偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏334別山(富山)

2011年08月15日 | 登山

別山(べっさん) 不動明王(ふどうみょうおう)

3341 【データ】別山 2880メートル▼25000地図 立山、剱岳▼最寄駅 富山地鉄・立山駅、JR大糸線・信濃大町駅▼登山口 富山県立山町の室堂ターミナル▼石仏 別山と真砂岳の鞍部

3342 【案内】浄土山、雄山と続く立山三山の一番北側に位置する別山は剣嶽の展望台。帝釈天を祀った木祠の前に雪渓の雪どけ水をあつめた硯ヶ池がある。立山修験道の峰入りの様子はまったく分からないが、三山駆けの立山禅定者はここまで足をのばし、山頂に祀られている帝釈天(須弥山の頂上にある刀利天の主)に詣でて、剣嶽を仰いだに違いない。そして室堂まで一気に下って行く。その下降点は別山から真砂岳側に少し下った鞍部で、不動明王が祀られている。江戸時代の天保15年(1844)に立山に登山し3343 3344 『立山遊記』(正橋剛二解読。1995年、桂書房)を残した金子盤蝸もこの道を下っている。別山から「南ニ向ヒ小石ノ間ヲサラサラト下レハ地獄ノ辺ヘ下ル也。下リ路ハ雪多シ、雪上ヲ往く事七八丁斗り也。室堂ノ下へ出レハ玉殿岩有り」と記し、雪渓を下って玉殿岩屋に出ている。この道、いま雷鳥沢から真砂岳に通じる道より北側にあったと思われるコースで、すでに消滅している。この下降点にある不動明王は頭部がない立像。右手の剣、左手の羂索から不動を判断できる。阿弥陀如来を本尊とする立山だが、修験者を守護するのはやはり不動明王、ということで祀られたのだろう。

【独り言】血の池 別山の不動石仏がある鞍部は風の通り道で、地獄谷の硫黄臭が流れていました。そのためか、不動に供えられたお賽銭の10円硬化が真っ黒に錆ついていました。足元にはその地獄谷が見えます。立山の地獄でぜひ紹介したいのが血の3346 3347 池地獄です。血の池は女性が落ちる地獄でした。女性は“つきもの”で流す血で大地を穢すゆえ、血の池に落ちるとされました。それを救うのが血盆経で、立山登山は血盆経を血の池に納めることも重要な目的でした。金子盤蝸の『立山遊記』には「岩峅ニテ僧ノ授くル血盆経ヲ池中へ投入ル事也。池ハ血ニ非ス。硫黄ノ気赤色ニナリタル也。(略)登山ノ者日々血盆経ノ紙ヲ投ぐル故、今ハ池モ埋もレ甚だ浅シ」とあります。登山者が投げ入れる血盆経で埋まってしまった血の池。いまその痕跡はまったくなく、お花畑のなかの綺麗な池になっていました。数ある池のうちのいくつかは確かに赤色ですが、血盆経のいわれを知らなければ、これも神秘的な池に見えるだけでしょう。『立山遊記』を解読した正橋氏によると「血盆経を二枚一組として授かり、一枚は血の池に納め、一枚は家へ持ち帰り、家内の女性の死に際し、お棺の中に納める」ということで、立山は、女性の極楽往生を願って登る、男の罪滅ぼしの山だったような気がしました。

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