ガラパゴス通信リターンズ

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マンガを読む大学生

2009-11-20 00:00:00 | Weblog
「少年ジャンプ」が生み出した傑作群は、まさに枚挙に暇がない。このジャンプという雑誌は、1968年の創刊である。その約10年前に生まれた「サンデー」・「ジャンプ」に比べて後発であった。後発の不利を克服して、一時は600万部を超える部数を誇るお化け雑誌に何故成長することができたのであろうか。

 60年代、大学の大衆化とともに大学生がマンガを読むようになった。大学生の鑑賞に耐える「劇画」が隆盛となり、子どもだましの「漫画」は衰微していく。大学生の読者としての参入は、マンガの質的向上に貢献したともいえるのだが、そこには問題があった。大学生受けを狙って性表現や政治的主張、暴力の描写等がエスカレートしていったのである。人肉を食べる場面が出てくる「アシュラ」が問題になったのは60年代末のことだ。

 大学生が読めば「アシュラ」のようなマンガも面白いだろうが、小学生にとってみれば面白いものではない。70年代に入ると先発の2誌は急速に売り上げを落としていく。「ドラえもん」のような幼児向けのマンガは存在したものの、マンガの本来の読者であるはずの小学校高学年向けのマンガは空白地帯になっていた。そこで登場したのが「友情・努力・勝利」をスローガンに掲げる「少年ジャンプ」だった。小学校高学年の男の子の綿密なマーケットリサーチからこのスローガンは生まれた。

 「サンデー」・「マガジン」が大学生に占領されてしまった様は、子どもたちが遊んでいる川原に大学生のお兄さんがやってきて、バイクをぶっ飛ばしたり、アジ演説をしたり、エッチなことを始めた光景を想像させる。無名の新人しかいない「ジャンプ」は、何もなければ大家をずらりと並べた先発2誌にたちうちできなかったのではないか。大学生読者の登場が、先発誌の編集方針を狂わせたことによって、「少年ジャンプ」の時代は到来したといえなくもない。

2 コメント

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質問 (かつのり)
2009-11-20 02:21:27
素朴に質問です。ここにある「大学生」というのは、根拠ある発言だとか、自信に満ちた仮説とかなのでしょうか? あるいは定説?

いわゆる後期青春期とかじゃなくて、大学生なんですか。70年安保以降の? あしゅらのような漫画を支持したのは大学生なのですか?

余談ですDが、ドラえもんはスゴイですね。大人が見ても子供が見ても面白い子供漫画ですから。サザエさんードラえもんの路線を継ぐ漫画家というのはそうとうむつかしいだろうとおもいます。(コボちゃんとか、あんまり面白くないし。。。がんばれかあさんやちび丸子ちゃんはどちらかというと、そういう路線かな?)


一本とられた! (加齢御飯)
2009-11-20 10:05:26
 いわゆる後期青春期とかじゃなくて、大学生なんですか。70年安保以降の? あしゅらのような漫画を支持したのは大学生なのですか?

 いや、これは一本とられました。70年当時は大学の進学率はまだ20%程度でした。だから大学生だけに支持されていたのでは少年マンガ雑誌の編集方針を左右することにはならなかたでしょう。アシュラのようなマンガを支持した者のなかには多くの勤労青年が含まれていたはずです。ただ70年ごろに氾濫していた「反体制」マンガは色濃く学生運動のイデオロギーを反映していました。その意味では、少年マンガの変質をもたらしのが大衆化した大学生であるといっても大きな間違いはないと思います。