偏平足

山の石仏を訪ねて放浪中。その折々に出会った石仏を案内。

石仏736氷上山(岩手)氷上山三社大明神、天婆

2017年06月09日 | 登山

氷上山 氷上山三社大明神(ひかみさんしゃだいみょうじん)、天婆(てんば)

【データ】 氷上山 873メートル▼最寄駅 JR大船渡線・竹駒駅▼登山口 岩手県陸前高田市竹駒の玉の湯温泉▼石仏 氷上山841標高点、地図の赤丸印。青丸は中宮、緑丸は東宮▼地図は国土地理ホームページより

【案内】 かつて奥州藤原氏を支えた金、それを掘り出したのが氷上山で、その山の守護神が氷上三社大明神。氷上三社は西宮の衣太手(きぬたて)大神、中宮の登奈孝志(となこし)大神、東宮の理訓許段(りくこたん)大神の三柱。いずれお延喜式神名帳の陸奥国気仙郡に明記された神々である。登山口は西側の玉山金山があった玉の湯からのコース、南側氷上神社からの中央コース、東側の普門寺からのすずらんコースの三か所。今回はかつての金山のなごりも見たかったので、距離は長いが歩きやすい玉の湯から登った。

 三社で最初に出会うのが西宮の社殿。理訓許段大神を祀る西御殿である。鉄板造作のオレンジ色に塗られた社殿は、扉を固く閉ざした無粋な造り。この後に出会う中宮、東宮も同じ造りである。「氷川三社大明神」銘がある石塔は西宮社殿近くの岩の上に立つ。石塔側面には「御祈祷原 西宮 東宮 中宮」銘がある。御祈祷原は、西宮と中宮の間にある草原・祈祷ヵ原。この草原に氷上の三明神を呼び出し、祈りをささげたのであろう。三社とも古くからこの山に祀られてきた神々なのだろうが、詳細はわからない。石塔には「南方大洋飄颻金華島」銘もある。近くには「雷神」の文字塔も立つ。

 登奈孝志大神を祀る中御殿(中宮)=写真上=は祈祷ヶ原の先。西御殿と同じような造りの社殿が木立の中に建つ。衣太手大神を祀る東御殿(東宮)=写真下=で北上山地の展望が開ける。


【独り言】 天婆 氷上山には氷上三山明神山とは別に、金山の神として竹駒神社が祀られていました。いまは山麓の竹駒町に降ろされ=写真上=、玉山金山があった玉の湯への道はこの神社から始まります。現地の案内図によると竹駒神社は玉の湯奥の鉱山に祀られていました。地図には不動院、西光寺、荘厳寺などの跡も記されていますから、鉱山の随所に神仏が祀られたようです。他にも玉の湯に入る川沿い道には金の採掘時に祀ったさまざまな神が残り、その一つが大天婆様の石祠=写真下=です。案内には「鉱山の繁栄と、そこに働く人々の安全を守る神様」とあります。初めて聞く神ですが、鉱山の入り口に当たる場所にありますから、東北南部の山の入り口に多い結界の姥神のような役割を担っての鎮座ではないかと思いました。
 柳田国男の著書のなかに「テンバ」という名称がいくつか出てきます(注)。テンバは山窩(さんか)と言われた漂流民で、主に箕や籠や笊を作って売るのを生業としていたようです。鉱山において箕や笊は必需品であり、そこで働く人たちは彼らの来訪を待ち望んでいたはずです。それがいつしか客人神(まろうどがみ)のようになり、テンバに大をつけて大天婆の字を当てて祀ったのかもしれない……などとも考えてみました。どうも東北の山を歩いていると、頭もあらぬ方に歩いてしまうので困ります。
(注)柳田国男著「山の人生」、「イタカ及びサンカ」、「巫女考」の「神子の夫、修験の妻」、「毛坊主考」の「法師戸」ほかにテンバが取り上げられています。

『岩手県』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 石仏735箱根山(岩手)石工・... | トップ | 石仏737白水山(静岡)題目塔 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。