弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

靖国神社参拝と遊就館訪問(2)

2009-04-09 22:46:17 | 歴史・社会
前回に引き続き、靖国神社の遊就館訪問記です。

「靖国問題」は、3年前の2006年に一つのピークがありましたが、その後はマスコミの話題に上りません。小泉政権が終わり、後継首相が靖国参拝を行っていないことから、韓国・中国が靖国問題を取り上げなくなったためでしょうか。

3年前の私のブログから拾うと、
東郷和彦氏「靖国再編試案」
「(靖国神社が宗教法人化した)ことによって、先の大戦時の歴史観をそのまま顕示し、軍事博物館に準じる施設を宗教法人が作ってしまった。遊就館で示される歴史観は、日本国民のなかでもコンセンサスがないし、国際的にはもっとコンセンサスがない。しかし、政治家はそのことについて何も言えない。憲法20条が盾になっているからです。」

靖国神社に対する韓国の考え方
2006年8月16日ソウル発
「韓国政府は15日の小泉首相の靖国参拝に対し「A級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社」との表現で非難したが、今後は靖国神社自体が「侵略戦争を正当化する」施設であるとの判断に基づき、靖国問題に対応していく姿勢を示したといえる。
韓国の青瓦台(大統領官邸)関係者は聯合ニュースに対し、靖国神社内の「軍事博物館」である遊就館は軍国主義を美化する施設と指摘。分祀した後に政治家らが参拝しても容認できないとし「靖国問題はA級戦犯の分祀では解決できない」と言明した。」

(『「外交」とは何か、「国益」とは何か』から田中行夫氏の発言)
「靖国神社の展示や主張を見ると、それはブッたまげますよ。明らかに侵略以外の何者でもない満州国について「現在は中国が支配し東北部と称している」と説明している。南京については「(日本軍が入ったから)南京城内では一般市民の生活に平和がよみがえった」とこう書いてある。こんな歴史観というか過去についての認識は、アジアどころか世界中どこへ行っても相手にされない。」

中国が仕掛ける遊就館戦争
民主党の浅尾慶一郎参議院議員の話として、
「日本に駐在する各国外交官の間で、昨年末頃からなぜか靖国神社見学がブームになっています。それも目的は本殿ではなく遊就館。明らかに日中の対立を意識したもので、何らかの働きかけがあったことは想像できます。そして問題はこれが効果を生んでいること。米国大使館の外交官の一人は、遊就館の展示物を見てかなり驚き、『中国が怒るのも無理はない』との感想を漏らしたと聞きました。」と紹介しています。
「この遊就館を見学すれば日本の歪んだ歴史観がわかると、駐日外交官たちに宣伝したのが実は中国大使館であるとの噂は根強い。昨年末から靖国参拝への厳しい論調が海外で目立つのは、この工作が奏功したからという見方もある。」

以上のように、靖国神社の遊就館は要チェックだと認識していながら、それから3年近くが経ってやっと今回の訪問となりました。

有料の展示スペース全体では、結構な量の展示物で、全部を見て回ったらすっかり疲れてしまいました。

まず第一印象として、“ぶったまげるような右傾の展示”ではありませんでした。普通に見て回ったら、主に戊辰戦争以降の内戦及び日本が関与した戦争の内容を順に展示しているだけ、との感想で終わったかもしれません。

私の場合は、以下の3箇所の展示説明を筆記してきました。
《満州の歴史》
「・・・・・・満州事変の後に清朝の宣統帝を元首とする満州国が建設されたが、現在は中国が支配し東北部と称している。」

《国際連盟脱退》
「満州の地方指導者たちは関東軍の支援のもとに清朝の誰それ(溥儀だったか?)を迎え満州の分離独立を宣言した。我が国は満州国を承認した。国際連盟は中国の主権を残しつつ満州を自治地域とするリットン報告書を採択し、我が国はこれに抵抗して連盟を脱退した。」

《南京事件》
「昭和12年12月、南京を包囲した松井司令官は隷下部隊に外国権益や難民区を朱書した要図を配布して「厳正な軍記、不正行為の絶無」を示達した。敗れた中国軍将兵は退路の下関に殺到して殲滅された。しないでは私服に着替えて便衣隊となった敗残兵の摘発が厳しく行われた。」

南京事件の説明については、上記田中行夫氏の説明とは異なった展示となっていました。この3年間のうちに記述内容を変更したのでしょうね。しかしそれでも、南京事件の説明としては、日本側にとって都合のいい事実のみを抽出しており、都合の悪い事実については口をつぐんでいるという態度であり、納得のいく説明とは言えません。


全体として膨大な展示の中で、上記3箇所の説明は別に大書されているわけではなくひっそりと展示されているのみです。私は、特に注目しわざわざメモに取ってきましたが、そうでもなかったら、気付かずに通り過ぎている可能性が大きいでしょう。

3年前とは異なる展示になっているようですから、今でも外国人が見て驚き、結果として日本の国益を損なうような影響を及ぼしているのかどうかは不明です。昔と今とを見比べている人の意見を聞きたいものです。
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2 コメント

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Unknown (しげちゃん)
2009-04-10 22:03:00
いつも楽しみに拝見しております。
チザイを業務とするものです。
亡き父が戦中派だったこともあり、遊就館には、毎年8月15日に行っています。
記憶の範囲ですが、展示物やその説明は以前から変わらないように思います。外国のこの種の施設と比較はできないのですが、靖国神社の施設としては相当抑揚を抑えた展示となっているように思います。
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遊就館 (ボンゴレ)
2009-04-11 00:00:22
しげちゃんさん、コメントありがとうございます。またこのブログを見ていただき、ありがとうございます。

そうですか。遊就館の展示はあまり変わっていないのですね。そうすると、3年前のあの騒動は何だったのか、と思います。私もあのときすぐに行ってみるべきでした。

もし今と同じ展示なのだとしたら、この展示を韓国の人が見たら、中国の人が見たら、アメリカの人が見たら、一体どのような気持ちになるのか、という観点でもう一度訪れてみようと思います。
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