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Masters of War ――ボブ・ディラン、ノーベル賞受賞に寄せて

2016-10-16 21:24:22 | 音楽と社会
 ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した。
 しかしながら、ディラン側の反応はそっけない。受賞にもかかわらず、コンサートで本人は一切それについてコメントせず、ノーベル賞を主宰するアカデミーの側も連絡がとれずにいる。こういうのがいかにもディランらしい。

 当ブログでは、一度ディランの Make You Feel My Love のカバーを紹介しているが、今回はディラン本人の歌っているバージョンとしての Masters of War という曲をとりあげたい。
 これは、初期のディランがギターとハーモニカだけでプロテストソングを歌っていた頃の曲だ。
 邦題は、「戦争の親玉」。
 この頃のディランとしても珍しいぐらい、ストレートかつ辛らつに体制を批判する歌になっている。今回のノーベル賞選考に際して“文学”として評価されたのはこういうのではない部分なのだろうが、当ブログではあえてこの歌にフォーカスする。他人の評価がどうだろうと、自分の聞きたいディランを聞くのがディラン流だろうからだ。
 歌詞を抜粋すると、こんな感じ。


  なあ 戦争の親玉たちよ
  銃をつくるやつら
  死の飛行機をつくるやつら
  爆弾をつくるやつら
  壁のむこうに隠れているやつら
  デスクのむこうに隠れてるやつら
  覚えておくがいい
  俺にはあんたたちの仮面の奥の顔がみえているってことを

  破壊のためにつくることのほかに
  なにもしないやつら
  あんたはまるでおもちゃのように
  俺の世界をもてあそぶ
  あんたは俺に銃を握らせ
  そして俺の目の届かないところに隠れ
  最初の一発の銃弾が放たれたとき
  遠くへ走り去っていくんだ

  あんたは決してみずから引き金をひかず
  ただ死者が増えていくのを見ているだけ
  あんたは屋敷に隠れている
  若者達の血は流れ ぬかるみに埋もれていくのに


  あんたは俺を愚かだというだろう
  だが 俺にもわかることがひとつある
  たとえ俺があんたより若いとしても
  それは イエス・キリストは
  あんたのしたことを決して許さないだろうってことだ

  ひとつ聞かせてくれよ
  あんたの金はすばらしいものかい
  そいつで許しを買うことができるのかい
  それができるとあんたは思うのかい
  死が訪れるとき
  あんたはきっと気づくだろう
  金で魂を買い戻すことはできないと

 
 ディランの反戦歌といえば「風に吹かれて」が有名だ。
 あの歌では、「あまりにも多くの人が死んだということに気づくには、いったいどれだけの死が必要なのだろう」というような問いかけがたびたび繰り返される。もちろんそれはそれでいいのだけれど、この強く糾弾するスタイルもなかなかしびれる。今回この記事を書くに際して歌詞を見ているうちに、あらためてそう思わされた。

 ちなみに、この歌はパールジャムがカバーしていたりもする。
 それは、あのマイケル・ムーア監督の映画『華氏911』にあわせて発表されたオムニバスアルバムに収録されている。その文脈においてはイラク戦争への批判として取り上げられているわけだが、そういう観点でこの歌の歌詞を読んでいると、そっくりそのままブッシュ政権への批判としても読めるということに気づくだろう。六十年代に発表された歌が半世紀経ってもそのままプロテストソングとして通用するアメリカという国の業を思わずにいられない。
 しかし、残念なことに、単にアメリカ批判というだけでは話はすまない。というのも、この歌は、なんだか日本にも通用するようになってきているような気がするのだ。
 いまいよいよ南スーダンで駆けつけ警護という新たな任務が自衛隊に課せられようとしているが、その可否をめぐる議論では、南スーダンで起きているのは「衝突」であって「戦闘」ではないといった言葉遊びのようなごまかしが横行している。これは、アメリカのブッシュ政権がテロ容疑で拘束した相手を「非合法敵性戦闘員」と呼んでジュネーヴ条約は適用されないといったり、水攻めや裸の強要といった手法を拷問ではないと言い張ったりしたのと似ている。ブッシュ政権は憲法の解釈を変えて捕虜虐待で自分たちの責任を問われないようにするなどということもやっているが、これもどこかの首相がやったこととそっくりではないか。いまの日本には、そういう悲しい現実があるのだ。
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