その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今はクラシック音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書

パーヴォさんのフランス・プラグラム/N響6月定期Aプロ

2017-06-26 07:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 2月以来のパーヴォさんの登壇。前回から4ヶ月しか経ってないんですが、随分久しぶりの感じがしました。今日は、デュティユー、サン・サーンス、ラヴェルというフランス・プログラム。これまで、パーヴォさんではロシアもの、ドイツ・オーストリアものを中心に聴いてきましたが、レパートリーの広さに驚かされます。

 デュティユー〈メタボール〉に続いては、河村尚子さんのサン・サーンスピアノ協奏曲2番。河村さんは4年前にラザレフ、日フィルとの共演でラフマニノフ〈パガニーニの主題による狂詩曲〉を聴いていますが、(失礼ながら)あまり記憶に残ってません。今日の河村さんは、緑の艶やかなドレスに身を包み、自信ある笑顔で現れました。

 演奏は力強さと繊細を併せ持った印象的なものでした。私はこの曲を初めて聴いたので、演奏についてコメントする資格はないのですが、キレがあって、華やかな演奏は、梅雨の湿っぽさを吹き飛ばしてくれました。

 後半、ラヴェルの〈優雅で感傷的なワルツ〉はまさに題名通りの曲。ワルツの軽やかなリズムに乗ったオーケストラのアンサンブルが耳に心地良いです。ラストで音が消えても(消えたように聴こえた後も)パーヴォさんの腕がなかなか降りず、長くホールが静寂に包まれました。

 ラストの「ダフニスとクロエ」組曲第2番は、N響の優れた合奏力が遺憾なく発揮された秀演。合唱版でなかったのは残念だったけど、この曲はいつ聴いても良いですね。色彩感豊かで、聴き応え満点でした。

 来週はシューマン、シューベルトとドイツ・オーストリア系プログラム。こちらも楽しみです。


《河村さんのアンコール曲》

第1862回 定期公演 Aプログラム
2017年6月25日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

デュティユー/メタボール(1964)
サン・サーンス/ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品22
ラヴェル/優雅で感傷的なワルツ
ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲 第2番

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ:河村尚子

No.1862 Subscription (Program A)

Sunday, June 25, 2017 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Dutilleux / Métaboles (1964)
Saint-Saëns / Piano Concerto No.2 g minor op.22
Ravel / Valses nobles et sentimentales
Ravel / “Daphnis et Chloé”, suite No.2

Paavo Järvi, conductor
Hisako Kawamura, piano
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調布国際音楽祭はルピコン川を渡ったのか?

2017-06-22 07:40:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 今年で5回目となる調布の音楽祭。日曜日に盛況のうちに終わりました。エクゼクティブ・プロデューサー(随分、大げさなタイトルですが)である鈴木優人氏のユニークな企画(「フェスティバルオーケストラ」の創設や有料公演のテーマ設定(「深大寺・チェンバロリサイタル」や「ツイマ—マンのコーヒーハウス」など)に加え、アットホームな雰囲気、そしてバッハ・コレギウム・ジャパンなど世界レベルの演奏が楽しめることもあって、都合で行けなかった第2回を除いては、毎回お邪魔してます。今年は、いよいよネーミングに「国際」をつけて改名し、新しいロゴマークも発表し、未来への一歩を踏み出す決意を示しています。

 年々、プログラムも充実しています。また、プログラムとは関係ないですが、今年はオープンステージがある文化施設「たづくり」にスターバックスが無料のコーヒーサービスを提供してくれたのが、来訪者にとっては「超」がつくほど嬉しかった。私自身はこの音楽祭の大きな魅力の一つが、市民音楽家や地元の桐朋の音大生らによる無料コンサートなのですが、スターバックスのコーヒーをすすりながら、リラックスした雰囲気で生演奏を楽しむって、これぞ音楽の楽しみという体験をさせてもらいました。



 来年以降、調布「国際」音楽祭がどういう展開をするのか楽しみです。まさに分岐点に立っていると思いました。自治体主催の音楽祭である以上、税金の使い方として適正であるべきでしょう。また、なによりも、この音楽祭の生来の良さは、市民・学生参加型の音楽の近さとBCJのような世界レベルのプロの演奏家のプログラムとの絶妙なバランスにあると思うのですが、このバランスがどうこれから変化していくのか?「国際」と名を打ったのは、予算も増やして、どんどんプロの演奏会を増やして、日本有数の音楽祭にしていくという成長ビジョンなのか?そうだとすると、今のメインホールであるグリーンホールは国際音楽祭の本拠地としては寂しい施設です。



 私個人の思いとしては、「国際」などつけなくても良いから、今のこのローカルなスタイルを継承して欲しい。もし、真の国際音楽祭にするなら、近隣の狛江・府中・三鷹・武蔵野・多摩あたりとタッグを組んで、多摩国際音楽祭にして、大々的にプロモーションをかけてはどうかと思います。中途半端な成長戦略は、この音楽祭の生来の良さを失うことになりはしないか危惧します。来年以降、調布国際音楽祭がどう変わっていくのか?主催者は、ルピコン川を渡ってローマを目指すのか?応援したい音楽祭だけに、今後に目が離せません。
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バッハ・コレギウム・ジャパンのオール・モーツァルト・プログラム @調布国際音楽祭

2017-06-20 07:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


3年連続で足を運んでいるバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)による調布国際音楽祭のフィナーレ・コンサート。これまでのバッハプログラムから今年はモーツァルト・プログラムへ変身。交響曲40番,41番を柱に、ドン・ジョバンニの序曲、ヴァイオリン協奏曲第3番を交えた豪華プログラムです。

 通常のオーケストラの半分以下の30名弱の編成ですが、ホールも大きくないので、2階席後段の私にも十分、聴こえてきます。一人一人の奏者がどんな音を出しているのかが個別にわかるのが嬉しいです。古楽器の響きは、何とも優雅で良いですね。きっと、モーツァルトの時代は、このぐらいの規模で音楽を演奏をしていたのだろうなと、数百年前の演奏会場を想像しながら聴いてました。

 ヴァイオリン協奏曲はソリストの寺神戸亮さんの美しく、安定した音色が印象的。うっとりします。圧巻は、最後のジュピター。鈴木さんの熱い指揮に応えた、情熱一杯の演奏でした。古楽器の優雅さとビブラートを効かせないキビキビとした切れの良い演奏がバランス良く組み合わさって、通常のオーケストラで聴くのとは異なった、繊細だけど、深い宇宙を感じる演奏でした。

 BCJの演奏会でいつも感じることですが、指揮者の鈴木雅明氏とメンバーの間に深い信頼関係のオーラが出てますね。演奏レベルはまさに国際レベルなのですが、鈴木家の一族郎党による合奏ですとでも言うような、内輪の雰囲気を感じるのも独特の魅力の一つだと思います。

 音楽祭の幕切れに相応しい勢いで終わり、万雷の拍手に覆われて、今年の調布国際音楽祭をしっかり締めてもらいました。


日時:6月18日(日)17:00
場所:グリーンホール 大ホール
出演:
鈴木 雅明(指揮)
寺神戸 亮(ヴァイオリン)
バッハ・コレギウム・ジャパン(管弦楽)

曲目
モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》より序曲 KV 527
交響曲 第40番 ト短調 KV 550
ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 KV 216
交響曲 第41番 ハ長調「ジュピター」KV 551

Masaaki Suzuki & Bach Collegium Japan play the best of Mozart

Date & Time: 18th, June (Sun) 17:00
Place: Green Hall – Large Hall

Performers
Masaaki Suzuki (Conductor)
Ryo Terakado (Violin)
Bach Collegium Japan (Orchestra)

Set list
Mozart: Don Giovanni, KV 527, Overture
Mozart: Symphony No. 40 in G minor, KV 550
Mozart: Violin Concerto No. 3 in G major, KV 216
Mozart: Symphony No. 41 in C major, KV 551 “Jupiter”
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楽しさ満載! 「ツィマーマンのコーヒーハウス」 @調布国際音楽祭

2017-06-18 10:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 昨年は「生誕 260 年 モーツァルト・ガラ・コンサート 〜再現1783年ウィーン・ブルク劇場公演〜」という企画で楽しませてくれた調布音楽祭でしたが、今年は「ツィマーマンのコーヒーハウス」と題して、全てバッハの曲で「バッハの音楽会へタイムスリップ」というプログラムで魅せてくれました。

 前半の3台のチェンバロによる協奏曲も聴きごたえ十分だったけど、後半のコーヒーカンタータ「おしゃべりはやめて、お静かに」が特筆。コーヒーのことばかり考えている若い娘に、頑固な父親が、何とかコーヒーをやめさせようとするやりとりを描いたコメディタッチのカンタータなのですが、バッハがこんな作品を作っていたとは全然知りませんでした。舞台には、コーヒーハウスを思わせるコーヒーテーブルが置かれ、演奏者・歌手たちもコーヒーカップを片手に、演技も入った簡易オペラ風の仕立てです。

 コーヒー大好き娘の小林沙羅さんと頑固おやじのドミニク・ヴェルナーさんのやりとりが、とっても明るく、ほのぼのした雰囲気で、楽しさ一杯でした。特に、小林さんがチャーミングで、年頃の若い女性を溌溂と演じてました。彼女の清らかな声が会場に綺麗に響き、聴き惚れます。会場もとってもリラックスした雰囲気で、まさにコーヒーハウスのよう。

 ちょっと思ったのは、せっかくだったら、聴衆にコーヒー配って、コーヒー飲みながら鑑賞できたら、企画の狙いともばっちりあって、これ以上はないレアな演奏会になったんじゃないかということ。丁度、同じ施設内で行われている音楽祭のオープンステージ会場周辺で、スターバックスがサービスでコーヒーを配ってくれていたので、ホールでも配ってくれれば、紙コップだから音もそんなしないだろうし、何よりも当時のコーヒーハウスの雰囲気が更に楽しめるのではと感じた次第です。

 まあ、ここまで求めるのは調子に乗りすぎかもしれませんが、音楽って楽しいよねって感じるのに十分な演奏会で、どうしてこうした企画ものが普段の演奏会にあまりないのが(気が付いてないだけ?)、不思議なくらい。さて、来年の企画は何だろう?


《後半の演奏に向け調律中。バックの映像はコーヒーハウスの入った建物か?》


日時 6月17日(土)14:00〜
場所 くすのきホール

出演
鈴木 優人(指揮・チェンバロ)
バッハ・コレギウム・ジャパン(管弦楽)
大塚 直哉(チェンバロ)
フランチェスコ・コルティ(チェンバロ)
小林 沙羅(ソプラノ)
櫻田 亮(テノール)
ドミニク・ヴェルナー(バス)

曲目
J. S. バッハ:
3台のチェンバロのための協奏曲 第1番 BWV 1063
裏切り者なる愛よ BWV 203
3台のチェンバロのための協奏曲 第2番 BWV 1064
コーヒーカンタータ「おしゃべりはやめて、お静かに」BWV 211


The Café Zimmermann – J.S.Bach's Playground

Date & Time: 17th, June (Sat) 14:00〜
Place: Tazukuri, Kusunoki Hall

Performers
Masato Suzuki (Conductor,  Harpsichord)
Bach Collegium Japan (Orchestra)
Naoya Otsuka (Harpsichord)
Francesco Corti (Harpsichord)
Sara Kobayashi (Soprano)
Makoto Sakurada (Tenor)
Dominik Wörner (Bass)

Set list
Concerto for Three Harpsichords, Strings and Continuo No. 1 in D minor, BWV 1063
Amore traditore, BWV 203
Concerto for Three Harpsichords, Strings and Continuo No. 2 in C major, BWV 1064
Schweigt stille, plaudert nicht, BWV 211
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チェンバーミュージック・ガラ・コンサート @調布国際音楽祭

2017-06-13 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 今年も調布音楽祭が始まりました。今年から、名前に「国際」がついて、調布国際音楽祭とグローバル化。イベントが集中するのは来週末ですが、皮きりのコンサート「チェンバーミュージック・ガラ・コンサート」に行ってきました。東京クヮルテット創立メンバーの原田幸一郎さんと磯村和英さん、そして元読響ソロチェリストの毛利伯郎さんが登場します。

 東京クヮルテットは私には少しだけ特別な存在。ロンドン在住時に、近くの公立図書館にはクラシックのCDコーナーがあって、小さなCD屋さんぐらいのコレクションがありました。日本所縁の楽団を探すと、何枚か所蔵されていたのが、東京クヮルテットとバッハ・コレギウム・ジャパン。無知な私が、「東京クヮルテットって、何もの?」って調べてみたもたら、1969年にニューヨークで創設され、ばりばりグローバルに活躍していた楽団ということを知りました。残念なことに2013年に44年の活動を終え解散したということで、私にとっては「伝説の」四重楽団となっていたのです。

 愁眉は、後半のブラームス弦楽六重奏曲第1番。とっても有名な曲だと思いますが、室内楽にあまり経験のない私は、生で聴くのは初めて。3人衆が引っ張る音楽は実に骨太で、力強い。皆さんそれなりのご年齢にお見受けしますが、円熟さと剛毅さが両立した、実にエキサイティングな演奏です。楽器と楽器のコミュニケーションも活発で、聴いていて胸が躍る気分。各楽器のセカンドで就いた若手奏者が名人に必死に食らいついていくさまも、弟子が師匠を乗り越えようと果敢に挑んでいるように見え頼もしいものでした。

 前半は、3名人によるシューベルト弦楽三重奏曲に始まり、その後は若手演奏家が入れ代わり立ち代わりに演奏し、室内楽の楽しさを披露してくれました。見た目に影響されてるかもしれませんが、若いエネルギーを感じる演奏で、とっても好感が持てます。ベテランと若手が交って、コンサートの雰囲気もアットホームで、暖かい。市民音楽祭だけど、国際を目指す、グローカルな演奏会でありました。

 来週末も楽しみです。


日時:6月11日(日)14:00〜
場所:調布市文化会館たづくり くすのきホール
出演:
原田 幸一郎(ヴァイオリン)
磯村 和英(ヴィオラ)
毛利 伯郎(チェロ) ほか

プログラム
シューベルト:弦楽三重奏曲 変ロ長調 D471 ◦原田幸一郎(ヴァイオリン)、磯村和英(ヴィオラ)、毛利伯郎(チェロ)
ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 作品8 から 第1楽章 ◦白井麻友(ヴァイオリン)、秋津瑞貴(チェロ)、高橋里奈(ピアノ)
ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第3番 ヘ短調 作品65 から 第1楽章 ◦レイア・トリオ(ピアノ三重奏)[小川響子(ヴァイオリン)、加藤陽子(チェロ)、稲生亜沙紀(ピアノ)]
シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44 から 第1楽章 ◦原田幸一郎(第1ヴァイオリン)、磯村和英(ヴィオラ)、トリオ デルアルテ[内野佑佳子(第2ヴァイオリン)、金子遥亮(チェロ)、久保山菜摘(ピアノ)]
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20 から 第1楽章 ◦アミクス弦楽四重奏団&アルネア・カルテット[宮川奈々(第1ヴァイオリン)、山縣郁音(第2ヴァイオリン)、宮本有里(第3ヴァイオリン)、今高友香(第4ヴァイオリン)、山本 周(第1ヴィオラ)、川上拓人(第2ヴィオラ)、松本亜優(第1チェロ)、清水唯史(第2チェロ)]
ブラームス:弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 作品18 ◦原田幸一郎(第1ヴァイオリン)、小川響子(第2ヴァイオリン)、磯村和英(第1ヴィオラ)、福井 萌(第2ヴィオラ)、毛利伯郎(第1チェロ)、加藤陽子(第2チェロ)
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大エルミタージュ美術館展 @森アーツギャラリー

2017-06-11 08:00:00 | 美術展(2012.8~)

ウィギリウス・エリクセン《戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像》・・・この絵だけ写真撮影可

 ロンドン駐在時に欧州のメジャーな美術館はそれなりに訪れたけど、エルミタージュ美術館は「行きたいリスト」に載せたものの、結局行けずじまいだった。その美術館からの特別展ということで、時間を縫って駆け足で廻ってきた。

 イタリア・ルネッサンス期から近代絵画前までの西洋絵画(いわゆるオールドマスターの作品)が贅沢に並んでいる。ティツィアーノ、カナレット、ハルス、レンブラント、ブリューゲル(子)、ムリーリョ、シャルダン、クラーナハなどなど、知っている画家ばかりであるが、初めて見る絵ばかりで胸を躍らせ鑑賞した。

 展示は国別に部屋が区切られ、イタリア、オランダ、フランドル、スペイン、フランス、英国・ドイツと続く。もちろん時代区分の差分もあるが、国が変わると画風も大きく変わるのが興味深い。やっぱり、私はイタリア・ルネッサンス、オランダ、北方ルネッサンスが好みで、フランスのロココ調は苦手だ。

 私的なお勧め下の4枚。レンブラントの《運命を悟るハマン》は下敷きは旧約聖書とのことだが、そうでなくても物語が作れそうな劇的なシーンだ。スルバラン《聖母マリアの少女時代》は何か将来を見据えるような上目使いの少女マリアが何とも愛らしい。クラーナハの聖母子は、聖母の落ち着いた目の描き方とこちらに飛び出してでもきそうな笑みを浮かべる幼児イエスのバランスが素敵だ。

 森アーツギャラリーは、平日でも夜間20時まで開館しているのがうれしい。東京では18日までなので、まだの人は是非。



ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像》1538年 油彩・カンヴァス


レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン《運命を悟るハマン》1660年代前半 油彩・カンヴァス


フランシスコ・デ・スルバラン《聖母マリアの少女時代》1660年頃 油彩・カンヴァス


ルカス・クラーナハ《林檎の木の下の聖母子》1530年頃 油彩・カンヴァス
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優れた経営実論!: 三枝匡 『ザ・会社改造』 (日本経済新聞社、2016)

2017-06-09 08:00:00 | 


 昨年発刊された三枝氏の経営本。これまでの事業・企業変革シリーズ(『戦略プロフェッショナル』、『経営パワーの危機』、『V字回復の経営』)と同様、ストーリー仕立てで企業変革について論じてます。今回は、筆者が社長を務めたミスミを題材に、事実がそのままナマナマしく描かれている点が今までと違い。一義的にはプロ経営者またはプロ経営者を目指す人向けに書かれているけど、内容はあらゆるリーダーに普遍的に応用できます。

 倒産の危機にあったわけではない状況下での事業トランスフォーメーションの実践が描かれてます。メインテーマは本業復帰、国際進出、長期的コミットメントと人材育成など。読んでいると、次々に胸に刺さるシーンや指摘に突き当たり、自らの至らなさに自省を迫られること多数。理論・知識と実践を結んでくれる優れた経営書です。

 個人的な話ですが、この本に描かれた時期、米国大学院のMBA資格も持つ優秀な友人がミスミ社に転職しました。しかし、理由は明確には話してもらえなかったのっですが、数年で退職。この経営者のもとでやっていくのは相当のタフさがいるのは事実のようです。ミスミに勤めずとも、本を読んでわかった気になることはできても、実践に結び付けること、自ら当事者となるには覚悟と行動が必要です。


【メモ】
 いくつかの気づき・学びの抜粋

■ 戦略:企業の競争優位
 ・「会社が大企業病になると「開発→生産→営業」の連携速度が鈍くなる。顧客要求を社内に戻し、その答えをまた顧客に届けるスピードも遅くなる。このグルグル廻しを競合より迅速に廻す企業は次第に市場で勝っていくが、遅い企業は負けていく《商売の基本サイクル》」(p65)
 ・「改革シナリオの3枚」(p87—90):
   1枚目 現実直視、問題の本質、強烈な反省論、2枚目 改革シナリオ、戦略、計画対策、3枚目 アクションプラン

■ビジネスプラン:組織論と戦略論の一体化、骨太のメインストーリー
 ・「ビジネスプランは数字をまとめる作業が主眼ではない。「戦略ストーリー」が肝要だ。競争相手は誰か。勝ち負けを決めている要素は何か。それに対して自社の強み、弱みは何か、そうした思索を経たうえで、経営リーダーとしての事業戦略は何か。」(p140)

■マネジメント:変革の3つの原動力
 ・強烈な反省論を出発にする戦略・ビジネスプロセス・マインド行動(p318)
 ・「リストラや事業の切り売りを実行した日本企業で、あとに残った社員が見違えるように元気になって、その会社の「戦闘力」が著しく高まったというケースはまず聞かない。・・・日本企業を元気にするポイントは、人減らしの発想ではなく、<いま、そこにいる人々>の目を輝かせる手法を追求すること」(p80)

■リーダーシップ
 ・「切断力」の発揮こそがリーダーシップの要諦
 ・「数字に対する感性が低く、儲けることへのしぶとさが弱かった。・・・理屈は言うが戦略の組み立てが弱い。しかも実行となれば、地に足がついた姿勢で組織を束ねていくリーダーシップにおいて軟弱なものが少なくなかった」(p434)


【目次】
(会社改造1) 「謎解き」で会社の強み・弱みを見抜く
創業40年で売上高500億円だった上場会社をわずか4年で1000億円に伸ばし、世界大不況を乗り越えて2000億円超の企業に変身させた経営者は、あらかじめどんな「謎解き」をして会社改造に乗り出したのか。

(会社改造2) 事業部組織に「戦略志向」を吹き込む
戦略とは何か。それを知らなかった事業部の社員たちは、のたうち回りながら「戦略シナリオ」を描き、売上高150億円の事業部を1000億円超のグローバル事業に成長させた。

(会社改造3) 戦略の誤判断を生む「原価システム」を正す
不正確な原価計算は重大な戦略的誤謬を生みかねない。世界の多くの企業が導入に失敗した「ABC原価計算」を、社員たちは日常的に使う戦略目的のシステムとして確立した。

(会社改造4) 成長を求めて「国際戦略」の勝負に出る
「海外に無関心、本社の海外事業組織はゼロ、戦略もなし」の状態から、13年後に海外社員7000人、海外売上高比率50%に迫る国際事業へ。「世界戦略」はどのようにして構築され、実行されたのか。

(会社改造5) 「買収」を仕掛けて「業態革新」を図る
商社専業40年の歴史に別れを告げ、メーカー買収に踏み切ったミスミ。「事業モデルの弱点」を一挙に解き放つ業態変革を敢行した戦略の裏には、どのような「歴史観」が、そして「ねらい」があったのか。

(会社改造6) 「生産改革」でブレークスルーを起こす
現場の抵抗によって「死の谷」にまで追い込まれかけた生産改革は、何をきっかけにして蘇ったのか。トップと一体になった知的戦いと汗まみれの現場改善は、ミスミの業態に最も適した「世界水準の生産システム」を生み出す。

(会社改造7) 時間と戦う「オペレーション改革」に挑む
以前であれば600人でやっていたはずの仕事を、いまはわずか145人でこなせる体制に。カスタマー・センターで行われた、汗と涙と我慢の「業務改革のステップ」とは何だったのか。時間と戦うオペレーションとは?

(会社改造8) 「元気な組織」をどう設計するか
「組織末端やたら元気」と「戦略的束ね」の両立が会社の理想。だが、日本の経営の実験場として試行錯誤を重ね、高い成長率を生み出した「ミスミ組織モデル」にも大企業病の脅威が迫る。
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圧倒的迫力: 清水 潔 『殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』(新潮文庫、2016)

2017-06-07 08:00:00 | 


 群馬県太田市と栃木県足利市で起こった連続幼女誘拐殺人における冤罪を調査報道によって覆した軌跡を描く。

 筆者の粘り強く真実を追いかける行動力と記者魂に強い感動を覚えると同時に、「科学捜査」とされたDNA型鑑定の危うさや警察・検察の捜査の杜撰さが怖くなる。

 どんなサスペンス小説よりも引き込まれ、読みだしたら止まらない。

 死刑制度、「科学」捜査、警察・検察の論理、ジャーナリズムについて考える格好のケーススタディでありテキストとなりうる。


目次
第1章 動機
第2章 現場
第3章 受託
第4章 決断
第5章 報道
第6章 成果
第7章 追跡
第8章 混線
第9章 激震
第10章 峠道
第11章 警鐘
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ちきりん 『自分の時間を取り戻そう』 (ダイヤモンド、2016)

2017-06-03 08:00:00 | 


 ちきりんさんの著書は読み易く、ちょっとした気づきにつながることが多いので、ちょくちょくつまみ読みしている。今回のテーマは生産性。まさに今はやりの「働き方改革」指南書になっている。

 今回の主な気づきは3つ。

 1つ目は、「アウトプット(手に入れたい成果)」÷「インプット(希少資源)」で定義される生産性を高めるには、まずインプットを減らすこと。つまり、働く時間を減らしてみるということだ。

 近々、私の会社では、夜の9時以降残業禁止というお達しがでるそうだ。みんなで仲良く残業制限なんて、子供じみててますます自分で考えられない人間を作るようで、個人的には大嫌いな施策なのだが、本書によると「まず今の仕事を特定の時間で終わらせると決める」ことが、生産性を向上の第一歩ということらしい。会社で反対勢力になるのはやめようかしら。

 2つ目は、これからの世の中、新ビジネスの種は生産性格差に着目したものになっていくだろうということ。本屋→Amzaon、ガラケー→スマフォなどの世の中の推移も生産性の違いで説明できるし、医療や現金制度といった分野はまだまだ生産性の観点からは向上の余地が大いに残されている、すなわちビジネスのチャンスがあるということだ。そういう視点で考えてみると、自分の業界や仕事の見方も巾が出てくる。

 3つ目は、希少資源である「お金」と「時間」は見える化しようというアドバイス。特に、「時間」の見える化は自分の無駄をあぶりだしてくれそうだ。大学受験勉強の時は、予備校の先生から、「自分の24時間の実績管理をせよ」と言われたことを思い出した。

 まあ、あまり生産性や効率を考えてばかりいては不健康だし、私にとっては、生産性の向上とは、自分の非生産的・非効率でも良い自由で気ままな時間を増やすためなので、個人的にはなんか矛盾しているというか、グルグル議論が廻りそうなテーマなのだが、気にせず役に立ちそうなことは取り入れてみよう。

 既刊本と比較すると、本書はインパクトでは劣るものの、簡単に読めるのでお時間のある方にはお勧めできる。


《目次》
はじめに

序章:「忙しすぎる」人たち

デキる男・正樹
頑張る女・ケイコ
休めない女・陽子
焦る起業家・勇二
「忙しすぎる」という問題の本質

1章:高生産性シフトの衝撃

本質的な問題
UberとAirbnbが有効活用した資源
これからの時代の判断基準
学校教育がダメダメな理由
グローバル企業が税金を払いたがらないワケ
同床異夢のベーシックインカム論
「働かないでほしい」と望まれる人たち
文字(テキスト)が持つ価値
長文メールを書く人はなぜ嫌われるのか?
シェアエコノミーの本質
社会と個人が進むべき方向

2章:よくある誤解

楽しくない?
クリエイティブになれない?
偶然の出会いを逃す?
人に優しくない?

3章:どんな仕事がなくなるの!?

こんな働き方、していませんか?
仕事は遅いほうが得というトンデモ理論
デキる人と残念な人の違いとは?
淘汰されるのはどんな仕事?
こんな仕事が生き残る!?

4章:[インプットを理解する]希少資源に敏感になろう

お金と時間は、両方とも〝見える化〟しよう
お金も時間も最大限に活用しよう
お金と時間以外の希少資源

5章:[アウトプットを理解する]欲しいモノを明確にしよう

バックパッカーが手に入れたいものとは
超危険な「似て非なるモノ」
頑張るほどわからなくなる「欲しいモノ」
「やるべきこと」と「やりたいこと」

6章:[生産性の高め方1]まずは働く時間を減らそう

生産性の定義と高め方
ブラジルと日本の農業の違いにヒントがあった
ワーキングマザーと外資系企業の社員を見習おう
インプットを制限する具体的な方法
[その1]1日の総労働時間を制限する
[その2]業務ごとの投入時間を決める
[その3]忙しくなる前に休暇の予定をたてる
[その4]余裕時間をたくさん確保しておく
[その5]仕事以外のこともスケジュール表に書き込む
働く時間を増やすのは〝暴挙〟

7章:[生産性の高め方2]全部やる必要はありません

メディアが求める完璧な女性
スゴイ人の内実
人手不足の原因となる「ひとりで全部やれ」思想
無駄な時間を減らすための具体的な方法
[その1]「すべてをやる必要はない! 」と自分に断言する
[その2]まず「やめる」
[その3]「最後まで頑張る場所」は厳選する
[その4]時間の家計簿をつける
変わり始めたトレンド

8章:高生産性社会に生きる意味

新ビジネス普及の鍵は生産性格差にある
医療や現金制度も大きく変わる
高生産性シフトが経済成長の新たな源泉に
個人にとっての意味
社会の生産性を左右する個人の意識
働き方も変わる
チームの生産性を高めるというチャレンジ
貧困問題と生産性

終章:それぞれの新しい人生

さらにデキる男・正樹
吹っ切れた母・ケイコ
ラオスにて・陽子
世界を目指して・勇二

さいごに ~人生のご褒美~
参考文献
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これは圧巻! 「ミュシャ展」 @国立新美術館

2017-05-31 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 またしても巨大美術マーケット東京の恩恵に預かった。アルフォンス・ミュシャによる6メートル×8メートル級のキャンバスに描かれた《スラヴ叙事詩》全20点がまとめて展示されるのは、チェコ国外では世界で初めてという。

 入り口を抜けると、広い空間を取り囲んで《スラヴ叙事詩》の絵が展示してある。実に大きい。「原故郷のスラヴ民族」から始まって「スラヴ民族の賛歌」にいたるまで、スラブ民族の歴史が1枚一枚描かれる。まさに歴史絵巻。民族の自立、ドイツやトルコなど他民族との抗争、宗教改革と戦争、ロシア農奴制廃止など欧州大陸の中央で、厳しい歴史を歩んできた民族であることが実感できる。民族の苦難と誇りを感じる大作は、見る者の胸を撃たないわけがない。

 平日の午前中というのに、会場は大混雑だった。ただ、絵が大きく、展示区間を自由に動けるおかげか、あまり混雑は感じない。自分のペースで鑑賞することができる。スラブ叙事詩に加えて、展示の後半では、ミュシャらしいアール・ヌーヴォーのポスターやリトグラフなども見ることができる。

 あと閉幕まで1週間を切ってしまったが、間違いなくこれは必見の展覧会。まだの人は急いで!


写真撮影可のエリアがあります。


《ロシアの農奴制廃止》


《スラブ民族の賛歌》


《イヴァンチェの兄弟団学校》の一部。聖書を盲人の老人に読み聞かせているのはミュシャ少年らしい。


《構成》
スラブ叙事詩
I ミュシャとアール・ヌーヴォー
II 世紀末の祝祭
III 独立のための闘い
IV 習作と出版物
コメント (2)
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