ガラパゴス通信リターンズ

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ファラオ(10月27日投稿分)

2005-11-14 16:19:00 | Weblog
参議院の補欠選挙がこの前あった。結果は「赤い勝負服」の元外務大臣の圧勝。結果が最初からみえていたせいか、ものすごく投票率が低かった。選管の人が道行く人の袖を引っ張って投票所にまで「拉致」しようとする姿をみたのははじめてだ。しかし敗れた民主党の女性候補はなかなか印象に残る人ではあった。娘とその友だちは彼女のことを「ファラオ」と呼んでいた。そう、彼女は顔立ちも髪型も古代エジプトの王様にそっくりだった。

 「ファラオ」の選挙ポスターをみた時には失望した。「ただいま子育て中」というのは、まあいいだろう。しかし、「一円でも安いお店をみつけるのが趣味」の下には「アメリカで弁護士として活躍」と書かれてあった。「かつてTBSに勤務」とも。「お金がたまるでしょうね」とつっこみたくもなる。弱者の味方で頑張るのか。「勝ち組の・勝ち組による・勝ち組のための」新自由主義路線をひた走るのか。そのスタンスが、さっぱりみえてこない。

 神奈川県はいま、米陸軍第一軍団総司令部のワシントン州から座間基地への移転問題で揺れている。ジェット機の騒音等、ぼくの住んでいる地域はいまでも深刻な基地公害に苦しんでいる。米軍総司令部などが来れば、テロの恐怖に怯える毎日だろう。ところが「ファラオ」は新聞のインタビューに「その問題についての考えは固まっていない」と答えている。地域の最重要課題についての定見をもたない人間が、県選出の国会議員になる資格などない。

 政治家にはなりたい。しかし、政治家になって取り組むべきテーマなど何もない。「ファラオ」は、いま風の政治家志望者の典型だ。選挙戦の終盤、「ファラオ」がぼくの住む街にやってきた。駅の前で選挙民と握手をしていた。ぼくも握手をしてもらった。存外強い力だった。すがるような目をしていた。選挙への思いは伝わってきた。切ない気持ちにならないでもなかったが、彼女に一票を投じることはなかった。だめなものはだめなのである。