Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

よしながふみ先生の『大奥』が、ティプトリー賞を受賞!

2010年03月17日 | マンガ・コミック
よしながふみ先生の傑作マンガ『大奥』が、米SF界の主要賞のひとつである
「ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞」を受賞したそうです。
山岸真先生のTwitter経由で入ってきたニュースですが、見つけた瞬間に小躍り。

“ティプトリー賞は20年近い歴史を持つアメリカのSF賞。
 受賞を報じたサイト→http://www.sfawardswatch.com/?p=3052
(@yamagimaさんのTwitterより転載)

ちなみにティプトリー賞の概要ですが、Wikipediaの解説文によれば

“ジェンダーへの理解に貢献したSF・ファンタジー作品に送られる文学賞。
 SF作家ジェイムズ・ティプトリー・Jr.にちなむ。
 1991年2月 SF作家パット・マーフィーとカレン・ジョイ・ファウラーにより、
 WisConでのディスカッションを経て創始された。”

とのことです。
受賞作家もル・グィンやケリー・リンク、ジェフ・ライマンなどの大物が並ぶ中に
「Fumi Yoshinaga」の名前が刻まれるわけですよ。なんて誇らしいことでしょう!

言うまでもない話ですが、ティプトリーといえば女性であることを隠してデビューし、
性差を含む人間性に対する鋭い考察を巡らした傑作SFを書き続けた大作家。
その人の名を冠した歴史あるSF賞に、日本のマンガがはじめて選ばれたのは
実にすばらしいことですし、『大奥』はそれに恥じない作品だと思います。

個人的に『大奥』を傑作だと思うのは、単に「男女逆転」の面白さにあるのではなく、
国家として、社会として、そして人間として生き残っていくために必要な手段として
「男女逆転」という道を選ぶしかなかったという合理性と必然性が、強烈な説得力で
描写されているからです。ある意味では社会改革SFとしての側面もあるかなと。
そして、そんな必然性や合理性の中で翻弄されつつも必死に結ばれようとする
女と男の情がなんとも切なく、時として醜く、また美しいんですよね。

歴史改変SFとしての強靭な骨格と人間の本質を見抜く鋭い批評眼を備えつつ、
男女間の恋愛ドラマとしての生々しさを失わないところが、『大奥』のすごさ。
それをしっかり評価してくれたティプトリー賞の審査員にも、敬意を表したいと思います。

授賞式は5月とのこと。よしながさんにはぜひ現地での授賞式に出て欲しいです。
そして海外の著名作家たちと並ぶ姿を、日本のファンにも披露してください!
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
すごい~@@ (shamon)
2010-03-18 21:51:15
ついに世界へ~なんですね。
白泉社のサイトにはまだだけど。

ジャンルを問わず胸を打つのは人間ドラマ、
SFも例外じゃない。
よしながさんへ拍手喝さいを送りたい。



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これだけドンピシャな組み合わせはないでしょう! (青の零号)
2010-03-18 22:22:08
shamonさん、いつもありがとうございますー。
白泉社のTwitterでは、本日になってコメントが出てますね。

私としては『大奥』こそティプトリー賞にふさわしい
世界的な傑作SFだとかねがね思っていたものですから、
この受賞はものすごーくうれしいです!

ティプトリーといえば、以前にBPさんが紹介していた長編の
『輝くもの天より堕ち』が読みやすくていいと思うので、
ぜひshamonさんにもお読みいただきたいです。
そして、よしなが先生との類似性や違いについて
ちょっとでも実感して欲しいもの。
有名な「たったひとつの冴えたやり方」でもいいけど、
ティプトリーにしてはナイーヴすぎるかもしれません。

ちなみに『大奥』で私がまず連想するティプトリー作品は
傑作中篇「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」。
両作品とも、女性優位主義が生み出すユートピア/ディストピアを
見事なまでに描き切っています。
後味がめっちゃ苦いけど、絶対にオススメの逸品ですよ。
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