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英国の税務戦略の開示義務化、日本の税務方針の自主的開示

2016-10-16 | 仕事
実に3年ぶりの投稿となります。
最近は専らTwitterで呟くのみとなっておりますが、今回発信する情報は少々量が多いためブログに残しておきたいと思います。

旬刊経理情報2016年10月20日号に「コンプライアンスから開示へ 税務ガバナンスの整備を考える」という特集記事がありました。
執筆者はPwC税理士法人の荒井優美子さん、白崎亨さん、中原拓也さん、PwC弁護士法人の北村導人さんです。
この中の記事の一つ、「税務情報の開示をめぐる国内外の動向」では、英国の税務戦略の開示義務化、オーストラリアの税務情報の自主的開示、EUの国別報告書の開示義務精度の導入提案などが紹介され、また、日本企業の現状、及び、今後の対応の方向性が述べられています。

英国の税務戦略の開示義務化については、EYのアラートをご覧下さい。
英国2016年度財政法
http://www.eytax.jp/tax-library/newsletters/pdf/Japan_tax_alert_26_Sep_2016_j.pdf

2016年度財政法の原文は下記にあります。
Finance Act 2016
http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2016/24/contents/enacted/data.htm


インターネットで開示すべき事項は下記のものです。EYのアラートでは概要のみを挙げているのかと思ったら、原文を見てもこのままなのですね。
英国での課税に係るリスクマネジメント及びガバナンスの仕組みに対する英国グループ会社のアプローチ
英国グループ会社のタックスプランニングに対する姿勢(英国での課税に影響する範囲内で)
英国グループ会社が許容できる英国での課税に係るリスクレベル
英国歳入関税庁(以下、「HMRC」)への対応方針

なお、外国会社グループが適格となる場合は英国サブグループについての税務戦略が開示事項となるようです。
多国籍企業(MNE)となる企業は対応が大変ですね。

さて、それではこれらをどのように書いていくかを考えた時に気になるのが先行事例の有無です。我々日本人は巨大不明生物が襲ってくる時でさえ、その対応にあたっては先例を重視します。
記事では企業名を伏せた形で日本企業7社の例が挙げられていましたが、残念ながら内容にまでは触れられていませんでした。
そこで今回、Webを漁って会社を調べ、内容を読んでみることにいたしました。

まず、例に挙げられていた7社は調べてみたところ下記の企業でした。
A社 = コニカミノルタ
B社 = KDDI
C社 = 第一三共
D社 = エーザイ
E社 = 日東電工
F社 = 三井住友信託銀行
G社 = MS&ADホールディングス

各社のWebページ、章立て、主な内容は下記をご覧下さい。
個人的な感想ですが、それぞれ自社で内容を検討したところが感じられて良いですね。
CSR報告書、ESG報告書、統合報告書の枠組みに含めているものが多いようです。これは予想通り。
逆に、各報告書の枠組みから離れて自主開示をしているコニカミノルタや日東電工はどういった経緯で掲載を判断したのか気になるところです。
また、エーザイは他社と異なりCSRでなく財務戦略の一部として税務方針を記載しています。IRの中で財務戦略を説明していくならばこの体系は良いですね。

英国の義務的開示事項との対比で見ると、企業が許容する課税に係るリスクレベルに触れたものは見つかりませんでしたが、その他の項目は参考にできるところがあるのではないかと思います。

A社 = コニカミノルタ
http://www.konicaminolta.jp/about/csr/csr/compliance/pdf/tax_policy.pdf
記載事項の項目立て
CSRの取り組み-コンプライアンスの実践-グループ税務方針
レポートへの組込み
なし(独立したWebページ掲載)
主な内容
法令遵守の宣言、UNGC,OECDの指針への賛意。
適正な納税を通じた地域社会発展への貢献の宣言、税の報告、情報交換、税務当局への協力を通じた透明性の重要性の理解。
CFC税制の重要性の認識、法令遵守の確約。
OECD,G20が奨励する税制改革の支持、税務担当者のスキル、知識ベースの更新、必要な情報のグループ内共有の努力。


B社 = KDDI
http://media3.kddi.com/extlib/files/corporate/csr/csr_report/2016/pdf/report2016_07.pdf
記載事項の項目立て
CSR(環境・社会)-ガバナンス-コンプライアンス-適切な税務
レポートへの組込み
統合レポート2016 ESG詳細版への全文組み込み
主な内容
法令遵守、適切な納税の宣言、法人所得税費用、税負担率の開示。
国際的税務リスクの認識の下での税務戦略の推進、税務コンプライアンスの維持・向上の取り組み。
税務情報の適時適切な提出、透明性を高めることによる税務当局との信頼関係の構築、必要に応じた事前照会による税務リスクの低減。
BEPS対応への取り組み、過度な節税を目的とする税源移転の防止。


C社 = 第一三共
http://www.daiichisankyo.co.jp/corporate/csr/compliance/pdf/compliance01.pdf
記載事項の項目立て
CSR -コンプライアンス経営の推進-税務コンプライアンスに対する取り組み
レポートへの組込み
独立したWebページに掲載、バリューレポート2016にはWebページへの掲載情報のみ記述
主な内容
税務の透明性の確保が企業の社会的責任である認識、適正な納税の経済社会発展への影響、税務コンプライアンスが透明性確保となることの理解。
恣意的な租税回避や税務コンプライアンスの欠如が財務・レピュテーションリスクとなることの理解、各国経済・社会への悪影響リスクとなることの理解。
各国税務当局との良好な関係構築の努力、国際的な税務フレームワークの動向注視・適時な対応の努力。
適時適切な税務情報の提出による各国税務当局との信頼関係構築。
適時な税務申告・納付、協力的な情報提供、事前確認制度などによる長期の税務ポジションの明確化の努力。
OECD,BEPSプロジェクトが税の透明性確保の不可欠な取り組みであることの理解。
国際的な所得の適性配分を実現し、所得の他国移転を回避すべきことの理解。
OECD移転価格ガイドラインに基づく適正な税金納付の努力。


D社 = エーザイ
http://www.eisai.co.jp/pdf/annual/pdf2016ir.pdf
記載事項の項目立て
IR情報 -統合報告書-財務資本-財務戦略-グローバル税務ポリシー
レポートへの組込み
統合報告書2015への全文組み込み
主な内容
グローバル適正納税の徹底、BEPS行動計画の先行対応、税務ペナルティ・二重課税による企業価値の毀損リスクを防止。
全役員全従業員のコンプライアンス・ハンドブック記載事項(適正な納税)の遵守・誓約。
監査委員会の配置による執行の監督、会社法開示の監査。
潜在的な二重課税の排除、総合的に企業価値向上に資する税務プランニングの策定。


E社 = 日東電工
https://www.nitto.com/jp/ja/about_us/sustainability/governance/policy/tax_policy/
記載事項の項目立て
サステナビリティ-ガバナンス-コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方-税務コンプライアンスポリシー
レポートへの組込み
なし(独立したWebページ掲載)
主な内容
遵法の徹底、過不足ない納税、キャッシュフローの最適化を通じた株主価値最大化。
業務ルールの遵守、適正な経理処理。
移転価格税制を考慮した価格、費用負担の決定。
管理職昇格者への税務研修など、税に対する理解を深める活動。
課税リスクの兆候の有無の定期的検証、原因分析と対策の立案。
必要がある場合の税務当局への問い合わせ。


F社 = 三井住友信託銀行
http://www.smtb.jp/csr/esg/compliance_2.html
記載事項の項目立て
CSR活動-ESGに関する取り組み-コンプライアンス・公正な事業-三井住友トラスト・グループの税務コンプライアンスに関する基本方針
レポートへの組込み
2015CSRレポートへの全文組み込み
主な内容
税の適正な管理の推進。
税法、通達、国際標準に則ったルールの遵守、誠実な税務戦略の推進。
トップマネジメントにおける税務リスクの認識、ビジネス戦略と合わせた税務戦略の推進。
社員に対する指導など税務コンプライアンスの維持・向上への取り組み。
情報開示など透明性を高めることによる税務当局との信頼関係構築、税務リスク低減。
BEPS行動計画に従った適正な納税。


G社 = MS&ADホールディングス
http://www.ms-ad-hd.com/company/governance/compliance.html
記載事項の項目立て
企業情報-企業価値創造を支える仕組み:コンプライアンス-税務コンプライアンスに対する取り組み
レポートへの組込み
CSRレポート2016への全文組み込み
主な内容
法令遵守、適切な税務申告、納税の実施。
適時適切な情報提供、事前照会による税務当局との信頼関係の構築、税務リスクの低減。
BEPSプロジェクトの趣旨の理解、適切な地域での適正な納税の努力。国際的な所得の適正配分の実現の取り組み。

本日はここまで。
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