弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

救われた4号機・遅れた支援策

2012-03-09 19:58:16 | 歴史・社会
朝日新聞の記事2件を拾っておきます。

《工事不手際 4号機救う》  3月8日朝日新聞朝刊1面
福島第1の4号機は、原子炉は定期点検中だったものの、核燃料貯蔵プールに崩壊熱発生量の大きな燃料棒が多量に保管されていました。その発熱のために貯蔵プールの水が干上がったら、プール内の核燃料が熱で破壊されて大量の放射能を放散するに違いない、ということで、事故直後に大問題となっていました。

その後の調べで、貯蔵プールに隣接する「原子炉ウェル」と呼ばれる部位に大量の水が溜まっており、その水が仕切り板のすき間から貯蔵プールに流れ込んでいたために、貯蔵プールが干上がることを防ぎ、4号機が救われたことが判明しています。

今回の朝日新聞記事によると、本来の4号機工事日程では、3月11日には原子炉ウェルの水は抜かれているはずだったというのです。ところが、圧力容器内のシュラウドを切断する工具の寸法間違いが判明して工事が遅れ、3月11日時点で水を張ったままにしていたのです。

4号機が破滅したら福島第1の周辺には人が近寄ることができなくなり、1~6号機のすべてが暴走をはじめ、関東をはじめとする東日本一帯は人が住めなくなる可能性もありました。そのような大災害の発生を防止できたのが、この工事の遅れだったというのです。
なんという幸運でしょうか。


《検証 遅れた支援策》  3月9日朝日新聞朝刊34面
『東日本大震災の復興策をまとめた原案を、民主党は発生から約3週間でまとめた。提出への地ならしも進めたが、お蔵入りに。この初動のつまずきが、対策の遅れにつながった・・。』
3月11日の夕方、民主党では国会対策を担う党幹部が集まり、衆院予算委員会の中川正春筆頭理事を中心に、その場で復興関連の法案造りを始めることが決まりました。「政府は目の前の対応で手いっぱいだ」という認識からです。
まず、衆院法制局とやりとりを重ねて、取り急ぎ10日間ほどかけて「第1次案」を作成。これをもとに、党政調と衆参両院の委員会の筆頭理事らによる「特別立法チーム」が関係省庁から聞き取り調査を重ねました。
現地聞き取り調査も踏まえ、3月末には「復旧復興対策基本法案」の原案と関連法案17本をまとめました。
衆院災害対策特別委員会の理事にも根回しをし、与野党間には協調ムードが芽生えていたので、5月連休明けには成立する見通しまでありました。
ところが、4月1日、この原案の全容を朝日新聞が報じると、閣僚たちから批判が起こりました。
与謝野馨経済財政相は、震災国債を日本銀行が直接引き受ける案に「ありえないし、絶対にさせない」とかみつきました。記者会見で原案について問われた野田佳彦財務相は「政府として検討している事実はない」と切り捨てました。民主党の岡田克也幹事長は自民党幹事長に「記事に出ているのは個人の創作活動だ。」と語りました。
こうして、民主党の原案は「中川試案」と呼ばれるようになり、封印されたのです。

このあとの民主党政権の迷走ぶりは記憶にあるとおりです。
4月1日に復興構想会議が立ち上がりましたが具体案は出ません。復興庁設置法案の成立は12月でした。

臨時増税や復興特区など現在の復興政策の大枠は、民主党が3月末にまとめた原案と大きく変わらないといいます。

昨年4月段階の管政権は、なんともつまらない意地を張ったものです。
また、朝日新聞の4月1日スクープがこの法案を葬り去ったのかもしれません。
コメント
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