『楽しいみんなの写真』刊行記念イベントを行いました

こんにちは。Matです。
10月末に刊行された、『楽しいみんなの写真』



実は、この本のために、今年1月半ばに撮影会を催していたのでした。それは、スカッと晴れたとてもとても寒い日。40〜50名くらいの方が集まったと思います。なんとも不思議な感覚でしたが、みなさんそれぞれに楽しまれたようで、よかったよかった。めでたしめでたし、、、、、、
とはいきません。本を作らねば。

予定では、4月刊行だったのですが直前の震災もあり、flickrの細かいリニューアルや、その他もろもろがあり、遅れに遅れて10月に。

本を作っていると、だいたいある時に「あ、あとこれくらいでいけるな」という、ゴールの端っこが見えてくるのですが、それがこの本は8月の半ばすぎでした。
ちょうど、座談会の収録をした後です。

1章、2章で、一見違った方向を向いているかのようなお二人の記事ですが、実はちゃんとつながっているよ、ということがこの座談会ではっきりわかります。当然ですが担当者的には、座談会の日を迎えるまでに何度もそこまでの原稿を読んでいますので、収録が終わった時には座談会の原稿をうまいことまとめられるかは別として、話の筋的にはまとまりがありゴールの切れ端を掴んだ感覚がありました。

そんなこんなで、印刷機が回り始めたのが10月あたま。半ばには見本誌ができ献本作業などにいそしんで、めでたしめでたし、、、、、、じゃなくて
1月に撮影会をしたよね? その方達にすまないと思わないかい? と著者さんからご連絡が。そこで、ご飯でも食べつつ謝ろうか、ということになりました。

いしたにさんの記事:『楽しいみんなの写真』出版謝罪の会を開催します
大山さんの記事:僕らはなんのために写真を撮るのか?『楽しいみんなの写真』発売記念食事会開催!

そして開催当日!

六本木の豚組さんで、おいしいご飯をいただきながら謝るというなんとも
不思議な会が催されました。


美味しい豚しゃぶ


チャーシュー


メガネがキラリと光る、著者様がた

そしてそして、あの方やあの方からの生声レビューも頂戴しました! 聞きたい方は、いしたにさんがアップしてくださっていますのでこちらを。その場でレビューが聞けるなんて体験はめったにありません。貴重でした。

『楽しいみんなの写真』出版謝罪会無事開催、そしてすばらしい生声の書評を2つ!

最後には、とれるカメラバックEye-FiカードTOLOTカタログと無料コード(これは全員分いただきました!)をめぐり大じゃんけん大会。


気分はもう、アメリカ横断ウルトラクイズ並!

豪華ですねー。盛り上がりましたねー。いやー、著者様がたに感謝感謝です。だって、みなさん本当に楽しそうだったんですもの。

みなさまありがとうございました。お会いできなかった方もまた機会がありましたら、ご挨拶させてください。
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ポール・ランドとスティーブ・ジョブズ

おととい8月24日、アップルのCEO スティーブ・ジョブズが退任を発表しました。BNNの本『ポール・ランド、デザインの授業』のなかに、そのジョブズとの仕事をポール・ランドが振り返る一節があるのでご紹介します。

デザインを学ぶ学生との対話のなかで、「デザインについて何も知識がないのに、創作面について決定したがるクライアントにはどう対処されますか?」という質問に対し、「それは答えづらい質問だね」と前置きしつつ、ランドは次のように答えています。

(…)実際にはありそうにはないが、もしもクライアントが才能にあふれて正しければ、そうした相手とは争えないだろう。たとえば、ネクストのスティーブ・ジョブズはとても手強いクライアントだ。こちらが提案しても、何か気に入らないことがあれば彼は言うんだ、「全然だめですよ」と。話し合いの余地はないんだ。その一方で、とても運がいいこともあった。ジョブズのためにロゴを作った時だ。みんな彼の家に集まっていたんだが、プレゼンテーションを見て、彼は立ち上がってから、ハリウッド式に床に座ったんだ。暖炉の火が燃えて、地獄のように暑くて(笑)。また立ち上がると、私を見て言うんだ。「抱きしめていいですか」と。それがクライアントとデザイナーの衝突を乗り越えた時だった。

1985年、自ら設立したアップルコンピュータ社を追放されたジョブズは、新たにNeXT社をたちあげます。ランドは、そのNeXT社のブランド・アイデンティティ制作をジョブズから10万ドル(!)で依頼されます。そして、ロゴの正確な角度(28°)や社名の正確な綴り(NeXT)などを含む、100ページのブランドの詳細を示す冊子を制作したそうです(wikipediaより)。

2人の頑固な天才が、暑い部屋の壁に投影されたNeXT社のロゴの前で抱き合っている様子が目に浮かびます。

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『mina perhonen?』刊行記念展示のお知らせ


こんにちは!
お久しぶりの日記更新です。編集部のItです。

弊社ホームページやtwitterなどでもご連絡をさせていただいておりますが、
今年4月に発売となった『mina perhonen?(ミナ ペルホネン?)』の
刊行を記念して、8月3日(水)〜8月23日(火)の期間中、リブロ渋谷店
にて展示を行わさせていただいております。

これが、とっても素敵な展示になったもんで、
ぜひ多くの方に実際に見ていただきたい!!ということでブログ執筆にいたって
おります。

はやる気持ちを抑えつつ、まずは書籍のご紹介から。


『mina perhonen?』ミナ ペルホネン著/B5変型/208ページ/2,730円(税込)

ブランド設立16年目を数えるファッションブランドのミナ ペルホネン。
オリジナルの図案によるテキスタイルのデザインから服づくりを行い、詩情と
物語性を含むファッションを生み出し続けています。

本書では、そんなミナ ペルホネンのこれまでの歩みを、言葉と写真で織りなします。
「時間」「刺繍」「想像」「風」…といった、50のキーワードを軸に、ものづくり
の根底にあるデザイナーの熱い想いや、社会へのまなざし、制作への妥協ないやり
とりが語られ、またテキスタイルやアトリエ、工場の様子なども豊富なビジュアル
で紹介されています。

身にまとうと、何とも言えない幸福感が得られ、気持ちが軽くなったり、高揚したり
する…そんな不思議な魅力をたたえる彼らのものづくりにおいて、情感あふれる表現
の核となる、揺るぎない信念に触れられる1冊となっています。

中ページもちらっとお見せすると、







書籍のアートディレクションは、ミナ ペルホネンのグラフィックを数多く手がけて
いる菊地敦己さんによるもの。
ミナ ペルホネンの世界観がそのままページに落とし込まれています。

ページにちりばめられている、皆川さん直筆のメッセージが本当に素敵なので、
まだご覧になっていない方は、ぜひぜひお手にとって見ていただけると嬉しいです。

ちなみに私は、「日常」というキーワードのページの皆川さんの言葉が大好きです。
『変わり続けることを ずっと変わらずにすること。
変わらないでいることが 変わったことになること。』
座右の銘にしたい。

**** **

…と、書籍の紹介が長くなってしまいましたが、
展示の様子もご紹介させてください。

渋谷のパルコPart1の地下にある、リブロ渋谷店にて、絶賛展示中です。
ミナの洋服をかたどったパネルが、ずらっと並べられています。
めちゃんこカワイイです。
こう、思わず顔をはめて、どれが似合うかな〜なんて、やりたくなっちゃいます。




下には書籍が並べられているのですが、その書籍のまわりを、おなじみの
ちょうちょが飛び回っていますよ!(写真だとちょっと見えづらいですが…)
このちょうちょは、展示設置の際に、ミナ ペルホネンのスタッフさんが
スタンプでひとつひとつ捺していったもの。
弊社スタッフも設置のお手伝いに繰り出したのですが、こんなかわいいアイデア
を前に、下手に手出しすることもできず…うっとりしながら立ち尽くしていた
次第です。






とっても夏っぽい、さわやかな展示になっておりますので、お近くにお越しの際は
ぜひお立ち寄りくださいませ!!8月23日(火)までを予定しております。


長くなりましたが、最後にもうひとつだけ、展示の見所を…
展示スペースのガラス面に、書籍のカバーデザインがプリントされたシートが
貼られています。
立ち尽くしていた弊社スタッフが、唯一の仕事だぜ!と、営業Tさんをリーダー
として、精一杯がんばって貼りました。
空気が入らないように。よれないように。斜めにならないように。
重しをつけた糸を垂らして、垂直をとりました。
何故か飛び出た、プロの技です。

夏らしさをプラスする要素として佇んでおりますので、我々のがんばりも、
ぜひご覧になってくださいませ(本当にちらりとでも構いませんので)。



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書店探訪記:中目黒ブックセンター

こんにちは。編集部のムラタです。今回はおしゃれな街 中目黒にある「中目黒ブックセンター」にお伺いしてきました。駅から歩いて3分ほど。線路沿いのパチンコ屋さんの2Fにある非チェーン系の総合書店。お相手してくれたのは、遅番担当店長の落合康幸さんです。

お店の入口です。

__まずはお店について聞かせてください。こちらはどれくらいの歴史があるのでしょうか?

落:お店ができたのは今から12、3年ぐらい前ですかね。私は3、4代目ぐらいの店長になります。私が店長になってからは4年ほど経ちました。

__客層やお店の特徴はどんな感じでしょうか?

落:全国的な売れ筋とはけっこう違っています。独自の目線を持ったお客さんによくいらしていただいている、と捉えています。そしてそれはやはり、中目黒という土地柄もあるんだろうなと思いますね。

__なるほど。既にそれを理解したうえでの品揃えになっていらっしゃるわけですね。

落:そうですね。できるだけ個性を出したいなと思っています。ただ、とはいってもやはり取次とのやり取りのうえで可能な限り…ということになりますが(笑)。その範囲内で、なるべくカラーを出したいと心掛けて置いていますね。いわゆる金太郎飴的にならないように意識して棚づくりしているつもりです。

__全国的な売れ筋と中目黒ブックセンターの売れ筋の違いは、端的にどのへんでしょう?

落:サブカル系のものが比較的よく動く、というところかと思います。他店では不調と聞くサブカル系の本が売れるのは、うちの特徴でしょう。と言っても、最近は目立ったサブカル書もないんですが。あとは、芸術書もよく動きます。近くにデザイン事務所さんも多くありますからね。ビジネス書なんかだと、他所でよく売れているものがここでも同じようによく売れる、っていう感じなのですが。

__なるほど。 こちらのお店は総合書店ですよね。すべてのジャンルの本を取り揃えているわけですが、そのなかで専門書はどうでしょう?

落:うーん、専門書は最近は足がちょっと弱まってますね。

__いつぐらいから弱まってます?

落:不景気を声高に言われるようになってきてからでしょうか。

__ああ、リーマンショック以降。やはりそうですか。それって、値段の高いものが売れなくなった、ということなのでしょうか?

落:いや、そういうわけではないですね。本当に必要なものを選んでお客さんが買っているという感じでしょうか。それまでみたいに、「これも良さそうだから一緒に買おう」というような買われ方が減って、手堅いものから選ばれていく、という感じになっていってるんだと思います。

__むう、厳しいっすね。お店全体の売上はどうですか?

落:いやーそれこそ厳しいですよ。専門書だけじゃなく、全体的に下がっていますね。

__雑誌はどうでしょう?

落:雑誌はうちの場合はものすごく顕著にあらわれています。非常に不振です。

__そうなんですか。去年も書店さんによくお話を聞きに行ったのですが、その雑誌不振の話は各所で聞きました。どのへんだと思いますか?その原因は。作り手側のパワーが落ちたのか、あるいは、もうそもそも「雑誌」的なものをお客さが求めなくなったのか。

落:複合的な理由に依るものでしょう。売れないから休刊してしまう、それによってパイも狭まってしまう、お客さんは欲しいものだけ買う、というふうに、市場が小さくなっていってる気がします。今は付録がメインみたいになっているじゃないですか。

__はい。宝島社さんのやつですね。たいへん好調のようですが、あのへんはこちらのお店ではどうですか?

落:付録によって、ですかね。付録によって売れるものと売れないものがあるので、雑誌そのものの内容なのかどうかは、わからないです。





__日々、大量の新刊が出ています。似たような本も多いです。そういった出版業界の状況に対してはどのような思いでいらっしゃいますか?

落:うーん、そうですねぇ…

__差し支えない範囲で(笑)

落:けっこう悪口は言っているので、問題はないと思いますよ(笑)。そうですね、まだいびつですよね、配本とか。もう少し融通をきかせてくれてもいいんじゃないかなと思いますね。

__出版社に対してはいかがですか? 新刊出し過ぎだよ、とか。

落:うーん、点数をしぼってほしいところも分野によってはあります。例えばコンピュータ書で言えばエクセルの本とか。同じような内容の本もけっこうありますよね。タイムリーに顕著なところで言うと年賀状素材集とかでしょうか。同じようなものを複数、同じ出版社が出している。「まとめて一冊にはできないの?」と思います。

__気をつけます! また一方で、今年は電子書籍について話題が非常に多かったです。それについてはどうお考えでしょう?

落:今年は元年と言われてますけど、まだまだじゃないでしょうか。端末も出揃ってませんし、コンテンツの数もまだ少ないですよね。マスメディアがちょっと大げさに煽ってるような気がしてなりません。

__なんらかの危機感みたいなものはありますか?

落:うまく棲み分けてくれるんじゃないか、と思っています。ちょっと楽観視し過ぎですかね… 危機感はあるにはあるんですが、どう転ぶかはまだわからないな、という感じです。紙には紙の良さがあります。同じように電子書籍には電子書籍の良さがあるでしょう。それぞれ棲み分けできるんじゃないかな、と。

__私もそう思いますね。それぞれ特性があるわけですから、それに基づいて棲み分けがなされれば、「読者」がより拡がるんじゃないかと思います。

落:ええ。ただ今はまだビューアアプリにしろコンテンツにしろ、キラーとなるようなものが出てないですが、それが出たら脅威になってくるのかなと。現状は出版する方も「テストでやってます」みたいな雰囲気が出てますよね。まだ手探り状態というか。本腰入れてない感が買っている側にも見えているので。





__落合さんは、書店のお仕事をされていて楽しいですか?

落:そうですね。「このやろう」とか思うこともありますが、基本的に楽しくなければできないです。

__「このやろう」の部分をもう少し詳しく聞きたいです。

落:そうですね〜… ひとつは、「このやろう」というか接客仕事ならではの難しさといいますか悔しさといいますか、細かい思い違いが積み重なって、お客さんとのコミュニケーションがうまくいかないことがあったりします。あとは、やはり配本ですかね。「もっとあればもっと売れるのに…」と思っているなか、大手書店さんに行くとどーんと積んであるのを見ると、「こ の や ろ 〜!」って思うことは多々あります(笑)

__書店のお仕事に就いた理由は?

落:もともと本に携わる仕事をしたいなと思っていました。といっても出版ではなく、本の管理をやりたかった。いちばんやりたかったのは図書館司書なんですが、あの仕事はコネがないとなかなか就けないんですよね。

__ですよね。私も学生時代、資格を取ろうと思ったこともあったんですが、就職先が少ないことを知って断念しました。 昔から本はお好きだったわけですか?

落:んーと、本を読むのが好きというよりは、管理するのが好きだったんです。「本を貸す」とか。

__……ちょっとよくわからなかったんですが、どういうことなんでしょう?

落:学生の頃、クラブ活動というか委員会活動のようなことをしていたのですが、そのなかで「本の貸し出し」というものがあったんですね。そこで興味を持ったのが、本の分類整理です。図書館はNDC(日本十進分類法, 日本で使われている、図書の分類法)を使って分類分けをするのですが、困ったことに1冊の本で複数の分類番号を持つものがあるんです。だから実際に自分で本を分類分けして、書架に並べてみたいと思いました。本を読むこととか国語とかは得意ではないのですが、本をどうやって上手く管理するか、ということに興味を持ってしまったんですよね。

__なるほど〜。正直、初めてお会いしたタイプです。「本を分類・管理したい」か…

落:「どんな本があるのか」とかをね。

__ふむふむ。そういう落合さんにとって、書店のお仕事に喜びってどんなところですか?

落:うーん、そうですね、最近は伝票の整理とか設備の故障対応とか、裏方仕事の方が多いので、さっき言ったようなことに関する喜びというのはちょっと…

__そうですか。 では最後に、今後の野望を聞かせてください。

落:お店自体の目標は、売り上げ三千万円/月を目指す、というのがあります。かなり難しい目標ですが、それを一度でいいから達成してみたいですね〜。

__BNNもお役に立てるようがんばります! 落合さん、どうもありがとうございました!!


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本の舞台裏(インタビュー):野口尚子さん

こんにちは、みなさんお久しぶりです。タバコが値上がりしましたが、それとは関係なく禁煙というか節煙している編集部の村田です。なんだか肺が痛くて。

さて、今回は野口尚子さんにお話を伺ってきました。野口さんは、BNNの2009年10月発行書籍『デザインとものづくりのすてきなお仕事』のなかで、「印刷コーディネーター」という肩書きで登場なさっています。また最近は、『AR三兄弟の企画書』という本のデザインを手掛け、さらに『印刷・加工DIYブック』という本の執筆をなさったりと、幅広くご活躍の方です。


デザインとものづくりのすてきなお仕事
『デザインとものづくりのすてきなお仕事』
矢崎順子さん編著の素敵な本です。



__野口さん、よろしくお願いします。まずはかんたんに自己紹介してもらえますか。

野口:こんにちは、「印刷の余白Lab.」という個人事務所を営んでいます、野口です。そうそう、BNNさんの書籍でも仕事について取材いただいたことがあるのですよね。そのころは「IID世田谷ものづくり学校」という、廃校をリノベーションした施設に事務所を借りていました。

主な業務は印刷・加工のディレクションなのですが、装丁やデザインもやりますし、書籍の編集をお手伝いさせていただいたり、あとは「紙ラボ!」という紙と印刷についてのセミナーや見学会を企画して喋ったりもします。印刷を軸にしてどんなことが成り立つかをいろいろ考えるのが仕事、でしょうか。

「印刷コーディネーター」も苦し紛れに出したものですが、肩書きを特定できないので屋号をつけといて良かったなと思います。我ながらぴったりだなあと。屋号に仕事させられてる感すらあります。

__「印刷」を軸に据えたのはなぜですか? 印刷の何が野口さんの心をとらえたのでしょう? もともとはムサビの基礎デ出身ですよね。大学で勉強なさっていたことと、今やっていることの間には、素人目には開きがあるように感じます。

野口:うーん、基礎デで考えていたことは、デザインという考え方をどう活用していくか、ってこと……かな? 基礎デを受けたこと自体、当時(高校生の時)認知言語学やロボティクス、その背景にある言語の仕組みに興味があって、そういった研究と表現の合間を漂っていられそうな場所を探していて、基礎デのカリキュラムを見て「ここはヤバい」と思ったのがきっかけです。

10代でたまたま研究職の方々と出会う機会が多かったのですが、すごく面白い知識や技術を持っている人たちがいて、でもその技術をいかに使うかというのは研究するのとはまた別のスキルだな、と思ったんですね。その合間を繋ぎたいと思ってました。これは印刷でも一緒で、様々な機械、素材、それを扱うプロがいて、でもそれを使うのはデザイナーですよね。印刷を活用するためには、もっとお互いの間に共通言語を作りたいなと。

その一方で、もっと小さい頃から絵ばっかり描いてきた自分もいて、水彩・油彩・アクリル・カラーインク……等々、画材によってどうなるのかメーカーごとに描き比べたり。印刷も高校のときから発注してましたから、表現手段のひとつという感覚でした。しかし本気で扱うには専門的な知識が必要で、調べはじめるとどこまでも広がっていくのが面白くて。

答えになってるか自信がなくなってきましたが(笑)、自ら研究することと、それを活用することのバランスが取れそうだったのが「印刷」なんです。いまのところ。その仕組みの考え方は、基礎デザイン学で学ばせてもらったことだと思います。

__なるほど。面白いです。難しいけど。「繋ぐ」ってことですよね。あるいは行き来するというか。ぼくもデザインとエンジニアリングの交差するところにずっと興味があるのでなんとなく理解できる気がします。ただ、もっとシンプルに「印刷物が好きだから」というのはないのですか?

野口:そうですねー。中学高校を京都で暮らしてたんですけど、カフェや本屋やアパレルショップ、いたるところにフリーペーパー置き場があるんですよ。それもR25みたいに企業が気合い入れてやってるのじゃなくて、多色刷りとかコピー機で刷っただけみたいなお金かかってないやつが大半で。そういうの見てるのがとても面白くて好きでした。フルカラーの綺麗なものよりもよっぽど工夫の跡が見えて。でも印刷物と同じくらいデジタルデバイスも好きです。


AR三兄弟の企画書
野口さんがブックデザインを担当した『AR三兄弟の企画書』(川田十夢 著、日経BP社)。
ちなみにこの本のカバーは3色刷り。ソデの著者近影はシアンなしで分解しているらしい。



__いま扱っているお仕事での成果物は、やはりちょっと変わった印刷加工をするようなものが多いのですか? 最近の印刷ディレクション仕事を教えてください。

野口:多くの方の目に触れる機会があるものだと、東京ミッドタウン デザインハブの『PACIFIC PEDAL LIFE DESIGN展』『タイのデザイン展』のDM・ポスターとか…ですかね。前者は印刷の乗りづらい紙にいかにスミベタを乗せるか、とか、後者は蛍光マゼンタとゴールドとニスの組合わせがポイントです。

必ずしも変わったものばかりではないですが、「ちょっとこだわりたい」というご相談は多いですね。せっかく印刷物を作るなら、工夫したところはここ、というポイントが欲しいという。加工を入れると分かりやすいですが、上のようにオフセットでも素材やインキにこだわる方法もあります。特殊印刷と言われるものも、普通に印刷表現の一種なので特殊というイメージはないですね。

__この仕事の喜びと辛さを教えていただけますか。

野口:辛いのは……スケジュールに余裕がないとき。予算が限られる場合でも、時間があればもっとコストダウンや見せ方の工夫ができるのに、と思うことは多いですね。印刷現場の方への負担にもなりますし、事故も起きやすくなります。

嬉しいことは、ひとつは印刷が専門ではない方々と仕事させていただく機会が増えてきたことですね。インテリアやWebや映像など、それぞれに専門をお持ちの方々に「印刷」担当として声をかけていただけるのはありがたいですし、様々な分野の話が聞けるのは楽しいです。

もうひとつは、やはりイメージが人の手を通して形になること。印刷は最後は職人に託すものですし、意図や思いを込めて託したものが形をもって返ってくるのは嬉しいです。やってみないと分からないことが多いので、出来上がるまではハラハラですが。


印刷・加工DIYブック
『印刷・加工DIYブック』(大原 健一郎、野口 尚子、橋詰 宗 著、グラフィック社)
『デザインのひきだし』を出しているグラフィック社さんならではの素晴らしい一冊。



__ちょっと話を戻しますが、野口さんの活動により、印刷側とデザイン側の「共通言語」を作ることはできましたか?

野口:それは村田さんが「世の中を変える本ができた?」って聞かれるくらい簡単にはできないことだと思いますけど、まずは職人にもデザイナーにもお互いに「向こうに相手がいる」ってことを意識してもらえるようにしたいと思ってます。

ディレクションならば、印刷所の方にはできるだけデザイナーの意図やどういう背景の案件かを伝えるようにしますし、デザイナーにも難しい加工ほど生産工程を説明して理解いただくようにしています。

「紙ラボ!」を始めたときも、紙や印刷の知識をつけるよりも、いつもは裏方にまわっている方々に出てきてもらって、印刷業界でどのような人たちが働いているのか知ってもらいたいという気持ちでした。伝える相手が分かれば、ことばは自然に寄り添っていくものじゃないかなって。

__うんうん。そう信じてがんばっていくしかないですよね。 そろそろ締めます。野口さんは「自分の仕事をつくる」ということを実現しているわけですが、非常に軽やかにしなやかに活動しているように見えます。その軽やかさ・しなやかさの秘訣、それを支えるものは何なのでしょう?

野口:最初に「印刷の余白Lab.」という名前をつけたことかな。かっこいー! …冗談です(笑)。でも本当、たぶんそれだけです。

これは書籍のインタビューでも話したことですが、会社を辞めるって決めてから小さなオフィスを探していて、縁あって世田谷ものづくり学校のブースに応募を出しました。ちょうど一昨年の今頃です。そのときに10日間で突貫でつくった事業計画書と事務所名で審査が通ってしまい、この名前でしばらく頑張ってみようと思って、岡本健くんという友人のデザイナーに刺繍で小さな看板を作ってもらいました。

みんなデザイナーって名乗ればデザインをするし、営業って名乗れば営業をする人になるし。私はそれを肩書きじゃなく屋号にしているだけです。印刷の余白Lab.と名乗ることによって、自分の仕事を「印刷」の枠に縛るかわりに、その範囲ならできるかぎり挑戦する人、ってことにした。もう呪いみたいなもんですよ。村田さんが言ってくれるほど全然軽やかじゃないし、裏でいつもジタバタしてますが、名乗っちゃったのでしょうがないです。

__ふむふむ…奥深いです。 あと最後に、今後の展望、野望について聞かせてください。

野口:やっぱり印刷以外の仕事をしている方々とコラボレーションの機会を作りたいですね。あと、来年に向けて紙ラボ!の活動を再構築したいなと。いつか美大や専門学校で印刷の話をしてみたいです。あとはそうですね……とりあえずこの屋号で、まだできることを模索していこうと思っています。


まぶしそうな野口さん。Zine Picnic@代々木公園でのひとコマ。
お忙しい中ありがとうございました。



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