弁理士の日々

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日本の対ロシア外交その後

2011-01-17 20:47:02 | 歴史・社会
前原外相 2月10日に訪露 領土交渉打開へ糸口探る
2011.1.15 14:17
『前原誠司外相が2月10、11の両日、ロシアを訪問し、ラブロフ外相と会談することが15日、固まった。複数の政府関係者が明らかにした。前原氏の訪露には、ロシア側の対日強硬姿勢を受けて停滞を余儀なくされている北方領土交渉を“リセット”し、改めて軌道に乗せる狙いがある。メドべージェフ大統領との会談も調整されており、領土問題打開への糸口を探ることになる。
・・・・・
政府は昨年末、メドべージェフ大統領の北方領土訪問の際、事前に情報をつかめなかったなどとして河野雅治駐露大使を退任させ、後任に原田親仁駐チェコ大使を起用する方針を固めている。政府関係者によると、この駐露大使人事は前原氏の訪露後に発令される見通しだという。』

メドヴェージェフ・ロシア大統領が国後島を訪問して以来の対ロ外交については、北方領土問題と日本外交駐ロ大使更迭と「闇権力の執行人」駐ロ大使更迭(2)で話題にしてきました。
さらに最近得た情報をフォローします。

1月10日の朝日新聞では、「日ロ外交 不信の連鎖 検証駐ロシア大使更迭」という特集記事が載っています。クレジットは「高橋純子、モスクワ=副島英樹」とあります。どのような記者さんでしょうか。
《メドヴェージェフ大統領の11月1日国後島訪問は、本当に事前にキャッチできなかったのか》
『河野氏をトップとする在モスクワ日本大使館が「北方領土を訪問する可能性がある」という公電を送ったのは、29日夜のことだった。
外務省幹部によると、重大な情報は「官邸に上げないことはあり得ない」。・・・ただ別の幹部は「官邸への情報は外交の玄人でない人が読んでも『行きそうだ』と分かるような内容になっていなかったかもしれないと語る。
官邸サイドはどうか。スタッフの一人によると、官邸側が10月31日に「本当に行かないのか」と念押ししたのに、外務省幹部は「行かない」と答えたという。』
官邸に外交の専門家はいないのでしょうか。そんなことはありません。内閣官房副長官補として、外務省からは河相周夫氏が官邸に入っています。河相氏は昨年1月に就任しています。外務省から官邸に上がった情報は河相氏がチェックしているはずですから、たとえ外務省方言で書かれた情報でも読み解けたはずです。
官邸側が外務省幹部に「本当に行かないのか」と問いただしたとされるとき、河相氏がどのような対応を行ったのかも気になります。

《河野大使を日本に呼び戻して官邸で事情を聞いた際、管首相らはぶち切れたのか》
『大統領の訪問直後、官邸は河野氏を帰国させて事情を聴取。・・・その場で首相は河野氏に「情報収集の強化」を指示。「イラ管」が爆発するような場面はなかった。』
駐ロ大使更迭(2)で取り上げたような、「<駐露大使更迭>私はロシアに詳しくない…首相、怒り爆発」という場面は実際にはなかった、ということでしょうか。

『官邸と外務省のすれ違いが今回の大統領の北方領土訪問への対応の遅れにつながった。ある同省幹部は、「政権交代後、『政治主導』の名の下で官邸と外務省の神経が切れた」と語った。』

《日本はロシアに対してどのようなメッセージを発してきたのか》
『河野氏が大使に任命された09年2月、メドベージェフ大統領と麻生太郎首相(当時)は首脳会談で、大統領提案の「独創的アプローチ」の下で領土交渉を進める方針を確認。北方領土交渉の進展に期待が高まった。
だが、同年5月20日、麻生氏は国会で北方領土について「ロシアによる不法占拠」と答弁。法律家出身の大統領は激怒・・・』
『だが、同年9月の日本の政権交代で、ロシア側の期待が再び高まる。鳩山由紀夫首相(当時)と会談した大統領は「領土問題を含めた新たな道筋をつけるように努力したい」と意欲を示した。
にもかかわらず、10月には前原沖縄・北方担当相(当時)による「ロシアの不法占拠」発言で冷却化。12月に訪ロした岡田克也外相(当時)はロシア側の一方的な譲歩を迫り、「刺し合うような雰囲気」(外務省幹部)だったという。』
鳩山政権時代、前原氏が「ロシアの不法占拠」発言をしたのですか。その前原氏が外相となり、この2月にロシアを訪問するというのですね。ロシア側と信頼関係を結ぶのは至難の業といわざるを得ないでしょう。

《管首相のスタンス》
『「歴史はいいから、それよりも戦略をくれ」
管首相は最近、北方領土問題について、外務省幹部にこう語った。』
官僚は戦略の選択肢をいくつか提示するのが仕事です。歴史を踏まえて、その選択肢の中から政策を最終的に決断するのが首相の仕事です。首相が歴史を把握せずに、官僚から政策の結論を得ようとする態度は、首相としての資質が欠けることを自白しているようなものです。困ったものです。

河野大使に代わって次期ロシア大使に就任するという原田親仁氏については、また次の機会に。
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