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加計学園問題(3)

2017-07-17 12:22:39 | 歴史・社会
朝日新聞2017年7月16日朝刊の5ページに、1ページ全面で『「加計」問題 晴れぬ疑惑』とする記事が掲載されています。記事の内容を検討するのに先立ち、特区諮問会議の八田委員が書いた下記記事を参照します。

「加計学園の優遇はなかった」内部から見た獣医学部新設の一部始終
2017.7.11 八田達夫:公益財団法人アジア成長研究所所長
----内容抜粋------------------------------------
《文科省に義務づけられた「獣医学部新設の検討」》
2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」に、「2015年度中における獣医学部新設の検討」を成長戦略として入れて閣議決定することができた。これは必ずしも特区でなくてもよいから、何らかの方法での新設の検討を文科省に義務付けたものだ(なお、新設に当たっては、「石破4条件」が付けられた。これは、検討期限を切った上で、検討の際の留意事項を記載したものである)。
「新設の検討」というのは、新設ができるのならば「できる」と言い、新設ができないのならば理由を示す、ということである。
ところが文科省は、2015年度内に獣医学部新設を検討すると約束しておきながら、ずるずると2016年度に入っても検討に決着を付けようとしなかった。閣議決定に従わなかったのである。
特区側としては、2016年度中には告示整備や区域会議認定を行うべきだと考えていたので、業を煮やして、2016年9月16日に特区WGでヒアリングを行ったが、文科省は十分な検討をしていないことが明らかになった。そのため、事務局にはさらなる折衝を依頼し、山本幸三特区担当大臣にはさらなる督促をお願いした。

《今治市による獣医学部新設の提案》
2015年6月5日 愛媛県と今治市が、提案公募に応じて獣医学部新設を提案してきた。
2015年12月 それを受け諮問会議で、今治市が特区に指定された。指定目的の1つには、獣医学部新設が含まれていた。
2016年9月21日 「第1回今治市分科会」における、加戸守行・元愛媛県知事による説明は、自身が知事時代の鳥インフル対策で経験した研究機関不足の必要性を訴え、説得的だった。2016年9月30日の広島県・今治市特区会議では、今治市における獣医学部新設に関する詳細な提案を示している。
2015年12月の時点では、特区のなかで今治市だけが、明確な計画を持つ提案者であった。したがって、2016年9月16日の特区WGヒアリングを含め、9月から10月前半にかけての文科省督促でも、我々関係者は今治市での新設を念頭に置いていた。

《京都による獣医学部新設の提案》
2016年10月17日 京都が具体案をWGに提案してきた。それまでは3月に関西区域会議において概要を1枚の紙で提案していただけだったが、この日、初めて具体的な提案がなされた。
特区では、1つの区域で規制改革が認められれば、それが他の区域でも自動的に認められるのが原則だ。したがってこの段階では、最初にどの区域で獣医学部新設が認められたとしても、当時申請していた3区域すべてで同じように認められるはずだった。
ただし、1校目にはできるだけ早く新設してもらわなければならない。特区の評価は「速い」という点にある。事業者や自治体は多大なコストをかけて規制改革を提案している以上、スピーディに進めるのは当然のことだ。

《獣医学部新設を急ぐ理由》
2016年11月の諮問会議決定では、「……獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とされている。これは、2015年度内の検討の約束を文科省が守らなかったことで、特区事業としての獣医学部新設が予定よりも遅れていたため、最初の事業者および自治体には最大限急いでもらうことを意図したものである。
さらに、2016年11月の諮問会議決定に基づき、まず早期にとりあえず獣医学部ができ、その後それに他の大学が続くと予想していた。
しかし「1校に限る」という条件が付けられたために、今治市に続いて他の地域で直ちに新設することは難しくなった。WGとしては、最初の突破口を作れば、1校も新設しない場合と比べて、その後の新設の可能性がはるかに向上すると考えていた。しかし、「1校に限る」という政治的な判断は、あくまで獣医師会の意向に沿ったものであり、「制限せずすべて開放」という立場の特区WGの側や、ましてや首相が主張したためではない。
----内容抜粋終わり------------------------------------

朝日の記事にある「疑惑」をリストアップします。
2016年9月26日「藤原内閣府審議官との打合せ概要」
「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」(文科省が内閣府から伝えられた内容)
10月ごろ「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」
「設置の時期については、今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」(文科省が内閣府から伝えられた内容)
10月21日「10/21萩生田副長官ご発言概要」
「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」(萩生田光一・官房副長官と常磐豊・文科省高等教育局長が面会した際の獣医学部新設をめぐる発言)
11月1日「【内々に共有】獣医学部のWGについて」
「添付PDFの文案(手書き部分)で直すように指示がありました。指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」(内閣府から文科省に送られたメールの文面。添付文書には獣医学部新設の要件に「広域的に」「限り」などの文言が手書きで追加され、実質的に加計学園しか応募できなくなった)

八田氏によれば、2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」に「2015年度中における獣医学部新設の検討」を成長戦略として入れて閣議決定がなされ、「新設の検討」というのは、新設ができるのならば「できる」と言い、新設ができないのならば理由を示す、ということであるとしています。検討するのは文科省です。
ところが、期限である2016年3月に文科省は検討結果を示さず、「2017年9月16日に特区WGでヒアリングを行ったが、文科省は十分な検討をしていないことが明らかになった。そのため、事務局にはさらなる折衝を依頼し、山本幸三特区担当大臣にはさらなる督促をお願いした。」とあります。
国家戦略特区諮問会議は内閣総理大臣が主催していますから、「特区制度の趣旨に鑑み、迅速を旨とする」との方針が、首相や官邸から出ても何ら不思議ではありません。9月から10月にかけての文書(流出文書)については、「文科省に義務づけられている獣医学部新設可否の検討を早くやれ」と言っているに過ぎず、これ自体は納得できます。
そもそも、上記流出文書のいずれも、文科省に「加計学園に決めろ」とは言っていません。「文科省の告示(獣医学部新設は一切認めない)を修正し、設置認可審査の門戸を速やかに開放しろ(多分、2017年3月までの設置認可申請を可能にしろ)」と言っているだけです。
文科省としては、「新設すべきでない」との結論に至ったのであれば、その旨を理由と共に示せば良いだけです。多分、「新設すべきでない」との理由が示せなかったので、「新設する」との結論に納得したのでしょう。

11月1日の『は獣医学部新設の要件に「広域的に」「限り」などの文言が手書きで追加』について
京都がWGに具体的な提案を提出したのは10月17日です。それ以前に具体的提案をしていたのは今治のみですから、それまで、WGが今治のみを念頭に置いていても不思議はありません。最後の土壇場に京都の提案が出てきて、WGが困惑しただろうことは想像できます。
「急いで新設すべき1校目は、現時点で広域的に獣医学部が存在しない地域であって、1年以上前から具体的提案を提出している今治市に指定することが妥当ではないか」と考えたとしても不思議ではありません。

八田氏によると、獣医学部の1校目が特区で認められれば、2校目以降も認められるはずだった、としています。ところが、山本大臣が獣医師会の陳情に負けて、今年1月の告示に「1校に限る」を付加してしまいました。しかし所詮は内閣府・文科省告示(お知らせ)です。法律でも何でもありません。再度「2校目も認める」とする告示を出せば良いだけではないですか。しかし、最近の報道によると、京都産業大学は獣医学部の新設を諦めてしまったみたいですね。これもまた、安倍政権批判の材料にされそうですが。

《2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」とは何なのか》
『(3)新たに講ずべき具体的施策
ⅱ)残された集中取組期間における国家戦略特区の加速的推進
b)更なる規制改革事項等の実現
⑭ 獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
・現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。』
この文言が意味するところについて、解釈でもめています。
文章を前半と後半に分けてみましょう。
⑭ 獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
(A)現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には
(B)近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。
上記(B)からは、「近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、獣医師養成系大学・学部の新設に関して、全国的見地から本年度内に検討を行う。」との文章が読み取れます。「誰が検討するのか」という点について、八田氏、原英史氏(戦略特区諮問会議WG委員)は、「文科省である」と断定しています。高橋洋一氏は、「官僚が読めば間違いなくそのように読む」と言っています。
次に、(A)と(B)の関係について
「(A)の場合には、(文科省は)本年度内に獣医学部の新設の検討を行う」」という文章構造です。「(A)の場合」であるか否か、いつまでに誰が検討するのか、よくわかりません。
思うに、(A)の条件は、さまざまな政治的圧力を受ける中で、政治的に挿入された文章ではないでしょうか。種々の情報からすると、(A)の文言に関して、獣医師会が暗躍した形跡もあります。
いまになって、(A)の3条件+(B)の「近年の獣医師の需要の動向」を「石破4条件」と呼び、「新設を認可申請する学校側が4条件合致を証明しなければならない」とする論調があります。
しかし、この石破4条件は、「本年度内(2016年3月まで)に(文科省が)検討を行う。」とする文章の修飾節ですから、すでに期限が過渡しています。現時点で、越えるべきハードルとして現存しているかどうかすら、明らかではありません。

今までの経過を素直に解釈すると、獣医学部の新設について、『「特区制度」の趣旨に従って迅速に進めるべきところ、文科省の怠慢で遅れてしまったが、何とか1校目の開設に漕ぎつけた。残念ながら、獣医師会の横やりで、2校目は認められていない。』と解釈することが可能です(解釈1)。
しかし、加計学園の理事長が安倍総理のお友達であったことから、別の解釈(解釈2)「加計ありき」を呼ぶに至りました。そしてその解釈に基づき、安倍政権の支持率が急速に低下し、日本の政治が危機に瀕しています。
解釈1と解釈2のどちらが正しいか、判定するための決定打は恐らく存在しないでしょう。しかし、解釈1も十分にあり得る中、解釈2であると決めつけ、それによって日本の政治が翻弄されるのだとしたら、日本国にとって大きな損失であることは間違いありません。
残念なことです。
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