オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ ~フィニアス・ニューボーンJr~

2017-09-25 22:13:10 | ジャズ
 今回は、フィニアス・ニューボーンJrの中後半の作品になります、”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”を紹介します。

 ■1)”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ” のできる迄の状況
 これは、今まで何度も説明していますので、今回は簡単に記載します。
 フィニアスは、’56年にデビューLP”ヒア・イズ・フィニアス”を録音した後、RCAやルーレットにLPを残した。コンテンポラリーレコードの社長のレスター・ケーニッヒは、’61年にフィニアスに会い、彼のピアノが気に入って契約し、ハワード・マギーの2作にサイドメンとして起用した後、’61年10月に”ア・ワールド・オブ・ピアノ”を、コンテンポラリーの第一作として録音した。第二作は、’62年の”グレート・ジャズ・ピアノ”で第三作はザ・ニューボーン・タッチになる。
 彼は’64年にザ・ニューボーン・タッチを録音した以降精神病院への入退院を繰り返し、ケーニッヒとの友情はその後も続き、’69年にフィニアスが精神的にも立ち直ったのを見届け、’69年2月についにその頃は、幻のピアニストと思われていたフィニアスの久方ぶりのレコーディングを実現させ、本作を吹き込んだ。彼のアルバムのリストは、下記。全23作中、14番目。


 ■2)”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”のジャケット
 まず、LPの表は、

 精悍で凛々しい顔つきです。帯には、副題でーブラックコーヒーーが載っていますね。ケーニッヒ自身は、”ハーレム・ブルース”のライナーノーツで邦タイトル<ブラック・コーヒー>と書いています。裏もついでに

 レイと、エルビンも写っています。’77年に大学のレコードショップセブンで購入していますので4回生時代ですね。この頃フィニアスに夢中で集中的にフィニアスのLPを集めています。

 ■3)本作のレコーディングの状況 ~本作の野口久光氏のライナーノーツを参照し、加筆~
 吹込みが行われたのは、’59年2月12日13日の2日、LP記載に名エンジニア”ロイ・デュナン”の名は無く、何と社長のケーニッヒ自身がレコーディング・ディレクターを務めたようであるが、音質の良さ、トリオのバランスは、最新録音のものに少しも負けない素晴らしい音である。
 フィ二アスは、スタジオに入るや、自由に弾きまくり15曲がテープに収められた。内8曲が、本LP”プリーズ・センド・ミー・サムワン・ツー・ラブ”に収められ、残りの7曲は’75年になって日本向けに”ハーレム・ブルース”(SJゴールドディスク)としてLP化された。
 フィニアスのようなピアニストのLPには録音の良し悪しが非常に大切だが、彼の”コンテンポラリー”に吹き込んだ他のLP同様これは最上のモノといってよく、このLPの価値を一段と高めている。

 ■4)ケーニッヒの本LP吹き込み時の回想 ~ハーレム・ブルースのケーニッヒ自身のライナーノーツ('75年時点)を引用~
 ”録音日を2日用意した。
 バックに誰を使おうと考えたが、病み上がりの彼のことなので、彼の立場を十分に理解し、細心の注意と最高の技術で、彼に余計な負担をかけさせないですむようなプレイのできる人、こういう条件で、まずベースにはレイ・ブラウンを決めた。彼ならまず問題はない。当時でも、今でも最高のベーシストであり、どんなタイプのミージシャンのバックにも、最高のバッキングを果たすことの出来るプレイヤーだからだ。
 そして、ドラマーはと考えていたら、丁度その時にロスにエルビン・ジョーンズが来ているのを思い出した。何日か前に、エルビンにバディ・コレットのセッションに付き合ってくれないかと誘うと、きわめて好意的にOKの返事をくれたていたので急遽フィニアスのセッションにも加わってもらうことにした。
 この二人なら強力無比なリズム・コンビが出来上がるに違いない、こう思うと私は録音の当日が待ち遠しくてならなかった。
’69年の2月12日のAM11;30、録音は一切打ち合わせ無しに、きわめてスポンテーニアスに始められた。というより、フィニアスがスタジオに現れて、一方的にピアノを弾き始めたことからスタートした、という方が良いだろう。
 この日、スタジオに現れたフィニアスは、それまでの長い入院生活からやっと開放され、ずっと夢見続けていたピアノ(私のスタジオにあるのはスタンウェイの6フィートのコンサート用だ)を眼の前に見て、すっかり興奮してしまったのだ。もう彼の頭の中には、ピアノのことしかないようで次から次へと鍵盤の上に指を走らせる、これを、レイとエルビンがぴったりとフォローしてゆく、こんな風に始まった。
 初日のレコーディングは、2セッションで夕方の5時半まで、2日目は、1セッションで午前10時から、午後の1時まで、この間に我々は15曲のチューンを採り終えたのだが、そのオーダーは下記。
録音は終始フィニアスのペースで行われたのであるが、私に言わせればピアノに対して欲求不満に置かれていた、彼の頭の中の何者かが、このセッションで一気に爆発し、その思いのたけを全てピアノに叩き込んだ、そんな感じの凄じいプレイぶりだったと記憶している。これは、今回のアルバム化にあたって、マスターテープをあらためて聴いてみて、その感をよりいっそう深めたものだ。
 このレコーディングの後、フィニアスは再び彼の持病に陥ってしまい、思うような活躍ができずに今日に至っているが、状態の良いときに彼に会ったり、電話で話をするにつけ、一日も早く、あの華麗でスリルに富んだピアノ・プレイが、”完全に健康な状態”で聴くことのできる日を、私としても待ち焦がれているのが現状である。

 ■5)”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”の録音オーダー
 第一日 2月12日  AM11:30-PM5:30

○1.スイート・アンド・ラブリー
2.ステイ・オン・イット
3.ブラック・コーヒー
4.ヒーズ・ア・リアル・ゴーン・ガイ
○5.テンダリー
6.ラフ・ライディン
○7.クッキン・アット・ザ・コンチネンタル
8.ブレントウッド・ブルース
9.リトル・ナイルス
○10.ステラ・バイ・スターライト

第二日 2月13日  AM10:00-PM1:00

○11.レイズ・アイデア
12.プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラブ
○13.ハーレム・ブルース
14.カム・サムディ
○15.リトル・ガール・ブルー

○:ハーレム・ブルースに収録

プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラブは以下。
234689、12、14

 ■6)”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”の曲目
 本LPのライナー・ノーツの野口久光さんの解説を最初に””内に記載し、私の感想もその後に記載。

A-1. Please Send Me Someone To Love (パーシー・メイフィールドの’49年の作詞・作曲)
 ”曲は、32小節型式で書かれているが音列、メロディーにブルース的なところのある曲で、フィ二アスのプレイは、スロウ・バラード・テンポでブルース風に歌い上げている。クリアーな一音・一音の美しさが録音の良さと相まって遺憾なく生きている。華麗なテキニックが駆使されているのだが決して派手がましくなく、知的で渋い光を放っている。ベースとドラムスの控えめなサポートも申し分ない。”

 とにかく、有り余るテクを隠して、只管唄うフィ二アスを聴いてください。ブルースフィーリングたっぷりのバラードです。彼特有の力強いタッチが堪能できる。

A-2. Rough Ridin' (エラ・フィッツジェラルドとハンク・ジョーンズとビル・テニソンの合作のスインギーで明るい曲で、その時伴奏はレイ・ブラウンが指揮するオケで、ピアノがハンクだった)
 ”フィ二アスは、ミディアム・アップテンポでメロディックに歌い、ブロック・コードが多用される。ここでも驚異的なテクニックが駆使されているのだが、それがテクニックの誇示にならず、音楽的に昇華されており、軽快な小品とはいえ、気品を感じさせるのは流石である。”
 
 軽快なイントロより、繰り返しのテーマ・フレーズが楽しい。そこからのアドリブの入り方が素晴らしい。アイデアが止め処なく湧いてくる。とんでもないテクを持っているが、それを思わせないさらりとした表現が粋である。

A-3. Come Sunday (D・エリントンが、’43年カーネギー・ホール・コンサートで初演した大作戯曲”ブラック・ブラウン・アンド・ペイジ”の中で歌曲として歌われた一種の賛美歌で、後々歌曲としてよく歌われている。)
 ”フィ二アスは、まずエリントンの原曲に忠実に単独ソロで演奏、第二コーラスでベース、ドラムスを伴って美しいヴァリエーションを繰り広げる。全体にフィ二アスはエリントンへの敬意を込め、曲の持つムードを大切にしている。”

 イントロは、スローなセンチメンタルなテーマから。繊細で哀愁のあるアドリブを切切と弾く。ほぼソロでスタートしリズムが知らない内に入る。玉を転がすようなフレーズが美しい。バラードもフィ二アスは素晴らしい。心にしみます。エンディングはしめやかに。バックのシンバルワークが光る。

A-4. Brentwood Blues (フィ二アスのオリジナル・ブルースで6分を超える長い演奏)
 ”レイのベースとエルビンのベース?による控えめなイントロからフィ二アスのソロ・テーマとなりコードを強調したプレイで形をかえたヴァリエーションが繰り広げられる。中間にレイのベース・ソロを挟んで三者による力強いグルーヴィーなぷれいで演奏は更に盛り上がっていく。フィ二アスの演奏には構成力と気品、風格があり、この6分は全く長さを感じさせない。”

 この曲が一番お気に入り。レイのイントロから直ぐにピアノがついてくる。ブルースフィーリングに溢れたメロディがやってくる。途中、盛り上がるところでのエルビンのシンバルのサポートもいいし、レイは、渋いが重厚なリズムを刻む。これぞ、ブルース、身体が自然に揺れてくる。レイのソロも入ってくるが、チェンバースとは又違ったあっさりとしたソロ。ピアノに戻って、またキラキラプレイを決めて終わる。エルビンの纏わりが少しうざいが。

B-1. He's A Real Gone Guy (ルイジアナ州出身の女性黒人シンガー”ピアースト・ネリー・ラッチャー”が’47年に作詞作曲、自ら歌ってミリオン・セラーとなったノヴェルティ・ソング。ラッチャーがニューヨークのカフェ・ソサエティに出演した時の人気は大変なものだった)
 ”ラテン・フレイバーのエルビンのイントロからフィ二アスは原曲のメロディを残して軽快に歌い、通俗的な曲をいつの間にかジャズ・ナンバーにしてしまう。”

 フィ二アスは、本当に止め処ないアドリブが出てくる。また、速いフレーズをいとも簡単に弾きまくる。スイング感もバリ\バリ。しばしの、ドラムソロもあり、これがまた凄い。そりゃー、エルビンの絶頂期である。また、ピアノに戻ってテーマをやって力強いストロークを披露してエンド。

B-2. Black Coffee (ソニー・パーク(作曲)とフランシス・ウェブスター(作詞)が、’48年に合作した粋な小唄で、サラ・ボーンが”ミュージクラフト”に吹き込んで評判となり、続いて、エラや、ペギー・リーの吹き込みも評判になったお馴染みの曲)
 ”フィ二アスは、バラード・プレイの素材として取り上げ、これをスケールの大きい一つのピアノ曲のような演奏に仕上げている。Brentwood Bluesに次ぐ長い演奏で、6分を超えるが、このアルバム中、白眉の名演と言えよう。”

 この曲を聴くと、何故か中本マリの同曲を思い出します。少し気だるく、少し悲しい。フィ二アスは、ガンガーンとゴリゴリのスタート。スローなテーマがゴージャスに迫る。これは、ゴージャスの一言で〆よう。エンディングも凝ってます。

B-3. Little Niles (’55年に異色のピアニスト”ランディ・ウエストン”が書き、リバーサイドに吹き込み、アルバムタイトルとしたエキゾティックな旋律を持ったジャズ・ワルツ小曲で、ランディが愛児ナイルスに贈って書いたもの。)
 ”中近東の民族音楽的なそのメロディの美しさがフィ二アスによって、さらに印象的なものになっている。”

 シンバルとベースのイントロ。ピアノテーマが静かに入ってくる。リズムとピアノが渾然一体。エルビンのシンバルとドラムが効果的になっている。その中をフィ二アスのアドリブがジグザグに這っていく。時に煌びやかな色々を発し、時に幻想的になりながら、切ないアバンギャルドなメロディを綴る。最後のガーンもお約束だがカッコいい。

B-4. Stay On It (’47年にディジー・ガレスビーのビッグ・バンドが吹き込んでいるスインギーなバップナンバーで、作曲者は何とカウント・ベイシーと、タッド・ダメロンという珍しいコンビ。)
 ”スインギーなレイとエルビンのバック・ビートに乗ってフィ二アスは奔放なアドリブを展開している。”
 
 力強いピアノのイントロから、快活なテーマが始まる。アドリブに入ると実に楽しそう。エルビンのジャン・ジャンに乗って自由に弾きまくる。超絶テクの片鱗も少し出しつつ溢れ出るアイデアのアドリブが展開される。

 
 ■7)【バラード好きの私の感想】
 フィ二アスをはじめ、天才は、バラードでも力強い。ソニー・ロリンズのど太いブローでのバラード(*1)然り、コルトレーンの切れた強いトーンのバラード(*2)然り。

 (*1)サキソフォン・コロッサスの”恋を知らない貴方”や、ワークタイムの”ゼア・アー・サッチ・シングス”とか
 (*2)コルトレーン(1stアルバム)の”コートに菫を”や、ソウル・トレインの”アイ・ウォント・ツ-・トーク・アバウト・ユー”とか

 ■8)You Tube
 フル・アルバムで上がっています。
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