弁理士の日々

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1年前国会での伊勢崎賢治氏参考人発言

2009-01-16 23:16:46 | 歴史・社会
昨年11月末頃、当ブログへの検索ワードで「伊勢崎賢治」が増えたことがありました。伊勢崎賢治氏といえば、アフガニスタンでの武装解除を成し遂げた立役者として記憶しています。
いろいろ調べたところ、11月に「マガジン9条」で新しい発言をしているのを発見しました。さらにこのサイトの1年前の発言によると、伊勢崎氏は去年の11月に国会で参考人として証言しているのですね。

私が伊勢崎賢治氏についてはじめて知ったのも1年前です。「世界」誌の去年の11月号に、伊勢崎氏に対するインタビュー記事が載りました(こちら)。これを期に、伊勢崎氏による「武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)」を読み(こちら)、武装解除についての記事をこちらこちらに書きました。

調べてみると、伊勢崎氏が国会の参考人招致に応じたのは平成19年11月5日、衆議院の「テロ防止・イラク支援特別委員会」でした。私が伊勢崎氏について調べているちょうどそのときに、国会で発言されていたのですね。気付きませんでした。

衆議院委員会の議事録はこちらにあります。
この日の委員会には、参考人として、拓殖大学教授・森本敏氏、軍事アナリスト・小川和久氏、医療法人健祉会理事長・レシャード カレッド氏、外語大教授・伊勢崎賢治氏、衆議院調査局・金澤昭夫氏が呼ばれていました。

伊勢崎賢治氏の発言内容を読むと、1年前の議事とは思えません。現在の状況を十分に伝える内容になっていると感じました。

伊勢崎氏は、2004年以降アフガニスタンに足を踏み入れていません。それなのになぜ1年前当時のアフガンに詳しいのか。
去年の9月、アフガンに出兵している国の国会議員とアフガニスタンの議員団が参加するクローズドの会合がありました。日本からはなぜか伊勢崎氏だけが招待され、アフガン政策に対して本音の議論がありました。この会議に伊勢崎氏が出席していたので、アフガンの実情に詳しかったというわけです。

以下、印象に残ったことを書き記しておきます。

まずアフガンの治安問題。
国際部隊がテロリストせん滅のためにピンポイント爆撃を行うと、その周りの、戦闘員には絶対になり得ない女子、子供が巻き添えになるという、これは今大変な数に上っています。これがアフガン世論の反感を買っており、南東部では一般の農民がタリバンの方に寝返ってしまう。

次に麻薬問題。
世界で流通するケシの93%がアフガン産です。これだけ麻薬が増えているのは政治が腐敗しているからです。政府を構成する閣僚が、麻薬生産に邁進しています。

治安分野復興(SSR)
2003年当時、アメリカの主導で、健全な国軍、健全な警察、健全な司法システムを構築するとともに、旧国軍(北部同盟軍閥)の武装解除を目指します。この中で武装解除を日本が担当し、これだけが成功してしまうのです。国軍はまだまだ、警察は腐敗の温床になっています。
これでは武装解除としては失敗です。力の空白を生むからです。
北部同盟の武装解除を行い、その結果生じる力の空白が埋まらなければタリバンが復活します。
その後、日本はDIAGというDDR(武装解除)の後継プロジェクトをやっていますが、非常に評判が悪いです。これは内務省や警察を通じてやっているので、それが腐敗の権化なわけです。

《こういう現実の中で日本が何を果たすべきか》
2003年に武装解除を日本が成し遂げ得た理由は、美しい誤解、つまり日本は武力を背景にしない、大変力のある中立な国だとアフガンで見られていたためです。
この美しい誤解が今、崩れつつあります。日本自衛隊によるインド洋での給油活動を、アフガンの人たちが気付いたためです。

タリバンとの交渉。
「タリバンとの交渉というのは大変に困難を極めるだろうが、それしか出口がないというのが、共通認識になっている。そこに日本が決定的な役割をできると僕は信じている。」
人道援助
「アフガニスタンは、これだけ国際支援が入っているのに麻薬対策ができない。おそらく、人類史上極めてまれな、経験したことのない政治腐敗が進んでいると考えた方がいい。こういう国に対して人道援助というのは一筋縄ではいかない。」

自衛隊派遣
「今、自衛隊を、インド洋の活動を継続する、もしくは、地上部隊として出す、この考え方は日本国の国益にはならないと私は断言いたします。」
「2002年、日本は公的資金をNGOに託して、アフガンにNGOを送り出した。日の丸を背負ってアフガンに行ったわけである。
テロ特措法の問題で日本が自らを目立たせてしまった。」
(以上)


こうして衆議院委員会での発言を読むと、去年の「世界」誌の記事よりも踏み込んで発言していることがわかります。
このような発言が、国会の議事録の中に埋もれているというのももったいない話ですね。
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