オートバイで行くインド・アフガニスタンの旅

写真やイラストつきのオートバイ旅行記

no.106 バイクの修理など

2017-10-14 10:38:21 | オートバイ旅行記

 正木さんは知り合いの日本人学校の先生をしている呉田さんのところに泊まる。
お土産ののり巻きを分けてもらい久しぶりに、日本の味を懐かしんだ。

 こうしてここでのキャンプ生活を3日ほど楽しんだのだが、正木さんは先を急ぐとのことで、
別れることにした。 彼はこれから南下して、そしてイラクに行こうというのだ。
メソポタミア文明に関心があり、そういった遺跡群を訪ねたいというのだった。
一方、僕の方はこのまま北上してトルコに行くつもりであった。

 そんなわけで、僕は正木さんを見送った後、キャンプ場を引き払い、町中のバグダットホテルに
移った。 名前のバグダッドに惹かれたこともあるが、キャンプ場がちょっと街外れ過ぎて不便
だったからである。

 午前中にアシュタクトクバ(地名)の工場へバイクを持ち込むがやってくれず、午後、
街中の溶接屋へ行って、パイプの折れた荷台やバンバーの修理を頼む。
翌日、訪れるとまだ出来上がっておらず、一生懸命作業していたが、昼になってようやく
出来上がった。 代金は700リアルだった。 
日本からみれば随分安いといえる。

 次に前輪のタイヤが大分摩耗してきたので、今のうちに新しいのと交換しておこうと、
ホンダの代理店があるかどうかを訊きまわっていたら、さすが中東の大国イラン、
ちゃんとあったのだ。訪ねてみると、在庫があるかどうかは分からないが、
倉庫を探してみるとのこと。 それで外で待っていると、そこに驚いたことに、
僕と同じホンダCB750に乗ったイラン人の若者がやってきたではないか。

 「驚いたことに」と書いたのは、このホンダCB750はまだ市場に出て
間もないうえ、こういったイランなどの国では高率の関税が掛かっているだろう
から、たぶん日本の二倍くらいもするだろう超高級品で、とても普通の庶民には
手が届かない商品なのである。 それを彼は乗り回しているのである。

 この後にも先にもこの最新型のオートバイを見たのはこの時のただ一度だけで、
西ドイツに入ってですら、目にしたことはなかった。
そんなでホンダCB750のオートバイの大きさといい、斬新で機能美にあふれた
モダンなデザインといい、どこの国に入っても人目を集めたのだった。
そういったオートバイを乗り回しているのだから、この出会ったイランの若者は
余程裕福な階層に属するに違いなかった。

 それを物語るように彼はチヤールス・ブロンソンばりの立派な髭を蓄え、
そのうえ、ブロンソンよりずーっと高貴な顔立ちをしていた。
そこで記念にとそのオートバイとともに彼の写真を撮らせてもらった。

 そうしているうちに幸いにもタイヤが見つかったとのことで、また彼の方も
用を果たしたと見えて、「さよなら」を言った。

ふつうこういう時は住所を交換することが多いが、そこは「あまりの身分違い」
ということで、そうとはならなかった。 これは僕の勝手な想像だが、まあ
そんなことだろう。 僕の風体や傷だらけのバイクを見れば納得できる。
この旅行では高貴な人との出会いは皆目無かった。
それもある意味で僕のこの旅での収穫というか、「人生とはそんなもんだ」と
いう現実を知ったのだった。 
「人はその器で生きる」のが幸福(しあわせ)というものである。


 次回に続く!


    
    いやーカッコいいね! ポーズも様になっている。 イランのイメージも変わるのでは?