慰安婦を利用するホンダ議員

　また，慰安婦を個人的な目的に利用しようとする人が出てきた。

　今度は日系議員が米国下院に決議案提出です（中央日報２月１日）。

「日本軍従軍慰安婦の希望は大きなものでない。日本政府が犯罪事実を認め、謝罪し、歴史的責任を取ることを望んでいるだけだ。和解するためには過去を忘れてはならない」。
　日系のマイク・ホンダ米国下院議員（６５、民主、カリフォルニア）は先月３１日、従軍慰安婦決議案を下院に提出し、このように述べた。決議案は、日本が従軍慰安婦に加えた集団強姦と強制堕胎、人権蹂躙は史上類例がない残酷な蛮行だったと指摘、日本政府が公開的に歴史的責任を認め、日本首相が公式声明を出して謝罪することを求める内容だ。

　このホンダ議員，米下院の唯一の日系議員。１９４１年にカリフォルニア州で生まれ、日本の真珠湾攻撃のあと「家族全員，外が見えないよう窓がカーテンで覆われた車に乗せられ、どこかに連れていかれ」、１９５３年までコロラド州の強制収容所に収容された経験をもつ。これについて，米国議会は１９８８年に市民自由法を制定、第２次世界大戦当時、米国内の日系米国人たちを強制収容所に送ったことを公式に謝罪した。同様に，日本政府も従軍慰安婦問題について公式に謝罪しろ，という主張をしているようです。

　アメリカ政府の人種差別政策と，いわゆる「従軍慰安婦」をいっしょにされてもねぇ。

　目的は，カリフォルニア州に多数居住する韓国系米国人の票田にアピールすることにあるのは明らかです。でも自分でもよく知らないであろう従軍慰安婦問題を，このように票集めに利用するのはいかがなものか。
　この問題について論じるには，少なくとも秦郁彦『慰安婦と戦場の性』（新潮社，１９９９年）ぐらいは読んでいてほしいものですが，たぶん日本語，読めないだろうなあ。

　コリアンにアピールしたいんなら、９２年のロス暴動（黒人差別に端を発しながら、暴動の標的はコリアンに向けられた）をとりあげればいいし、戦争犯罪の告発をやりたいなら，むしろベトナム戦争時に多数存在した慰安施設の問題とか，米国が広島・長崎市民に加えた「史上類例がない残酷な蛮行」だとかをとりあげるのが適切じゃないでしょうか（票にはつながらないだろうけれど）。

　旧敵国に住み，その国から被害を受けた日系米人が，自分と直接関係のない故国の行為を糾弾するっていうのは，どういうことなんだろう。
　ウズベキスタン，カザフスタンに強制移住させられた高麗人（コリョサラム）が，ベトナム戦争における韓国軍の集団強姦，虐殺行為を糾弾するようなものでしょうか。違うのは，ウズベキスタンにベトナム系ロシア人の票田がないことか。

　ホンダ議員は、声明の最後の部分でこのように訴えた。
「慰安婦というくび木を抱いて生きてきた残り少ない生存者たちが、力尽きつつある。彼女たちが少しでも心の平和を得るように助けなければなりません。」

　彼女たちに平和を与えるには，票稼ぎや学位取得といった個人的目的のために彼女たちを担ぎだし，心にもない嘘を言わせ，見せ物にしたりすることではなく，そっとしておいてあげるのがいちばんだと思います。