「宇宙の穴・・暗黒星雲やブラックホールとは別」読売新聞2010年5月17日
欧州宇宙機関(ESA)は、大量のちりやガスが集まって背後の天体の光を遮る「暗黒星雲」と考えられて黒い天体の一つが、実はからっぽの「宇宙の穴」だと分かったと発表した。
この天体は地球から1500光年離れた星雲「NGC1999」の一部。
写真の白っぽい星雲の中で真っ黒に見える部分で、ESAのハーシェル赤外線宇宙望遠鏡と地上の望遠鏡で詳しく観測したら、なにも無い領域と判明した。
ちりやガスは、誕生したばかりの付近の星が噴き出すジェットで吹き飛ばされたらしい。
この「穴」は、重力が強くなって光さえ抜け出せなくなった天体・「ブラックホール」 (黒い穴)とは別物。
ブラックホールは銀河の中心などにあることが分かっている。
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「ナショナルジオグラフィック」にも、記載がありました。
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「ハーシェル望遠鏡が発見した宇宙の穴」
誕生後間もない星を探すハーシェル宇宙望遠鏡がこのほど意外なものを発見した。
宇宙空間にある完全に空っぽの穴である。
穴があるのはNGC 1999と呼ばれる星雲の中だ。
オリオン座にあるこの星雲はちりとガスで形成された明るい雲で、近接する恒星の光で輝いている。
1999年12月にハッブル宇宙望遠鏡がこの星雲を初めて撮影した際、星雲の中のこの黒い点は周囲より温度が低いガスとちりの塊で、密度が高いために可視光線を通さないと考えられていた。
しかし、欧州宇宙機関(ESA)のハーシェル宇宙望遠鏡が撮影した最新の画像によって、この黒い点が実はまったくの空洞であることが判明した。
ハーシェルは赤外線望遠鏡であるため、高密度のちりを透視して内部の物体を見ることができるはずだが、ハーシェルの画像で見てもこの点はただの黒い点だった。
この穴は直径が0.2光年で、近くにある生まれたばかりの恒星V380 Oriの断続的な形成過程から生じたものと見られる。
この原始星の質量はすでに太陽の3.5倍に達している。
両極からガスを柱状に超高速で噴出して星の形成後に残った物質を吹き飛ばしており、これはこの星の成熟が近いことを示す前兆だと研究チームは考えている。
「あの星が秒速何百キロものスピードで両極からジェット噴流を放出し、周囲の雲に巨大な穴を開けているのでないかと思う。つまり、噴出したガスが周囲のガスやちりをすべて吹き飛ばしているのだろう」と、研究チームを率いるオハイオ州にあるトレド大学のトム・メギース氏は語る。
また同氏によると、穴を発見した望遠鏡は19世紀の天文学者ウィリアム・ハーシェルにちなんで命名されたが、このハーシェル自身が作成した夜空のカタログに数個の黒い点が記載されていたという。
ハーシェルはこれらの点を穴と考えていたが、いずれものちに暗黒星雲であることが判明した。
「それ以来、宇宙に黒い穴のようなものが発見されるたびに星雲だろうと考えられてきた。それから150年近くたった今、誰もが星雲だと思っていたものがハーシェル宇宙望遠鏡によって穴だと判明したとは、皮肉なものだ」。
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元宇宙航空研究開発機構職員の中川人司氏の「宇宙授業」という本を読んでみました。
難解なことが、やさしい言葉ですっきりと書かれていました。
関係がありそうなところをご紹介します。
この本を読んでから、この記事を読むと、「宇宙の穴」というものは、宇宙の一部なのではないだろうか、と思いました。
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(引用ここから)
「宇宙の寿命」
始まりがあるものには終わりがあると言われます。
流行はいつか去り、建物はいつか崩れ、生き物はいつか死んでしまいます。
あの太陽にだって寿命があります。
現在、太陽は約46億才ですが、寿命は109億才。
あと63億年ほどで、燃え尽きてしまうと考えられています。
宇宙が生まれたのは、今から137億年前のことでした。
始まりは、「ビッグバン」とよばれる大爆発で、それから今日までずっと、宇宙は風船のようにふくらみ続けています。
宇宙には終わりがあるのでしょうか?
実は最近まで、いろいろな説がありました。
「宇宙は永遠に広がり続ける」という説がある一方で、「ある程度まで広がると、今度はどんどんちじみ、最後には点となって消える」という説もありました。
この疑問に一応答えが出たのは、2003年のことです。
NASAの宇宙マイクロ波観測衛星WMAPの観測結果によって宇宙の物質量が推定され、宇宙は永遠に広がっていくということが解明されました。
永遠だと言えるのは、宇宙しかない。。
「宇宙の始まり」
1926年、遠い銀河を観測していたアメリカの天文学者エドウィン・ハップルはすべての星や銀河が遠ざかっていることに気づき、宇宙がどんどん広がっていることが明らかになりました。
この宇宙が広がる速度から逆算すると、かつて宇宙はもっと小さかったことになります。
さらに逆算していくと、137億年前には宇宙は一つの点になります。
このときに「ビッグバン」とよばれる宇宙の始まりの大爆発(大膨張)が起きて、それ以来宇宙はゆるやかに膨張し続けています。
この「ビッグバン」が宇宙の始まりと言ってもよいのですが、最新の理論では「ビッグバン」の直前に宇宙は誕生しているとしています。
宇宙の誕生から10のマイナス44乗秒後、宇宙の大きさは10のマイナス34乗センチメートルほどでした。
そして一瞬のうちに1センチメートルほどまで急膨張しました。
この急膨張を「インフレーション」と呼んでいます。
このインフレーションが終わったのは、宇宙の誕生から10のマイナス33乗秒後です。
インフレーションの直後の火の玉のような状態を「ビッグバン」と呼んでいます。
「ビッグバン」は「インフレーション」によって引き起こされました。
10のマイナス34乗センチメートルという大きさは、原子や電子1こよりはるかに小さいものです。
この小さな点の中に、現在の宇宙に存在するすべての物質がぎゅっと押し込められていました。
超高密度の状態です。
宇宙の始まりはすべての物質の始まりであるとともに、空間の始まりでもあり、時間の始まりでもあります。
だから、「宇宙が始まる前にはなにがあったんですか?」という質問はナンセンスです。
時間が流れている中で宇宙が始まったのではなく、時間そのものがその時始まったからです。
時間が始まった時点より前の時間は、存在しません。
「宇宙の外側にあるもの」
空間の中に宇宙があるのではなく、宇宙自体が空間です。
もしもある空間の中に宇宙があると考えると、宇宙の外には何があるかという疑問が生じます。
でも空間とは宇宙そのものです。
「ビッグバン」で宇宙という空間が生まれ、それがどんどん拡大しています。
空間そのものが拡大しているのです。
「宇宙の外」という概念は、ないのです。
(引用ここまで)
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など、あります。(重複しています)
これは、時空間が曲がっているからなのです。
アインシュタイン思想を手短に確認できる手段です。
遠い宇宙を高精度の望遠鏡で見ることと、指穴を通して付近の景色を見ることとは、相似形なのです。
だまされたと思って、指穴を覗いて見てごらん。
光世界の冒険 大山宏より
興味深いコメントを、どうもありがとうございました。
検索の結果、なんと、大先生でいらっしゃるのですね。
こんなへぼブログにお目を通していただき、恐縮いたしております。
「光の世界の冒険(大山宏)」
http://oyamahiroshi.cocolog-nifty.com/
1足す1は2ではない時がある、、文系のわたしはそんな風にも思います。
好きなことをしている時は、退屈している時より時間が早く過ぎる、とか。。
科学を優しい心でみつめていらっしゃる先生の雰囲気を感じます。
そう、その雰囲気、というものも、不思議の一つですよね。
雰囲気という名前の、気。
陽気、陰気、病気、気象、気性、、物理と心は不可分なのだろうか?と思ったりしています。
物理とは、心の一つの現れなのでしょうか?
これからもご教示くださいませ。