オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

”ソロ・ピアノ” ~フィニアス・ニューボーン・Jr~

2017-10-19 12:35:17 | ジャズ
 今回は、前回のリストで16番目にあたる’74年録音のフィニアスの”ソロ・ピアノ”についてです。このLPは、’75年頃購入したのですが、曲によっては、後半に力強いストロークで激しい感情をぶつけています。この頃のフィニアスのどこか不安定な精神状態ー今までの受けてきたストレスに押しつぶされそうな自分の鬱積した感情の吐露”叫び”ーが聴こえます。アート・パッパーで言えば、晩年のロード・ゲームの”エヴりシング・ハプン・トゥー・ミー”の叫びに何か通づるものを感じるのは当方だけでしょうか?

 ■1)フィニアスのテクニック及びその変化について  ~以降は、’75年当時のこのLPの藤井英一氏のライナー・ノーツから一部引用しています。~
 フィニアスのピアノに初めて接する人は、その特異なテクニックに驚くに違いない。”ジャズ・ピアニストの中で指が最もよく動くピアニストを上げよ”と言われたら、迷わずテイタムとフィニアスと答える。例えば”ヒア・イズ・フィニアス”を聴いてみると、彼は普通の4ビートを普通に演奏するにはテクニックが余ってしまって、もてあましていると言うか、困っていると言って良いのか、とにかく面白い。例えて言うならば、リストでもプロコイエフでも完璧に弾き熟せるピアニストが小学生のアンサンブルに加わって戸惑っているような風である。このテクニックが最も冴えているのは、”ヒア・イズ・フィニアス”である。右手のフレーズは、チャーリー・パーカー、バド・パウエル直系であり、パウエルの曲”セリア”1曲だけを聴いても、その驚嘆すべきテクニックとフレーズ作りを知るには十分である。但し、この”セリア”もコンテンポラリー盤に入っている方になると大分感じが違ってきている。倍テンポの”乗り”になることも多いがフィニアスの場合はそれが”エキサイティング”ということには繋がらないで寧ろ軽いものになってしまう。テイタムやフィニアスのよな名人になると、”必死になって一生懸命演奏する部分”と”人に感銘を与える部分”とは一致しない。これは他の楽器にも言える事で、我々にジャズの演奏の姿勢・鑑賞態度についての再検討を無言の内に要求しているように思われる。テイタムが古今を通じての最高のジャズ・ピアニストであることは間違いないが、テイタムは、4ビートのリズムをベースとドラムスに任せきって演奏した訳ではないので、そこにもフィニアスのテクニックに対する尽きない興味がわくのである。左手はもちろんテンス・バスなどのリズム・サポートをしない訳ではないが、それよりも注目すべきは、カウンター・ポイント的な要素や修飾的なフレーズを自由に織り交ぜ、しかもそれを曲の流れやテンポを乱さずにやってのけていることである。ジャズ・ピアノでは、クラシックのフーガのように、左手と右手の均一性を要求されることはほとんどないので、鈍いタッチになり易いのだが、フィニアスの左手のタッチは素晴らしいものである。これは余興だがフィニアスは、ハンプトン・ホーズの曲”サーモン”を左手だけで演奏している。また、左手と右手をオクターブまたは2オクターブ離して弾く奏法も多くロックト・ハンドのテクニックも”バルバドス”にあるように非常に優れている。コードの感覚や、ブルースのフィーリングは、テイタムによく似ている。模倣した部分もあるかもしれないが、それよりもこの2人の間には、本来共通した何かが存在するように思われる。
 パウエルの弾き方が、何度か変化したように、フィニアスのスタイルも病気療養の関係もあってか、少しずつ変わっているようである。レコードの数はあまり多くは無いが、一作毎にあの異常なまでのデリカシーは薄められ、がっしりと力強くなって、ビートに対する”乗り”も”謙譲の美徳”的な感じから”自己主張”的なものに変わってきている。そのような変化が良いのか悪いのかは判らない。

 当方も変化については感じています。冒頭に書いたような状況になってきているとこのLPでは思ったのですが、それが藤井さんが書いている上のことと同じなのか違うのかは判りません。

 ■2)”ソロ・ピアノ” について
 これも少し藤井さんのライナー・ノーツから引用します。
 ”このアルバムは、フィニアスがソロで演奏した貴重な作品である。バップ以降のピアニストでもソロの曲を吹き込んでいる人達も多い。パウエルの”オーバー・ザ・レインボー”や”イット・クッド・ハプン・トゥー・ユー”に始まって、ジョージ・シアリング、セロニアス・モンク、オスカー・ピーターソン、キース・ジャレット、ローランド・ハナ、スタンリー・カウエル、など、それぞれ個性のあるプレイをしているが、フィニアスのソロ・アルバムが加わることは大変嬉しいことである。”
 確かに、貴重なソロアルバムで、これを聴くと何故だか涙ぐみます。
 ジャケットは、下記ですが、スフインクスになったフィニアスがピアノに乗っています。少し違和感が・・・

 裏は、


 ■3)”ソロ・ピアノ” の各曲について
 ライナー・ノーツの藤井さんの解説を前半に、私の感想を後半に載せます。フィニアスの曲は全部好きですが、私のお気に入りは、このLPでは、A-4. ”ニカの夢” と、B-2. ”真夜中の太陽は沈まず” の2曲です。

 A-1. トゥゲザー・アゲイン
 ”速いテンポでブギウギのようなイントロで始まる。CLEFレコードの”バド・パウエル・ムーズ”を思わせるようなヴァイタリティ溢れた演奏。短いがこれだけでも完全に魅了されてしまう。”

 アップテンポのイントロより快調に飛ばすフィニアス。流れるようなフレーズを強いタッチで弾いていく。アドリブは、止め処なく。最後は一瞬テンポを落として、また戻った後華麗に終わる。

 A-2. セレナード・イン・ブルー/ホエア・イズ・ザ・ラヴ 恋人は何処に
 ”セレナードの方は自由なテンポで、パウエル風のサウンドで聴かせる。”ホエア・イズ・ザ・ラヴ”は、フィニアスのお気に入りの曲らしい。シンコペーションの多いリズムで楽しげに弾いている。”
 
 非常に強いタッチでミディアム・テンポのテーマから始まる。後半は、メロディアスなテーマを楽しそうにプレイしている。エンディングはキラキラと色を輝かせながら流れるように。

 A-3. ローレインズ・ウォーク/ウィロー・ウィープ・フォー・ミー
 ”左手と右手をオクターブ違いで弾く奏法で速いテンポで弾きまくる。”ウイロー”の方はテイタムのウイローのコード・ワークとそっくりなところがあり、影響が顕著のように思われる。”

 アップテンポのイントロより。コミカルなテーマを多彩なアドリブで崩していく。”ウイロー”の方はスローテンポに変わり、アドリブに入ると自由奔放に弾きまくる。キラキラのフレーズも力強いストロークも随所に交えて。どこで何が来るのか判らないようなアドリブライン。何かに衝かれているような、あがいているような姿を見る。これを聴くと何かを叫んでいるように感じる。

 A-4. ニカズ・ドリーム ニカの夢 
 ”ホレス・シルバー”の曲であるが、素晴らしい演奏である。このような曲を、ベースもドラムスもなしで演奏する狂気はパウエルに一脈通じるものがある。”

 テンポの良いイントロより。速いグレーズを弾きつつ多彩なアドリブもこなす。この流れるようなアドリブラインはベース無しでもスインギー。エンディングは、3回のバーンという得意技の前触の後に、バーンで終わる。

 A-5. グッドバイ/フラミンゴ
 ”2曲とも、左手のアルペジオにのせて自由なテンポで弾いている。フラミンゴで、黒鍵のグリッサンドをうまく使っているところは面白い。グッドバイに戻った後に終わっている。”

 スローなバラード。イントロより物悲しいフレーズを弾く。玉を転がすようなパッセージを交えて、時に力強く、時にナイーブな切ないメロディを織り交ぜて。何かを悔いるような、別れを惜しむような。でもタッチは次第に強くなっていく。

 A-6. リヴ・アンド・ラヴ/ワン・フォー・ホレス
 ”これも、バラードのメドレーである。アルペジオが美しい。”

 リリカルなイントロより。ゴージャスな流れるようなアドリブを暫し楽しむ。流暢なメロディの中に時々強いストロークを交えて色を重ねていく。夢見るもののファンタジー。

 A-7. バウンシング・ウイズ・バッド
 ”サヴォイ・レコードやブルーノート・レコードのセッションでファッツ・ナバロやパウエルが演奏していた懐かしい曲。激しく入る左手のアクセントが全体を引き締めている。”

 打って変わって、速いパッセージで流れるような指捌き・超絶テクニックを魅せる。最後は力強いタッチでクライマックスを見せて終わる、ゴージャスなエンディング。

 B-1. メンフィス・ブルース
 フィニアスのブルース・フィーリングは聴くものの心を捉えずにはおかない。伝統的なジャズの良さを感じさせる演奏である。”

 ミディアム・テンポのイントロより。ブルース・フィーリングたっぷりのブルースを楽しく弾いている。ご機嫌なムードを漂わせてブルージーに余韻も漂わせて終わる。

 B-2. ザ・ミッドナイト・サン・ウイル・ネバー・セット 真夜中の太陽は沈まず
 ”クインシー・ジョーンズが書いた美しいバラード。超スローの自由なテンポでたっぷりと演奏している。”

 これが一番お気に入り。イントロは何かを回顧しているような哀愁を帯びたもの。超スローなテンポでこのバラードを美しく華麗に弾くフィニアス。以前の”アイ・ラブ・ア・ピアノ”でもこの曲を弾いているが、ここではよりスローでピアノ本来の音の美しさを際立たせてエモーショナルにまた色を混ぜて。ここまでスローになると、凡庸なピアニストでは間延びするところだが、どっこい、フィニアスは、きっちり間を埋めている。彼のこれまでの来し方を振り返り感慨深く感じているフィニアスを感じる。年齢を経て初めて出る味わいがある。”アイ・ラブ・ア・ピアノ”の同曲と勝るとも劣らない名演である。これを聴いていると思わず涙が出てくる。ペッパーの”エヴりシング・ハプン・トゥー・ミー”の叫びに何か通づるものを感じる。

 B-3. アウト・オブ・ジス・ワールド 浮世はなれて
 ”ハロルド・アーレン、ジョニー・マーサーのコンビによる不思議な魅力を持った小品で、フィニアスは、左手のリズム・パターンに超絶技巧の一端を窺わせている。”

 速いパッセージで始まる。自由自在なアドリブ・パターンを披露する。スインギーに流れるようなアドリブ・ラインを走っている。突然バーンでエンディング。

 B-4. ジャイアント・ステップス/エヴリシング・アイ・ハヴ・イズ・ユアーズ/ホエア・イズ・ザ・ラヴ (リプリーズ)
 ”フィニアスのレパートリーは、非常に興味あるものである。以前は、オーネット・コールマンの”ザ・ブレッシング”を録音しているが、ここではコルトレーンの演奏で知られる”ジャイアント・ステップス”を弾いている。バラード風に美しく演奏していて、気負ったところはない。”エヴリシング”も原曲の味を生かしていて美しい。”

 トレーンは、速いパッセージで走り過ぎるが、フィニアスはスローで内省的なバラードに仕上げている。”エヴリシング”もゆったりとした美しいメロディでアドリブも感傷的な装飾をきらめかせて美しい。”ホエア・イズ・”は少しアップテンポになって軽快に進むが、途中テンポダウンしてまた戻る。テンポチェンジを交えてアドリブは多彩に展開する。

 ■4)You Tube
 今の所は、A-4. ”ニカの夢” と、B-2. ”真夜中の太陽は沈まず” の2曲が上がっています。
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