偏平足

山の石仏を訪ねて放浪中。その折々に出会った石仏を案内。

石仏731虎捕山(福島)狼

2017年05月19日 | 登山

虎捕山(とらとりさん) 狼(おおかみ)


【データ】 虎捕山 705メートル(国土地理地図の山名無し。山津見神社北の705.2三角点)▼最寄駅 JR常磐線・原町駅▼登山口 福島県飯舘村左須の山津見神社▼石仏 山津見神社境内、地図の赤丸印。青丸は山頂本殿▼地図は国土地理ホームページより

【案内】 虎捕山の登山口にある山津見神社は山の神を祀る神社。〝山津見〟は古事記に登場する山の神。山麓に拝殿、山頂に本殿を祀る。拝殿の境内を護る狛犬は狼で、山津見の使いである。二対ある狼はどれもリアルな像容、阿吽の形で境内を見つめている。それほど古い造立ではなく、一つには「昭和四十一年」銘がある。


 拝殿の天井を飾る狼の絵は、平成23年の震災による全村避難中に焼失したが、昨年復元されたばかり。その数242枚。焼失前の絵は明治37年の拝殿建築時のものと、神社の案内にある。狼が山の神の使いになった経緯は、この山に住む賊を退治するときに、案内役をした白狼という伝承に因む。神社では火難盗難除けとして、狼の絵を刷った御札を出している。神社の案内では「御眷属」という神札があり、「一年間に限ってお貸ししており、一年過ぎると一応お返しいただき、又新たにお受けしていただきます」とある。

 本殿がある山頂へは神社の右手から登る。しばらくは緩やかな道が続いて、講中が立てた記念碑がある手水舎で道は二分する。直接登るコースと尾根コースで、二つとも本殿下で合流する。どちらも上部で鎖場や梯子が連続する。鎖のなかに「明治廿一年」銘のものがあった。本殿(奥ノ院)にある手水鉢は「明治九年」の造立。山津見の信仰は江戸時代末期から火伏盗難除けの神として近隣に広まったと思われる。

【独り言】 神の使いとされた狼は大口真神として祀られ、その状況をこのブログでもいくつか案内してきました。静岡・春埜山、東京・御岳山、埼玉・三峰山などが主な本山で、いずれも中世から続いた修験の霊地だった山で、近世に統治者の後ろ盾が無くなって庶民信仰に舵をきったときに表出した信仰です。大口真神の真神は狼のこと、大口は枕詞であることは、奈良県明日香村の真神の原の故事から、拙著『東国里山の石神・石仏系譜』(注)で紹介しました。
 その最大の信仰圏があったのは埼玉県秩父の三峰山で、関東から甲信地方の里山に勧請された三峰山を見ることができます。石像が狛犬代わりに境内に立つのはどこも同じです。なかでも各地に勧請された三峰山は、犬の像を借りて祈願成就には二体にして返す習わしがあるので、境内や奥ノ院の妙法ヶ岳には狼の石造物が多数祀られてきました。
 それに比べると、山津見山が近隣の里山へ勧請された例、また御眷属の狼が石造物として造立された例はまだ見ていません。それは神社の案内にあるように、神札の貸し借りで済ませ、勧請することがなかったためではないかと思っています。
(注)田中英雄著『東国里山の石神・石仏系譜』の「奥多摩・秩父のお犬様を祀る峰」平成26年、青娥書房

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