弁理士の日々

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伊勢崎賢治「自衛隊の国際貢献は憲法九条で」

2009-01-20 20:58:12 | 歴史・社会
以前このブログの、伊勢崎賢治「武装解除」で書籍「武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)」を紹介し、1年国会での伊勢崎賢治氏参考人発言1年前の衆議院での発言についてコメントしてきました。

その後、伊勢崎氏が以下の本を執筆していることを知り、読んでみました。
自衛隊の国際貢献は憲法九条で―国連平和維持軍を統括した男の結論
伊勢崎 賢治
かもがわ出版

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内容は、書籍「武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)」や1年前の衆議院での発言と重なりますが、それらを再整理した上で、伊勢崎氏の意見を明確にした書籍といえるでしょう。

憲法九条があるおかげで、日本は、自国の始末を自国でつけられない半人前の国家となっていることは明らかです。しかし、幸か不幸か憲法九条を背負っていることは間違いなく、この状況を逆にメリットとできるのであれば、そのメリットは最大限生かすべきです。

アフガニスタンにおいて日本が責任を負った「武装解除」プロジェクトにおいて、伊勢崎氏は最初の頃に責任者を務め、見事にその任務を果たしました。もちろん、アフガニスタンの治安回復の全プロジェクトのうち、国軍の創設、国家警察の建設、司法の確立、麻薬の撲滅にまったく成功していないなかで、武装解除のみが成功してしまったことは、全体としては成功とはいえず、むしろ「力の空白」を生んでタリバーン復活の余地を与えてしまい、そういった意味で「失敗」であった、と伊勢崎氏は述べています。しかし、「武装解除」単独プロジェクトとしては任務を果たしたわけです。

伊勢崎氏の「武装解除」プロジェクトにおける任務遂行の過程で、伊勢崎氏が実感したことは、「日本が憲法九条を有し、戦争を放棄しているという現実が、現地での信頼を得る上で大きな役割を果たした」という点です。
米国主導のアフガニスタン戦争が終結した後、アメリカ傀儡といえるカルザイ政権、特にその国防省を牛耳っていたのは、旧北部同盟の軍閥でした。アメリカですら国防省の軍閥支配を排除することができなかったなかで、伊勢崎氏が主張することにより、国防省から軍閥を排除することに成功しました。
「アフガニスタンの軍閥は、われわれが行くと、例外なく言う。『日本だから信用しよう』と。
アフガニスタン人にとって日本のイメージは、世界屈指の経済的な大国で、戦争はやらない唯一の国というものだ。もちろん、アフガニスタン人の軍閥が憲法九条のことなんてしるはずもない。しかし、憲法九条のつくりだした戦後日本の体臭というものがある。九条のもとで暮らしてきたわれわれ日本人に好戦性がないことは、戦国の世をずっと生き抜いてきた彼らは敏感に感じ取る。そういう臭いが日本人にはあるのだ。これは、日本が国際紛争に関与し、外交的にそれを解決する上で、他国には持ちえない財産だといえる。そういう日本の特性のおかげで、僕らは、他国には絶対できなかったことをアフガニスタンでできたのだ。」

ただし、アフガニスタン人の上記認識は「美しい誤解」です。実際には、日本はアメリカの同盟国であり、海上自衛隊をインド洋に出動させ、アメリカ軍に協力しています。イラクには武装した陸上自衛隊を派遣しています。

伊勢崎氏は最後に結論づけます。
「日本は今、アフガニスタン安定のカギを握るSSR(治安分野復興)の再構築、そしてタリバンとの政治的和解について、積極的にビジョンを表明するべきだ。DDR(武装解除等)の時がそうであったように、それらにおいても日本は他国にできない能力を発揮することになると思う。
ここに、憲法九条を持った日本の役割がある。他の国では果たせない役割がある。そして、何よりそれは、主体性のある対米協力である。」


そのほかのポイントを列挙すると・・・
「(安全保障の)仕事をやる場合、重要なのはお金なのである。お金がなければ何もできないし、お金を出す国が絶対に一番偉いのである。
日本は、憲法九条があったから、軍事的貢献は難しいということで、お金を出すことに集中してきた。・・お金を出してきたことは恥じることではない。誇りにすべきことだと思う。」
「お金を出す条件を明確にすることも大切だ。『このお金を受け取るなら、これが条件』という出し方に習熟する必要がある。」
「(湾岸戦争のときにお金をいっぱい出したのに)感謝されないのは、言われるままにポンと出して、何も言わなかったからである。」(出すのが遅かったという点もあります。)
「日本の外務省は、被援助国に条件を付けて援助することについて『主権侵害』『内政不干渉の原則に反する』という。しかし(これは)内政干渉には当たらない。なぜかというと、相手国には援助を拒否するという自由があるからだ。」
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1 コメント

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Unknown (ASA)
2009-01-21 23:32:38
>武装解除」単独プロジェクトとしては任務を果たしたわけです。
つまりは9条のおかげで新しく武装勢力の勢いをつけた、と

>日本のイメージは
戦争に負けて臆病になったから戦争しかけられることもないし強く言えば金をぽんと出してくれるゴマすってりゃ手のひらで踊ってる国、と留学イスラム教徒の人等に言われる

>条件を付けて援助することについて
条件無く出してきてくれる国にすりより日本は切り捨てる
自分ならそうする
受け取るだけ受け取って逃げることも出来る

ま、世の中かんたんには事は動かん
返信する

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