがあるはずです」

 行くのはずいぶん久しぶりですが、幸い、店はまだありました。


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