弁理士の日々

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尖閣に自衛隊を駐留させてはいけない

2011-12-13 22:03:22 | 歴史・社会
自民党の石原幹事長が、「尖閣諸島に自衛隊を常駐させるべき」と発言しました。
「尖閣諸島、買い上げて公的所有を」石原幹事長
読売新聞 12月13日(火)10時33分配信
『【ワシントン=鈴木雄一】自民党の石原幹事長は12日午後(日本時間13日未明)、ワシントン市の政策研究機関で講演し、沖縄県の尖閣諸島を公的所有として、港湾施設を整備するなどして実効支配をより強化するべきだとの考えを示した。
石原氏は昨年、尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件に言及したうえで、「尖閣諸島は個人所有から速やかに公的な所有にすべきだ」と述べ、国による民有地買い上げが望ましいとの考えを表明し、「漁船の避難港を整備し、自衛隊員の常駐も考えなければならない」とも訴えた。石原氏はまた、「中国の軍拡の動きを受け、わが国も防衛費を増やす努力をしなければならない」と強調した。』

私は、「尖閣諸島に自衛隊を常駐させてはいけない」という意見です。
紛争屋の外交論―ニッポンの出口戦略 (NHK出版新書 344)
クリエーター情報なし
NHK出版
この本のレビューを書かなければと思いながらなかなか進みません。
この本には、伊勢崎賢治氏と宮台真司氏との特別対談が掲載されています。上記石原幹事長の発言とのからみで一部を紹介します。

中国国内は尖閣諸島について、小平の1978年発言をベースにして収まっています。「主権問題は棚上げして共同開発しよう。次の世代にはわれわれよりももっといい知恵があるに違いない。」
(1) 主権棚上げ、(2) 実効支配は日本(パトロールは今までどおり日本がやる)、(3) 共同開発、の3本柱です。
それ以降の日本の対応も、小平発言を尊重してきました。2004年に尖閣諸島に中国の民間人が上陸したときも、小泉首相は事実上法務大臣に指揮権を発動させて強制送還をしたのです。

今回の尖閣騒動において、中国共産党は、勾留期間の最初の10日延長までは静観していました。ここで強制送還になることを想定していたようです。この間中国共産党は、日本政府に対して「今までの“事実上の協定”の線で行動してくれ」とのシグナルを出し続けたといいます。日本はこのシグナルを受けとり損ねました。

胡錦涛国家主席は、現在の中国首脳の中では比較的親日だといいます。一方中国では、海軍は反日で知られる江沢民ラインですから危なかった。今回の尖閣騒動でも、中国海軍が共産党の支配から離れて尖閣諸島に強硬上陸する危険性もありました。胡錦涛がよく抑えた。
ですから日本としては、胡錦涛主席を立てるように外交しなければなりません。
ところが日本政府は、前原国交大臣が「国内法に従って手続きを粛々と進める」と発言したりして、胡錦涛主席のメンツを潰すような行動に終始しました。これにより胡錦涛の立場は弱くなり、日本の国益が損なわれました。
胡錦涛主席としても、中国国内の強硬派を抑えこむためには、日本に対して強硬路線をとらざるを得なかったのです。

小平路線に沿った“事実上の協定”に従えば、「(1) 主権棚上げ、(2) 実効支配は日本(パトロールは今までどおり日本がやる)」であって、それは軍隊ではなく警察に準じるコーストガード(海上保安庁)がパトロールするという意味です。自衛隊という軍隊が出てきたら大変なことになってしまいます。

以上は、「紛争屋の外交論」の特別対談で宮台氏が述べていることを私なりに解釈した内容です。

中国国内の胡錦涛派(親日派)と江沢民派(反日派)の対立軸の中で、日本は胡錦涛を援護していかなければなりません。その胡錦涛も、日本が尖閣に自衛隊を駐留させたら、「もうこれ以上はムリ」ということになるでしょう。去年の尖閣問題で日本がさらに追加の10日勾留を認めたときと同じ対応が見られるはずです。

というのが、宮台発言を読んだ上での私の意見です。
自民党の石原伸晃幹事長は、この問題をどのようにとらえているのでしょうか。宮台氏が述べているような意見を理解した上で、「それでも自衛隊を尖閣に駐留すべき」と発言しているのでしょうか。自民党なんですから、外務省のチャイナスクールをはじめとする識者の意見を十分に聞いた上で発言してほしいです。
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