建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

JV企業体ならば 2

2017-07-18 10:39:05 | 建設現場

   ****** 企業体ならば その2 ****

私もサブとして出向した経験があるし、幹事会社の所長としてサブから出向社員
を迎えた事もある。

サブに出向する辞令が出た時は正直言って嫌だった。
「誰か代わりに行く人がいないの?」
「まあ1年チョットだから我慢してくれ・・・」
の決まった会話があるように、行く前から、
(1年間の我慢かよ……しかし、何で俺なんだよ…でもまあいいか…)

幹事会社の工事のやり方を学ぶチャンスである、と言うのは負け惜しみだ。

 こっちならば所長風を吹かしていれるのに、あっちでは幹事会社の人達総て
気を遣わねばならないし、勝手気ままに喫茶店でのコーヒータイムも我慢だ
なあ…
ではこの先面白くない。

何よりあちらさんの作業服を着る姿を想像したくないし、同僚には見られたく
ない。

でも、職人の増員手配と銭勘定は幹事会社の役割だから、私は工程表通りに段取
りをして《事故無し》に専念すれば、気楽であり、有休休暇も十分取れるだろう
と不埒(ふらち)な考えも出た。

(飲み屋に行ったら、その代金をどう伝票処理するかだ……な)
が、さし当たっての対策事項であった。

 出向先での仕事は案の定、鉄筋工事一式担当が躯体中の仕事である。

材料搬入検査願い・配筋検査願・圧接報告書・配筋写真立会い願……まあ鉄筋
工事担当中には設計監理者へ書類も行ったり来たりし、立会い検査に出たり
試験
場へ出かけたりして、気楽な時間はほとんどなかった。

配筋検査は監理者から何度も同じような手直し事項が指摘され、
「信用回復するのに、もっと上手い職人さんを連れて来ましょうか?」
と検査の度に頭に来るが、所長には言えないので、
(鉄筋屋の技量を基準にして、幹事会社の品質管理に合わせよう)
自分のペース配分に余裕を持つ事にした。

躯体期間はいつもなら仕上げ職種の見積書を検討し契約したり、予算書を見直
たり、出来高査定をまとめたりして忙しいのだが、出向している身分だから
首の
突っ込めない所もあり、原価監理の時間が少ない分、時間的に余裕があり、
何か
してみたいなという気分になった。

躯体工事が終わった時点で工程は少し遅れていたが、躯体工事期間は休みが
あまり取れなかったので、仕上げ工事は全員の休暇予定表を作って家族サー
ビス
が計画出来るようにした。

そのお陰で、祝日と連休の前後に休暇をまとめて、海外旅行を二度させて
もらった。

現場所長であれば工事期間中に一日たりとも現場を空ける事は、到底考えら
れない事だが、
サブに出向した恩恵として、有り難く又、楽しませて頂いた事
に感謝している。

幹事会社の現場職員から見れば、
「今回のサブはとんでもないヤツだった」
となっているでしょうね。

反対に、私が出向社員を迎えた現場の話では・・・、

「飲み屋の伝票はどうしてる?月に1度はこっちに出していいよ。それからガソ
リン代は現場の隣のスタンドで入れてよ、近隣対策費で少しは面倒見るから…」
と初めから出向者の鼻をくすぐっておいた。

早出残業のこの職業であり、バスに乗って出勤する訳にはいかないのに公的経路
の通勤費しか出ないので、マイカー出勤は大赤字である。

飲み屋に払う交際費を残して近隣対策費が予算書から増えるのは、経理が見れ
ば駄目だと言うだろうが、(仕方ないワさ)で堪えてもらおう。

出向の立場も心得ているつもりの私であるが、担当仕事は鉄筋工事を任せる
事にした。

「今度の人はどんなふう?」
と協力業者の親方や職長が情報収集に来る。

これっきりの現場だと思って、妙なところを追求して来られてはたまらない。
責任感が強い人の場合は、標準仕様書通りにしなければ幹事会社に迷惑がかか
ると思い、妥協する程度が見えなくなって、お金のかかる対応になる事が多い
で注意がいる。

何事にも相談してくれればいいのだが、他社の人という遠慮がどうしてもある。

その気まずさを取り除くのは、私の得意技である。
自分がサブに出向して嫌な面、嬉しい面を経験してるのだから、出向者に嫌な
思いをさせたくない心遣いさえあれば、楽しくやっていけるものだ。

幹事会社は予算書を隠すようにしているが、私は一切隠さないし鍵も掛けてない。

狭い現場事務所でコソコソやっていれば、疑心暗鬼になって職人に目が届かなく
なり、工程は遅れ、儲けも飛び、事故にもなる。

私はサブの出向社員に工事途中で、幹事会社として隠している最終利益を教える。

更に所長としての最終目標利益をオフレコとして本人に伝えるから、出向社員
も仕事に意欲が湧くし、現場もJVの枠を忘れたかのようにチームワークが
良く
なり、職人さんの笑顔も汗も輝きを増して来れば、JVとして現場を治め
たのは
合格だと思っている。

社内の上司・監理部門からは『とんでもない奴だ!』と恨まれてるけどね。

***************** 次回は気分を変えて《魚釣り》 を話しましょう。 

 

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