豊後ピートのブログ

元北アルプス南部の小屋番&夏山パト十数シーズン経験。今はただのおっさん

富士山救助失敗で遺族が静岡市を相手に起こした訴訟が年内に判決の模様

2017年07月23日 | 山を飛ぶヘリコプター
2013年の12月に発生した、富士山での救助作業中に遭難者がスッポ抜けて行方不明→その後死亡という事故ですが、2016年の1月に遺族によって訴訟が起こされました。その後について、久々に報道されています。


静岡市隊員「強風下ベスト尽くした」 ヘリ救助者落下訴訟で証言
静岡新聞  2017/7/11 07:40


「訴訟は8月下旬に結審し、早ければ年内にも判決が言い渡される。」とのこと。


さて、

引用
訴訟の主な争点は、(1)ホイストカット(地上隊員とヘリをつなぐワイヤを切ること)なしで使用可能な救助器具「DSV(デラックスサバイバースリング)」の選択は適切だったか(2)DSVの胸ベルトに加え、なぜ股下シートを使わなかったのか―の2点。
引用おわり


この争点を読むと「ホイストカット」せず、つまりヘリコプターのワイヤーに繋がったままの状態で救助隊員が作業していたのか?と想像します。これだけだとはっきりしないのですが。


引用
ヘリ上で男性を引き上げる「オペレーター」を担当した男性隊員(46)はDSV選択の理由を「未経験の高度3500メートルでの作業で、地上隊員が取り残される危険があった。出発前から指示された」と述べた。股下シートを使わなかったことについては「補助的なもので使わない方が多い」と説明した。
引用おわり


隊員が富士山の斜面に取り残されたら危険、ということでサバイバースリングの使用を選択し、早急にピックアップができるようにしたわけですか。うむむ。これってどうなんでしょう?例えば長野県警や富山県警だったら、同じ事をやるのかな?と。冬山のレスキューはやったことがないので、降下した隊員が山に取り残されそうな場合はどうするのか、いずれ関係者に聞いてみたいですね。



引用
救助時の気象条件などに関しては「強い西風でヘリの着陸脚が何度も地表にぶつかりそうになった。救助中の男性のブリザードパック(寝袋型保温器具)を脱がし、股下シートを装着するのに必要な数十秒すらなかった」と証言した。
引用おわり


「強い西風でヘリの着陸脚が何度も地表にぶつかりそうになった」と出ています。これはホバリングがまったく安定しておらず、相当危険な状態だったのではないでしょうか。未経験の高度でこんな状態であるのなら、ヘリコプター墜落の危険を考えて救助活動を断念すべきだったのではないかと思います。



それにしても、このケースについては運輸安全委員会の調査が入ってないため、事故原因等については当事者である静岡市の発表しかありません。報道で一部を読みましたが、スッポ抜けの原因については「なんじゃそりゃ?」というのも含まれており、もっと調査すべきではという印象が拭えません。

で、なんで運輸安全委員会の調査が無いのか、最近になってようやく知りました。

静岡市消防ヘリ、救助中の要救助者落下事故について/lamaマニア

このブログを書いている方が「なぜ調査をしないのか」と国土交通省に問い合わせたところ、静岡市や静岡県警が国土交通省に対して遭難者の死が航空機によるものだという因果関係がはっきりしていないと報告してきたため、運輸安全委員会でも航空機事故として取り扱えない、みたいなことが書いてあります。ちょっと長いですが、是非ともリンク先を読んでみてください。

それにしても変な話ですな。

最近だと山梨県警のヘリが救助作業中に遭難者の男性に石や倒木が落下し、それが原因で死亡した事故がありました。石や倒木が落下してきた原因についてはヘリのローターによる風圧が原因かもしれない、ってことで山梨県警が業務上過失致死の容疑で捜査に入っていますし、運輸安全委員会も調査を開始しました。これは航空機が墜落したり衝突した事故ではありませんが、運輸安全委員会が航空機事故として扱っています。

参考URL


東邦航空の篠原氏が救助作業中に落ちて死亡した事故なども当然のように調査が入っており、なぜ富士山のケースが調査されないまま放置されているのか、疑問は深まるばかりです。




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7 コメント

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Unknown (社長)
2017-07-25 22:43:26
412EP
ホバリング限界高度
3110m
地面効果外
1583m
予算面で厳しいとは思いますが、救助ヘリの大型化を望みたい処ですがデカく為ったら(地面効果外でのホバリング性能が上がれば)ダウンウォシュが酷い・・・。

bongo-peteさまの仰る、救助を断念する に同意です。
能力外の事案ですからね。
縄張り意識が有ったのか・・・実績作りたかったのか・・・。
Unknown (bongo-pete)
2017-07-30 12:08:08
社長さま

長野県の防災ヘリも412EPでしたが、軽量化によってホバリング限界高度が4000mぐらいになっています。
本当は小型のヘリで軽量化された機体が一番山岳レスキューに向いていると思います。その代表がラマですけど、あれは高所でもパワフルで良かったです
bongo-peteさま (社長)
2017-07-30 21:58:48
EPplusでしょうか?
うーん・・・長野も静岡も機体と仕様が同じとすると、錬度に為りますね。
ラマって、テールがトラスト構造で視界が良いコックピットの・・・ですよね?
小型軽量でパワフルな機体が良いんですか。なるほどです。
他のレスキュー事情とは違うのですね、勉強になります。狭い山岳に出動しますからね。
Unknown (bongo-pete)
2017-07-31 00:23:25
社長さま

墜落した長野の防災ヘリは余分な座席を取っ払うなど、かなり軽量化することでホバリング高度の限界を上げています。練度も高いのですが、それだけではありません。
長野県警も初代のヘリコプターは1800mぐらいがホバリングの限界でしたけど、相当な軽量化プラス燃料削減によって標高3000mにある槍ヶ岳山荘のヘリポートに着陸したことがあります。
ラマの良さは、トラスト構造なので横風に強いことですね。
bongo-peteさま (社長)
2017-08-06 19:30:39
個人的には益々県警と消防の航空隊に判らん事柄が増えました。
北海道とはエライ違いますね。
Unknown (bongo-pete)
2017-08-06 23:13:45
社長さま

結局、訴訟リスクが絡んでくるからなんでしょうね。
bongo-peteさま (社長)
2017-08-13 11:50:50
なるほど。
登山者数も規模も違いますからね。

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