オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン

2017-10-30 15:32:07 | ジャズ
 前回のラッシュ・ライフの所で、”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”のラッシュ・ライフも好きだと載せたので、このアルバムの話もついでにしてみます。

 ■1)ジョニー・ハートマン(Johnny Hartman、1923年7月13日シカゴ生まれ – 1983年9月15日N.Y.がんの為逝去)について
 先ずは、ウイッキぺディアから。
 ”ジョニー・ハートマン は、アメリカ合衆国、ルイジアナ州ホーマ出身の、ジャズボーカリスト。学校に通いながら歌い始め、シカゴ音楽カレッジに入学し、専門的に声楽に取り組み始める。プロデビューは、第二次世界大戦終了後、1947年、アール・ハインズとの共演で注目を浴びる。その2年後には、エロールー・ガーナーと共演。音域はバリトン。カントリー・ミュージックや当時のポピュラー・ミュージックまで、幅広いスタイルに、心地よく適応しているが、本人はジャズ、中でもモダニズムを好む傾向にあった。デイジー・ガレスピーやジョン・コルトレーン、サー・ローランド・ハナなど多数のアーティストと共演を果たした。1981年には、アルバム「Once In Evry Life」でグラミー賞にノミネート。その後、ジャズから、イージー・リスニング、ポップスなどへ転向をはかる。1983年9月、ニューヨークで逝去。
アルバム
John Coltrane and Johnny Hartman
For Trane
And I Thought About You”

 ウイッキぺディアに載っているアルバムは少ないんですが、実際は結構あるようです。

 ■2)”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”と”バラード”と”デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン” 
 以下は、”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”の’87年1月の青木啓さんのライナーノーツを一部引用しました。
 ”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”のCDジャケット表裏は、下記。

 コルトレーンとハートマンがスコアでも見ているのですかね?ジャイアントステップでシーツ・オブ・サウンドを完成させ、モード手法に進んでいったトレーンですが、60年に入って、マイルスの許を離れ、オーネット・コールマンから強い刺激と新たな可能性のヒントを得、インド音楽やアフリカ音楽なども研究、59年から手がけていたソプラノ・サックスをマスターし大きく変貌し前進した。61年にインパルスと契約し、”アフリカ””インプレッションズ”などの意欲作を発表、他のジャズメンに多大な影響を及ぼす存在となった。62年秋から、シンプルで美しいバラード・プレイの”バラード”とか”デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン”、そして”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”と、前進途中の休憩といった観のある企画のアルバムを作った。他の2作のLPは、下記。

 裏は、

 バラードの方にあるサインは、1/23にアップした所で説明したマッコイ・タイナーのサインです。尚、タイナーは、この録音の2日前(6月4日)に『Nights of blues ~』を吹き込んでいます。こういう穏やかな曲の企画を作った理由としては、当時コルトレーンはマウスピースが気に入らず、手を加えたらいっそう悪くなり、急速調のプレイをやりたくても思うに任せず、代わりのマウスピースも入手できなかった。そこで、彼の悩みを聞いたプロデューサーのボブ・シールズがこれらの”変わった企画”を立てたのだということですが、レコードの売り上げも気にしていたトレーンに応えて、ボブ・シールズがヴォーカルの入ったアルバムを作る企画を立てた時に、古くからの知り合いのハートマンを推薦したと私は思っています。つまりレコードセールスを狙った3部作なのではないでしょうか?
 これらの3アルバムについて、トレーン自身が”聴きかえして見ると、今までのペースを変えて前進し、結構良いものを作ったような気がする”と語ったように、彼ならではの魅力と実力が発揮されている。そして、ハートマンの歌心が素晴らしい。

 ■3)”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”について
 選曲は、”バラード”と同じくスタンダードのバラードが、趣味良く並んでいる。ハートマンは、軽くフェイクする程度で原曲のよさを十分に生かしアドリブは、トレーンとタイナーが受け持つ。トレーンのアドリブは、ハードバップ時代とは一味違うシーツというかモード手法のスペース感覚が発揮されている。溢れる歌心、美しい情感、深い味わい、快いスリルいつ聴いても何度聴いても魅せられ、心打たれる。尚、7曲目は、CDで追加されたハートマン抜きの前日に録音されたもの。トレーンとハートマンの一期一会の出会いから生まれた不朽の名作と思う。

 パーソネル John Coltrane (ts)
          Johnny Hartman (vo)
          McCoy Tyner (p)
          Jimmy Garrison (b)
          Elvin Jones (ds)

 録音日:1963年3月7日(1~6曲目)、3月6日(7曲目)

 ■4)”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”の各曲について
 私にとっては、極上のひとときが味わえる1枚です。ハートマンのクルーナーヴォイス~ビロードのような優しく包みこむ声~とコルトレーンのいつもの切れたトーンを抑えた優しいトーンの見事なバラード・プレイを満喫できます。私が最も好きなのは、”ラッシュライフ”と、”マイワン”です。”ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル” もなんとも云えない良さがありますが・・・

1.ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル - They Say It's Wonderful (5:18)
 ”アーヴィング・バーリンが作詞・作曲した’46年のミュージカル”アニーよ銃を取れ”のナンバー。同年にペリー・コモ、フランク・シナトラのレコードがヒットした。”
 タイナーのピアノに続き、ハートマンの甘い声がそっと忍び込む瞬間から、聴き手の目の前に都会の夜のムードが漂う。次は、トレーン。原曲を生かしたアドリブで柔らかいトーンで優しく唄う。”バラード”の時より少し良い感じである。エンディングは、スローテンポでハートマンで。

2.デディケイテッド・トゥ・ユー - Dedicated To You (5:30)
 ”’36年にサミー・カーンとハイ・ザレットが作詞、ソウル・チャップリンが作曲。ビリー・エクスタインとサラ・ボーンがデュオしたレコードもあるが、トレーンとハートマンの表現は、この歌を見直させる。”
 タイナーのイントロより、ハートマンのクルーナーヴォイスが始まる。その後、トレーンのソロに。優しく情感を込めて唄うという感じのトレーンを聴く。この曲では、アドリブの崩し方に妙がある。ハートマンに戻って、最後はトレーンとタイナーが〆る。

3.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ - My One And Only Love (4:54)
 ”ロバート・メリン(作詞)とガイ・ウッド(作曲)が’53年に共作、直ぐにシナトラがレコーディングして注目された。原曲のロマンティックな魅力を十分に発揮したプレイであり、胸が切なくなるほど素晴らしい。”
 マイ・ワンというと私は、ベン・ウエブスター&アート・テイタムのが一番好きです。その次が、ロリンズが来日公演の時に時たまソプラノサックスの口を頭の上まで高く上げたり下げたりして演奏してくれたのです。ヴォーカルでは、このアルバムのがベストです。しめやかにひっそりと哀歓を伴ったトレーンの余り崩さないアドリブに、トレーンの歌心がダイレクトに感じられる。そしてハートマンが現れる。これも情感たっぷり、心にしみる。最後は、ハートマンにトレーンが絡んで、タイナーで終わる。

4.ラッシュ・ライフ - Lush Life (5:27)
 曲にまつわる詳細は、前回のアップを参照ください。ピアノバックでハートマンのイントロの《ヴァース》語りで始まる。このピアノとのデュオも素晴らしい。《コーラス》歌に入るとスロータッチで、いかにもろくでなしの酔っ払いが愚痴を言っているようなラッシュライフの前者の意味を込めた哀愁を伴った歌が聴こえる。その後を受け持つのは、トレーン。少しテンポアップして軽快なアドリブ。ここでは、ラッシュライフの豪勢なという後者の意味を込めているような軽快さ。対比の妙。ハートマンに戻ってトレーンとタイナーをバックにテーマを唄い切る。エンディングでのトレーンとタイナーとエルビンの絡みが秀逸。

5.ユー・アー・ツー・ビューティフル - You Are Too Beautiful (5:34)
 ”ロレンツ・ハート(作詞)とリチャード・ロジャース(作曲)が’32年に共作、’33年の映画”風来坊”で主演のある・ジョルスンが歌った。ここでは、タイナーのソロも優れている。”
 トレーンのイントロの後、直ぐにハートマンがテーマを唄う。タイナーのバックが凄く良いタッチ。途中からトレーンの寄り添いもたまに入る。続くは、タイナーのソロ。このリリカルさは、マイルスが嫌った、シュガートーンなのか?このアドリブラインが大好き。”バラード”の”Too Young To Go Steady"のタイナーのアドリブラインを思い出す。ハートマンがピアノに寄り添われて終わる。

6.オータム・セレナーデ - Autumn Serenade (4:19)
 ”サミー・ギャロップ(作詞)とピーター・デローズ(作曲)が’45年に共作。同年にハリー・ジェームズ楽団のレコードがベスト・セラーになった。甘味な感傷のハートマン、激情的なトレーン、個性の光る快演。” 
 ターナーのイントロよりハートマンのテーマが始まる。感傷的なハートマンの歌の後は、トレーンのアドリブ。これは少しテンポアップしてシーツの香りのする少し速いフレーズも交え、アグレッシブに吹ききる。このアドリブも聴き所。ハートマンに戻って、トレーンの絡みで、ドラムをベースにエンディング。

7.ヴィリア - Vilia (4:39)
 ”フランツ・レハール作曲のオペレッタ”メリー・ウィドウ”(1905年初演)の第二幕でハンナが歌う有名なアリア。’39年にスイング化したアーティ・ショウ楽団のレコードが話題になった。”
 トレーンのソプラノサックスのテーマより始まる。続くマッコイは、軽快なアドリブを展開。非常にスインギー。自由自在でメリハリも利いている。最後はトレーンに戻って、ここでもご機嫌なアドリブを聴かせてくれる。非常に軽快で、最後エルビンの絡みでエンディング。

 ■5)You Tube
 今は、単曲で1~7曲目まで上がっています。
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ラッシュ・ライフ ~ジョン・コルトレーン~

2017-10-28 18:23:08 | ジャズ
 前々回の中速の浮遊感のある”アイル・ゲット・バイ”、前回高速の疾走の”ラバー・カムバック・トゥー・ミー”ときたら、今度は、スロー・バラードと来るのが良いと思い、今回は、私の大好きな”ラッシュ・ライフ”が入っている同名のアルバムです。

 ■1)ラッシュライフと作者について
 これは、ジャズのスタンダード曲。作詞・曲:ビリー・ストレイホーン。原題《Lush Life》。1930年代の作品。ストレイホーンが18歳(か19歳)の時に作曲したと言われ、所属していたデューク・エリントン楽団のバージョンのほか、ナット・キング・コールやジョン・コルトレーンによるバージョンが知られる。歌詞の内容は、最後の所に凝縮されていますが、18歳でこの歌詞が書けるとは、早熟だったんですね。

「私は、どこかの小さな場末の酒場で、やけくそで飲んだくれの人生を送ろう。 同じように寂しい人生を送っている飲んだくれどもと一緒に、そこで酔いつぶれて朽(く)ち果てながら」

 好きな女に無視されて、やけくそになって酒におぼれる男の末路を「飲んだくれ人生」と表現されています。

 Lushには、豊富な、ぜいたくな、ぜいを凝らした、豪勢な、というリッチな意味と、酒びたり、酔っ払いのという正反対の負の意味があるが、どうもこの歌詞を見ると、後者のようですね。ストレイホーン自身もエリントンの影武者のような存在で、終生、名声を得られなかった。ナット・キング・コールが1949年にヒットさせた"ラッシュ・ライフ"には、そんな彼の行き場のない思いが感じられます。キングに電話で抗議したこともあるとか。しかし、一方ではビリーはエリントンの庇護の元、自由気ままな生活をエンジョイしていました。 兵役を免れ、偽装結婚をする必要もなく、ボーイフレンド(ゲイだったので)と豪華なアパート暮らし、高価な美術品を集め、創作活動に没頭出来たということから考えると、エリントンの庇護の下では、ラッシュライフの前者の意味、豪勢な生活もエンジョイした。しかし、最後は、52歳で食道がんで亡くなったということですので、最後は後者の意味での生活になったのかもしれませんね。彼が18歳の時に、両方の意味を込めて作曲したのかは判りませんが・・・

 私の好きなラッシュ・ライフは、本アルバムとフィ二アスの”ア・ワールド・オブ・ピアノ”の3曲目と、トレーン&ハートマンの甘い声が聴けるの4曲目とJUJUさんのDELICIOUSの1stDishの12曲目です。


 ■2)ラッシュ・ライフについて
 ジャケットは、

 憂いを含んだ顔をしています。過去のマイルスのグループの第一次在籍時は、後者のラッシュ・ライフだったなあ、何て思っていたかも。
 パーソネル:■John Coltrane(ts), Donald Byrd(tp-#4), Red Garland(p-#4,5), Earl May(b-#1~3), Paul Chambers(b-#4,5), Art Taylor(ds-#1~3), Louis Haynes(ds-#4), Albert Heath(ds-#5)
   録音日:■#5:1957/05/31(NJ), #1~3:1957/08/16(NJ), #4:1958/01/10(NJ)
 #1~#3は、Ts+B+Dsのピアノレス・トリオ。
 ⇒ロリンズも、ピアノレスを時々採っていました。マイルスもハービー・ハンコックに「3度と7度はバターノートだから弾くな」なんて言っていましたから、ホーン奏者はピアノに神経質になるんですかね。
 #4がTS+Tp+Pf+B+Dsのクインテット。
 #5がTS+Pf+B+Dsのカルテット。

 ■3)ラッシュ・ライフの各曲について
 ネットのブログを出すような通の方は、ピアノレスの3曲目までを高評価されているようですが、私は、ラッシュ・ライフが一番のお気に入りです。次の”I Hear A Rhapsody” も”アイル・ゲット・バイ”のような浮遊感と哀愁が合わさってお気に入りです。

 #1.Like Someone In Love (5:00)
 トレーンのスローなイントロよりテーマに入る。ここでは、原曲のメロディがほとんど判らない位デフォルメのきついアドリブである。愛する人を唄っている歌なので、トレーンはきっと当時の妻ナイーマのことを思って吹いているのでしょう。初リーダーアルバムのコートに菫を、では、ストレートなメロディに昔の恋人のことでも思って吹いていると思っているのですが。アドリブラインが、いつものストレートラインではなく、抑揚を抑えたアドリブになっていますが、私は原曲のメロディを元にしたストレートなアドリブをトレーンのバラードには最適と思っているのですが・・・・

 #2.I Love You (5:33)
 ドラムのイントロよりトレーンのイントロが来て、原曲の判るアドリブに入る。アドリブが入ると、トレーンのシーツが快調に展開される。アドリブの多彩さもこの頃のトレーンの充実振りを示している。1曲目のアドリブ手法とは異なり、こちらの方がトレーン本来のアドリブと思う。マイディアライフで昔聴いた渡辺貞夫さんのAsの同曲は、どちらかというとパーカー寄りのスピード感のあるアップテンポのアドリブでしたが、トレーンのこのアルバムでは、シーツに近い、音を短く刻んでいる。フェードアウト気味でエンディング。

#3.Trane’s Slo Blues (6:04)
 ベースのミディアム・テンポのイントロ後、只管トレーンのアドリブが続く。1曲目と同様の抑揚を抑えた訥々とした言葉少ないもの。その後のドラムソロも饒舌ではない、どちらかと言うとコントロールされたもの。そこから、またトレーンのソロに戻るがここでは、トレーン本来の縦横無尽なアドリブを展開する。テーマに戻って静かにエンディング。

 #4.Lush Life (13:56)
 ピアノのガーンというイントロと、トレーンの情感の篭ったイントロから始まるが、トレーンのこのソロは全く淀みのない。”神の啓示”を受けた半年後は、実に充実していたということか。1曲目とは様変わりして堂々とバラードを吹いている。もう、ロリンズの名バラード”恋を知らない貴方”に勝るとも劣らない。ここでのアドリブは原曲のメロディを上手く生かしたものである。こういうアドリブが好きです。次は、ガーランドの美しいソロ、これは秀逸。言葉は要らない。秀逸の一言。フィ二アスのラッシュ・ライフとはまた、違った趣を持つ。ガーランドの方が、リラックスした演奏で、ゴージャス系ではあるが、カクテル・ピアノにはなる寸前にとどまる。最後に出てくる、バードがまた良い。そのソロの最後でアドリブからテーマに戻るところの移り方が良い。そこからトレーンに代わって、バードとの掛け合いの時のバードのブリリアントさが何とも云えない。トレーンが畳み掛けて、バードがそれに返して2人の会話で終わる。

#5.I Hear A Rhapsody (5:59)
 これは、マウスピースの調子が悪かったのか、そういう音を狙っていたのか判りませんが、アドリブラインが素晴らしいのに音がくすんでいるのが残念。トレーンのミディアム・ファーストのイントロよりアドリブへ。このアドリブはお気に入り。キースで言えば、このエレジー感は、スタンダーズ・ライブの”オールド・カントリー”の哀感を漂わせながらも感情に溺れないクールな演奏を思い出します。その後は、ガーランドの哀愁に満ちたアドリブ。速めのジャンピング系というかキャットウォーク系のスインギーなアドリブを堪能し、トレーンに戻ってまた切ないアドリブの後、あっさりと終わる。このアドリブは、シーツも加えてもう少し長く聴きたかったのであるが・・・このあっさり終わる所に、聴衆を盛り上げて置いて、置き去りにする少し意地悪なテクニックが隠されている。

 ■4)You Tube
 今は、全曲上がっています。
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ブラック・パールズ ~ジョン・コルトレーン~

2017-10-25 20:35:15 | ジャズ
 プレスティッジには、アップテンポのトレーンの凄いのがあります。最近、お気に入りの”アイル・ゲット・バイ”の浮遊感と共に、突き抜ける爽快感を味わえる”ブラック・パールズ”に入っている”ラバー・カム・バック・トゥー・ミー”を良く聴いているのでその話です。

 ■1)プレスティッジ前後のトレーンの状況
 これは、以下のように纏めてみました。ネットの情報と、油井正一さんの”ジャズの歴史物語”を参照しましたが、時期が正確に判らないものもあります。正確性はともかく雰囲気はわかると思います。

 プレスティッジは、茶色、ブルーノートは、青、アトランティックは、薄紫にしています。’56年の5月のテナー・マッドネスでは、積極的にロリンズのマネをしていましたが、これは将来の発展の為にロリンズスタイルを習得していたと思います。僅か半年後のマイルスとのセッションでは、もうそれからは抜けて自己のスタイルを確立しています。’57年3月の初リーダーアルバムでは、初々しいトレーンが聴けます。棒吹きに近いですが、彼のスタイルは出来つつあります。そして、その頃、モンクのグループに入って、モンクに音楽的な質問を浴びせますが、モンクは全て、ピアノに向かって答えを出してくれたとトレーンが感謝しています。ここでトレーンは、プレーヤーとして劇的に発展します。また、マイルスのバンドでドラッグや酒に溺れて遅刻を繰り返していたが、これも劇的に改善したようです。モンクの影響はそこにもあったのかもしれませんね。キャノンボールが、1972年に、”’58年に再結成したセクステットに戻ったトレーンは、聖人に変身していた”と述懐しています。’57年の7月に「ファイブ・スポット」にモンクバンドの一員として出演している時期に、”神の啓示を受けた”とトレーンは言っています。それ以降は、音楽的には、以前とは様変わりして、自信に満ちたプレイをするようになったのは確かです。確かにそれ以降のアルバムは、ブルートレインをはじめとして凄いのが多いです。今回紹介する、”ブラック・パールズ”は、前回の”スタンダード”の一つ前になりますので、その頃の熱気がぷんぷんしています。

 ■2)”ブラック・パールズ”
 アップテンポの曲で好きなのは、ソニー・ロリンズでは、”ワーク・タイム”の”イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー”や、フィ二アスの”ダホード”や、トレーンでは、シーツの萌芽と云われる”ロシアン・ララバイ”等がありますが、この”ブラック・パールズ”に入っている”ラバー・カム・バック・トゥー・ミー”は、アマゾンのレビューを見ていたら、…“天井知らず”…の爆走を展開している、と上手く表現していますね。正に、“天井知らず”…のブローを見せ、爆走する、魂の叫びが聞こえてきます。今のお気に入りです。ジャケットは、

 正に、神の啓示を聞きながら吹いています。裏は、

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts)
          ドナルド・バード(tp)
          レッド・ガーランド(p)
          ポール・チェンバース(b)
          アート・テイラー(ds)
 '58年 5/23 ニュージャージーのハッケンサックで録音
 発売されたのは、’64年ですが、既に’64年のトレーンが本’58年のアルバムで予見できます。

 ■3)”ブラック・パールズ”の各曲
 これは、3曲共に、アップテンポの曲ですが、2曲目の”ラバー・カム・バック・トゥー・ミー”が素晴らしいです。丁度、ソニー・ロリンズの”ムービン’アウト”で普段は静かなケニー・ドーハムが、ロリンズの豪快なブローにインスパーヤーされて、ドーハムとは思えない、火の出るようなペットを聴かせてくれたと同様、ここでのドナルド・バードは、トレーンの気迫にインスパイヤーされて彼のリーダー・アルバムより素晴らしいブリリアントなプレイを聴かせてくれます。バードの至高の名演の1つだと思っています。

01. ブラック・パールズ / BLACK PEARLS 13:10
 ミディアムテンポのイントロはユニゾンでファンキーに始まる。直ぐに、トレーンは、シーツ・オブ・サウンドを爆発させる。スリリングで音を詰めて、うねる様に音符を細かく刻み込む。トレーンは、バードに触発されたことは間違いない。次は、バードのソロ。これもトレーンに負けず劣らず、スタイルはバードはハードバップで違うが、全開。ブラウニーライクなアドリブ。リズムセクションもエルビンが入るまではハードバップなのでトレーンが抜けているというか浮いているようなこの時点での状況である。ガーランドのスイングするアドリブとチェンバースのウオーキングベースを聴いて最後はユニゾンでストレートに終わる。

02. 恋人よ我に帰れ / LOVER COME BACK TO ME 7:25
 先ずは、バードがブリリアントなテーマを吹くと、その後に続くトレーンが、F1並の爆走。シーツ全開。リズムセクションがぎりぎりに追いついていく。今度は、バードが飛ばす。次は、またトレーン。これも、バードより短い刻みで飛ばす。どこまで音符を細かく刻めるか限界に挑戦しているようだ。単に速いだけではなく、アドリブのパターンの多さも注目。ガーランドも目一杯早弾きを試みている。スイング感も忘れてはいない。続くドラムソロはダイナミックだが節度を持っている。最後は、テーマに戻って、2管の掛け合いを美しく演じてバード主導のユニゾンであっけなくエンディング。この突然感とそれによる余韻がまた良いんです。聴衆を置いてけぼりにするテクニック。

03. スウィート・サファイア・ブルース / SWEET SAPPHIRE BLUES 18:14
 18分を超える長尺のブルースだが、ここではガーランドを大きくフィーチャー。ガーランドの軽妙なイントロから始まり、乗り乗りのブロックコードのアドリブがこの曲での聴き所。アイデアも多彩で、跳ねる音や、流れるようなタッチ、サファイヤを連想させる得意のゴージャス系フレーズを色を混ぜて、スインギーに弾きまくる。その後は、トレーン。聴く者を圧倒する。極限まで音符を細分化し、速いフレーズを取り混ぜて、サイクリックにうねり続ける。このアドリブは凄い。正に、シーツ・オブ・サウンド。最後に少しテナー・マッドネスで見せたようなハードバップ風のフレーズも披露。その後を追随するバードは、スイング感溢れる軽快なアドリブでブリリアントな輝きも交えて軽快に吹ききる。リー・モーガンを少しゴツゴツさせた感じ。でも途中からトレーンに触発されて早いフレーズで本領発揮してくる。次は、チェンバースの力の入ったウオーキングベースとテイラーの切れ切れのドラムソロ。最後は、ピアノに戻ってエンディング。

 ■4)You Tube
 今は、フル・アルバムが上がっています。
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スタンダード・コルトレーン

2017-10-22 11:16:25 | ジャズ
 今回は、昔良く聴いていたが、最近また嵌っている、”スタンダード・コルトレーン”です。”アイル・ゲット・バイ”が今最高に気に入っています。これの浮遊感が堪りませんね。

 ■1)”スタンダード・コルトレーン”について
 これは、何と言っても、2曲目の”アイル・ゲット・バイ”が最高に良いです。テーマを奏するトレーンの少しの郷愁と未来への希望が見え隠れして何ともいえない、カンファタブルさを聴く者に感じさせます。ここでの、ウィルバー・ハーデンも秀逸です。この人、誰?と言う感じですが、トレーンは、この同い年のホーンプレイヤーと気が合ったようで、ハーディン名義の4枚のリーダー・アルバム(サヴォイ)の内2枚で共演しています。尚、トレーンをアップした1/28のトレーンのところで紹介したアルバム”スター・ダスト”の1、3曲と同じセッションになります。フィ二アスで言えば、丁度”ア・ワールド・オブ・ピアノ”のB面と同一セッションが、”ザ・グレート・ジャズ・ピアノ”になりますので、同じ関係です。ジャケットは、

 精悍な顔のトレーンですね。裏は、
 
 時々、プレスティッジが修行時代、飛翔期のアトランティック、完成~新たな挑戦期のインパルス時代とレーベル毎に分類されますが、私は、プレスティッジ時代のトレーンが一番好きです。ハードバップに収まりきらず、シーツ・オブ・サウンドに邁進している過程がまた良いんです。録音は、’58年ですが、’58年は、ハードバップの最高潮の年ですね。

 録音日:’58年7月11日
 パーソネル:トレーン (TS)
       ウィルバー・ハーデン (FLH,TP)
       レッド・ガーランド (P)
       ポール・チェンバース (B)
       ジミー・コブ (DS)   

 ■3)ウィルバー・ハーデンについて
 この人について、少しネットで調べてみました。”サックス・創意工夫・ジャズ・下学上達”というブログから引用・加筆させて頂きます。
 ”トランペットとフリューゲルホーン奏者Wilbur Harden ウィルバー・ハーデンは1924年12月31日、アラバマ州バーミンガム生まれで1969年に35歳で亡くなっています。 アート・ファーマーを思わせるやわらかく暖かい音色と端正なタンギングで淡々とフレーズを紡ぎだす、すばらしい演奏です。 マイルス・デイビスなどが受けたと同じように、1947年に31歳で亡くなったトランペット奏者 フレディー・ウェブスター(マイルスより2歳年上のマイルスの兄貴分で友人) の影響を受けているようです。マルチ奏者 ユセフ・ラティーフ、 サックス奏者 ジョン・コルトレーン、トロンボーン奏者 カーティス・フラーなどと演奏活動を行っていましたが精神的な病を抱えていたらしく録音を行った期間としては1957年から60年のわずか3年間しかないようです。 サヴォイにアルバム7枚(リーダーとして4枚、サイドマンとして3枚) プレスティッジにアルバム3枚(すべてサイドマンとして)の合計アルバム10枚分の録音しか残していません。代表作は唯一のワン・ホーン録音で同名ミュージカルを題材にしたアルバム"The King And I 王様と私"です。よく知られた曲としては"Shall We Dance?"や"Hello, Young Lovers"などが収録されています。ハーデン特有の端正で美しく、暖かいトランペットの音色を堪能できるすばらしいアルバムです。”
 ”HOUSE OF JAZZ”というブログで、『ジャズ・ウェイ・アウト』というアルバムの紹介ページからも一部借用させて頂きます。
 ”66年の某日、精神病院からサヴォイ宛に手紙を出していることが確認されています。主な内容は「ギャラの支払いについて」、そして「カムバックの準備完了。録音されたし」というものでした。しかしハーデンは再びレコーディングすることなく、70年代の到来を迎える前に亡くなったとききます。
 『ジャズ・ウェイ・アウト』というアルバムは、ハーデンが音楽家生活で唯一輝いた1年であったろう58年に吹き込まれた作品。彼はロータリー式のラッパを愛用していたので(通常、ジャズで使われるのはヴァルヴ式)、ここでもそれを吹いているのでしょう。モッサリした音、訥々としたプレイは、聴きようによっては初期のマイルス・デイヴィス的にも感じられます。が、やはり、当盤の真の主役は、急成長をとげていたコルトレーンやトミー・フラナガンといえるでしょう。”

 ■4))”スタンダード・コルトレーン”の各曲について
 アマゾンのレビューを見ていたら、このアルバムの人気曲は、1番が“invitation”次に“spring is here”のようですが、私は“アイル・ゲット・バイ”が断トツ好きです。次は、バラードの”Don't Take Your Love from Me ”です。勿論他の曲も好きです。

 1.Don't Take Your Love from Me 9:13 ヘンリー・ネモ作
 先ずは、トレーンのしなやかなスローテーマを聴いて、続くは、ハーデンのペット、これが良い味を出しているんです。マイルス風にも聴こえますが、言葉少なく、又不足も無く、この頃のハードバップの良いバラードという感じで落ち着いてプレイしています。その次は、ガーランド。美しいフレーズをゆっくり情感を込めて爪弾く。この頃のガーランドは、何をプレイしても乗っています。トレーンに戻って、テーマに戻ってしっとりとエンディング。この頃のプレイは、既にロリンズと対等になっています。

 2.I'll Get By (As Long As I Have You) 8:09 フレッド・アーラード作
 これが、今最高に気に入っています。この浮遊感、何とも言えません。ミディアム・ファーストなのに、超速の例えば、”ロシアン・ララバイ”より躍動感を感じます。心がウキウキしてきます。そうだ、フィ二アスで云うと、”ア・ワールド・オブ・ピアノ”の”CABU”や、”ウィ・スリー”の”アワー・デライト”が、超速の”ダホード”より浮遊感を感じるのに当たる。次に来るのは、ハーデンのペットで、ここでも最高のプレイ。マイルスのコピーとかも云われるが、決してそのようなことはなく、違った良さを持っている。ジャストタイミングのブローに加え、ジャストの間を持っている。マイルスはディジー、バード、セロニアスから間の大切さを学んだということですが、ハーデンは誰からなんですかね。次は、ガーランド。彼の躍動感のある曲でのジャンピング・タッチは心に響く。トレーンに戻って、テーマをお浚いするが、このテーマの心地よさも群を抜いている。トレーンに感謝!エンディングでのハーデンのペットの奥ゆかしい絡みも秀逸。

 3.Spring Is Here 6:53 リチャード・ロジャース作
 ミディアム・ファーストのユニゾンのテーマから。トレーンのテーマは、ここでも快調。シーツ・オブ・サウンドの香りもプンプンする。ここでは、トレーンは、本当に軽くブローすることを念頭に置いているように軽い。次は、ハーデンのペット。このソロもマイルス張りの緊張感を持った、間を有効に使ったブリリアントなプレイ。何と云うか、静の”ケニー・ドーハム”を奥底にひそめ、輝きは、”リー・モーガン”に貰って、全体の構成は、”マイルス”に倣う、そんな感じを受ける。次に来るガーランドは、絶好調。何も云うことはない。スイング感の神がピアノをプレイしている。但し、マイルスのグループではヘロインと遅刻でマイルスを困らせたようだが。続くチェンバースもお約束の快速ウォーキング・ベースのソロを聴かせてくれる。最後は、ユニゾンのテーマでストレートに終わる。

 4.Invitation 10:20  ブロニスラウ・ケイパー作
 スローなバラードのイントロから、うねるような、”夜の都会の孤独”を漂わせたムードのテーマをしっとりとトレーンがプレイして始まる。過去の追憶と、少しの後悔を伴って重厚なテーマを吹いていく。孤独への招待なんですかね。ムードで云うとマリガンの”ナイト・ライツ”というところですが、ナイト・ライツより重厚な闇を抱いている。このテーマをじっくり奏する。ここでのアドリブ・パターンの多様さも聴き所。トレーンが人間離れした練習を自らに課しているということが如実に判るプレイ。また、シーツの香りもします。お次は、ハーデンのペット。ここでも短いが心に響いてくる。又、直ぐトレーンに戻って重厚なテーマをアドリブしていく。トレーンのアドリブを堪能するにはベストと思う。エンディングでのハーデンの控え目の絡みがここでも素晴らしい。

 ■5.You Tube
 今は、単曲では、全曲上がっています。
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”ソロ・ピアノ” ~フィニアス・ニューボーン・Jr~

2017-10-19 12:35:17 | ジャズ
 今回は、前回のリストで16番目にあたる’74年録音のフィニアスの”ソロ・ピアノ”についてです。このLPは、’75年頃購入したのですが、曲によっては、後半に力強いストロークで激しい感情をぶつけています。この頃のフィニアスのどこか不安定な精神状態ー今までの受けてきたストレスに押しつぶされそうな自分の鬱積した感情の吐露”叫び”ーが聴こえます。アート・パッパーで言えば、晩年のロード・ゲームの”エヴりシング・ハプン・トゥー・ミー”の叫びに何か通づるものを感じるのは当方だけでしょうか?

 ■1)フィニアスのテクニック及びその変化について  ~以降は、’75年当時のこのLPの藤井英一氏のライナー・ノーツから一部引用しています。~
 フィニアスのピアノに初めて接する人は、その特異なテクニックに驚くに違いない。”ジャズ・ピアニストの中で指が最もよく動くピアニストを上げよ”と言われたら、迷わずテイタムとフィニアスと答える。例えば”ヒア・イズ・フィニアス”を聴いてみると、彼は普通の4ビートを普通に演奏するにはテクニックが余ってしまって、もてあましていると言うか、困っていると言って良いのか、とにかく面白い。例えて言うならば、リストでもプロコイエフでも完璧に弾き熟せるピアニストが小学生のアンサンブルに加わって戸惑っているような風である。このテクニックが最も冴えているのは、”ヒア・イズ・フィニアス”である。右手のフレーズは、チャーリー・パーカー、バド・パウエル直系であり、パウエルの曲”セリア”1曲だけを聴いても、その驚嘆すべきテクニックとフレーズ作りを知るには十分である。但し、この”セリア”もコンテンポラリー盤に入っている方になると大分感じが違ってきている。倍テンポの”乗り”になることも多いがフィニアスの場合はそれが”エキサイティング”ということには繋がらないで寧ろ軽いものになってしまう。テイタムやフィニアスのよな名人になると、”必死になって一生懸命演奏する部分”と”人に感銘を与える部分”とは一致しない。これは他の楽器にも言える事で、我々にジャズの演奏の姿勢・鑑賞態度についての再検討を無言の内に要求しているように思われる。テイタムが古今を通じての最高のジャズ・ピアニストであることは間違いないが、テイタムは、4ビートのリズムをベースとドラムスに任せきって演奏した訳ではないので、そこにもフィニアスのテクニックに対する尽きない興味がわくのである。左手はもちろんテンス・バスなどのリズム・サポートをしない訳ではないが、それよりも注目すべきは、カウンター・ポイント的な要素や修飾的なフレーズを自由に織り交ぜ、しかもそれを曲の流れやテンポを乱さずにやってのけていることである。ジャズ・ピアノでは、クラシックのフーガのように、左手と右手の均一性を要求されることはほとんどないので、鈍いタッチになり易いのだが、フィニアスの左手のタッチは素晴らしいものである。これは余興だがフィニアスは、ハンプトン・ホーズの曲”サーモン”を左手だけで演奏している。また、左手と右手をオクターブまたは2オクターブ離して弾く奏法も多くロックト・ハンドのテクニックも”バルバドス”にあるように非常に優れている。コードの感覚や、ブルースのフィーリングは、テイタムによく似ている。模倣した部分もあるかもしれないが、それよりもこの2人の間には、本来共通した何かが存在するように思われる。
 パウエルの弾き方が、何度か変化したように、フィニアスのスタイルも病気療養の関係もあってか、少しずつ変わっているようである。レコードの数はあまり多くは無いが、一作毎にあの異常なまでのデリカシーは薄められ、がっしりと力強くなって、ビートに対する”乗り”も”謙譲の美徳”的な感じから”自己主張”的なものに変わってきている。そのような変化が良いのか悪いのかは判らない。

 当方も変化については感じています。冒頭に書いたような状況になってきているとこのLPでは思ったのですが、それが藤井さんが書いている上のことと同じなのか違うのかは判りません。

 ■2)”ソロ・ピアノ” について
 これも少し藤井さんのライナー・ノーツから引用します。
 ”このアルバムは、フィニアスがソロで演奏した貴重な作品である。バップ以降のピアニストでもソロの曲を吹き込んでいる人達も多い。パウエルの”オーバー・ザ・レインボー”や”イット・クッド・ハプン・トゥー・ユー”に始まって、ジョージ・シアリング、セロニアス・モンク、オスカー・ピーターソン、キース・ジャレット、ローランド・ハナ、スタンリー・カウエル、など、それぞれ個性のあるプレイをしているが、フィニアスのソロ・アルバムが加わることは大変嬉しいことである。”
 確かに、貴重なソロアルバムで、これを聴くと何故だか涙ぐみます。
 ジャケットは、下記ですが、スフインクスになったフィニアスがピアノに乗っています。少し違和感が・・・

 裏は、


 ■3)”ソロ・ピアノ” の各曲について
 ライナー・ノーツの藤井さんの解説を前半に、私の感想を後半に載せます。フィニアスの曲は全部好きですが、私のお気に入りは、このLPでは、A-4. ”ニカの夢” と、B-2. ”真夜中の太陽は沈まず” の2曲です。

 A-1. トゥゲザー・アゲイン
 ”速いテンポでブギウギのようなイントロで始まる。CLEFレコードの”バド・パウエル・ムーズ”を思わせるようなヴァイタリティ溢れた演奏。短いがこれだけでも完全に魅了されてしまう。”

 アップテンポのイントロより快調に飛ばすフィニアス。流れるようなフレーズを強いタッチで弾いていく。アドリブは、止め処なく。最後は一瞬テンポを落として、また戻った後華麗に終わる。

 A-2. セレナード・イン・ブルー/ホエア・イズ・ザ・ラヴ 恋人は何処に
 ”セレナードの方は自由なテンポで、パウエル風のサウンドで聴かせる。”ホエア・イズ・ザ・ラヴ”は、フィニアスのお気に入りの曲らしい。シンコペーションの多いリズムで楽しげに弾いている。”
 
 非常に強いタッチでミディアム・テンポのテーマから始まる。後半は、メロディアスなテーマを楽しそうにプレイしている。エンディングはキラキラと色を輝かせながら流れるように。

 A-3. ローレインズ・ウォーク/ウィロー・ウィープ・フォー・ミー
 ”左手と右手をオクターブ違いで弾く奏法で速いテンポで弾きまくる。”ウイロー”の方はテイタムのウイローのコード・ワークとそっくりなところがあり、影響が顕著のように思われる。”

 アップテンポのイントロより。コミカルなテーマを多彩なアドリブで崩していく。”ウイロー”の方はスローテンポに変わり、アドリブに入ると自由奔放に弾きまくる。キラキラのフレーズも力強いストロークも随所に交えて。どこで何が来るのか判らないようなアドリブライン。何かに衝かれているような、あがいているような姿を見る。これを聴くと何かを叫んでいるように感じる。

 A-4. ニカズ・ドリーム ニカの夢 
 ”ホレス・シルバー”の曲であるが、素晴らしい演奏である。このような曲を、ベースもドラムスもなしで演奏する狂気はパウエルに一脈通じるものがある。”

 テンポの良いイントロより。速いグレーズを弾きつつ多彩なアドリブもこなす。この流れるようなアドリブラインはベース無しでもスインギー。エンディングは、3回のバーンという得意技の前触の後に、バーンで終わる。

 A-5. グッドバイ/フラミンゴ
 ”2曲とも、左手のアルペジオにのせて自由なテンポで弾いている。フラミンゴで、黒鍵のグリッサンドをうまく使っているところは面白い。グッドバイに戻った後に終わっている。”

 スローなバラード。イントロより物悲しいフレーズを弾く。玉を転がすようなパッセージを交えて、時に力強く、時にナイーブな切ないメロディを織り交ぜて。何かを悔いるような、別れを惜しむような。でもタッチは次第に強くなっていく。

 A-6. リヴ・アンド・ラヴ/ワン・フォー・ホレス
 ”これも、バラードのメドレーである。アルペジオが美しい。”

 リリカルなイントロより。ゴージャスな流れるようなアドリブを暫し楽しむ。流暢なメロディの中に時々強いストロークを交えて色を重ねていく。夢見るもののファンタジー。

 A-7. バウンシング・ウイズ・バッド
 ”サヴォイ・レコードやブルーノート・レコードのセッションでファッツ・ナバロやパウエルが演奏していた懐かしい曲。激しく入る左手のアクセントが全体を引き締めている。”

 打って変わって、速いパッセージで流れるような指捌き・超絶テクニックを魅せる。最後は力強いタッチでクライマックスを見せて終わる、ゴージャスなエンディング。

 B-1. メンフィス・ブルース
 フィニアスのブルース・フィーリングは聴くものの心を捉えずにはおかない。伝統的なジャズの良さを感じさせる演奏である。”

 ミディアム・テンポのイントロより。ブルース・フィーリングたっぷりのブルースを楽しく弾いている。ご機嫌なムードを漂わせてブルージーに余韻も漂わせて終わる。

 B-2. ザ・ミッドナイト・サン・ウイル・ネバー・セット 真夜中の太陽は沈まず
 ”クインシー・ジョーンズが書いた美しいバラード。超スローの自由なテンポでたっぷりと演奏している。”

 これが一番お気に入り。イントロは何かを回顧しているような哀愁を帯びたもの。超スローなテンポでこのバラードを美しく華麗に弾くフィニアス。以前の”アイ・ラブ・ア・ピアノ”でもこの曲を弾いているが、ここではよりスローでピアノ本来の音の美しさを際立たせてエモーショナルにまた色を混ぜて。ここまでスローになると、凡庸なピアニストでは間延びするところだが、どっこい、フィニアスは、きっちり間を埋めている。彼のこれまでの来し方を振り返り感慨深く感じているフィニアスを感じる。年齢を経て初めて出る味わいがある。”アイ・ラブ・ア・ピアノ”の同曲と勝るとも劣らない名演である。これを聴いていると思わず涙が出てくる。ペッパーの”エヴりシング・ハプン・トゥー・ミー”の叫びに何か通づるものを感じる。

 B-3. アウト・オブ・ジス・ワールド 浮世はなれて
 ”ハロルド・アーレン、ジョニー・マーサーのコンビによる不思議な魅力を持った小品で、フィニアスは、左手のリズム・パターンに超絶技巧の一端を窺わせている。”

 速いパッセージで始まる。自由自在なアドリブ・パターンを披露する。スインギーに流れるようなアドリブ・ラインを走っている。突然バーンでエンディング。

 B-4. ジャイアント・ステップス/エヴリシング・アイ・ハヴ・イズ・ユアーズ/ホエア・イズ・ザ・ラヴ (リプリーズ)
 ”フィニアスのレパートリーは、非常に興味あるものである。以前は、オーネット・コールマンの”ザ・ブレッシング”を録音しているが、ここではコルトレーンの演奏で知られる”ジャイアント・ステップス”を弾いている。バラード風に美しく演奏していて、気負ったところはない。”エヴリシング”も原曲の味を生かしていて美しい。”

 トレーンは、速いパッセージで走り過ぎるが、フィニアスはスローで内省的なバラードに仕上げている。”エヴリシング”もゆったりとした美しいメロディでアドリブも感傷的な装飾をきらめかせて美しい。”ホエア・イズ・”は少しアップテンポになって軽快に進むが、途中テンポダウンしてまた戻る。テンポチェンジを交えてアドリブは多彩に展開する。

 ■4)You Tube
 今の所は、A-4. ”ニカの夢” と、B-2. ”真夜中の太陽は沈まず” の2曲が上がっています。
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