答えは身体が知っている

セラピスト兼アスレティックトレーナーが自分の好きな事や日々感じた事を書く、息抜きブログ

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

世界陸上第2日(8/16)の感想とスプリント技術について

2009-10-28 20:31:23 | 陸上競技

女子七種競技について

七種競技はほとんどがダイジェストの放送で、
最終種目の800mの
しかも上位選手の集まった最終組だけライブで放送されたようですが、
なかなか面白かったです。
800mのスタート前の時点で総合1位はほぼ確定していましたが、
2~4位がまだ入れ替わる可能性を残していました。

トップのエニス選手(英)が大差をつけていた上に
他の選手に比べて得意な走種目だったので完璧に逃げ切りましたが、
それ以上に目を引く選手がいました。
2位に入ったドイツのエーザー選手は、
1週目の375m付近で他の選手と足が接触し、ただ一人転倒してしまいました。
しかし、立ち上がると集団を猛追し、
2週目のバックストレートでは4位まで上がりました。
そこからはそれ以上順位を上げることはできませんでしたが、
総合点でライバルとなるドブリンスカ選手らウクライナ勢との差を詰め、
800mまで総合2位だったポーランドのフジク選手が遅れたこともあり
見事逆転で総合2位に入りました。
素晴らしい執念をみさせてもらいました。

男子100m決勝は、
私が予想するよりも良いタイム(世界記録9秒58)でボルト選手が優勝し、
タイソン・ゲイ選手が0.9mという弱い追い風でも9秒71で走ったので、
少し驚きました。

タイソン・ゲイ選手を、私は少し見くびっていたようです。
準決勝での走りでスタート・ダッシュが良くなかったこともありますが、
40m以後の最もスピード差が出る区間で
ゲイ選手の脚が思ったほど後ろに流れず、
それが予想(無風換算で9秒7台で走るのは苦しい)以上の走りに       ※1
結びついたと思います。
準決勝とも全く別人の動き(スタート・ダッシュ、腕の振りなど)でしたが、
あれ(準決勝)は意識してやったのでしょうか?

ベルリンのトラックは記録のでる高速トラックであると記憶していますが、
そうしたトラックは記録がでる反面、脚にかかる負担が大きくなるので、
ケガのリスクが高くなりがちです。
その点でも、ゲイ選手には不利かと思ったのですが。
いや、あの集中力とセルフ・コントロール力には脱帽します。

ボルト選手の記録は、まあ北京で想定されたくらいの記録なので
驚くような記録ではないのですが、
この大会でそこまで出るとは予想していませんでした。

パウエル選手は、スタート時の飛び出しの角度が悪く身体が立ってしまい、
2次予選や準決勝よりも遅いスタート・ダッシュになりました。
しかも有利(得意)であるはずの出足のスピード不足は、
続く加速区間にも悪影響して動きが小さくスピードも上がり切らず、
そのために終盤に入る時にはすでに疲労からスピードダウンしてしまいました。
まあ、それは9秒74の世界記録の時の映像と比較しての話ですから、
9秒84は世界陸上の決勝のタイムとしては素晴らしいものです。

パウエル選手は、
2次予選の時から全力のスタート・ダッシュと加速を見せていますから、
決勝では予想外の疲労が溜まっていたのかもしれません。
高速トラックで想定外のダメージがあったとも考えられます。
ボルト選手やゲイ選手のように200mが得意な選手に比べると
「疲労」が克服すべき敵なのかも知れません。                ※2


男子100mの疾走技術は、カール・ルイスの出現が転換点だと思います。
9秒台の世界でより速く走るポイントは、
私の別ブログ『感覚派アスレティックトレーナー 身体と会話する日々』の過去の記事
陸上競技人 山西哲郎先生 3(恩師 山西哲郎先生 その6)』では、
地面を離れる際の足首が伸び切らないことをあげましたが、
同時に膝が伸び切らないことも加える必要があります。
さらに、膝はもっとも後方にある時でも、
骨盤の直下より後ろにいったら直ちに前に運ばれなければいけません。

身体の後ろで地面を離れた足は、
足首が曲がったままでお尻の下に直線的に運ばれるのがよく、
お尻の後方で高く上がりお尻に衝突するようでは
「足が流れた」と言い身体の前に運ばれるのが遅れてしまいます。

身体の前に運ばれた脚は、接地する前に一度膝が伸びますが、
膝を伸ばし切ってはいけません。
そして、脚を接地する時には重心の真下近くの地面に
引き戻しながら足裏で地面を踏みつけるように接地させ、
その時膝は軽く曲がったたままで、足首も直角に近く曲がっている方がいいのです。
この接地する側の脚と、身体の前に運ばれてくる反対の脚の膝とが
身体の重心のラインよりも前で交差するのが、動きのタイミングとしては良いのです。

こうした技術は、スタート・ダッシュ後の加速区間と
トップスピードに達してからのスピード維持に共通して重要で、
パウエルとボルトはこうした技術が素晴らしいのです。
ドーピング違反で資格を剥奪されたアメリカのガトリン選手も
技術だけをみればやはり素晴らしかったのです。

200mについても、こうした動きの技術に注目してみては如何がでしょうか。


※1 ゲイ選手の予想(無風換算で9秒7台で走るのは苦しい)以上の走り

2007年の大阪世界陸上では、
ゲイ選手の脚はもっと後ろに流れていたという印象を持っている。
その後のレースの映像を見ても、
その足の運びがネックになると感じていた。


※2 パウエル選手の敵は「疲労」?

私はアスレティックトレーナーで、
心理学・カウンセリングの専門家ではないから、
「パウエルはメンタルが弱い」という俗説のように心理に原因を求めるよりも
体調面に原因がないかを求める性向がある。
なので、このような考察をする。


(この記事は、私の別ブログ『感覚派アスレティックトレーナー 身体と会話する日々』の2009年8月17日の記事を手直しして転載したものです。)
ジャンル:
大会
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 世界陸上ベルリンの見方とTBS... | トップ | 8/17のタイム・テーブル... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。