オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

BLOW UP

2017-01-24 08:30:09 | ジャズ
 今回は、鈴木勲氏(仲間内では、オマスズ)のBLOW UPについてお話します。

 ■1)BLOW UPと私
私は、メアドやGOO IDの最初をBLOW UPから始める程、BLOW UPという鈴木勲のアルバムに心酔していたが、先ずは、今販売しているBLOW UPのキャッチコピーを載せてみよう。

・初めて聴いたとき、チェロの音のあまりに粒立ちのよさに思わずLPジャケットを見入ってしまう、という現象をジャズ喫茶で連発した、日本ジャズ史上最も音のいいアルバムの最右翼に位置する、鈴木勲のアルバム。一騎当千の4人が繰り広げる世界は揺るぎない音の塊を聴く者の心に投射してくる。日本ジャズが生んだ最もオリジナルな世界!
・最強メンバーによる好演奏、洗練されたジャケット・デザイン、オーディオ・ファンも認める好音質と三拍子揃った、TBMレーベルの代表作品かつ日本ジャズ史上の宝物。(塙耕記)

【メンバー】鈴木勲(b), ジョージ大塚(ds), 水橋孝(b), 菅野邦彦(p)
1. アクア・マリーン
2. エブリシング・ハプンズ・トゥー・ミー
3. ブロー・アップ
4. ライク・イット・イズ
5. 言いだしかねて
6. ロー・フライト

 見ているだけでジャズに目覚めた人や、オーディオファンは買いたくなる。旨く表現されているコピーである。

 ■2)スリー・ブラインド・マイス(TBM)について
 このBLOW UPのお話をする時は、それを作ったレーベルTBMについて、とあるブログ(転記改変ご容赦下さい)から抜書きで触れておきます。
 ”スリー・ブラインド・マイス・レコードは1970年6月頃に熱心なジャズファンであった藤井武(当時29歳)を中心に、他の2名を加え3氏で共同で設立されたジャズ専門レーベル。名実共に70年代のみならず、日本ジャズ史の重要レーベルである。第1回の録音は1970年8月4日に峰厚介5を行っている。
 「スリー・ブラインド・マイス」はイギリスに伝わる古いマザー・グースの名だが、もちろんカーティス・フラーが書いた曲の名でもあり、アート・ブレーキーの1962年のライブ盤のアルバムタイトルになっている。
 レコード製作の方針は藤井武の独断を貫いた。すなわち、<楽しいジャズ><スイングするジャズ><創造的なジャズ><個性的なジャズ>の4つの明確なコンセプトの基に制作を行っていった。
 TBMは、日本のジャズメンを育てた功績が大きいが、中でも山本剛はTBMが発掘した最大のスターであり、多くの支持を集め瞬く間にトップピアニストに成長した。他にもあまりメジャーではレコーディングの機会の少ない実力者鈴木勲、今田勝、高柳昌行、金井英人、そして峰厚介、植松孝夫、福村博、土岐英史ら若手新人ミュージシャン、和田直、古谷充らローカルミュージシャン達をも積極的に取り上げ紹介していった。
 妥協しない録音、リミッターをかけない高レベルの職人技の手動カッテイング、初期のコラージュ手法を使った優れたジャケットデザイン(アート・ディレクターは西沢勉が務めた)、写真を使用したカラフルな楽しい仕上げの帯などマイナー・レーベルらしいすばらしい拘りが感じられる。ほぼ全ての録音は神成芳彦(アオイ・スタジオ)が担当した。
 1982年~1983年はトリオ・レコードと提携を行ったり、1999年にTBMレコードと社名変更して活動を行い海外からの高音質CDやLP(ジャズ・クラシック)を輸入して販売されているようであったが2006年4月に倒産・消滅。2014年12月24日東京地裁においてTBMレコードは破産手続きの開始決定を受けた。”

 以上、TBMについて、あるブログからの抜書きをしたが、返す返すTBMが無くなってしまったというのは、残念無念。和ジャズの一部が喪失してしまったという感覚。

 ■3)スリー・ブラインド・マイス(TBM)の売上ベスト10
 因みに、「無線と実験」2015年の7月号にTBMのレコード売り上げベスト10が載っていた。
1. ブロー・アップ/鈴木 勲
2. ミスティ/山本 剛
3. 北欧組曲/三木敏悟+東京ユニオン
4. ブルー・シティ/鈴木 勲
5. 海の誘い/三木敏悟
6. ミッドナイト・シュガー/山本 剛
7. 黒いオルフェ/鈴木 勲
8. マリ・ナカモトIII/中本マリ
9. ガール・トーク/山本 剛
10. ソロ・ピアノ/今田 勝
 やはり、BLOW UPは、売れたんだなあ。

 この中で、LPで持っているのは、1.2.4.6.7.9.の6枚。以下は、左から4.1.7.

序に、裏も。1.は、コラージュ手法を使った優れたジャケットデザインですね。粋だなあ!


 ■4)BLOW UPに戻りますが、これをベストに鳴らすスピーカーの選択

 ということで、BLOW UPに戻りますが、この作品は、上記のレコード製作の方針の、<楽しいジャズ><スイングするジャズ><創造的なジャズ><個性的なジャズ>の4つの要素を全て備えている作品と言える。このブログの初日に書いていたことですが、私は、このLPを持って、毎週日本橋に通い、この鈴木勲のベースがいかに、生に近く聴こえるスピーカーを探していた。共電社とか、河口無線に、シマムセンさんには、本当にお世話になりました。非常に感謝。
 ヤマハのNS-1000Mも聴いてみたが、やはり私には、ドームツイーターはラッパが飛んでくるように鳴らないので無理だった。もし、私がヴォーカルを重視していたら、ALTEC620AかA-7を選択していた。しかし、最後の判定基準が何しろ、鈴木勲のベースなもので、結局、2231Aをウーハーにしているスピーカーしかその基準をクリアーしないことが判った。そうすると、モニターしか買う気がなかったから、部屋に入る大きさでは、4331Aか、4333Aか、4343しかない。まず、4343は、ラッパが前に出ない。F特がフラットすぎて、音が平板。クラシックならいけそうだったが、ジャズは無理と判断。すると、4333Aが最後残ったが、高音が硬質すぎると感じ、4331Aにした。
 藤井武氏の4つの明確なコンセプト、<楽しいジャズ><スイングするジャズ><創造的なジャズ><個性的なジャズ>に従って、BLOW UPを聴いてみましょう。

 ■5)BLOW UP の特徴(TBMの4コンセプトへどうフィットしているか?)

 1.<楽しいジャズ> これは、文句なしに楽しい。”エブリシング・ハプンズ・トゥー・ミー”や ”ライク・イット・イズ ”での、菅野さん(スガチン)のご機嫌なアドリブ(明日は何が起きるんだろうとワクワクしている子供の気分になれる)でこれは合格。
 尚、2015年京都ブルーノート(翌年奈良へ移転)の11/7の菅野さんのLIVEに行って来ました。当時齢79歳とも思えない達者な演奏をTpの藤井美智さん、bの矢野さんの好演も絡めて堪能した。実は、フィンガーポッピングでお気に入りだった、”フォー・カール”と”ポルカドッツアンドムーンビームズ”をリクエストしたら、気さくにやってくれて、お話をした。その際、”ライク・イット・イズ”について、以下のような裏話が聞けた。
 菅野:”ライク・イット・イズ”は、全く知らなかったんだが、オマスズから明日やる(レコーディングする)から覚えて来てね、と前日に言われた。”無茶九茶だな”(オマスズは、心臓に毛が生えていると言っていた位強引らしい)と思ったが、何とかなるかと思い直して翌日行った。
 私 :ちゃんとレコーディング出来ました?(えっ、エロールガーナーの曲知らんかったって、貴方尊敬してたんでは?と内心思う私)
 菅野:まあ、アドリブだからね。クラシックは、お稽古したことをやるだけなので、お遊戯をお稽古して発表する幼稚園と同じ。ジャズは、毎回毎回違う。その時の感性でひらめきのままに描く芸術だ。

 これは、菅野さんの考え方ですが、何ともスケールの大きい人です。

 2.<スイングするジャズ> これも、”エブリシング・ハプンズ・トゥー・ミー”や、”ライク・イット・イズ”(イン・ツーのスイング) 、”ロー・フライト”、”ブロー・アップ”を聴いてみたら判ります。”ブロー・アップ ”では、水橋孝のベースの上に、主旋律を奏でる鈴木勲のベースが本当にグルーヴィー。基本的には3コードでおなじみのロックンロール/ブルースのコード進行なんですが、とにかく躍動感あふれる演奏が素晴らしい。一見、ベースで主旋律って重たくなりそうに聞こえますが、鈴木勲は、ギターを弾くように軽くベースを弾きこなします。

 3.<創造的なジャズ> これは、”アクア・マリーン”ですね。リズムもメロディもあるようでないようで判然としない。(ある人は、こう表現してます。”ハーモニーの流れの中でほどよい位置にあるチェロの帯域を野性的に感じてフルに活かし切って“ぶつけて”いるこの演奏”)まるで、深海を遊泳している魚というよりクラゲの気分。チェロのもの悲しい旋律にシンバルやエレピやベースや鈴やドラムやカスタネットが絡んで何とも云えない不思議な世界に誘ってくれる。この時代(73年スイングジャーナル ジャズ・ディスク大賞 日本ジャズ賞)に、こんな前衛的なことをしていたと思うと、今更ですが、凄い先見性というか先進性です。フリージャズが真っ青になる位独創的です。

 4.<個性的なジャズ>”アクア・マリーン”は、個性的も何も、外国含めこんなのは、聞いたことがありません。環境音楽に近いものがありそうですが、こんなには完成されていないと思う。”ブロー・アップ” も2.項で書いたようにユニークです。”言いだしかねて”のチェロの凄まじいまでのインパクト。 また“Low Flight”はチェロとドラムのデュオによるテーマが楽しい。2ndベーシストがピアノと加わりドラムが全体をスイングさせて、ピアノ、チェロ、そして最後はドラムのソロで幕切れというフォーメーションは個性的そのもの。

 鈴木勲氏のライブがまだ聴けるというのは、関東にお住まいの方は、良いなとつくづく思う。それに横浜では、たまに市川秀男&鈴木勲のコラボが関内エアジンであったりするというのは、何とも羨ましい。関東に引越ししようかなと時々思う。市川秀男さんのピアノも大好きなのです。

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