弁理士の日々

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さらに加計学園問題

2017-07-15 15:42:41 | 歴史・社会
加計学園問題に関する7月10日の国会での閉会中審査では、前川喜平・前文部科学事務次官、加戸守行・前愛媛県知事、原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員の3名が、参考人として招致されました。新聞などでは、前川氏の発言の一部以外は全くわかりません。内容の全記録としては、産経ニュースの【閉会中審査・詳報(1)】【閉会中審査・詳報(7)完】【閉会中審査=参院=詳報(1)】【閉会中審査=参院=詳報(8)完】が見つかりましたが、これらもいずれ閲覧不能になる可能性が高いです。

ブログ記事としては、< #テレビが絶対に報道しないニュース >加計学園問題 加戸守行・前愛媛県知事の発言全文と動画まとめ 「あのYouTubeが全てを語りつくしているんではないかなと思います」?2017/7/11 に、加戸守行氏の発言全記録が掲載されていました。

この問題について、いくつかの評論に目を通してきました。
「加計学園の優遇はなかった」内部から見た獣医学部新設の一部始終
2017.7.11 八田達夫:公益財団法人アジア成長研究所所長(以下「八田」)

加計問題で分かった やっぱり文科省には「解体的改革」が必要だ~天下り先を守るための「抵抗」ならば2017.6.30. 長谷川 幸洋(以下「長谷川1」)

加計騒動・やっぱり官邸より文科省の方がよっぽど「問題アリ」~トンデモ言い分・責任逃れを許していいのか
長谷川 幸洋(以下「長谷川2」)

さて、このブログの前報では、私立大学の獣医学部新設を阻む規制について、今までのトピックを挙げました。
基本的に、私立学校の設置などについては、私立学校法31条2項で「その寄附行為の内容が法令の規定に違反していないかどうか等を審査した上で、当該寄附行為の認可を決定しなければならない。」とされています。法令(法律、政令、省令)に違反していなければ、文部科学大臣は認可しなければなりません。

《文科省の告示を根拠に門前払いできるか》
それに対して、文科省は「告示45号」1条2項で、「獣医師の養成に係る大学等の設置又は収容定員増でないこと。」と規定し、この告示を根拠に一切の獣医学部新設を門前払いしてきました。
私立学校法31条2項の「法令」に上記「告示」が含まれうるかどうか、疑問があります。「省令に委任された告示」であればよさそうなのですが、私立学校法施行規則、学校教育法施行規則を眺めましたが、「告示で定める」との規定は見つかりませんでした。

《現状の獣医師養成教育は十分か》
八田によると、
『獣医学部新設を規制する文科省告示の根拠を、文科省は示せていない。この参入規制は、政治力の強い獣医師会の利権を守るために文科省がつくったものだからだ。そのため、すでに2002年の文科省の中央教育審議会答申は、獣医学部等の新設不認可について、「現在の規制を残すことについては、大学の質の保証のために実施するものである設置認可制度の改善の趣旨を徹底する観点からは問題がある」と指摘し、今後の検討課題としていた。それにもかかわらず、文科省はこれまでこの規制を放置し続けてきたのである。』
とあります。
また、長谷川1には、
『「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」に提出された2013年2月の文書のこの調査研究協力者会議の結論を見ると、以下のような興味深い記述もあった。
獣医学教育の現状について「最低限共通的に教育すべき内容を十分に教育できていない大学がある」「新たな分野(獣医疫学、動物行動治療学等)への対応が十分取れていない」「大学ごとの分析として獣医師養成課程の規模の小さい大学に課題が多い」などと批判のオンパレードだったのだ』
とあります。
これらからは、現在の獣医師教育は決して十分なものではなく、新規参入を許した上で競争をさせ、結果として退場させるべき学校が存在しているようです。

《加計学園は、理事長が安倍首相のお友達だから指定されたのか》
八田によると、
『加計学園(今治市、愛媛県)は、理事長の親友が首相になったから学部の新設を申請したわけではない。第一次安倍内閣の期間には、加計学園は獣医学部の新設を申請しなかった。加計学園が初めて申請したのは、安倍氏が政治的に最も弱かった福田内閣のとき(2007年)だ。その後15回申請し、その度に文科省に理由もなくはね返され続けた。誰も安倍氏が首相に返り咲くとは考えていなかった民主党政権のときにも申請を続け、ついに鳩山政権時代に構造改革特区で新設を検討することが認められていた。』
とされています。

【閉会中審査=参院=詳報(5)】加戸発言によると、
『私が知事に着任早々、鳥インフルエンザの問題、あるいはアメリカでの狂牛病の問題、(知事の)終わりの時期には口蹄疫の問題等々で、愛媛県で公務員獣医師、産業担当獣医獣医師の数の少なさ、確保の困難さ、そして獣医大学部の偏在等々の状況。そしてアメリカの適切な対応などを見ながら、日本も遅れているなと思っていたときに、ちょうどたまたま加計学園が今治の新都市への進出という構想を持ってこられたので、渡りに船と、この獣医学部構想で取り組んでいただいて。』
「『加計ありき』と言いますけど、12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけであります。
私の方からも東京の有力な私学に声をかけました。来ていただけませんかと。けんもほろろでした。結局、愛媛県にとっては12年間加計ありきでまいりました。いまさら、1、2年の間で加計ありきではないのです。それは愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に詰まっているからでもあります」

日本再興戦略改訂2015の閣議決定はどのような意味なのか》
『(3)新たに講ずべき具体的施策
ⅱ)残された集中取組期間における国家戦略特区の加速的推進
国家戦略特区に関する以下の施策をはじめとする各種取組を一層加速化することにより、引き続き、具体的な事業や提案ニーズに柔軟かつスピーディに対応し目に見える成果を打ち出していくことが重要である
b)更なる規制改革事項等の実現
国家戦略特区に関し、・・・以下の規制改革事項のうち、国家戦略特区で取り組むべきものについては、・・・、国家戦略特別区域法等に新たに追加すべく検討を進め、次期国会も含め、速やかに法的措置等を講ずる。

⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
・現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。』

八田によると、
『2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」に、「2015年度中における獣医学部新設の検討」を成長戦略として入れて閣議決定することができた。これは必ずしも特区でなくてもよいから、何らかの方法での新設の検討を文科省に義務付けたものだ(なお、新設に当たっては、「石破4条件」が付けられた。これは、検討期限を切った上で、検討の際の留意事項を記載したものである)。
「新設の検討」というのは、新設ができるのならば「できる」と言い、新設ができないのならば理由を示す、ということである。
ところが文科省は、2015年度内に獣医学部新設を検討すると約束しておきながら、ずるずると2016年度に入っても検討に決着を付けようとしなかった。閣議決定に従わなかったのである。』

また、長谷川2によると、
『ここには「文科省が検討する」とは書かれていない。だが、文科省の仕事である。私が高橋(洋一)さんに確かめたところ「役人なら、閣議決定で決まった話をどの役所がいつまでに責任をもって実行するかはだれでも分かる」のだそうだ。』

原英史氏の参考人発言によると、
『平成27年6月の決定は日本再興戦略、いわゆる成長戦略の一項目である。成長戦略の中では一般に何かをやらないという決定をすることはない。つまり、これは新設をしないようにするためではなく、新設を前に進めるための決定である。』


八田、長谷川、原いずれからも、閣議決定の末尾の文言「本年度内に検討を行う」は、「文科省が検討を行う」と読むべきだというのです。
そうだとしたら、お役所の文書というのはわからないものです。
この点は、郷原弁護士も違う見解ですし、上記閣議決定(石破4条件といわれる)の当事者である石破さんも違う見解のようです。どの見解が正しいのか、白黒をはっきりして欲しいです。

《「2030年4月開校」との条件が付されたいきさつ》
八田によると、
『2016年11月の諮問会議決定では、「……獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とされている。これは、2015年度内の検討の約束を文科省が守らなかったことで、特区事業としての獣医学部新設が予定よりも遅れていたため、最初の事業者および自治体には最大限急いでもらうことを意図したものである。
さらに、2016年11月の諮問会議決定に基づき、まず早期にとりあえず獣医学部ができ、その後それに他の大学が続くと予想していた。』
迅速を旨とすべき特区制度の要請から、と読めます。

文科省流出文書で話題となっている「総理のご意向」が、何をどうすべきとのご意向なのか、いままでわかりませんでした。今回の前川発言を読んでみると、どうやら「2030年4月開校」らしいです。
「検討が(文科省の怠慢で)遅れに遅れているから、とにかく1校目の開設は急げ」と総理・官邸がハッパをかけたとしても決しておかしくありません。そのときは「2校目もあり」という前提でしたから。

《「1校に限って」と限定されたいきさつ》
八田によると、
『日本獣医師会は、2016年12月8日、山本大臣に対して、獣医学部新設を認める特区を「1ヵ所かつ1校のみに限ってほしい」という要請を行った。』
『11月の諮問会議における条件では、当時までに提案されていた3地域はどこも開設できる文言になっていたことに危機感を感じた獣医師会側が、1校だけを認めさせる圧力をかけたのである。その結果、山本大臣は、この条件は受け入れざるを得ないという政治判断を行い、2017年1月の内閣府・文科省告示では、1校に限るという文言が入った。』
『「1校に限る」という条件が付けられたために、今治市に続いて他の地域で直ちに新設することは難しくなった。WGとしては、最初の突破口を作れば、1校も新設しない場合と比べて、その後の新設の可能性がはるかに向上すると考えていた。しかし、「1校に限る」という政治的な判断は、あくまで獣医師会の意向に沿ったものであり、「制限せずすべて開放」という立場の特区WGの側や、ましてや首相が主張したためではない。』

現在、安倍政権の支持率が急落しています。先日の都議選でも自民党は大敗北でした。その原因はいろいろあるけれど、「加計学園問題」が最大であるとの印象を持っています。その加計学園問題、普通に報道に接するのみでは、「前川・前次官が善であって、総理・官邸が悪」の方向の情報しか得られません。しかし、こうして丹念に当事者の発言を拾っていくと、全く違った姿が見えてきます。
次回の国会での参考人招致では、ぜひとも双方の論点が明白になるように、議論を進めてもらいたいものです。7月10日の審議では、せっかく特区諮問会議のワークグループ委員である原英史氏を招いたのに、その発言はほとんど埋もれたままです。次回は、特区諮問会議の委員である八田氏を呼ぶのがよろしいのではないでしょうか。
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