録画しておいた海外ドラマを見ながら彼が言ったことが気になった。新婚の夫婦が、ダブルベッドで話をしている。お茶目な妻に翻弄されながらも、愛情いっぱいの夫が会話しているシーン。私にとっては、見ていて羨ましい構図だった。
「ダブルベッドで寝ていることが、アメリカの離婚率が高まる原因になっているって聞いたことがある」
「いびきとか聞いてると、嫌になっちゃうってこと?」
「いや・・・ ひとりになりたいことってあるだろ」
彼の言いたいことが、分からないわけではない。いくら好きだからといったって、24時間365日ずっと顔を合わせていたら、嫌なことも出てくるだろう。24時間ずっと一緒じゃなくても、朝夕に顔を合わせていたら飽きるってことも頷ける。
でも好きならば、寝返りが気になっても、いびきがうるさくても、慣れてしまって気にならなくなるんじゃないかと思っていた。それが理想論だと笑われても、気にしないカップルだっているはずだと。
ひとりになりたいこともある。
彼の言葉が、心の奥に響く。お前と暮らしたとしても、ダブルベッドで寝ていたら嫌になるかもなと言われた気がした。
愛人だから、良いところばかりを摘まんで付き合える。それは、彼だけじゃなく、私にとっても都合のいい暮らし方だと分かっている。
それでも、こんな風に毎晩ダブルベッドで寝ながら会話するのもいいよなと、彼に言って欲しかった。