弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

憲法記念日によせて

2017-05-03 17:08:25 | 歴史・社会
本日は憲法記念日です。
以前、国会で、安倍総理が野党から「どのような内容の憲法に改正したいのか」と問われると、「憲法改正の方向は憲法審査会で論議すべきもので、私から述べるものではない」と答弁していました。
一方で、憲法記念日を前にして自民党の会(新憲法制定議員同盟)に出席すると、「(改憲の)機は熟した」とハッパをかけています。
自らは改憲の方針を有していないのに、一体どのような「改憲」の機が熟したのでしょうか。
同じ会合で、議連の会長・中曽根元総理は、「明治憲法は薩長同盟という藩閥政治の力の所産であり、現行憲法はマッカーサーの超法規的力が働いたことを考えれば、憲法改正はその内容にもまして、国民参加のもとに国民自らの手で国民総意に基づく初めての憲法をつくり上げるという作業だろうと自覚する。」と述べていました。

確かに、現行憲法は、日本が連合国の施政権下にある時期に、連合軍総司令部に示された英語草案をほとんど直訳してできあがったものです。その意味では確かに異常です。
マッカーサー総司令部から示された草案ですが、私は、「米国から強要された」とは思っていません。たまたま連合軍総司令部(GHQ-SCAP)の民政局に勤務していた少数の者たちが、(自国では認められなかった)自分の理想を日本国に実現したいとの希求の元、短時間で執筆したものと理解しています。
日本国民はこの新憲法を受け入れました。そして現在に至るまで、日本国民は現行憲法におおよそ満足しているものと、私は観ています。

マッカーサーが新憲法制定を急いだ理由、そして当時の吉田総理がそれを受け入れた理由は、早く憲法改正を行わないと、当時の極東委員会から「天皇制廃止」を言い出されかねない、という事情があったからだと、確か吉田茂本人が述べていたと記憶しています。

「自国の憲法は、国が完全に独立しているときに、国民の総意で決定すべき」というのは確かにその通りです。一方、現行憲法がその原則から外れるといっても、「だから全部ダメ」とは思いません。
必要に応じて、憲法の一部を改正することはされるべきです。一部改正のチャンスが生まれるのであれば、そして、現行憲法の制定過程がどうしても気持ち悪いのであれば、一部改正のチャンスに、憲法の残りの部分について信認投票を行ってもよろしいでしょう。

現行憲法の制定過程が気持ち悪い、というのであれば、自民党が制定した憲法改正草案の方がよっぽど気持ち悪いです。
私は、あたらしい憲法草案のはなしを持っています。自民党憲法草案について記述した本です。憲法論議では必要ですので、持っておくと便利です。
自民党草案のポイントをピックアップしておきます。
前文の冒頭:(現行)「日本国民は」→(改正)「日本国は」
第1条:(現行)「天皇は、日本国の象徴であり」→(改正)「天皇は、日本国の元首であり」
第3条第2項:(改正)「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」
第9条:現行2項の「国の交戦権は、これを認めない。」→削除
(改正)9条の新設2項、新設の9条の2(1~5項)、9条の3にて、安全保障について詳細に規定
第13条:(現行)「すべての国民は、個人として尊重される」→(改正)「すべての国民は、人として尊重される」
第24条1項:(新設)「家族は互いに助け合わなければならない」
《国民の義務》
3条:国旗及び国歌の尊重、9条:領土、領海及び領空の保全、12条:常に公益及び公共の秩序に反してはならない、24条:家族は互いに助け合わなければならない
《憲法を尊重する義務》
(現行)99条:国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員が、憲法尊重と擁護の義務
(改正)102条:憲法尊重の義務は国民が負う。国務大臣などは憲法擁護の義務を負う。

現行憲法の前文については、改正の議論の前に、「現行憲法の前文は、実はどのような意味内容を有しているのか」という点について疑問を持っています。今まで、このブログでも何回もアップしてきました。
日本国憲法は、GHQから提示された英語草案に基づいて、というかほとんどの部分はそのまま翻訳した文章が条文となっています。前文もそうです。
日本国憲法の前文は、美辞麗句が並んでいるものの正確な意味がよくわかりません。ところが、元になった英語草案を読むと、日本語では表現されないさまざまな情報が浮かび上がってきて、条文解釈をする上で非常に役に立ちます。このブログでも何回か紹介してきました。
憲法前文GHQ草案
第1段落 → 「日本国憲法前文(2)
第2段落 → 「日本国憲法前文(3)」(この部分は2012年12月に自民党安倍総裁に意見を提出しました(日本国憲法前文・三たび))
第3段落 → 「日本国憲法前文(1)
残念ながら、この疑問についての議論はまったく見ることができません。憲法改正の議論の前に、「現行憲法の条文は、実は何を意味しているのか」を徹底議論したいものです。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 再び“教育勅語” | トップ | 安倍首相が憲法改正の方向提示 »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。