bnzsee

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

求む、金融政策を信じる日銀総裁

2017-06-18 17:01:38 | 日記





(フィナンシャル?タイムズ 2013年2月20日初出 翻訳gooニュース) デビッド?ピリング

経済学というのは惨めな科学だが、そのまったく新しい一分野に自分の名前がつけられるというのは、安倍晋三氏にとって気分のいいことに違いない。経済学に関する安倍氏の知識に匹敵するのは、バーナンキ米FRB総裁の生け花の腕前くらいなものだが。「アベノミクス」の威力は凄まじく、まだ具体的な行動は何もしていなくても「アベノミクス」と唱えるだけで、10月以降の日本円は2割円安になり、日本株価は3割上昇した。

けれどもアベノミクスの中心にあるのは、実にシンプルでまったくオーソドックスな命題だ。つまりデフレは金融問題だという。GDP(国内総生産)デフレーターで計った日本の物価は1994年以降、18%下がっている。その日本においてデフレは金融問題だというのは、革命的な考え方だ。10年以上前から日本での定説は、少なくとも日銀における定説は、その真逆だった。デフレは「実体経済」の問題であって、金融政策では改善できないと、ずっと言われてきたのだ。

ごくごく簡単に言うと、日本の趨勢的な成長率が低下してきたのは、国内の人口変動に加えて、たとえば中国からの安い輸入品の流入のせいで、そのためにGDPギャップはマイナスになり、恒常的な供給超過が起きているというのが、これまでの日銀見解だった。この見方でいくとデフレ対策には実体経済での調整が不可欠で、それには財政健全化と労働者参加の拡大、および生産性の向上が必要だということになる。実体経済のこうした動きに対応するには、金融政策など一時しのぎにすぎず、よくて金融のシステミック?リスクを防ぐための道具にしかなり得ないというのが、日銀の姿勢だった。

来週にも任命される次の日銀総裁にはおいては、これまでのこの解釈を受け付けないというのが、何より大事だ。次期総裁は、スタンダード?アンド?プアーズ(S&P)のチーフグローバルエコノミスト、ポール?シェアード氏が「現代の金融政策理論の基礎」と呼ぶ考え方を、受け入れていなくてはならない。ここで言う基礎とはすなわち、中央銀行は物価に中期的影響を及ぼすことができるという考え方だ。

日銀はこの15年間ずっと手をこまぬいてきた、などと言ってしまうのは、公平ではない。金利は1990年代後半からずっと実質的にゼロに抑えられてきた。当時の福井俊彦総裁の下、日銀は量的緩和政策の先駆者となり、バランスシートを一気に拡大させてコマーシャルペーパー(CP)など様々な資産を買い入れたものだ。けれどもこの間の日銀は、量的緩和は実は効かないという見解をほとんど隠そうともしなかった。あからさまな不快感を示しながら革新的な政策を発表しては、あっという間に打ち切った。2001年と2006年には、デフレが完全に息を引き取って棺に収まる前に、金利を引き上げ始めた。

現総裁の白川方明氏の下で日銀はますます臆病になり、資産買い入れを短期国債に集中させた。それこそ効果があったとしても最低限の効果しか見込めないやり方だ(不動産投資信託などもっとエキゾチックな資産の買い入れは、形ばかりのものに過ぎなかった)。

さらに日銀は何かというと、現在のデフレ均衡に不満ではないという態度を示してきた。妙な話だが日本がデフレと共存する方法をそれなりに学んだのは、事実だ。物価安のおかげで多くの日本人は生活水準を保つことができた。住宅からトンカツに至るあらゆるものの値段が、1981年水準に戻っている。加えてデフレ状態にあれば、どこにも行けない莫大な額の家計貯蓄から政府は呆れるほど低い(10年物国債で1%を大きく下回る水準の)金利での借り入れが可能なのだ。

だが長期的には、デフレは経済を腐食する。名目成長率を抑制し、対GDP債務比率を引き上げ、経済からアニマルスピリッツを失わせる。デフレはさらに若者を犠牲にして高齢者を保護しがちだ。高齢者の貯蓄は守る一方で、若者には起業や自宅購入の為の資金借り入れをためらわせる。

デフレ均衡は心地良くても結局は破壊をもたらす。日本はそこを脱して、緩やかなインフレに基づく新たな均衡に移行するべきだ。ただしこの変化には危険が伴う。今くらい金利が低くても、債務の元利払いは税収の約半分を飲み込んでいる。10年物国債の利回りが現行の4倍にあたる3%に上昇すれば、予算全体を債務返済で事実上使い切ってしまうことになりかねない。預金者の資金の使い道がほかにほとんどないので、銀行のバランスシートは国債でギュウギュウだ。国債価格が急落すれば、銀行の自己資本がとんでもないことになりかねない。そしてインフレと一緒に賃金も上がらなければ、日本人は前より貧乏になったと感じることだろう。こうした諸々は確かにリスクだが、リスクは時に誇張されていることもある。インフレ期待が定着する前に名目成長率が上昇し、ずっと伸び悩んだ税収は増えるはずだ。金利上昇に伴い銀行は利益を増やし、国債価格下落によるキャピタルロスは相殺されるだろう。政府の借り入れコストはやがて上がるが、今ある安い債務全ての借り換えが必要になるのはまだ数年先のことだ。

日本はその間、段階的な増税や歳出削減によって財政赤字を縮小できる。そのほか需要拡大と供給の効率改善のため、遅々として進まなかった構造改革も実施できる。たとえば手始めに医療、農業、エネルギー部門の規制緩和などだ。

どの施策も簡単ではない。デフレの罠から脱出するには、日銀はもうずっと何年も間違っていましたと認めてはばからない総裁の任命が必要だ。その上で日銀は、どういう道筋をたどるのか分かりようもないインフレの道を、進んでいかなくてはならない。それは無謀だと思う人もいるだろう。しかしそうしなければ、代わりは永遠に続くデフレだ。そんなものを受け入れる方が、よほど無謀だと言える。





文中敬称略。フィナンシャル?タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。


(翻訳?加藤祐子)



From the Financial Times © The Financial Times Limited [2012]. All Rights Reserved. Users may not copy, email, redistribute, modify, edit, abstract, archive or create derivative works of this article. NTT Resonant is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.





ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 起業家が多数輩出する企業 ... | トップ | 上下セットで2000円台のオリ... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。