弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

対北朝鮮国連安保理決議

2006-07-17 13:03:46 | 歴史・社会
対北朝鮮について、日本が国連安保理で制裁を含めた決議案を提案し、一方これに反対する中ロは、当初議長声明でお茶を濁そうとしたのに対し、結局中ロの譲歩を引き出して、安全保障理事会が対北朝鮮決議を全会一致で採択するに至りました。この間、日本も7章を削除する譲歩を行いました。

これを称して、「日本の国連外交の限界」と批判する向きもあるようですが、私は逆にびっくりしています。

「外交とは何か、国益とは何か」(田原総一朗と岡本行夫の対談)において、岡本氏が日本外交のこれまでの特色を述べています。
「方針を決めるに際しては、まず『本件に係る貴任国の立場を至急紹介ありたい』と各国の日本大使館に電報を打つ。アメリカの立場はどうだ、フランスの立場はどうだ、ブラジルの立場はどうだ、インドの立場はどうだと見ていって、アメリカに近い中間的なところに自分を置いていく。だから、みんなのポジションが出そろわなければ日本のポジションが決められない。個別の案件で日本は何を座標軸とするかについて、突き詰めた認識がない。最近は変わってきているような気もしますが。」

日本外務省の仕事のやり方は以上のようなやり方だと思っていたので、今回、むしろ日本が最初はアメリカを引っ張っていったという外交方針にはびっくりしたものです。

また、最初にある方向で主張を繰り広げるとしても、主要各国がどこまで妥協してくるのか、相手の出方を見極めることがまずもって大切です。そのためには、主要各国のふところにどれだけ食い込んだ情報網を有しているかがポイントになります。
最近の外務省をめぐる各種不祥事、機密費不正使用事件、田中真紀子外相事件、鈴木宗男事件を通じて、外務省は機能不全に陥っているのではと想像していたのですが、今回はどれだけ各国に食い込んで落としどころを探ることができたのでしょうか。

日本外交について上記のように認識していた私からすると、最終的に、中ロの譲歩を引き出し、全会一致での安保理決議を実現したということは、日本外交にとって画期的であるようにも思います。

「ロシアの動きを十分に予測できなかった」との批判がありますが、鈴木宗男事件で日本外務省はロシアとの太いパイプを自分から破棄しているのですから、当然のように思います。その中で薄氷を踏みながら、最終的に日本外交がむしろ勝利を得ているのですから、立派なものです。

日本外務省は、機能不全状態を脱し、自立しつつあるのでしょうか。
現在の外務事務次官は谷内(やち)正大郎氏です。
外務省を糾弾する論陣を張っている佐藤優氏(過去ログ)が、谷内外務次官を誉めているそうです。これに対し外務省内部で「褒め殺しだ」との声が上がっているそうです。この間の事情は、日暮れて途遠しさんのブログで詳細に紹介されています。

日本外交は良い方に向かっているのでしょうか。

それと、今回は日本がたまたま非常任理事国であった立場をうまく活用できましたね。日本よりもっと北朝鮮に近接する当事国である韓国は、今回蚊帳の外に置かれてしまいました。
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