そらいろの日々

育児とミステリ

ミーナの行進

2006-07-29 | 読書記録
『ミーナの行進』小川洋子

1972年、中学1年生の1年間を、芦屋の伯母の家で暮らすことになった朋子。
大きな芦屋のお屋敷は、今まで見たことのないようなまばゆい世界。
ハンサムなおじさんや、カバのポチ子。輝くフレッシーの瓶。
そして、美しく聡明ないとこのミーナ。

幸せで、小さくて、忘れられないエピソードたちがたくさんたくさんつづられています。
マッチ箱の箱とそれに書かれた物語たちや、ランプの灯が揺れる光線浴室といった、ちょっぴり現実離れした幻想的な思い出。
それに対して、入学式で初めてつけたブラジャーとか、夢中になったバレーボールとか、すごくリアルに感じられるエピソード。
バランスがとっても絶妙!だと思います。
図書館での初恋の、あのドキドキ感や嘘をついている後ろめたさがごちゃ混ぜになってる感じ!(ため息出るよ!)

マッチ箱の箱のコレクションって、なんだかお墓みたいじゃないですか?
「生きているのか死んでいるのか分からないままに」静かにそこに在るモノたち。
その上で眠るミーナ…って、なんだか棺桶を連想させる。
“マッチ箱の最後の物語”って、あれミーナが自分のことを投影して書いたんじゃないかな、と。
(それだけじゃなくて、フレッシー動物園の仲間たちのお墓、とか、川端康成の自殺、とか、日常生活の中にそっと存在したり入ったりしてくる“死”にドキッとさせられます、この話)
だからかなあ。
“現在”についてはあっさりとしか描かれていませんが、何回も入院して、マッチ箱のために物語を紡いでいた少女ミーナが、たった一人で堂々と人生を歩いていっているのがわかって、とても安心するんです。


あーもうすごい好きだこの本!
読みながら「読み終わるのがもったいない!」と久々に思えた本でした


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