KPOP! 愛だけがそこにある。

迷子になりに出かけよう。
月明かりのparadeへ。さあ、目を閉じて・・・

RABIN 小説 type 05「 慈雨 」

2016-10-20 05:00:17 | 93 parallel 4(書店員 豆)
*全てフィクションです。
ヘッニムはイメージです。(違うとしても怒らないでお願いします。)

《豆 編》




雨が降っている。


『ホンビナ、鈍色の空って綺麗だろう?』

静かな声でそう言って、じっと雨粒の音を聞いていた先輩に会いたい。

先輩の側にいた時は雨が好きだった。
なのに今は大嫌いだ。

雨の音を聞くと先輩の声を、姿を、思い出す。
今にも水の帳のむこうから帰って来るみたいで。

先輩にすごく会いたい。


やけに広い、独りきりの部屋のカーテンを閉める。

静かすぎて寂しくて、スマホを起動させると先輩の歌を流した。
大好きな曲が僕の周りをくるくる回り始める。

ずっと聞いてれば寂しくない。
部屋を満たしてくれるみたいで、目を閉じて音を拾う。ひとつひとつ・・・雨に隠れた月の裏側に消える前に手のひらに捕まえる。



この頃シガは僕のいる書店に来ない。
会いたいと思う日は会えてたのにどうしてだろう。

あんな事があった後も変わりなく優しくて、この前は普通に一緒に夜ゴハンを食べて、送ってくれたのに。
いい加減答えを出して欲しいって事だろうか?

でも・・・・・知らない。こんな感情は説明できない。



棚さしの本を整理していて、確認のために後ろに下がったら近くにいた人にぶつかりそうになってしまった。
背の高いその人は、避けずに僕のことを受け止めてくれた。あれ?もしかしたら・・・

「シガ?」
姿も見ずにシガかと思った。でも・・・
視界に入った靴はビジネス用の革靴で、シガのとは違った。
シガはいつも、カッコよくてこだわった靴を履いている。

「わ、ごめんなさい」
謝って振り向くと、鋭い目つきの人がその姿に似合わない声で「いえ・・・大丈夫か?」と聞いてきた。

「はい」
「届かないなら・・・俺が・・」
すごく優しい人みたいだ。
見た目と全然違う。
「ありがとうございます。じゃあ、あの1番上の棚にコレを」
せっかくなのでお願いする。その人は何も言わずに黙々と手伝ってくれた。

「助かりました!あの・・何か探してる本ありますか」
「うん・・・動物の・・」
「動物?飼う為ですか」
動物とは意外だ。どう考えても似合わない。
「見たくて・・・」

ああ、そうか。疲れた時に見たくなるのはわかる。
僕はその人と一緒に、動物関連のコーナーで写真集を散々眺めて話した。


結局、その人は写真集を一冊買ってくれて帰って行った。
「楽しかったな」
僕も小さい頃は獣医になりたかった。
そんな事を思い出して懐かしくなる。

「もっと入荷してもらおうかな・・・動物関係」
そうすればあの人とまた話せるかもしれないし、僕は孤独にならずにすむ。



それからたまに立ち寄ってくれるようになり、名前も『テグンさん』だとわかった。
優しくて、子供も好きみたいではしゃぐ子供たちを叱らずに諭してくれる。
僕はテグンさんともう少しゆっくり話したくて、呑みに行きませんかと誘った。

「俺のいつも行くとこで・・いいかな」
「はい!」
ウキウキとテグンさんと歩く。

明洞の近くで、屋台が立ち並ぶ所に行くとテグンさんは「ここ」と立ち止まった。
僕は友人達と屋台で呑むことはあっても、先輩とは外に呑みに行かなかった。
部屋でゆっくりする時間が好きだったから。
でも今は誰かといたくて、しょっちゅう外で食べるようになった。

「テグンさんは仕事帰りいつもここで?」
「だいだいね・・・あと、友達と・・呑むかな」
「僕もたまに呼んでください!」
「いいよ・・・」


そのお店でわりと時間をかけて呑んで、楽しく過ごしていると僕のスマホが点滅し始めた。
「出なくていいのか?」

テグンさんは気にしてくれるけど表示されてるのはシガからで、ちょっとムッとする気持ちもあって通話を拒否する。

「誰から・・だ?かけ直した方がいい」
「僕をほっとくのが悪いんです」
「年上の恋人か・・?」
「どうしてそう思うんですか。違います」
「大事な用だったらどうする。すぐに連絡した方がいい。すれ違い始めると・・・タイミングが合わなくなるから」

なるほど。そうかもしれない。タイミングが合えば、無理をすることもないのかも。

「じゃあテグンさんとはタイミングが合うってことですよね」
「そうだな。でもホンビナ、大事な人は見失うなよ」
「え・・・」

テグンさんは黙って僕の背後を示した。
振り返ると、屋台の影にシガが立っているのが見えてビックリする。
走って来たみたいで少し息が上がっている。

「シガ?なんで?偶然?」
「捜した」
「なんで。ずっと来てくれなかっただろ」
「ごめん・・。あのー、俺はビナの・・」
シガが言いかけると、テグンさんは静かに笑って「じゃあ帰るからホンビナを送ってやれ」と言い置いて立ち上がった。

「また呑みましょうね!テグンさん」
「ああ」

去り方もカッコよかった。(さりげなく支払いもしてくれた。)大人っぽい。

「ビナ、俺のいねえ間になにやってんだよ」
「だから!なんで。どうして捜したりするんだよ」

何なんだよ。僕の気も知らないで。

「仕事だし、しょうがねえだろ。本屋に行ってもビナいなくてさ・・」
「どうやってここがわかったんだよ」
「GPS」
「え?!」

スマホを見ると、確かにGPS設定がオンだった。
「シガがやったの」
「心配でさ・・・」
「勝手にしないでよ」
「俺いない時どうしてんだよ。1人で帰れるのか」
「シガと知り合う前は1人だったしね」
「心配なんだよ」
「だったら連絡してよ」
「寂しかったか?」
「・・・うんとか言うわけないだろ!!」
「怒るなって。送るよ。帰ろう」

シガに促されて屋台を出る。
「今日はクルマ置いて来たんだ。ここら辺進入禁止だろ」
「いいよ。地下鉄乗るから」
「一緒に行くよ。駅からは暗い道だろう、お前んとこ」
「平気だよ。どうせ・・・シガ帰っちゃうじゃん。
そのあと1人になるの嫌なんだよ」

「ビナ」

まずい。思わず変なことを言ってしまった。
独りになりたくないなんて、女の子が言うなら相手を落としたいときだ。
僕は、何を・・・・。

「ビナ、俺じゃダメか?お前の『先輩』には敵わねえのかな」
「・・・知らない。いや待って、そもそも男同士でまずいって。基本に忠実に」
「忠実にねえ・・。なら、いいだろ?お前がかわいいのは確か」
「かわいいとか言うな」

地下鉄の階段を降りながら、なんとなく気分が良くなってシガと話す。
もうちょっと一緒にいたいのは確かで、次の電車が遅れればいいのにと・・・・・思った。



*****

☆画像マスターさんのからお借りしています。

豆は〈書店〉て言ってておんしくは〈本屋〉って言ってるのわざとです。
〈先輩〉に連絡すればいいだけなのに、なんか遠慮というか、ためらってる豆ちゃん。って感じ。







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